【社説②】:非行少年の調査 つらい体験が背景に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:非行少年の調査 つらい体験が背景に
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年01月24日 08:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②】:非行少年の調査 つらい体験が背景に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:非行少年の調査 つらい体験が背景に
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年01月24日 08:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2023.05.09】:いじめ隠蔽の鹿児島市立伊敷中、今度は“警察沙汰”に慌て事故報告|事案発生から47日後
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2023.05.09】:いじめ隠蔽の鹿児島市立伊敷中、今度は“警察沙汰”に慌て事故報告|事案発生から47日後
いじめ防止対策推進法が規定する「いじめの重大事態」を隠蔽していた鹿児島市立伊敷中学校が、突然の暴力によって男子生徒が複数個所の骨折を負うという事案の市教委への報告を、1か月半も怠っていたことが分かった。
伊敷中が市教委に「事故報告」を提出したのは、事案発生から47日後。けがを負った生徒の保護者が、地元警察に事件を届け出た翌日だった。ただし、提出された事故報告はデタラメに近いもので、初回分から2カ月以上経って大幅に書き変えられた報告書が再提出されていた。校内処理で済ませようとして事案を軽く扱ったため、正確な記録が残されていなかった可能性が高い。
伊敷中による意図的とみられる事案隠しは、これで2度目。鹿児島大学教育学部の代用附属に指定されている同校の、教員養成機関としての資格が問われる事態だ。
通常、学校側がいじめや事件・事故を教育委員会に報告するのは、事案発生直後か遅くとも1週間以内。まず電話などで事案発生を知らせ、そのあと所定の様式で詳しい「事故報告」を行う。しかし、伊敷中は、肝心の初動でとんでもない対応を行っていた。
下は、生徒の保護者が鹿児島市教育委員会から入手した「児童生徒事故報告」。事故発生日は「令和4年9月2日」だが、報告書の提出は同年「10月19日」となっている。事案発生から47日も後だ。
これだけでも問題だが、より悪質だと思われるのは、当該事案が「警察沙汰」になったことを受け、同校が慌てて報告書を提出したことだ。
「無言で、しかも後ろから突然押して突き落とした。加害者は、学校の記録にあるような『友人』でもないのに……」。学校側の対応に不信感を抱いた被害生徒の保護者は10月18日、鹿児島県警に被害にあったことを相談。保護者からの連絡を受けた伊敷中は、19日に報告書を作成して市教委に提出していた。よほど慌てたものとみえ、報告の内容はデタラメに近いものだった。その証拠が、報告書提出から2カ月以上経ってから“再提出”された下の報告書である。
事案発生の時刻は、当初報告より40分も後。事案の発生状況や事後処理についても、次のような違いがある。
事案発生直後にきちんとした記録を残していなかったのは確かで、事案発生時刻、発生状況、その後の対応のすべてが書き変えられていた。骨折して歩けない被害生徒が、「保健室に来室し」などという1回目の報告は、どうすれば出てくるのか――。
対応の甘さは、別の文書からもみてとれる。いつ作成されたものなのか判然としないが、事案発生当日の保健室の来室記録(*下の文書)には、『《けが》捻挫(運動場)』とある。その後に続く記述は、実態とかなり違うものだ。
「病院へ、足、昼休み友人と遊んでいたところ国旗掲揚台のあたりから落ち、左足を負傷した」――押されて落ちたことや、一人で歩けない状態にあったことなどは、どこにも記されていない。「甲の部分に腫れが見られていたので」保護者に連絡し病院受診をお願いしたとあるが、高所から落ちたことを知りながら積極的に救急車を呼ばなかったことは明らかな不作為だろう。
この点について、鹿児島県内の公立校で教壇に立つベテラン教師は、首をひねりながらこう話す。
「1メートルもあるところから転落したのであれば、頭を打った可能性もあることから、すぐ救急車を呼んで、脳波などの検査までお願いするのが普通です。私ならすぐ119番します。伊敷中の教員や保健室の先生は落下の瞬間をみていなかったわけですから、まず第一に頭を打った可能性を疑ってみるべきでした。けがをした生徒が動けないほどのダメージを受けていたのなら、本人が『大丈夫』と言っても、やはり救急車ですよ。伊敷中の対応は理解できない」
伊敷中の一連の対応からは、事案を「軽いけがを負った小さな事故」あるいは「なかったこと」にしようとした、隠蔽姿勢が透けて見える。同校には、そうした「体質」があるからだ。
同校では、令和元年(2019年)に2年生のクラスで複数のクラスメートによる“いじめ”が発生。被害生徒が転校を余儀なくされるという、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」であったにもかかわらず、同校や当時の市教委幹部が共謀して「いじめは解消」として処理。真相を闇に葬っていたことが分かっている。
伊敷中と市教委幹部による重大事態の隠蔽については、市教委への情報公開請求などから事実関係を確認したハンターが、2021年5月に概要を報道(参照⇒鹿児島市立伊敷中の「いじめ」重大事案、学校と市教委が共謀し隠蔽)。その後、他の市立校での重大事態隠蔽が次々と明らかになり、現在も市教委が対応に追われる事態となっている。
背景にあるとみられているのは、重大ないじめや事故を、校内で処理して済ませようとする校長・教頭をはじめとする教員たちの保身に走る体質。鹿児島県の教育界は教員同士が庇い合う体質が濃厚で、事件がうやむやにされるケースが少なくない。歪んだ教育者たちが寄り添う対象は、「子供たち」ではなく「教員」。教員養成機関である伊敷中が懲りずに隠蔽を繰り返す現状は、同県教育界の現状を映し出しているといえるだろう。
複数個所の骨折に至った突き落とし事案への不適切な対応について伊敷中側の説明は、「スポーツ振興センターへの保険申請書提出時に(報告を)挙げればいいと考えていた」というもの。しかし、校長や教頭は研修などを通じて事故報告の重要性を十分理解しているはずで、保険申請と市教委への事故報告を混同することなどあり得ない。
ハンターの取材に答えた市教委青少年課は、伊敷中の初動から報告書提出までの動きについて「言い訳のしようがない」として学校側の過ちを認めている。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・いじめ防止対策推進法が規定する「いじめの重大事態」を隠蔽していた鹿児島市立伊敷中学校】 2023年05月09日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.09.09】:いじめ重大事態のガイドライン無視|被害者救済に動かぬ鹿児島市政
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.09.09】:いじめ重大事態のガイドライン無視|被害者救済に動かぬ鹿児島市政
鹿児島市立伊敷中で2019年に起きた「いじめの重大事態」が隠蔽されていたことを速報で報じてから、1年4か月以上が過ぎた。いじめの重大事態とは、「いじめ防止対策推進法」が規定する次のケースにあたる事案だ。
伊敷中のケースについて詳細を報じる中、2例目、3例目となる隠蔽事案が発覚。その後、鹿児島市における重大事態の認知件数は12件にまで増加している。
重大事態についての認識が改まったことは評価できるというものの、数々のいじめを隠蔽してきた鹿児島市教育員会やいじめ発生当時の学校関係者が、被害者やその家族に「謝罪した」という話はまったく聞こえてこない。反省する意思がないということらしいが、それは、いじめの重大事態について文部科学省が定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が、守られていないことを示している。
ガイドラインは、冒頭の「基本的姿勢」の中で、次のように規定する。
○ 学校の設置者及び学校は、いじめを受けた児童生徒やその保護者(以下「被害児童生徒・保護者」という。)のいじめの事実関係を明らかにしたい、何があったのかを知りたいという切実な思いを理解し、対応に当たること。
○ 学校の設置者及び学校として、自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し、被害児童生徒・保護者に対して調査の結果について適切に説明を行うこと。
残念なことに、「いじめを受けた児童生徒やその保護者の切実な思いを理解」し、対応に当たってきた政治家や役人は皆無に近い。
「自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し」た、いじめ発生当時の学校関係者や市教委の人間は誰一人いない。
そもそも、鹿児島市の公立校で起きた「いじめの重大事態」は、ハンターが隠蔽の事実を報じるまで話題にもなっていなかった。これは、ガイドラインの次の規定に著しく反する。
(重大事態の定義)
○いじめの重大事態の定義は「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」、「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」とされている。改めて、重大事態は、事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを認識すること。
ハンターが取り上げた問題の3件は、どれも被害者が転校を余儀なくされた重大事態。いじめというより暴行障害事件と言うべき事案もあった。3件とも「疑い」どころか、明らかな重大事態だったにもかかわらず、当時の学校や市教委は積極的に動かず、被害者が転校するように仕向けていた。「「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならない」は、ただのお題目だった。その結果、ガイドライが懸念した「「疑い」が生じてもなお、学校が速やかに対応しなければ、いじめの行為がより一層エスカレートし、被害が更に深刻化する可能性がある」に進んでいた。(*下、参照)
(重大事態として早期対応しなかったことにより生じる影響)
○ 重大事態については、いじめが早期に解決しなかったことにより、被害が深刻化した結果であるケースが多い。したがって、「疑い」が生じてもなお、学校が速やかに対応しなければ、いじめの行為がより一層エスカレートし、被害が更に深刻化する可能性がある。最悪の場合、取り返しのつかない事態に発展することも想定されるため、学校の設置者及び学校は、重大事態への対応の重要性を改めて認識すること。
最大の問題は、ガイドラインに示された、次の指示が守られていないことだ。
被害児童生徒・保護者等に対する調査方針の説明等
(説明時の注意点)
○ 「いじめはなかった」などと断定的に説明してはならないこと。※詳細な調査を実施していない段階で、過去の定期的なアンケート調査を基に「いじめはなかった」、「学校に責任はない」旨の発言をしてはならない。
○ 事案発生後、詳細な調査を実施するまでもなく、学校の設置者・学校の不適切な対応により被害児童生徒や保護者を深く傷つける結果となったことが明らかである場合は、学校の設置者・学校は、詳細な調査の結果を待たずして、速やかに被害児童生徒・保護者に当該対応の不備について説明し、謝罪等を行うこと。
「学校の設置者・学校の不適切な対応により被害児童生徒や保護者を深く傷つける結果となったことが明らかである場合は、学校の設置者・学校は、詳細な調査の結果を待たずして、速やかに被害児童生徒・保護者に当該対応の不備について説明し、謝罪等を行うこと」とある。しかし、鹿児島市のおいて、この規定はただの謳い文句。教育関係者も、政治家も、一顧だにしない。
いじめの実態を隠蔽した学校関係者と鹿児島市教委で、ハンターが報じてきた伊敷中を含む3件のいじめの被害者側に、「対応の不備について説明し、謝罪等」を行った者は一人もいない。重大事態の報告を受けた鹿児島市長も市議会議員も、政治の無策で被害救済ができなかったことについて謝ろうともしていない。ガイドラインどころか、政治や行政の果たすべき責任さえ全うできていないのが現状だ。
鹿児島市教委は昨年6月、『いじめ防止対策推進法』に基づき設置された「第三者委員会」(正式名称:鹿児島市いじめ問題等調査委員会)に3件のいじめについて検証を諮問。第三者委員会が個別の事案に関する調査を続けてきたが、何の進展もないまま、だらだらと会議の回数だけを重ねている。
いじめの被害を受けて苦しんできた子供やその保護者に、なぜ誰も謝らないのか――?答えられる人がいるなら、ぜひ話をうかがいたい。(中願寺純則)
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・話題・鹿児島市立伊敷中で2019年に起きた「いじめの重大事態」が隠蔽されていた事案】 2022年09月09日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.07.26】:【速報】鹿児島“伊敷中いじめ”いまさらの重大事態認定|保護者側は調査拒否
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.07.26】:【速報】鹿児島“伊敷中いじめ”いまさらの重大事態認定|保護者側は調査拒否
鹿児島市内の公立小・中学校で起きたいじめの重大事態について議論を重ねてきた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」(以下、第三者委員会)が、令和元年(2019年)に鹿児島市立伊敷中学校で起きたいじめを、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」に認定する方針を固めたことが分かった。同時期に発覚した「隠蔽されていたいじめ」は、伊敷中の件を含めて3件。他の2件は発覚後すぐに重大事態が認定されていたが、なぜか伊敷中のケースだけが、たな晒し状態になっていた。
事案の発覚から1年以上経っており、“いまさら”というのが実情。被害者側は今年2月、“市教委の動きが信頼できない”として第三者委員会による調査の辞退を申し出ており、今回「改めて調査させてもらいたい」とする第三者委員会からの打診も断ったとしている。
◇ ◇ ◇
伊敷中で問題のいじめが発生したのは令和元年5月。同校の2年生クラスで複数のクラスメートが、ひとりの生徒をターゲットにいじめを繰り返し、学校側が解決できなかったせいで被害生徒が転校を余儀なくされていた。
明らかに「いじめ防止対策推進法」が定める“いじめの重大事態”だったが、伊敷中は学校ごとに作成する「いじめの実態報告」の中で『いじめは解消』と報告。ハンターの調べで、いじめが継続していることを承知していた市教委も、学校側とグルになってこれを容認し、隠ぺいを図っていたことが分かっている。市教委の隠蔽は極めて悪質で、被害者家族が提出した『いじめが継続していることを示す文書』を、違法に廃棄した可能性もある。
いじめを訴えた生徒に、市教育界が救いの手を伸ばすことはなかった。いじめ発生当時の担任の女性教師は、被害生徒の親と会おうともせず責任放棄。元県教育次長の寺園伸二校長(当時)も「私に任せなさい」と大言壮語しながら、いじめが継続していることに抗議されると、「こっちは一生懸命やってるんだ」などと被害生徒の親に逆切れしていた。
ハンターが学校と市教委による隠蔽行為の全貌を報じたのが昨年5月。これが引き金となる形で、別の公立校の「重大事態」が次々と発覚する事態となり、それまで「0件」だったいじめの重大事態が、現在までに12件を数える異常な事態となっている。
◇ ◇ ◇
鹿児島市内の公立校で起きた“いじめ”を巡っては、伊敷中のいじめに次いで明らかとなった別の中学での暴行事件を「重大事態」として調査していた第三者委員会の報告書が、暴行の実態を矮小化する一方、事案の隠蔽を図った学校や市教委の責任を過少に見せかける内容だったことが判明。被害者側が「納得できない」として抗議したため、先月30日に予定されていた「答申」が延期されている。
いじめと真剣に向き合おうとしない鹿児島の教育界に、いじめの撲滅など不可能だ。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・鹿児島市内の公立小・中学校で起きたいじめの重大事態について議論を重ねてきた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」】 2022年07月26日 11:15:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.07.22】:いじめ助長の教育現場|鹿児島市教委「隠蔽」の実例鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.07.22】:いじめ助長の教育現場|鹿児島市教委「隠蔽」の実例鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”に
鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”について審議していた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」(以下、第三者委員会)が作成した調査報告書が、当該事案の保護者から否定され、先月30日に予定されていた「答申」が中止された。
問題の報告書は、いじめの実態を矮小化することで市教委への責任追及をかわす狙いが誰の目にも明らかな酷い内容。ただでさえ揺らいでいた鹿児島市への信頼が、ここに至って地に落ちた格好だ。
信頼を失った原因の一つが、いじめ事件の矮小化や責任逃れをするために、市教委の役人や教員が手を染めてきた「隠蔽」。以下、その実例である。
鹿児島市で起きたいじめについて取材を開始したのは昨年3月。市教委はその時点で、極めてたちの悪い「隠蔽」を行っていた。他の自治体では何の問題もなく開示される「いじめに関する報告書」の開示請求に対し、請求したハンターの記者が求めていない条件を勝手に付け足して「不存在」をでっち上げ、いじめの実態を隠そうとしたのだ。
いじめは教育現場の「事故」にあたるため、記者はどこの自治体の教育委員会に対しても「いじめ事案の事故報告」を請求する。この請求を受けた鹿児島市教委による「校長の公印が捺してある正式なものですよね」という確認の連絡が、実は巧妙な罠だった。間抜けな記者は親切・丁寧な対応だと思い込み「そうです。いじめの報告書、あるんですよね」と応じ、市教委の担当が「あります」と明言したためすっかり騙された。
数日後、市教委から郵送されてきたのは「公文書不開示決定通知書」。そこには、「校長が押印し、市に提出された当該事故報告書は、存在しないため」という不開示理由が記されていた。詐欺まがいの手口に怒りがこみ上げてきたが後の祭り。結局、再度開示請求を行い、公立の小中学校から提出された「いじめの実態調査」を入手する。
同時に、実際にいじめを受けて転校を余儀なくされた被害者やその家族が「個人情報開示請求」を行って入手した関連文書と、突き合わせる作業を開始。そこから、市教委が「いじめの実態調査」を隠蔽した理由が明らかになっていく。
「いじめの実態調査」はA3用紙の表裏に、定められた形式で記入が義務付けられているもの。学期末にデータを更新し、年度ごとにまとめられて保存される仕組みだ。下がその実物(記載内容と記事は無関係)で、次が記載するにあたっての注意事項や記載方法を示した文書である(*いずれも画像クリックで拡大)。確認しやすいように、(表3)から(表7)までの記入例を拡大しておく。
被害者側から「内容がひど過ぎる」として否定された第三者委員会の報告書は、令和2年に鹿児島市内の市立中学で起きた暴力的ないじめについて、関係者から聞き取り調査してまとめられたものだ。学校や市教委は、当該事案においても平気で虚偽の記載を行っていたことが分かっている。
赤い囲みで示したのが当該事案の記載。いじめというより激しい暴行というべき様態であったにもかかわらず、「g」=「いやなことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする」には〇印がない。また、実際にはなかった「当該いじめについて、被害、加害双方の児童生徒同士の話し合いを実施」に、なぜか〇印がついている。
上掲のケースは序の口で、もっと悪質なのが、犯罪行為に近いとみられる虚偽記載だ。当該事案の被害者が受けていたのは、いじめというより激しい暴行。首を吊り上げた形で絞める、お姫様抱っこして3階の教室から落とそうとする、両手で頭を押させて扉に打ち付ける、高所恐怖症を知った上での肩車といった行為が日常的に繰り返され、同時に「死ね」、「殺すぞ」、「きもい」、「消えろ」、「臭い」といった暴言も続いていた。その結果、被害者は心身に重大な障害を受け県外の学校への転校を余儀なくされたが、報告書では下に示した通り「ア」=「いじめが解消しているもの」として処理されていた。
未解決のいじめを「終わったこと」にしたのは、責任の所在を曖昧にするためだ。目の前で継続していたいじめと、真剣に向き合おとしなかった当時の学校関係者と市教委幹部は、改めて処分されるべきだろう。
記録上でいじめの存在を隠した学校や市教委は、実態が暴かれることを恐れていたはず。その卑劣さが、次の隠蔽を呼ぶ。
黒塗り箇所がない上掲の報告書は、被害者側が「個人情報開示請求」によって入手したもの。一方、ハンターが先行して入手した同じ文書(下、参照)では、本来非開示にする必要のない部分を黒塗りされていた。見比べれば一目瞭然。ハンターに対して黒塗りにした箇所を開示しても、個人が特定されるわけではない。暴行の事実や区域外就学が露見することで「いじめ」の実態がバレると見込んだ市教委が、やってはいけない「隠蔽」に走ったということだ。
次に紹介するのは、平成30年に市内谷山にある小学校の6年生のクラスでいじめを受け、学校と市教委が解決に動かなかったことから、やむなく学区変更を願い出た児童の事案に関する報告内容の一部だ。市立伊敷中で令和元年に起きたいじめが、学校と市教委によって隠蔽されていたとするハンターの記事を読んだ保護者が、自身の子供のケースを確認するため市教委に個人情報開示請求を行って入手していた。「いじめの実態調査」の中の『学校の対応』の欄には、「本児童保護者から重大事態の申し立てがあり」とある。
市教委は、当然開示すべき「本児童保護者から重大事態の申し立てがあり」という記述内容を、ハンターの請求では黒塗りにして隠していた(下が開示資料の該当部分)。いじめの重大事態が発生していたことを、組織ぐるみで隠蔽した証拠である。
数々のいじめが隠蔽されてきた結果、昨年から今年にかけて、長年0件だった「重大事態」が11件に急増。市教委と第三者委員会の機能がマヒする状況になっている。いじめを助長したのは、間違いなく鹿児島の教育現場だ。
一体誰のための「いじめ防止対策推進法」なのか――。ここで立ち止まって考えるべきだが、市教委青少年課の課長としていじめの隠蔽に関わったとみられる猿渡功氏を公立小学校の校長に異動させるなど、鹿児島の教育界には関係者に「反省」を促す気配さえない。
元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・行政 【行政ニュース・鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”】 2022年07月22日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.07.15】:作り話、矮小化、責任逃れ ― 鹿児島市いじめ問題第三者委員会の悪質調査報告
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.07.15】:作り話、矮小化、責任逃れ ― 鹿児島市いじめ問題第三者委員会の悪質調査報告
鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”について審議していた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」(以下、第三者委員会)が作成した調査報告書の内容に数多くの不審な点がみつかり、当該事案の保護者が「納得できない」として抗議。先月30日に予定されていた「答申」が延期された。
市教委側は保護者への説明で報告書を「凍結する」と明言したが、ハンターの記者が改めてその内容を確認したところ、暴行の実態を矮小化したり、被害者が知らない新たな加害者を登場させたりと、いじめを過少に見せかける記述がずらり――。被害者側に新たな苦痛を与えることになった報告書を検証する。
市教委の諮問を受け第三者委員会が作成したのは、31ページからなる「令和2年度鹿児島市立中学校生徒のいじめの事案に関する調査報告書」。令和2年に鹿児島市内の市立中学で起きた暴力的ないじめについて関係者から聞き取り調査し、経緯や課題をまとめたものだ。
(*下が報告書の表紙と目次)
当該事案の被害者が受けたのは、いじめというより激しい暴行。首を吊り上げた形で絞める。お姫様抱っこして3階の教室から落とそうとする。両手で頭を押させて扉に打ち付ける。高所恐怖症を知った上での肩車。同時に、「死ね」、「殺すぞ」、「きもい」、「消えろ」、「臭い」といった暴言も日常的に繰り返されていた。
では、1年かけてまとめられたいう第三者委員会の調査報告は、問題のいじめをどこまで正確に把握し、責任の所在を明確化しているのか――。被害者家族と共に報告書を検証してみたところ、被害にあった子供にも責任があったかのような記述が連続して出てくる他、架空の話(でっち上げ)まで登場するという酷さ。暴行による激しいいじめを矮小化し、学校と市教委の責任を過少に見せかけようという姿勢が露骨に示された内容となっていた。問題の箇所を列記すれば数十か所になるため、下に、報告書の記述と真相の、大きな相違点だけをまとめた。
頭を両手で押さえられ扉に連打されるという激しい暴行は教員が現認した出来事だったが、報告書では「頭を両手で持たれて壁にぶつけられる」。暴行の激しさは、まるで伝わってこない。
首を持たれ吊り下げられるという被害は、「首に手を回されそのまま持ち上げられる」と、状況がよく分からない形にされている。
明らかに暴力行為を矮小化したと思われるのは、加害者が被害者をお姫様抱っこして運び、膝から上の身体を3階の窓から外に出して「落とすぞ」と脅した場面の記述。殺人事件に発展しかねなかった暴行は、「抱き上げられて窓の近くまで連れて行かされて落とすぞと脅される」と簡略化されていた。第三者委員会が『お姫様だっこ』や『3階の窓の手すり部分に膝の裏をかけられ、上体を外に押し出された』という肝心な部分を削ったのは、「暴行を軽くみせよう」という意図があってのことだろう。
いじめについて聞かれた被害者が「楽しくありません、嫌です」と明確に答えていたにもかかわらず、調査結果は「楽しかったとは答えずに楽しくなかったような態度を示した」――。被害者について、何度も「ニコニコ」していたという記述が出てきており、いじめが放置された責任の一端を被害者自身に押し付けた格好だ。
事実関係の確認もせずにこんな報告書をまとめる大人たちが、実はいじめを助長している。第二の加害者と言っても過言ではあるまい。
学校側が最初に暴行現場を現認したのは、令和2年9月3日だ。この時は、被害者が加害者から頭を両手で持たれて、10回ほど教室のドアにぶつけられている。発見したのは、そのときに通りかかった隣のクラスの教員だったが、事情を聞いた担任も含めて、学校側は何故かこの事案を「いじめ」と捉えていなかった。
同月4日以後、①頭を両手で持たれて扉にぶつけられる ②後ろから首に手を回されそのまま持ち上げられる ③抱き上げられて窓の近くまで連れていかれて落とすぞと脅される ④Aが高い所が苦手なことを知りながら肩車をされる ⑤殺すぞ、死ね、きもい等の暴言を吐かれるといった暴力行為は続いたが、学校側が「いじめ」として認識したのは、同年10月7日に①から⑤までの全ての暴力行為を受けた被害者が実情を親に訴えた後だった。その日のことを、報告書はこう記す。
令和2年10月7日、AはBから、前記1から5までの全ての行為を受けた。それまで、AはBからそれらの行為をされても泣いたりすることはなくニコニコしているときもあったが、その日は、Bから、頭を扉にぶつけられている最中に涙を流した。Aが涙を流した後も、Bに泣き虫などと言われ、Bからの行為が続いた。
ここに「泣いたりすることはなくニコニコしているときもあった」と入れたのは、いかにも作為的。“ニコニコしていたから、いじめだと思わなかった”という、学校や市教委の「言い訳=本音」につながるものだ。
まず報告書は、「重大事態の判断」の中で次のように述べる。
本事案の経緯や、Aの保護者から学校に提出された診断書の写しの内容からすると、Aは、令和2年9月3日以降のBのいじめ行為により、頚部絞扼による眼底出血、頭痛、頚部痛の発症、およびPTSD・自律神経失調症が悪化したと認められる。
したがって、学校が、Aの保護者からAに関する診断書の写しの提供を受けた同年12月15日頃には、「いじめにより」「学校に在籍する児童等」であるAの「心身」に「重大な被害が生じた疑い」があった(「重大事態」)と認められる(法28条1項1号)。
「教育委員会への報告について」では、
学校は、令和2年10月7日・8日にAに対するいじめがあったことを把握したのであるから、この時点で速やかに、教育委員会へ報告すべきであったが(法23条2項参照)、報告しなかった。このことにより、教育委員会による支援が迅速になされず、事態の更なる悪化につながったことを、学校は再認識すべきである。
9月3日に初めて暴行現場を現認し、10月7日に事態悪化を把握していた学校側が、市教委に本事案の第一報を入れたのは、それから2か月も経った同年12月2日なのだという。以下、報告書の記述である。
学校が令和2年12月2日に本事案について教育委員会に第一報を入れて以降、学校と教育委員会は本事案への対応のため連携を図っていた。同月15 日に保護者から学校に提出された診断書の写しが、 どの時点で教育委員会に提出されたか時期については明確に特定できないものの、学校が作成した令和3年6月14日付け「令和2年度 2学年男子いじめ事案の状況」と題する文書において、学校はそれまでの経緯を、令和2年12月23日に教育委員会へ報告した旨が記載されていることから、遅くともその頃までには、教育委員会も、AがBのいじめ行為により眼底出血やむち打ちを発症するに至ったことを把握した。
つまり、教員が9月3日に暴行の現場を現認しておきながら、その日に「事故」としての報告がなされなかったことによって暴行が過激化。学校側は10月7日に事態の悪化を知りながら市教委への報告を怠り、2か月を経た12月2日になって報告を受けた市教委も、「いじめの隠蔽」についてのハンターの報道が始まった昨年6月まで、「重大事態」の認定を行なわなかったということ。「いじめ」を認めようとしない鹿児島市教委育界の現状が、被害を拡大させたのは確かだ。
報告書についてはさらに検証を続けるが、暴行を受けた被害者の保護者は、「現段階での感想です」とした上で次のように話している。
先月30日に答申するとの連絡がありましたので、説明を受けるため、急遽、鹿児島に帰りました。空港に着いた時「決戦の日が来た」と思ったとたんに、大粒の涙が溢れて来ました。
当日の朝、「気を付けてね。いじめのことで何回も往復させてごめんね」と、子供から謝罪の言葉がありました。『謝る必要などまったくない子供に、謝らせるような大人たちが許せない!』と改めて感じました。その大人たちに謝らせる結果が出ると思って市教委に行き、報告書を手にし、私の目に入って来た文字は“誰のことを調査した報告書だ?”と首をひねらざるを得ない内容でした。
いじめ重大事態を11件抱えているという第三者委員会の調査報告第1号は、事実無根のことが多々あり、正確に記録されていたはずの時系列や、私の意見書をほとんど無視した内容でした。
調査委員には、弁護士・臨床心理士・精神科医・警察OBと専門的な方々が配置されているにも関わらず、学校・市教委の杜撰な対応を容認するような内容の報告書だったといっても過言ではありませんでした。また、被害者のイメージを作り上げ、加害者を過小評価するような内容、いじめの内容についても著しく省略されていました。
報告書をまとめた調査委が、文科省が策定したガイドライン(「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」)に定められた「いじめの事実の全容解明、当該いじめの事案への対処及び同種の事案の再発防止が目的であることを認識すること」を完全に無視した証拠です。
うちの子供が受けたいじめは、激しい暴行を伴う犯罪行為であり、「保護者が重大事態として調査をしてください」と求めなくても、ただちに警察と連携し、重大事態としての調査を始めなければならなかったケースです。しかし先日の調査結果には、「警察と連携しなかったことについては問題ない」、「学校・市教委は、重大事態に対する認識・対処に問題があった」と記されていました。
当時、うちの子供が通っていた中学校の校長先生はと教頭先生は、教育委員会から来られた方々でした。いわば学校に指導する立場だった方々です。その先生たちが『認識不足や対処に問題があった』(報告書の記述)と指摘されていることには、驚きを禁じえません。今後、どのような責任をとられるのか、あるいは「処分」があるのか、注視していきたいと思っています。
報告書には事実無根の内容が多く、公平な立場である第三者委員会が、学校・市教委を上回るほど信用できない組織だと感じる報告書でした。
昨年から鹿児島市内で起きた複数のいじめについて報じてきたが、はっきりしたのは、いじめを矮小化し(あるいは「なかったこと」にし)学校や教育委員会の責任をうやむやにしようとする鹿児島教育界の歪んだ姿勢だ。この報告書は、その証拠とも言えるだろう。いじめ事件の矮小化や責任逃れをするために、教育委員会の役人や教員が手を染めるのは「隠蔽」。次稿で、鹿児島市教育委員会が行ってきた「隠蔽」の実例について、改めて報じる。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・鹿児島市内の公立校で起きた“いじめの重大事態”】 2022年07月15日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【茨城大】:「重大事態」のいじめ未報告の教育学部付属小の校長が「一身上の都合」で辞任
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:」【茨城大】:「重大事態」のいじめ未報告の教育学部付属小の校長
茨城大教育学部付属小が「重大事態」と認定したいじめに関する文部科学省への報告を1年以上放置していた問題を巡り、付属小の渡部玲二郎校長が4月末付で辞任していたことが2日、大学への取材で分かった。法律で義務付けられた報告を怠っていたのが判明後「一身上の都合」を理由に辞任を申し出たという。
大学は渡部氏の辞任について「一連の問題もあり、子どもたちにとって最善の状況を考え、受け入れた」と説明。これを受け、1日から付属中の毛利靖校長が付属小校長を兼務している。
いじめ防止対策推進法は、自殺や長期欠席など深刻な被害が生じるいじめを重大事態と定義。国立大付属校には、文科省への報告を求めている。
いじめの被害者側代理人などによると、同級生からいじわるを言われるなどした女児が、小学4年だった2021年ごろ不登校になった。付属小が21年11月に重大事態と認めたものの、文科省へ報告したのは今年2月だった。(共同)
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・茨城大教育学部付属小が「重大事態」と認定したいじめに関する文部科学省への報告を1年以上放置していた問題】 2023年05月02日 15:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説②》:国立大付属小のいじめ 誠実さ欠いた対応の遅れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:国立大付属小のいじめ 誠実さ欠いた対応の遅れ
いじめの被害者に寄り添うという基本姿勢を欠いていたと言わざるを得ない。
国立の茨城大教育学部付属小学校で2年前、重大ないじめがあったにもかかわらず、最近まで文部科学省への報告を怠っていた。
当時4年生の女児が、同級生から悪口を言われたことなどが原因で不登校となった。いじめ防止対策推進法で定める「重大事態」に当たり、本来は速やかに報告しなければならない事案だ。
茨城大の太田寛行学長は「付属小と教育学部の認識が不足していた」とのコメントを公表した。文科省が毎年実施しているいじめの件数調査に回答しており、改めて報告する必要はないと思い込んでいたという。
目に余るのは、被害者側への不誠実な対応だ。
女児の母親は今年初め、付属小校長らと面談した際、半年以上前に報告済みと伝えられた。だが、文科省に記録を開示請求したところ、事実でないことが判明した。
重大事態が発生した場合、第三者で構成する組織などによる調査が、法律や文科省の指針で義務付けられている。にもかかわらず、第三者調査を求めた母親に対して、学校側は文書で「必要は無いと判断した」と拒否した。
母親が先月、教育学部の副学部長らと面談した際には、重ねて解明を促した同席の弁護士に「どれだけ調査したら気が済むんだ」との言葉が浴びせられた。
現場の不適切な対応に加え、付属小を抱える大学のガバナンス不全も深刻だ。
報告や調査を見送った判断はどのようにして下されたのか。学長らはなぜ指導できなかったのか。第三者調査で詳しい経緯を明らかにすべきだ。
いじめ防止対策推進法の成立から6月で10年となる。だが、学校や教育委員会が問題に真摯(しんし)に向き合わず、被害を受けた子どもや保護者を一層傷つけるケースがいまだに後を絶たない。
【厚労省】:【解説】宗教虐待、児相保護・警察告発も躊躇なく―子ども・若者に届け!厚労省ガイドライン7つのポイント
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【厚労省】:【解説】宗教虐待、児相保護・警察告発も躊躇なく―子ども・若者に届け!厚労省ガイドライン7つのポイント
旧統一教会、エホバの証人を中心としたカルト宗教2世の当事者が求めてきた、宗教虐待について、厚生労働省のガイドライン(宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A)が12月27日に通知されました。
この記事では、厚生労働省ガイドラインの要点を解説していきます。
<picture></picture>団作さん(宗教2世当事者)の名刺の裏より ※ご本人の承諾を得て掲載しております。
厚生労働省ガイドラインの概要は以下の図にまとめられています(概要版,p.2)。
前提として、保護者(里親を含む)→子ども・若者への虐待認定の基準が示されています。
画期的なのは、殴る蹴る、食事をさせない、子どもの世話をしない等以外の、児童虐待にあたるかどうか、これまで判断基準がなかった行為についても、児童虐待と位置付けられたことです。
厚生労働省では画像行為が明らかな児童虐待としてガイドラインに位置付けられました。
私が大きく7つのポイントで、ガイドラインの主な内容を、なるべくわかりやすい言葉で整理していきます。
できるだけ子ども・若者にも伝わるようにという考えからです。
厚労省ガイドラインには「児童に対して宗教等行為を強制することは心理虐待に該当」とはっきり述べられています。
たとえば宗教活動を嫌がる子どもに対し、親や家族が暴力や暴言、無理やり連れだすなどの行為もですが、無視や嫌がらせなどで宗教活動への参加を強制することなども児童虐待となります。
暴力や断食、性虐待など以外にも、子どもに言動や態度で恐怖や不安、心理的圧迫を与えることが分かっている宗教行事に、保護者が子どもを参加させることも虐待になります。
また保護者自身が宗教活動や行事で、子どもの衣食住の世話をしない、勝手に家に置いて出かける場合も、虐待(ネグレクト)です。
・児童を無視する・嫌がらせをする等拒否的な態度を、日ごろから家族がすることにより、宗教活動等への参加を強制すること(心理的虐待又はネグレクト)
・宗教行事で長時間、同じ姿勢をさせたり、同じ動作(たとえば五体投地など)を繰り返させること(身体的虐待)
・深夜まで宗教活動等への参加を強制する行為(ネグレクト)
・児童本人が宗教を信仰していないにもかかわらず信仰してないのに信仰していると言わせる行為(心理的虐待)
・児童本人の意思に反して、他人に信仰する宗教等を言わせる行為(心理的虐待)
・特定の宗教を信仰していること衣服やアクセサリー(たとえば数珠やペンダント等)を身につけることを強制する行為(心理的虐待)
・宗教の布教活動に参加させるために、脅迫又は暴行を用いた場合(刑法の強要罪に該当する可能性)
・「~をしなければ/すれば地獄に落ちる」、「滅ぼされる」などの言葉や恐怖をあおる映像・資料を用いて児童をおどすこと(心理的虐待又はネグレクト)
・恐怖のすりこみを行うこと(心理的虐待又はネグレクト)
これらのことを、子どもの交友・恋愛や進路など、自由意思に基づく自己決定をブロックするために親が行った場合にも、やはり虐待となります。
ここで、普通の大人なら「鬼が来る」などで子どもをおどかしたこと(おどかされたこと)があるけれど、あれは虐待なのでは、と心配になる方もおられるかもしれません。
そのような一時的な行為ではなく、もっと根深い恐怖を、家族や教団で繰り返し教え込む実態が当事者から厚労省に伝えられ、それに対応しているのです。
「この現実の世の中が、まもなく滅びて消えて、無くなる」と絵や講義で繰り返し教え込まれたり、学校の先生も教室のみんなも、近所の人もスーパーの人も、明日にでも「死ぬ」と何度も教えられる。
世の中の仕組み全てが明日にでも神により崩壊させられる、など、極端な価値観にもとづく恐怖や不安を、カルト教団が子どもに刷り込む実態があります。
このように「現実社会の破滅を繰り返しイメージさせ」子どもたちを不安や恐怖の中に置き続けることは、明らかに虐待にあたりますね。
もちろん異なる極端な価値観の教え込みもありえます。
交友(友達を作ったり、友達と遊ぶこと)・恋愛などを一律に制限し、児童の社会性を損なうような場合(ネグレクト)に該当すると規定されました。
・交友や結婚を制限するための手段として、おどかしたり、無視するような態度を日常から示したり、同級生、友達や彼氏彼女、学校の先生などを「敵」、「サタン」などと呼んで、子どもに不安や恐怖を与える行為(心理的虐待)
厚生労働省ガイドラインでは子どもとして当たり前の娯楽(テレビやゲーム、本やコミックを読むこと等)を禁止することもネグレクトとされています。
テレビも教団作成番組ばかりを見せることなども、虐待に相当します。
ただし、たとえばゲームの時間を1日の〇時間と上限を決めてする、などの教育上の配慮等に基づく合理的な制限は、虐待ではありません。
また、子ども本人が学校行事や部活や体育(武道等)に参加することを希望しているにもかかわらず、参加を制限したり禁止することも心理的虐待又はネグレクトと明記されました。
学校関係者も、子ども本人が希望する場合には、学校行事、部活・体育(武道等)に参加することに積極的に取り組む必要があります。そうでないと児童虐待に加担してしまうことになるのです。
児童相談所や自治体の担当部局と相談しながら、学校・園も子どもが安心して参加できる条件を整える必要が出てきます。
今回、厚労省ガイドラインの後半部分が、進路や就労の禁止・制限を虐待と位置付けることに割り当てられています。
また子どものアルバイト収入の使い込みや、勝手に献金すること(恐怖や不安や、無視などによって献金させることも含む)も虐待になります。
先の国会で成立した大人の被害者救済法(法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律)により、信仰していない親や代理人がそのお金を取り戻せることも明記されています。
・進路や就労先等に関する子ども本人の自由な決定を邪魔すること(保護者の同意が必要な書類への署名や緊急連絡先の記入の拒否等を含む。)(心理的虐待又はネグレクト)
・ネグレクトなどを利用して義務教育である小学校・中学校への就学、登校、進学を困難とさせること(ネグレクト)。
・高等学校への就学・進学のときに、子ども本人が就学・進学を希望しており、信仰する宗教等の教義を理由として就学・進学を認めない行為(心理的虐待・ネグレクト)
・子どもがアルバイト等により得た収入や奨学金を取り上げ、使い込んだり勝手に献金すること(心理的虐待)
信仰や教義により子どもに中絶させない、子どもへの輸血を拒否することも虐待になります。
すでに輸血拒否については、日本輸血・細胞治療学会などによって構成される「宗教的輸血拒否に関する合同委員会報告」で必要な場合には親権を停止して子どもの治療を優先できることが2008年に公表されています。
厚生労働省ガイドラインでも、子どもへの輸血拒否など必要な治療を宗教的理由で行わせない場合にはネグレクトであると明記されました。
信仰や教義により子どもに中絶をさせない場合にも、子どもの意思が明確であることを前提として、保護者が中絶に同意しないことをネグレクトと位置付け、輸血の場合と同様に子どもが必要な処置を受けられることがガイドラインに明記されました。
親権停止等も含めて児童相談所等の関係機関が対応する方針も記載されました。
カルト教団内では性暴力が行われている実態もあるのです。
以下の事例も性的虐待として厚労省ガイドラインに明記されました。
・子どもに対し性器や性交を見せる行為や、子どもの年齢を考えない性的な表現(セックス、マスターベーション、淫乱といった文言やイラスト等)を含んだ資料・映像を見せたり、伝えること(性的虐待)
・子どもに自分の性に関する経験を話すことを強制する行為、家族に対してだけでなく教団関係者に対しても強制したり、止めないこと(性的虐待又はネグレクト)
(7) 無理やり布教活動に子どもを動員することも虐待
不安や恐怖を与えたり、無視などの拒否的な態度を使って、子どもに対して宗教の布教活動等を強いるような行為についても心理的虐待に該当することが明記されました。
厚生労働省ガイドラインには、教団関係者が保護者に指示や思い込みを与えることで、子どもに暴言・暴力や不安・恐怖を与える言動などを行った場合には、教団関係者にも、刑法犯罪が成立することから、児童相談所等が警察と連携して告発することも、躊躇(ちゅうちょ)なく=ためらいなく行うべきと明記されました。
また、明確な児童虐待でなくても、保護者の信仰を子どもが不安に思ったり、親から離れたいと思ったときは児童相談所は子どもに丁寧に寄り添うとともに、必要な場合に一時保護も行うことが明記されました。
18才以上であっても家族からの自立を希望する場合には、児童相談所が対応することが明記されました。
私の関わってきたケースでも17才くらいから児童相談所は子どもたちを切り捨てようとする場合が少なくないので、これは画期的な方針と言えます。
18歳以上の若者にも自立援助ホームという、若者期(おおむね15-20歳、22歳までの利用も可能)を対象とし、専門性の高い団体が運営するシェアハウスのような場で暮らしながら自立を支えていく制度があります。
今回のガイドラインは、宗教2世が受けてきた被害を厚生労働省の官僚が丁寧に聴きながら、迅速に完成させたものです。
加藤勝信厚生労働大臣はじめ厚生労働省の子ども・若者の被害者や宗教虐待防止への対応には、当事者も私も感謝しています。
誰よりも、カルト教団から個人特定されるリスクにさらされながら、勇気をもって宗教2世への相談支援体制の拡充を、求めてこられた当事者のみなさんに敬意を表します。
学校、児童相談所、警察、あらゆる行政機関で宗教虐待は相談すら受け付けてもらえませんでした。
その状況がようやく変わっていくのです。
そのうえで、厚生労働省ガイドラインでできなかったことを簡単にまとめておきます。
・教団や教団関係者への児童虐待に対する調査、改善勧告、ペナルティは現行児童虐待防止法ではできせん。
・教育を受けさせない、学校行事に参加させない子どもの進学の妨害などは、憲法第26条・教育基本法に定める教育を受ける義務にも違反します。
また学校教育法に定める保護者の就学義務違反に相当するケースも含まれること、子ども自身の自由意思を親がつぶしたり、子どもの自立を妨害する行為ともなり、単なる児童虐待以上の深刻な子どもの権利侵害として、より明確な法的定義や対応ガイドラインが必要ではないかということ。
・あわせて、宗教虐待の場合には、虐待対応に関わる児童相談所や学校・園の関係者もカルト教団の攻撃対象になることが懸念されます。子どもを守る関係者も、また守られる必要があります。
これらのことは、厚生労働省ガイドラインだけでは対応できません。
これらの課題を克服していくためにも、児童虐待防止法、児童福祉法やその他教育関連法制を含め、改正や法制の整備が必要になります。
厚生労働省ガイドラインが、ここまでしっかりと宗教虐待への対応方針を明記したからこそ、これらの課題が見えてきたのです。
最後に、子どもや若者のみなさん、学校などで宗教2世の当事者に関わられる大人、教員やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーなどのみなさんにお願いがあります。
これは宗教虐待では?
少しでも疑問を感じたときは、とにかくまずは相談してください。
児童相談所(電話番号、189)に連絡することをおすすめします。
このガイドラインは、全国の児童相談所にすでに通知されています。
児童相談所のみなさん、いつも子どもたちのためにありがとうございます。
お忙しいのは承知しておりますが、宗教2世の子どもたちのためにもどうかご対応をお願いいたします。
法テラスは、子ども・若者からの相談にも対応しています。
ひとりでも多くの子ども・若者や大人のみなさんの状況の改善につながりますように。
【総合的対応窓口(相談先が分からない場合)】
○ 法テラス「霊感商法等対応ダイヤル」
「旧統一教会」問題やこれと同種の問題でお悩みの方(こども本人を含む)を対象に、相経済的にお困りで法的トラブルを抱えた方は、法テラスによる無料法律相談や弁護士費用等の立替えを利用できることがある。
(電話番号:0120―005931(フリーダイヤル))
(メール問合せ)
https://www.houterasu.or.jp/houterasu_news/reikandaiyarumail.html
【金銭・法的トラブルを抱えている方への支援】
○弁護士会の子どもの人権に関する相談窓口
家庭内トラブルや児童虐待などこどもに関する問題について、多くの地域の弁護士会が電話や面接で無料の法律相談を行っている。保護者の協力なくこども本人が相談できるほか、児童相談所等からの相談も受け付けている相談窓口もあり、相談方法などの詳細は以下参照。
※相談窓口一覧
https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/other/child.html
※このほかの相談先は、厚生労働省ガイドライン(詳細版)をご確認ください。
末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。
元稿:YAHOO! JAPAN NEWS 主要ニュース 社会 【話題・厚労省・旧統一教会、エホバの証人を中心としたカルト宗教2世の当事者が求めてきた、宗教虐待問題】 2022年12月28日 22:41:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【2022年の記憶】:相次いだ虐待や置き去り「不適切保育」保育士の業務負担増に問題/専門家
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【2022年の記憶】:相次いだ虐待や置き去り「不適切保育」保育士の業務負担増に問題/専門家
2022年の記憶
◆<2022年の記憶>
子どもへの虐待や送迎バスでの置き去り。22年は保育の現場で「不適切保育」の問題が相次いで明るみに出た。事件が起こる背景や改善するためには何が必要なのか専門家に聞いた。
静岡県裾野市の保育園では、園児をカッターナイフで脅すなどの虐待をして保育士3人が暴行の疑いで逮捕された(うち2人は処分保留で釈放)。保育の現場に詳しい保育研究所の村山祐一所長(80)は「本当に悲しいことで許せないことだ」と憤りをあらわにした。その上で「事件の原因をはっきりさせていく必要がある」と話した。
村山さんは相次ぐ不適切保育について、保育士の業務負担の大きさに問題があると指摘した。事務作業や、保育士同士で保育を振り返る時間が確保しにくいといい「どこもギリギリの状態。流れに沿うだけのような保育をやらざるを得ないところまで、保育士は追い込まれている」と訴えた。
政府の配置基準では、保育士1人に対して0歳児3人、1~2歳児6人、3歳児20人、4歳児以上は30人となっている。4歳児以上の配置基準は財源不足などから74年にわたって変更がない。政府は21日、この基準は維持したまま、手厚い配置を行った保育園などに、来年度からの補助金を拡充することを決めた。村山さんは「どの保育園も国の基準以上の人数を配置している。それでも人が足りていない」と語った。その上で政府に対して「子どもを守るためにも、保育士にゆとりがある環境を考えて欲しい」と強調した。
静岡牧之原市の幼稚園で9月、当時3歳の園児が通園バスに取り残され、熱中症で死亡した。国交省は事件を受けて20日に、バスに取り付けることが義務化された安全装置のガイドラインを公表した。装置は運転手らが車両後部の解除装置を操作することで確認を促す「降車時確認式」と、カメラなどのセンサーによって子どもを検知する「自動検知式」の2つ。公益社団法人日本技術士会登録の「子どもの安全研究グループ」の瀬戸馨研究員は「装置を付けたからといって、必ずしも安全というわけではありません。見回りをする人はカメラの死角まで見る。後方のスイッチを押すことだけを目的にしてはいけない」と話した。【沢田直人】
◆2022年に明らかになった不適切保育
▼12月 新潟市の保育園で21年9月、当時の園長が園児の顔にホースで水を掛けた
▼8月 富山市の認定こども園で保育士2人が計4人の園児を逆さづりにするなどの暴行を加える。保育士2人は暴行容疑で書類送検
▼9月 静岡牧之原市の幼稚園で当時3歳の女児が通園バスに取り残され、熱中症で死亡
▼10月 千葉県松戸市の保育園で男児の頭を弁当容器でたたくなど、3人の保育士から計10件の不適切保育を市が確認
▼12月 静岡県裾野市の保育園で男児の顔を殴るなどしたとして、保育士3人が暴行容疑で逮捕された。釈放され、任意で捜査
▼12月 熊本市中央区の乳児院で19年度~21年度、職員が乳幼児に対して「顔面偏差値低いよね」などと発言していたことが発覚
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「2022年の記憶」】 2022年12月30日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.07.06】:【速報】鹿児島市いじめ問題調査委、でたらめ「調査報告」に抗議受け答申延期
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.07.06】:【速報】鹿児島市いじめ問題調査委、でたらめ「調査報告」に抗議受け答申延期
鹿児島市内の公立校で起きた「いじめの重大事態」について審議していた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」(以下、第三者委員会)が作成した調査報告書の内容に数多くの不審な点がみつかり、当該事案の保護者が「納得できない」として抗議したため、先月30日に予定されていた「答申」が延期されていたことが分かった。市教委側は保護者への説明で、報告書を「凍結する」と明言している。
市教委の諮問を受け第三者委員会が作成したのは「令和2年度鹿児島市立中学校生徒のいじめの事案に関する調査報告書」。令和2年に鹿児島市内の市立中学で起きた暴力的ないじめについて関係者から聞き取り調査し、経緯や課題をまとめたものだ。
当該事案の被害者が受けたのは、いじめというより激しい暴行。首を吊り上げた形で絞める。お姫様抱っこして3階の教室から落とそうとする。両手で頭を押させて扉に打ち付ける。高所恐怖症を知った上での肩車。同時に、「死ね」、「殺すぞ」、「きもい」、「消えろ」、「臭い」といった暴言も日常的に繰り返されていた。
1年もかけた議論の結論=報告書を作成する作業は、何度も延ばされたあげく1年が経過。その間、「いじめは解消」と虚偽の記録を残すなどして事の隠蔽を図った学校長や市教委青少年課の猿渡功課長は、謝罪すらせずに異動していた(*現在、猿渡氏は校長に就任)。
先月29日に市教委から“第三者委員会から報告書が届きました”という連絡を受けた保護者は、答申前に内容を確認するため、30日に急遽市教委へ。そこで示された報告書を読んだ保護者は、内容の酷さに震えがきたという。
「事実無根のことが多々記されており、こちらが時系列で記録していた事実や、提出した意見書等は全く目を通していないと思われる内容でした。また、被害者であるうちの子供が弱い人間であるかのようなイメージを勝手に作り上げ、加害事実を過小評価するような記述ばかりで、いじめの内容についてもかなり省略されていました。学校の責任を第一にし、市教委を第二にして庇うかのような報告書になっており、『いじめは解消』などとふざけた記録を残したことについては、一切触れられていませんでした。“いじめ防止対策推進法”の趣旨や、“いじめの重大事態に関する調査のガイドライン”が定めたルールは完全に無視されており、こんなものを結論にされたら、うちの子供は二重の被害を受けることになります。絶対に容認できないと強く抗議しました」(保護者)
調査委員には、弁護士・臨床心理士・精神科医・警察OBと専門的な知識を持っているメンバーが選任されているにも関わらず、学校・市教委の杜撰な対応を容認するかのような内容の報告書だったということ。保護者の質問や抗議に答えることができなかった第三者委員会に代わって市教委の担当課長が「いったん凍結しましょう」と引き取ったことで、当日予定されていた答申は見送られている。第三者委員会は、一体誰に寄り添ったのか?
(*この件については、次稿で詳細を報じる)
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・鹿児島・鹿児島市内の公立校で起きた「いじめの重大事態」】 2022年07月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.07.01】:置き去りにされた「いじめ被害者」|鹿児島市教育界と政治家たちへの警鐘
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.07.01】:置き去りにされた「いじめ被害者」|鹿児島市教育界と政治家たちへの警鐘
鹿児島市立伊敷中で2019年に起きた「いじめの重大事態」とみられる事案が、学校と市教委によって隠蔽されていたことを報じたのは昨年5月7日。それ以後、2例目3例目の同じようなケースについても報じ、学校や教育委員会を厳しく批判してきた。
一方、いじめの実態を隠蔽していたことを暴かれた鹿児島市教委は、『いじめ防止対策推進法』に基づき「第三者委員会」(正式名称:鹿児島市いじめ問題等調査委員会)を設置。個別の事案に関する調査を続けてきたが、1年以上経った現在も進展のないまま、だらだらと会議の回数だけを重ねている。
市教委も第三者委員会も市議会も、そして鹿児島市長も、いじめの被害を受けて苦しんできた子供やその保護者に正面から向き合おうとする姿勢すら見せていないというのが現状――。この1年間、鹿児島市は何をやってきたのか!
◇ ◇ ◇
市教委に確認したところ、第三者委員会の第1回会議は昨年7月、以後今年5月末までに52回の会議を重ねてきたという。これだけの回数を重ねながら、ハンターが最初に報じた伊敷中の事案については「重大事態」の認定さえ出ておらず、同事案の報道がきっかけとなって発覚した2例目、3例目の「重大事態」についても、調査は終わっていない。
市教委や第三者委員会が当初の3件でもたつくうち、いじめの重大事態が次から次に報告される事態に発展。市教委は現在11件の重大事態を抱えており、第三者委員会の委員は9名増員され15名体制となっている。
この間、遅々として進まぬ調査や、説明を二転三転させる市教委側の動きが信頼できないとして、1例目だった伊敷中の被害生徒の保護者が調査の継続を辞退。いじめによって多大なダメージを受けた子供や保護者が、今度は鹿児島の教育界から二次被害を受けた格好だ。
伊敷中のいじめを隠蔽した上「重大事態」を認めようとしない鹿児島市教育界に対し、強い不信感を抱いた保護者が、結論を待たずに“三くだり半”を突き付けたのは当然だろう。
先週、2例目、3例目の保護者にも話を聞いたが、いずれも「市教委や第三者委員会の説明は信用できない」「(文部科学省が策定した)『いじめの重大事態に関する調査のガイドライン』はほとんど守られておらず、もう市教委や第三者委員会と話したくない」、「こんなことなら、重大事態を申し出なければよかった」と疲れ切った様子。子供の将来を考え、勇気を出して重大事態の申し出をしたことで、かえって傷口を広げる結果を招いてしまった格好だ。3例とも、いじめた側の子供や親から正式な謝罪はなく、何のための「いじめ防止対策推進法」なのか、分からない状況となっている。
◇ ◇ ◇
2例目以降の事例を、あっさり「重大事態」と認めながら、1例目の伊敷中のケースを、いまだに「重大事態」として認めようとしない当時の校長や市教委、第三者委員会の姿勢には怒りを覚える。なぜこのような理不尽がまかり通っているのかといえば、関係者の誰かが、「あれは重大事態ではない」と主張しているからに他ならない。
令和元年に起きたいじめを隠蔽した伊敷中の当時の校長は、鹿児島県教育界のナンバー2である教育次長から同校校長に就任した寺園伸二氏。昨年、鹿児島市谷山北公民館の館長を務めていた同氏に電話取材したが、「隠蔽」についての反省は一切なく、「市教委に聞いて下さい」を繰り返す無責任な姿勢には開いた口が塞がらなかった。以下、その時の寺園元校長との一問一答を再掲しておきたい。
――以前、伊敷中の校長だったんですよね?そのことで一点お伺いしたいことがありまして。当時令和元年のことなんですけども、いじめが、2年生のクラスでいじめがあったと。ご記憶ございますか?
寺園元校長:あー、えっとですね、それは、私が現職の頃のことですので、個人情報に関わることなので……。――いや、いじめが原因で転校した方がいらっしゃったというご記憶がありますか、という確認です。
寺園元校長:あっ、転校した子はおります。――ですよね。
寺園元校長:その、まあ、あの、あのーいろんな学校でのトラブルがあってですね、ご本人のほう、お母さん方のほうからもいじめられてるということがあって、我々も、まあ、学年上げて努力をしたところなんですけど、最終的にお母様が転校させたいということでしたので、転校してしまうことになって、我々も誠に申し訳なかったという記憶はあります。――ああ、なるほど。
寺園元校長:はい。――●●さんのことですよ。
寺園元校長:そうですね、はい。――それで?
寺園元校長:よく覚えております。――そのことは市教委の方にはご報告されてますよね。
寺園元校長:はい、当然連絡は取っておりますので。――ですね。
寺園元校長:あのー、ええっと、何回も来ていただいて、実際に。――はい?
寺園元校長:あのー、学級に来ていないということだったりするものですから、ほいで、担任とのこととかもあったりだったから、あの、市教委方からも来ていただいて、あのー、まあ、見ていただいて、様子もですね、でー、連携して取り組んで来たところなんですけど。――市教委と?
寺園元校長:はい、そうです、そうです。力及ばず……。――じゃあ市教委は全部知っていたわけですね。
寺園元校長:力及ばず……。――力及ばず?
寺園元校長:私どもとしても……。――その頃のことですが、オアシス学級というのがありましたよね?
寺園元校長:そうです、はい。――今はないそうですが、あなたが校長のときに無くされたんですか?
寺園元校長:いや、自分が校長の時まではありましたが、その後は、もう、これはですね、あの、定数を貰って来ているのではなくて、我々の学校独自でそういう子供達、あのー、不登校の子供達も、あのやっぱり増えてきている状況なので、みんなの時間を少しずつ割いて、ほいで、そういう学級を学校として、あのー、みんなのまあ、教員の、申し訳ないけど、その働き方改革もあるんだけど。――え、何ですか?教員の?
寺園元校長:働き方改革のこともあるけれども、まあみんなの善意で少しずつ時間を取ってそうやって、えー、ひとつそういう居場所を学校の中に……。――居場所ですね。要するにそこで自習してる分にはいじめも起こらないということ?
寺園元校長:うん。――なるほど。
寺園元校長:我々も、私もしょっちゅう顔を出してましたんで。――働き方改革と何の関係があるんですかね?
寺園元校長:いや、定数が来れば、そこに人を常駐、教員を常駐できますけど、それができない以上はみんなはそれぞれの授業があって仕事があるんだけども、それにプラスそこに顔を出すっていうような作業が出てきますので。――なるほど。で、この●●さんのお嬢さんのいらっしゃったクラスの先生については、ご記憶ございます?結構いろいろ新聞に出たり、有名な先生だったとって聞いておりますが?
寺園元校長:はい、はい、そうですよ。――その先生のクラスで、当時オアシス教室に通っていたお子さんが3人いるそうなんですけど。他に5人不登校だったと。8人いない日が結構あったと。
寺園元校長:あー、そんな日もあったかもしれんですね。――かもしれない?
寺園元校長:はい。元々の、あの、毎日っていうことは、常時っていうことはないでしょうけど、元々小学校のときから不登校やった子とかもおりますのでね。――それは半ば学級崩壊に近い状態と私どもは判断してるんですけども。
寺園元校長:私は決してそうだとは思っておりません。――それは、どうしてですか?
寺園元校長:学級崩壊って言うのは、もう学級がとにかく荒れて、秩序がない状態っていうことであれば、そういうのには全く当らないですね。そのクラスは、そのクラスの残っている子供たちは、もう一生懸命授業も受けて、まあ、学級のこともやっておりましたので、ですね。私はそんな、あのクラスを学級崩壊って言うのは、他の学級の子達に失礼だと思います。とても一生懸命やっておりましたので。――失礼?その、8人の子供達がいないクラスはまともなんですか?小学校から不登校だから、中学校では関係ないとおっしゃるわけ?
寺園元校長:いや、そうではないですけど。――でも、そういう言い方されましたよね、今。
寺園元校長:まあ、そこまでにしましょうか。個人情報だから、――いやいや、私はいじめを受けた当事者である●●さんにも話を聞いた上であなたに取材してる。話されても問題ない。あなたは、答える義務があるでしょ。
寺園元校長:もとの話は市教委に聞いてください。――最後に一点だけおおうかがいします。さっき、報告を上げたとおっしゃいましたよね?
寺園元校長:はい。――これはあなたの責任で報告を上げた?
寺園元校長:連携を取っているということを言っております。――いやいや、報告を上げたとおっしゃったから。
寺園元校長:その報告はなんの報告ですか?――いじめの報告ですよ。ちゃんと書いて出さないといけないでしょう?丸付けたりして。
寺園元校長:そういう連携を取ってやっておりますので。――大変申し訳ないけど、市教委にも確認取っている話を聞いているだけです。
寺園元校長:ああ、じゃあもう市教委と話をしていただければ結構です。――「環境を変え新たな気持ちで頑張っている」と書いておられる。この●●さんのことをですよ。「環境を変え新たな気持ちで頑張っている」と。これは転校したからこうなったっていうことですよね?
寺園元校長:もうあとは、個人情報のことなので、お話することはありません。――いやいやいや、個人情報ではないです。あなたの責任のこと。あなたは、いじめの状況のところで「いじめは解消している」に丸を付けられてますけど、これはどうしてですか?
寺園元校長:……。あとは、教育委員会とお話してください。――「他校への転学」っていうのに丸を付けないで。あなたは隠蔽しましたね?
寺園元校長:……。――隠蔽でしょう?
寺園元校長:……。違います。――保身ですか、あなたの。いろいろおっしゃっているけれど、保身じゃないですか?
寺園元校長:いやいや。――いじめを隠蔽したじゃないですか。なんで県教委に報告が上がってないんですか?県教委に聞いたら、重大事案だって言ってますよ。あなた県教委で次長までされたんでしょう?個人情報だからって逃げるんですか?あなたは現在も公務員だぞ。
寺園元校長:あなたはなぜそんな……。――新型コロナウイルスの間だから、遠慮して電話でお話してますけどもね。教育者であるならば、一人の少女がですね……。
寺園元校長:おたくはどうしてそんな言い方をされるんですか?――だってそうでしょ。●●さんは、いじめを受けて医療機関に通って、治療まで当時受けてらっしゃいますよ。何度もです。あなた、そのこともご存じだったんでしょ。さっきから聞いていると、他人事みたいですよね。自分たちは頑張った。働き方改革。学級崩壊じゃない。しまいに都合が悪くなると、市教委に聞いてくれ、個人情報だ――。あなた本当に教育者ですか?申し訳なかったっていうのは口だけですか?
寺園元校長:……。――あなたが責任持って上げた報告書には、なんで転校って書いてないんですか?書いてないですよね?「他校への転学」としなければいけないところを、「いじめが解消している」となっていますよ。この報告は嘘でしょ?虚偽でしょ?言い分がありますか、あなた。
園元校長:……。――普通に話してたつもりですけど、あなたのおっしゃっていることはただの保身ですよね。
寺園元校長:あなたは、それで普通に話しているつもりなんですか?――そうですよ。普通に話しているつもりですよ。あなた、不誠実ですよ。
寺園元校長:あなたは、私に恫喝しているようにしか聞こえないんですけどね。――何が恫喝ですか。あなたは大変不誠実ですよ。不誠実じゃないですか。だって途中から都合が悪くなるとね、個人情報だから市教委と話してくださいと。
寺園元校長:じゃあ、まあ、そうしてください。――いや、あなたがそう言ったからですよ。「じゃあ」じゃないんですよ。またそういうこと言う。卑怯ですね、あなた。
寺園元校長:じゃあ、よろしくお願いします。――なにもよろしくお願いされませんよ。
寺園元校長:あと、教育委員会とお話していただければ結構ですから。――私は何もあなたによろしくお願いされる覚えはありませんよ。追及しているんですよ、あなたを。
寺園元校長:どうぞ。――よくそれであなたは公務員が務まるね。
寺園元校長:私の方も、仕事があるんで。うん。よろしくお願いしますね。教育委員会と話をしてください。
◇ ◇ ◇
伊敷中のいじめが発覚したのをきっかけに、相次いで判明した2例目と3例目のいじめ。学校や市教委は、いずれのケースでも「いじめは解消」という虚偽の記録を残し、“終わった話”として処理していた。極めて悪質な隠蔽だが、伊敷中の元校長も含めて、責任を取った大人は一人もいない。
この際、鹿児島市議会の議員たちや市長にも、一言申し上げておきたい。いじめの被害を受けた子供たちに寄り添い、問題解決に向けて動いてきた政治家が、いったい何人いたのか?市議会でこの問題を取り上げてきたのは、一握りの市議だけ。重大事態の最終報告を受ける立場の下鶴隆央市長にも積極的な姿勢は見られなかった。
市教委や第三者委員会が機能しない中、政治家として、いじめの被害を受け「転校」を余儀なくされた子供たちに声をかけてやろうとは思わなかったのか――。苦しんだ子供たちや保護者に手を差し伸べようともしないのなら、選挙の時だけ「子育て」だの「少子化」だのと叫ばないことだ。口だけの政治家を、ハンターは容認しない。(中願寺純隆)
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・鹿児島・鹿児島市内の公立校で起きた「いじめの重大事態」】 2022年07月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【HUNTER2022.03.04】:腐臭漂う鹿児島教育界|無視される「いじめ防止対策推進法」や「重大事態ガイドライン」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.03.04】:腐臭漂う鹿児島教育界|無視される「いじめ防止対策推進法」や「重大事態ガイドライン」
令和元年に鹿児島市立伊敷中学校で起きた“いじめ”が、いじめ防止対策推進法が定めた「重大事態」にあたるかどうかを検証していた鹿児島市教育委員会の第三者委員会(正式名称:鹿児島市いじめ問題等調査委員会)に、いじめを受けていた生徒の保護者が検証辞退を申し入れた。同法の規定に従って設置された第三者委員会が被害者側から“三くだり半”を突き付けられるのは異例。いじめを受けた子供ではなく、いじめを隠蔽した元伊敷中校長や教師、隠蔽に加担した市教委幹部を守ろうとする鹿児島教育界の腐敗ぶりに、嫌気がさした結果だろう。
「いじめの重大事態」と認められ、市教委第三者委員会で検証作業が進められている案件は9件あるというが、他のいじめ事案の検証過程でも、被害を受けた子供やその保護者を落胆させるような動きが目立っている。
危険な“いじめ”にあって子供が大変なけがを負い、県外の学校への転向を余儀なくされた事案の保護者は、最近になって信じられない電話を受けた。
電話をかけてきたのは、加害者側の弁護士を名乗る人物。加害者の母親が「まいっている」として、文書を送りたいから「住所を教えろ」という申し出だった。
電話を受けた母親の子供が受けたいじめは、上半身を力いっぱい揺すられ、頚椎に大変なダメージを負うという「暴行被害」。暴行現場を教員が見ていたことで発覚したが、刑事事件が妥当なケースであり、恐怖にかられた被害者とその家族は県外の学校に転校する道を選んでいた。
伊敷中のいじめが隠蔽されていたことを報じたハンターの記事がきっかけとなり、被害者家族が「重大事態ではなかったのか」と申し出たため第三者委員会での検証対象となったが、結論がいつ出るのか定かではないという。
「いじめた子供が素直に謝ってくれれば、それだけでうちの子供は救われる」――そう考えていた被害者の保護者は、いじめた元クラスメートとその親に謝罪を求めたが、先方の母親は事実上の拒否。加害生徒は「会って謝りたい」と打ちあけてくれたというが、いじめや暴行を認めようとしない親の態度に呆れていたところに、前述した「弁護士」からの電話だった。
暴行被害にあって県外への避難を余儀なくされた家庭に、加害者側が「住所を教えろ」という非常識。電話してきたのが本当に弁護士だったのかどうか判然としないが、被害者側の心情を無視した動きは到底理解できない。
弁護士を名乗る人物からの電話を受けた被害者の保護者は、ショックを受けて寝込んだといい、その後も恐怖におびえる毎日を過ごしている。
「なぜ被害者である私たちが、加害者の弁護士に、隠している住所を教えなければならないんでしょうか。うちの子供が暴行を受けている現場は、学校の先生が見ているんです。いじめは争いようのない事実で、重大事態として認定もされています。“謝ってもらいたい”と伝えたことで、『こっちの方がまいっている』などと言われるなんて信じられない。弁護士さんというのは、依頼を受ければ被害者の心情など無視して相手を威嚇するものなのでしょうか?」
別のいじめの被害者家族であるAさんは、第三者委員会のメンバーから、耳を疑うような言葉を聞かされている。第三者委の検討対象となった自分の子供に対するいじめについてやり取りしていた際のこと、ある委員がAさんに申し向けたのは「病院の診断書が出ても、(あなたの子供さんのケースは)重大事態にはならない」という無情な一言。聞かされたAさんは、息が詰まりそうになったという。
何のための検証なのか?どのようなケースなら「重大事態」になるのか?呆れたAさんの問いかけを受けた委員が発したのは、「例えば、転校したとか」という答えだった。
では、被害生徒が転校を余儀なくされた令和元年に起きた伊敷中のいじめは、何か月も経っているのに、なぜ「重大事態」になっていないのか?伊敷中の被害者家族と交流を持つようになっていたAさんが、市教委だけでなく、第三者委員会にも強い不信感を抱くようになったのは言うまでもない。
いじめにあった子供たちの保護者が一様に訴えているのは、文部科学省が平成29年に策定した「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)が守られていないということ。ガイドラインは、いじめ防止対策推進法の施行後も、学校や教育委員会が、いじめの重大事態への不適切な対応を繰り返していることを受けて作成されたものだ。いじめを受けた子供に学校や教育委員会が二次被害を与えたり、保護者等に対して大きな不信を与えたりした事案が多発したという背景がある。
そのガイドラインは、いじめの重大事態に関する『学校の設置者及び学校の基本的姿勢』について、次のように規定している。
・学校の設置者及び学校は、いじめを受けた児童生徒やその保護者(以下「被害児童生徒・保護者」という。)のいじめの事実関係を明らかにしたい、何があったのかを知りたいという切実な思いを理解し、対応に当たること。
・学校の設置者及び学校として、自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し、被害児童生徒・保護者に対して調査の結果について適切に説明を行うこと。
・学校の設置者及び学校は、詳細な調査を行わなければ、事案の全容は分からないということを第一に認識し、軽々に「いじめはなかった」、「学校に責任はない」という判断をしないこと。状況を把握できていない中で断片的な情報を発信すると、それが一人歩きしてしまうことに注意すること。また、被害者である児童生徒やその家庭に問題があったと発言するなど、被害児童生徒・保護者の心情を害することは厳に慎むこと。
これまでの鹿児島市教委や第三者委員会の対応を見る限り、ガイドラインは無視されているも同然だ。例えば伊敷中のケースをはじめハンターが報じてきた3件のいじめは、いずれもいじめが解決せず「転校」「転学」を余儀なくされたという事例だったが、市教委に残されていた「いじめの実態報告」では、どの事案も「いじめが解消」したことになっていた。
虚偽報告だったことは明らかなのに、市教委や学校側は、いじめの被害者や保護者に説明や謝罪を行っていない。「自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し、被害児童生徒・保護者に対して調査の結果について適切に説明を行うこと」という項目は、これっぽっちも実践されていないのだ。「被害児童生徒・保護者の心情を害すること」甚だしい、というのが現状だろう。
次に『重大事態の定義』については、こう記されている。
・いじめの重大事態の定義は「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」、「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」とされている。改めて、重大事態は、事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを認識すること。
・重大事態については、いじめが早期に解決しなかったことにより、被害が深刻化した結果であるケースが多い。したがって、「疑い」が生じてもなお、学校が速やかに対応しなければ、いじめの行為がより一層エスカレートし、被害が更に深刻化する可能性がある。最悪の場合、取り返しのつかない事態に発展することも想定されるため、学校の設置者及び学校は、重大事態への対応の重要性を改めて認識すること。
だが、いじめの発生と同時に重大事態を申し立てたケースでさえも、「いじめは解消」として処理され、報道によって問題が表面化してから市教委があわてて第三者委員会を設置したというのが実情だ。「『疑い』が生じてもなお、学校が速やかに対応しなければ、いじめの行為がより一層エスカレートし、被害が更に深刻化」したのが、転校・転学を余儀なくされた3件のケースだった。
重ねて述べるが、鹿児島市では「いじめの重大事態に関する調査のガイドライン」は一切守られておらず、いじめの被害にあった子供や保護者ではなく、保身に走った学校側や市教委の都合に合わせた調査しか行われていない。その象徴が、伊敷中のいじめ事案なのである。
最初にいじめの隠ぺいが発覚した伊敷中は、鹿児島大学教育学部の代用附属という格式の高い学校。さらに、“いじめの隠蔽”を行ったとみられる令和元年当時の寺園伸二校長は県教委の次長を務めていた人物で、元担任も鹿児島教育界のエリート教師だという。同校のいじめが、隠蔽発覚から9か月経ったいまも「重大事態」して認められていないのは、伊敷中の関係者と隠蔽に加担した市教委が「重大事態」の認定に抵抗しているからに他なるまい。鹿児島の教育界は、いじめ防止対策推進法やガイドラインが、子供のために制定されたのだということを再認識すべきだ。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・令和元年に鹿児島市立伊敷中学校で起きた“いじめ”が、いじめ防止対策推進法が定めた「重大事態」にあたるかどうかを検証していた鹿児島市教育委員会の第三者委員会】 2022年03月04日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【山口県】:大島商船高専いじめ防止対策の取り組みを報告「少しずつだが学校も変わってきている」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【山口県】:大島商船高専いじめ防止対策の取り組みを報告「少しずつだが学校も変わってきている」
山口県の大島商船高専で2016年に男子学生(当時15)=が自殺し、再調査委員会が同級生のいじめが原因とした問題で、学生の命日となる21日、学校側がいじめ防止対策の取り組みについて学生の母親に報告した。
母親と校長らが学内で追悼のため献花。その後母親は記者会見で「少しずつだが学校も変わってきている。そう息子に報告した」と涙ながらに話した。
男子学生は入学から1カ月半後の16年5月21日未明ごろ、校舎から飛び降りた。6年後の命日となった21日午後、現場近くで母親が花を手向け、学校関係者らと黙とうした。
古荘雅生校長ら学校側は同日、別に会見を開き、加害者と認定された9人の指導状況などを報告。「反省の意がある者もいれば、自分のしたことがどういうことか分かっていない者もいる」と説明し、学校側は加害者が遺族に謝罪するよう電話などで連絡を続けるとした。加害者の大半は昨年9月に卒業し、母親が処分など対応を求めていた。
学校側は他に、いじめの再発防止のため学生や保護者向けに定期的にアンケートを実施し、教職員の研修を行ったと説明。古荘校長は「今も学内でいじめがないとは言えない。現状を把握し対応することを大切にしたい」と述べた。
再調査委は昨年9月、無料通信アプリLINE(ライン)で人格を全否定する内容を送信するなど、同級生による集団的ないじめが原因で学生が自殺したと認定した。(共同)
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・山口県の大島商船高専で2016年に男子学生(当時15)=が自殺し、再調査委員会が同級生のいじめが原因とした問題】 2022年05月21日 23:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説②》:部活動指導者の暴力 教育どころか人権侵害だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:部活動指導者の暴力 教育どころか人権侵害だ
もはや教育ではなく、人権侵害と言わざるを得ない。熊本県の私立秀岳館高校サッカー部で起きた指導者の暴力問題だ。
30代の男性コーチが部員を殴ったり、蹴ったりしている動画がネット交流サービス(SNS)に投稿され、瞬く間に拡散した。別の部員がひそかに撮影したものだ。
学校が全校生徒に行ったアンケート調査によると、このコーチによる暴力は24件確認された。
さらに深刻なのは問題発覚後の対応だ。監督がミーティングで動画を投稿した部員を名指しして「加害者」と呼び、「完全な被害者は俺」と発言した。その音声がネット上に流出した。
ミーティングの後には、部員11人が並んで「迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」などと謝罪する動画が、サッカー部の公式SNSで公開された。撮影には監督が関わっていた。
動画はすぐに削除されたが、これでは監督が部員を使ってコーチの暴力をもみ消そうとしたとみられても仕方がない。指導者としてあるまじき振る舞いだ。
背景には部活動を取り巻く封建的な体質がある。同校サッカー部は2014年に全国選手権出場を果たすなど、県内屈指の強豪だ。約200人の部員がおり、寮生活を送る生徒も多い。外部の目が届きにくい環境の中で、激しいレギュラー争いが行われている。
約20年にわたって部を率いる監督は大きな力を持ち、「校長補佐」の肩書で教頭と同格の立場にある。部員に対する高圧的な態度は、傲慢さの表れではないか。
部員たちは校内で助けを求めるすべがなく、SNSで被害を訴えるしかないほど追い込まれていたのだろう。暴力のまん延を防げず、生徒を守れなかった学校の責任は極めて重い。
暴力や体罰は同校だけの問題ではない。勝利至上主義やスポーツ偏重の傾向が、部活動をゆがめている。
スポーツ指導の鉄則は信頼関係を築くことにある。選手の目標や考えを尊重しながら、丁寧に助言していく姿勢が重要だ。
部活動の全国的な改革が検討され、指導者のあり方も問われている。学校現場には「生徒本位」を徹底する努力を改めて求めたい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年05月12日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。