1度は出馬をあきらめかけた総裁選に、5度目の挑戦をして総裁の座にのぼりつめた石破首相。国民人気が高まる背景だった「自民党内野党」の立場での発言が、首相就任後はなんとなく後退を続け、総裁選の選挙戦で口にしていた衆院解散のタイミングを筆頭に「前言撤回」「手のひら返し」との指摘を受ける対応が続いている首相。今はとにかく、足元を踏み固めて堅実な政権運営を目指したいという思いも現れているように感じた。

 一方、「座右の銘」が1つではない政治家も少なくなく、実際、石破首相も過去に別の言葉を座右の銘として紹介したことがある。

 それは、「鷙鳥不群(しちょうふぐん)」という言葉。自民党のトーク番組に出演した時には、「『寄らば大樹の陰』とか、そういうものとは反対語。群れて、わらわらやるの嫌いなんですよ、私」と語っていた。ワシやタカなどの猛禽(もうきん)類のように群れず、1羽でも生きていくという観点からの言葉とされ、「党内野党」として自民党を歩んでいた石破首相を象徴するような言葉だった。首相の公式ホームページをのぞくと、プロフィル欄には「雪中松柏」(※主義や主張を決して曲げないことの例え)というフレーズも、今も掲載されている。持論を曲げない政治家としての矜持(きょうじ)が、のぞく。

 翻って、首相の今の立場。ワシやタカに重ねた姿勢は、とりあえず「封印」しているように見えてしまう。自民党内の反発を受けても持論の郵政民営化を譲らずに、首相就任から約4年後、選挙で信を問うことまでした小泉純一郎元首相のような人もいた。ただ、総裁、首相就任からあっという間に衆院解散まで来てしまった石破首相にとっては、まずは足元を踏み固めないと前に進めない、というのも、また現実なのだろうと思う。

 首相になって確実に歩みを続けようとする中で、こだわってきた「群れない」スタイルは消えてしまうのだろうか。政治家としての石破首相の方向性を見定めるための第1歩が、10月15日公示の衆院選となる。【中山知子】<iframe id="google_ads_iframe_/16287682/pc_ns_side-3rd_02_300x250_0" tabindex="0" title="3rd party ad content" name="google_ads_iframe_/16287682/pc_ns_side-3rd_02_300x250_0" width="1" height="1" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" aria-label="Advertisement" data-load-complete="true" data-google-container-id="7"></iframe>