路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

《月議・02.03》:性はグラデーション=下桐実雅子

2025-02-03 02:07:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《月議・02.03》:性はグラデーション=下桐実雅子

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《月議・02.03》:性はグラデーション=下桐実雅子

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 米大統領に返り咲いたトランプさんは「性別は男性と女性の二つのみ」で、これを政府の公式方針にすると宣言した。

 大統領令には、受胎時に「大きな生殖細胞を作る性別に属する人」が女性、「小さな生殖細胞を作る性別に属する人」が男性だとある。卵子と精子のどちらを作るかで決まるという考えだ。

 確かに生物学的には、卵巣を持つ個体がメス、精巣を持つ個体がオスとなる。体のつくりなどに違い(性差)があるのも事実だ。でも「科学の研究で分かってきたのは、性は男と女の『二項対立』ではなく、もっと多様で複雑だということです」と、国立成育医療研究センター研究所副所長の深見真紀さんは言う。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【月議】  2025年02月03日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《24色のペン・01.06》:「第三の性」の人たちが来たら=川上珠実

2025-01-07 06:00:00 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《24色のペン・01.06》:「第三の性」の人たちが来たら=川上珠実

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.06》:「第三の性」の人たちが来たら=川上珠実

 インドの首都ニューデリーにある自宅でテレビを見ていると、外の通りから軽快なリズムを刻む太鼓の音と陽気な歌い声が聞こえてきた。

 前夜は、同じアパートに住む大家の息子の結婚式だった。式の翌日、新婚の妻が親族に伴われて、これから一緒に暮らす夫の家にやってきたのだ。にぎやかな太鼓の演奏は、妻を出迎えるための演出だ。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/05/20250105k0000m030019000p/9.webp?1" type="image/webp" />インドの首都ニューデリーで目抜き通りの交差点を歩いていたレカさん(左)とリヤ・シャルマさん=2024年12月18日午後1時47分、川上珠実撮影</picture>
インドの首都ニューデリーで目抜き通りの交差点を歩いていたレカさん(左)とリヤ・シャルマさん=2024年12月18日午後1時47分、川上珠実撮影

 私は外を眺めようとベランダに近づいた。すると、「だめ! 隠れて!」と、我が家のベビーシッターの女性が鋭い声を上げた。「ヒジュラ」と呼ばれる人たちが来ているからだという。

 ヒジュラとは、現地で男性でも女性でもない「第三の性」の人々と捉えられている。きらびやかなサリーを身にまとい、新婚の夫婦や赤ちゃんがいる家に現れては、歌って踊り、祝福を与える。生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致しないトランスジェンダーや、身体的な性が男女のどちらとも一致しないインターセックスの人などが含まれる。

 なぜ彼らを見にいってはいけないのか。ベビーシッターいわく、…

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《社説①・01.06》:戦後80年 多様化する家族 生き方尊重し合う社会に

2025-01-07 02:01:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説①・01.06》:戦後80年 多様化する家族 生き方尊重し合う社会に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.06》:戦後80年 多様化する家族 生き方尊重し合う社会に

 家族のかたちは多様化している。個人の自由な選択が尊重される社会の実現が求められる。

 結婚に関する制度が壁となり、家族として法的に認められず、不利益を被っている人たちがいる。

 婚姻前の姓のまま夫婦になりたいカップルが典型例だ。同じ姓を名乗ることが義務づけられているのは日本だけとされる。

「夫婦別姓も選べる社会へ!」と書いた幕を持ち、東京地裁に向かう原告たち=東京都千代田区で2024年6月27日午後1時54分、菅野蘭撮影
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/06/20250106ddm005070104000p/9.webp?1" type="image/webp" />共働き世帯と専業主婦世帯の推移</picture>
共働き世帯と専業主婦世帯の推移

 

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/06/20250106ddm005070105000p/9.webp?1" type="image/webp" />全世帯に占める1人暮らし世帯の割合(%)</picture>拡大
全世帯に占める1人暮らし世帯の割合(%)

同性婚を認めない現行制度の違憲性を問う訴訟の控訴審判決で東京高裁に入る原告たち=東京都千代田区で2024年10月30日午前9時29分、宮間俊樹撮影

同性婚を認めない現行制度の違憲性を問う訴訟の控訴審判決で東京高裁に入る原告たち=東京都千代田区で2024年10月30日午前9時29分、宮間俊樹撮影

 長野県の内山由香里さん(57)と小池幸夫さん(67)は、同姓か別姓かを選べる選択的夫婦別姓制度の実現を求め、活動している。 

 2人は事実婚の状態にある。内山さんは、かつて法律上の結婚をし、改姓を強いられた時のことを「不快感や喪失感を突き付けられていた」と振り返る。

 職場では旧姓を通称として使えたが、公的な書類などでは「小池」姓を求められた。慣れ親しんできた名字が、自分の名前ではなくなったと痛感した。

 ◆変わらない意識と制度

 各種世論調査では選択的夫婦別姓制度に賛成する声が多数を占める。だが、政治の動きは鈍い。法制審議会が29年前に導入を答申したが、たなざらしにされている。

 男女が一つの「家」をつくって同一の姓を名乗り、子を産み育てる。そんな家族観を日本の伝統と見なす意識が根強く残るためだ。

 人々が当たり前だと考えてきた家族像について、家族社会学が専門の落合恵美子・京都産業大教授は「近代化の中、特に戦後に形づくられたものだ」と指摘する。

 1898年に施行された明治民法で、戸主の男性が家族を統率する家制度が採用された。

 戦後、法の下の平等や個人の尊重をうたう現憲法が制定され、民法も改正された。家制度は廃止され、男女の権利は平等となったが、夫婦同姓制度は残った。

 落合教授によると、近代より前の日本は女性の就労率が高かったが、工業化が進展した近代社会になると、夫が外で稼ぎ、妻が家事や育児を担うという性別分業が生まれたという。

 高度成長期には、都市部で製造業やサービス業に従事する人が増加し、地方からの人口移動が加速した。核家族化が進み、男女の役割分担が定着した。

 しかし、その後に家族のありようは大きく変化している。

 女性たちの意識が変わり、社会進出が拡大した。背景には、地位向上を目指す世界的な運動の広まりもあった。

 バブル崩壊後は賃金が伸び悩み、家計を支えるために働かざるを得ない女性も増えた。

 1980年代までは専業主婦世帯が多かったが、2023年には夫婦共働き世帯がその約3倍となった。

 ただ、働く女性の半数以上は非正規雇用だ。家庭の切り盛りに追われ、パートタイム労働を余儀なくされる人が多い。給与が男性より低く抑えられる傾向もある。

 落合教授は、子育てや介護などの「ケア」は本来、社会も関与すべきことなのに、女性に押しつけられてきたと解説する。その重要性についての認識が社会で共有されず、「ひずみのしわ寄せを女性が被ってきた」と話す。

 ◆個人の選択を支えたい

 さまざまな制度も時代の変化に追いついていない。専業主婦がいる家庭をモデルに整えられた年金や税控除などの仕組みは、実態にそぐわなくなっている。

 「夫婦と子ども」という一般的とされてきた家族の枠組みに当てはまらない人も増えている。

 20年の世帯構成では「単身」が38%に上り、「夫婦と子ども」を上回っている。50年には44%を占めると予測される。

 急速な高齢化で、1人暮らしのお年寄りが多くなっている。生活苦や将来への不安を抱えたり、結婚を望まなかったりして、非婚を選ぶ人も少なくない。

 孤立するリスクがあり、血縁に頼らない人間関係の構築や、居場所づくりが課題となっている。

 LGBTQなど性的少数者も、新しい家族のかたちを求めて声を上げている。

 性的指向や性自認は自らの意思で変えられるものではない。人権に関わる問題である。

 同性カップルの訴えに対し、同性婚を認めない現行制度を「違憲」「違憲状態」とする司法判断が相次いでいる。

 家族のあり方は時代や社会の動きとともに変化する。さまざまな生き方が広く認められ、支えられる仕組みの構築が欠かせない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月06日  02:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【こちら特報部・01.01】:寒さと飢え…日ロ領土争いに翻弄 樺太アイヌの語り部・楢木貴美子さん「歴史をなきものとされないために」

2025-01-01 07:30:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【こちら特報部・01.01】:寒さと飢え…日ロ領土争いに翻弄 樺太アイヌの語り部・楢木貴美子さん「歴史をなきものとされないために」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特報部・01.01】:寒さと飢え…日ロ領土争いに翻弄 樺太アイヌの語り部・楢木貴美子さん「歴史をなきものとされないために」

 <新年連載・あしたの轍>①

 2011年夏、旧樺太(サハリン)。樺太庁があったユジノサハリンスク(旧豊原町)から列車で北へ7時間。車窓から楢木貴美子(76)の目に飛び込んできたのはどこまでも続く濃緑のじゅうたん。ワラビやフキといった山菜が歓迎の手招きでもするかのように優しく風に揺れていた。
伝統衣装テタラペに身を包みながら、樺太アイヌの刺しゅうの特徴について語る楢木さん=札幌市内

伝統衣装テタラペに身を包みながら、樺太アイヌの刺しゅうの特徴について語る楢木さん=札幌市内

 腰を折ってツルコケモモの実を採る人の姿が生前の母に重なり、「戦争がなければ、母もここにいたのかも」。持参した母の遺影をそっと胸に引き寄せた。

 ◆旧ソ連軍が侵攻 両親は財産捨て樺太を去る

 第2次世界大戦前、樺太で暮らした樺太アイヌは1000人以上いた。楢木の母もそのひとり。和人の父と結婚。だが太平洋戦争末期、旧ソ連軍が日ソ中立条約を破棄して樺太に侵攻。両親は一切の財産を捨て、樺太を去らざるを得なかった。
 父の故郷、青森に身を寄せたが、1948年に末っ子の楢木が生まれると父はすぐに病死。残された母親と7人の兄姉は、樺太アイヌたちがいつか集まろうと約束した地を目指すことになる。楢木が3歳の頃のことだ。

 ◆父母の故郷の青森、樺太より過酷だった「約束の地」

 それが北海道宗谷に近い稚咲内(わかさかない)だった。稚咲内は、戦後の農山漁村振興対策で開発地区の指定を受け、樺太からの引き揚げ者や樺太アイヌによる入植が始まっていた。身寄りをなくした一家も当然かの地を目指したが、待っていたのは青森や樺太以上の厳しい環境だった。
 
 アイヌ民族は地名をほとんど見たままに付ける。稚咲内はアイヌ語で「飲み水がない川」の意。深く掘らねば飲み水が出ず、砂地のため風の強い日は、その砂で井戸が埋まってしまう。幼い身体で姉と2人、天秤(てんびん)棒を担いで遠く離れた隣家に水をもらいにいったことも1度や2度ではない。
 浜の番屋で一つの布団に3人でひしめき合って寝ることも。あまりの飢えに耐えられず、配給の種芋も半分食べてしまう。学校の帰り道、和人に石を投げられていじめられたが、母を悲しませると言えなかった。
 幸せだと思える一瞬もあった。1955年頃に頼みの綱だったニシンが取れなくなり、魚かすを煮るニシン釜は、露天の五右衛門風呂に早変わり。海に浮かぶ利尻富士を眺め、夕方にはホタルが飛び交い、見上げれば暗い夜空が満天の星に照らされ思わず感嘆した。「あの景色は生涯忘れられない」
 それもつかの間、生活は立ちゆかなくなり、楢木が小学5年の時に小樽に。年配女性が駅近くの市場で魚を仕入れ、ブリキ製の箱を背負って朝一番の列車で行商に行く姿は「ガンガン部隊」とやゆされたが、一団にはご多分に漏れず母の姿も。「樺太アイヌだけではないが、本当に苦しかった」。何ものにもあらがえず、ただ一日を耐えしのぶだけの戦後の家族があった。

◆アイヌ伝統工芸の第一人者として語り部に

 「樺太アイヌは、オヒョウニレの木の内皮でアットゥシ織する北海道アイヌの着物とは違う。異なる文化と言語があることを知ってもらえたらうれしい」
 白地の着物テタラペに身を包んだ楢木が言う。樺太アイヌ特有の西洋風情の絹糸の刺しゅうが映える。
伝統衣装テタラペに身を包みながら、樺太アイヌが生きてきた軌跡について語る楢木さん

伝統衣装テタラペに身を包みながら、樺太アイヌが生きてきた軌跡について語る楢木さん

 楢木は樺太アイヌの刺しゅうなど伝統工芸の第一人者として、語り部になっていた。だが、活動を始めたのは60歳を過ぎてから。

 ◆樺太...

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【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した

2024-12-30 04:05:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した

 能登半島地震で始まった2024年が幕を閉じる。

 被災地の人たちは今も困難な暮らしを強いられている。加えて冬本番の到来である。豪雪や厳しい寒さが心配だ。国や自治体は支援に漏れのないよう細心の注意を払ってもらいたい。
 
 翻って政治に目を向ける。
 本来は被災地の復旧・復興に全力を注ぐべき1年だったが、必ずしもそうはならなかった。
 「政治とカネ」を巡る国会論議などに多くの時間が費やされたからだ。
 肝心の政治改革は道半ばと言わざるを得ない。臨時国会で政策活動費の全廃などが決まったものの、焦点だった企業・団体献金の禁止については結論が先送りされた。
 今年は人権の重みを見つめ直す契機にもなった。
 旧優生保護法に関する最高裁の違憲判決や、強盗殺人罪などに問われ死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪といった大きなニュースが相次いだ。
 冤罪(えんざい)は決してあってはならない。ただ、誤判の恐れは常につきまとう。袴田さんの事件を教訓に死刑制度存廃の議論を本格的に始める時だろう。
 戦争は最大の人権侵害だ。
 ロシアのウクライナ侵攻は長期化し、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃もやまない。すべての殺りくを一刻も早く終わらせねばならない。

 ■丁寧な合意の形成を

 10月の衆院選は自民、公明両党の与党過半数割れとなった。自民党派閥の裏金事件が有権者の怒りを買ったのは当然だ。
 同時に、第2次安倍晋三政権以降の自民党1強体制、そのおごりやゆがみに厳しい審判が下されたとも言える。
 石破茂首相は所信表明演説で大敗について「国民からの叱責(しっせき)」と語り、「他党にも丁寧に意見を聞き、幅広い合意形成が図られるよう真摯(しんし)に、謙虚に取り組んでいく」と述べている。
 果たして言葉通りになっているのだろうか。都合に応じて一部の野党とのみ手を結ぶ姿は有権者の失望を深めるだけだ。演説で話したことを誠実に実行してもらいたい。
 今年も物価高が家計を直撃した。経済を冷え込ませたコロナ禍の影響が長引いていることもあり、生活保護の申請件数は近年増加傾向にあるという。
 国民の生活をあまねく安定させることは政治に課せられた責務だ。なすべき仕事は山ほどある。与野党伯仲の状態を実りある議論につなげたい。それが、少数意見や弱者を置き去りにしないことにも結びつく。

 ■被害者救済を確実に

 旧優生保護法下で不妊手術を強制された障害者らが国を訴えた訴訟で、最高裁大法廷は旧法は違憲との判決を言い渡した。
 関連の補償法が来月施行される。プライバシーの保護に配慮しつつ、補償が受けられることを個別に通知するといった確実な救済策を講じるべきだ。
 袴田さんの事件では再審制度の問題点が改めて浮き彫りになった。法務省は来春にも、制度の見直しを法制審議会に諮問する方向という。無辜(むこ)の人の救済のために、実効性のある制度にしなければならない。
 原発の安全性に絶対はなく、住民が抱く不安は人格権に関わる問題だ―。こうした趣旨の理由で、福島原発の事故後初めて原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決から10年になる。
 原発との向き合い方に一石を投じた司法判断だったが、原発回帰の動きは止まらない。今年は女川原発や島根原発が再稼働した。国の新たなエネルギー基本計画の原案は「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除した。
 福島事故による県外避難者はなお2万人。暮らしやなりわいが長期間脅かされている。政府はこの現実を直視し、原発回帰の政策を改める必要がある。

 ■法の支配貫くべきだ

 ロシアのウクライナ侵攻は、北朝鮮が派兵し、戦闘に参加していることも見過ごせない。弾道ミサイルや砲弾の供与も伝えられる。戦闘を激化させる暴挙に他ならない。
 そもそも侵攻は国際法に違反する。ロシアは全軍を撤退して事態を終結させねばならない。
 イスラエルはガザへの攻撃を続け、死者は4万人を超えた。子どもや女性の犠牲が目立つ。
 国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出した。ガザの戦闘を巡り、飢餓を起こすなどの戦争犯罪や殺人、迫害といった人道に対する罪を犯した疑いだ。
 米大統領選は共和党のトランプ氏が勝利した。1期目のように米国第一の姿勢を強め、国際秩序の不安定化を招く懸念がある。トランプ氏が親イスラエルの度合いを深めていけば、中東地域の状況が一層悪化することも憂慮される。
 国際社会は人権や法の支配の重要性を再確認し、戦闘停止に向けてロシアやイスラエルへの働きかけを強めるべきだ。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月30日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【天風録・12.29】:憲法25条と避難所

2024-12-29 07:00:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【天風録・12.29】:憲法25条と避難所

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.29】:憲法25条と避難所

 広島大初代学長も務めた思想家の森戸辰男は、ことし没後40年だった。日本国憲法制定に衆院議員として関わり、この画期的な権利を付け加えた足跡も知られる。「健康で文化的な最低限度の生活」。つまり生存権である

 ▲憲法25条のその言葉を題名にした漫画が世に出て10年。東京の区役所で生活保護を担当する新人ケースワーカーの奮闘を描いて人気を集め、ドラマ化もされた。久々に新刊を手にし、場面ががらり変わったのに驚いた

 ▲大災害である。台風による荒川の洪水で首都が広く水没し、250万人が避難所に身を寄せる。女性や要配慮者のスペースの確保、被災者の心のケア…。混乱続きの現場を若き公務員の目で捉える設定に引き込まれた

 ▲作者柏木ハルコさんも事前取材で疑問を抱いたに違いない。令和日本の避難所で本当に生存権が守られるのかと。懸念された通りに災害関連死が急増した能登半島地震と重ねたくもなる

 ▲政府は1人当たりの面積など避難所の改善にやっと着手した。憲法の権利を守れなかった歴代政権の責任を思う。森戸は「政者正也」という論語の言葉を好んだ。政治とは正しい道を行うこと―。能登の被災地は避難所がまだ残る。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2024年12月29日  07:00:00  これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。

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【社説①・12.26】:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った

2024-12-26 16:00:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①・12.26:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.26】:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った 

 人権侵害の重大さへの警告を強め、解消への法改正を厳しく迫ったといえよう。

 同性婚を認めない民法などの規定を問う訴訟の控訴審判決で、福岡高裁が幸福追求権を保障した憲法13条に違反すると初めての判断を示した。

 13条はすべての国民が個人として尊重され、幸福を求めることを保障し、公共の福祉に反しない限り立法や国政で最大限の尊重を受けることが明記されている。

 判決は、同性カップルが婚姻制度の対象外で、異性婚なら認められる相続権など重要な法的権利がなく、法的に保護されていないことが幸福追求権の侵害と認定した。

 その上で、婚姻は完全に当事者の自由意志で、制約し得る「公共の福祉」にも反せず、「(同性婚を)法制度として認めない理由はもはや存在しない」と言い切った。

 同性婚を巡る訴訟は全国5地裁で6件起こされた。二審では今年3月の札幌高裁と10月の東京高裁に続く違憲判決で、法の下の平等を定めた14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項の違反認定も引き継いだ。

 同性婚を認める司法の流れはほぼ固まり、より強く示されたといえる。

 重要なのは、判決が現行の婚姻制度を同性婚に適用すべきとしたことだ。

 原告は「特別な権利ではなく、異性愛者と同じように結婚がしたいだけ」と強く求めていた。一審の福岡地裁判決が「同性婚を婚姻と似た別の制度で認める余地がある」と言及したことに強く反発していた。

 婚姻制度と別の制度をつくれば、法の下の平等を損なうだけでなく、新たな差別を生みかねない。こうした指摘は夫婦別姓を巡る訴訟でもなされている。重要な論点を踏まえた高裁判決といえよう。

 共同通信社の今春の世論調査では「同性婚を認めるほうがよい」が7割を超えるなど、多様な家族観や性的少数者の権利についての社会の理解は深まっている。

 石破茂首相は判決を受けた国会答弁で、同性婚の実現により日本の幸福度は増すとの認識を示したが、政府として具体的な動きは見えない。

 旧来の家族観に固執する自民党保守層への配慮が要因のようだ。だが、「同性婚は異性婚の権利を妨げる事態は想定できない」「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの(婚姻への)介入は許されない」と明快に断じた今回の判決を、正面から受け止めるべきではないか。

 判決は損害賠償を認めなかったが、同性婚を認めない現行制度を廃止しなければ国に賠償責任が生じ得るとも指摘し、法制化を強く促した。

 政府と立法府の不作為はもはや許されない。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月26日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を

2024-12-25 02:01:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を

 これでは女性は医療を受けるに値しないと言うに等しい。いかなる理由があろうとも、人権をないがしろにすることは許されない。

 イスラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンで、医療教育機関への女性の通学が禁じられた。医学部を含む中高等教育からは既に締め出されていたが、助産師や看護師などの養成学校は例外的に認められていた。

タリバンによって学校教育を受ける機会を閉ざされ、自宅で勉強机の前に座るマリヤム・サダトさん=カブールで2023年7月23日午後0時21分、川上珠実撮影

 男性の医療従事者による診療などを女性が受けることはタブー視されている。女性の担い手がいなくなれば、劣悪な医療環境がさらに悪化しかねない。

 助産師は、現在でも2万人近く不足している。世界保健機関(WHO)の推定では、1日当たり24人の妊産婦が命を落としている。死亡率は日本の100倍以上で、世界最悪の水準だ。

 タリバンが3年前に実権を握った際、内外に表明した統治方針とも矛盾している。

 「イスラム法の枠内で」との条件付きながら、女性の就労や教育を容認する姿勢を見せていた。だが実際には締め付けを強める一方である。

 国連機関や国際NGOで働くことが禁じられた。今年8月に制定された法律によって公の場で歌ったり、大きな声を出したりできなくなり、全身や顔を布で覆うことが義務づけられた。夫や親族以外の男性を見ることも禁止された。

 パリ・オリンピックでは国際オリンピック委員会(IOC)が男女3人ずつを招待したが、タリバン当局者は「女子スポーツは禁じられている」と語り、男性だけを自国代表とみなすと表明した。

 戦火で疲弊した経済の復興は進んでいない。地震や洪水、干ばつの被害を繰り返し受けてもいる。国連によると、人口の5割を超す約2400万人が支援を必要としている。

 抑圧的な統治を続けるタリバンは各国から非難されており、政権として承認した国は一つもない。国際的な孤立が一因となって、十分な支援が届いていない。

 人道危機に手を差し伸べるのは国際社会の責務である。日本を含む各国は、人権状況を改善するようタリバンに要求しつつ、窮状にある人々への支援を強める方策を探るべきだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月22日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.23】:部落地名訴訟 「差別されぬ権利」定着を

2024-12-24 06:05:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.23】:部落地名訴訟 「差別されぬ権利」定着を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:部落地名訴訟 「差別されぬ権利」定着を 

 「差別されない権利」を認める画期的な司法判断が確定した。部落差別をはじめ、あらゆる差別をなくす取り組みに生かしたい。

 裁判のきっかけになったのは、2016年に川崎市の出版社「示現舎」の代表が被差別部落の地名リストをウェブサイトに公開し、出版を計画したことだった。

 出典は戦前に政府の外郭団体がまとめた全国部落調査だった。被差別部落を特定する情報をウェブで公開すれば差別を助長する。極めて悪質な行為である。

 部落解放同盟の幹部を含む被差別部落出身者ら約230人は、出版社代表らを相手取り、地名リストの公開禁止や出版差し止めを求める裁判を起こした。

 23年の東京高裁判決は、原告に関係する地名の公表や出版禁止を被告に命じた。注目すべきは、その論拠だ。

 法の下の平等を定める憲法14条1項などを基に「人は誰しも差別を受けることなく、尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有する」と指摘した。

 地名がさらされ、差別される不安を抱く人たちの「差別されない権利」が侵害されたと認めたのである。公表禁止の対象は一審の25都府県から31都府県に拡大した。

 21年の東京地裁判決はプライバシー権の侵害を認めたものの、差別されない権利は認定しなかった。

 高裁判決は今月上旬に最高裁で確定した。原告団と弁護団は「インターネットの発達に伴い、新しい形での部落差別が激化している現状を踏まえた判断」と評価している。

 ネット空間には、被差別部落に対する卑劣な言葉や間違った情報があふれている。怖いのは、部落差別を知らない人がこうした情報に同調し、再拡散することだ。

 国民の中には「部落差別は過去の出来事」と思い込んでいる人が少なくない。

 その傾向は法務省が20年にまとめた国民の意識調査でも明らかだ。「現在も部落差別はあると思うか」の問いに、24・2%が「もはや存在しない」と答えた。割合は高齢になるにつれて高くなる。

 部落差別はなくなっていない。今も存在する。

 結婚差別や差別落書きなどで、つらい思いをしている人たちがいる。福岡、九州でも差別と闘っている人たちがいる。差別の現実を直視して、教育や啓発を続けなくてはならない。

 16年に施行された部落差別解消推進法は活用されているだろうか。法に沿って条例を制定した自治体は決して多くない。自治体ごとに、幅広い世代に正しい意識を定着させることが必要だ。

 差別されない権利は部落差別だけでなく、障害者、性的マイノリティー、外国人などさまざまな差別の防止や被害救済に活用したい。

 原告は法制化を求めている。議論に値する。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも

2024-12-24 06:00:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも 

 同性婚を認める司法のメッセージがより明確になったと言える。

 同性同士の結婚を認めない民法の規定は憲法違反だとして、九州の同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は幸福追求権を保障した憲法13条に違反するとの初判断を示した。

 賠償請求は退けたが、全国5地裁計6件で争われている同種訴訟の二審で3件連続の違憲判断である。今回は「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と、これまでの違憲判決と比べても強い表現で立法府に法整備を促した。

 福岡高裁が13条違反を示したことで、法の下の平等(14条)、個人の尊厳と両性の本質的平等(24条)など一連の訴訟で争点となった憲法の条項全てで違憲判断が出された事実は重い。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、早期の法制化に向けて議論を始めるべきだ。

 福岡高裁判決で特筆すべきは「婚姻は人にとって重要かつ根源の営み」とし、同性婚の制度がない現状は13条の幸福追求権を侵害しているとほぼ全面的に認めた点だろう。同条の「公共の福祉に反しない限り」との規定についても検討し、同性婚の存在は異性婚の権利を妨げず、公共の福祉に反しないと結論付けた。

 同性カップルを自治体が公的に認める「パートナーシップ制度」は、導入する自治体が450を超えたが居住地によって運用の差があるなど課題が残る。判決は「同制度では不平等は解消されない」とくぎを刺し、異性婚なら認められる相続権などの法的権利がないのは「重大な制約」だと断じた。

 一審の福岡地裁判決は男女の婚姻とは別の制度を設けることにも議論の余地があるとしたが、原告側は新たな差別や偏見を生む恐れがあるとして控訴した。高裁判決は「同性カップルに異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ憲法違反は解消しない」と明言し、原告らの主張を認めた。

 「少数者の権利を尊重し保護することは、憲法が強く要請するところだ」との指摘を真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 二審で3件目の違憲判決を受け、公明党の斉藤鉄夫代表は「婚姻の完全平等へ法整備を進めるべきだ」とし、立憲民主党の野田佳彦代表は「国会で対応しなければならない」と述べた。自民党では保守派を中心に慎重論が根強いが、石破茂首相は同性婚が実現すれば「日本全体の幸福度は増す」との認識を示した。

 共同通信社が今春実施した世論調査では、同性婚を「認める方がよい」が73%だった。国民の理解が進み、立法を促す司法判断も積み上がっている。政治が決断する時だ。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・12.22】:【同性婚訴訟】:国会は直ちに議論始めよ

2024-12-24 05:05:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.22】:【同性婚訴訟】:国会は直ちに議論始めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:【同性婚訴訟】:国会は直ちに議論始めよ

  憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定する。
 同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、同性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は幸福追求権を保障したこの憲法13条に違反するとの判断を初めて示した。
 同種の訴訟は全国5地裁で計6件起こされており、高裁レベルでは3月の札幌、10月の東京に続き3例目の「違憲」判断となった。法整備に依然として慎重な国会に対し、別の論点から立法措置を迫った注目すべき判断と言える。国会は真摯(しんし)に受け止め、早急に議論を始めなければならない。
 今回の判決は、婚姻は人の「根源的な営み」だとして、同性婚の制度がない現状は幸福追求権を侵害していると認めたことが特徴だ。
 婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられるとし、婚姻の成立と維持について法的保護を受ける権利は異性間でも同性同士でも同じだと明言。その上で、同性婚の制度を設けず、法的保護を与えないのは「幸福を追求する道を閉ざすことになり、制約は重大だ」と踏み込んだ。
 さらに「公共の福祉に反しない限り」という幸福追求権の条件については、同性婚の存在が異性婚の権利を妨げる事態は想定できないと説明。宗教的な立場や、子どもを産み育てて共同体を維持するとの目的から婚姻に介入するのは許されないとも指摘した。
 違憲性を唱えたこれまでの判決の中でも、少数者の権利保護を強く求めたと言える。苦しみ続ける当事者に寄り添う姿勢が際立った。
 判決は法の下の平等を定めた14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項にも違反していると認めた。
 自治体ではカップルの関係性を公的に証明するパートナーシップ制度の導入が進むが、相続や親権などの法的な手続きには効力はない。判決は「同制度では不平等は解消されない」と断言した。
 今回、福岡高裁が13条違反の判決を出したことで、各地の訴訟で争点となった憲法の条項全てで違憲判断が出たことになる。
 現状を問題視する司法判断が相次ぐ背景にあるのは、社会の意識の変化だ。世論調査では同性婚を「認める方がよい」と答えた人は7割超に上る。
 こうした動きとは対照的に、政治の動きは鈍い。石破茂首相は判決後の国会答弁で、同性婚の実現により日本の幸福度は増すとの認識を示した。ただ自民党内では保守系を中心に同性婚への慎重論は根強い。
 福岡高裁の判決は「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と指摘した。これ以上、当事者の不利益を放置してよいはずはない。国会には迅速な対応が求められる。
 
 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【主張①・12.22】:「同性婚」判決 男女間の前提崩し不当だ

2024-12-23 05:03:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【主張①・12.22】:「同性婚」判決 男女間の前提崩し不当だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.22】:「同性婚」判決 男女間の前提崩し不当だ 

 同性婚を認めない民法などの規定について福岡高裁は「違憲」判決を出した。男女という異性間を前提とする婚姻制度を崩す不当な判断である。

 同性カップル3組が提訴していた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟のうち、高裁では札幌、東京に続き違憲とされたが、受け入れられない。

福岡高裁での口頭弁論を終え、記者会見する原告の(左から)ゆうたさん、こうぞうさん、こうすけさん、まさひろさん

 一連の違憲判断は、個人の権利擁護に偏り、行き過ぎた解釈で同性婚を認めるよう導き出したと言わざるを得ない。

 福岡高裁は法の下の平等を定めた憲法14条などのほか、幸福追求権を保障した13条にも違反するとの初判断を示した。

 「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」などとし、同性カップルを婚姻制度の対象外としている法規定は、幸福追求権の侵害にあたると言う。

 しかし婚姻制度は、国側が主張してきたように、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。

 婚姻の自由を定めた憲法24条1項で、婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定している。

 「両性」が男女を指すのは明らかだ。今回の判決の中でも「同性婚を認めないことが24条1項違反とまでは解しにくい」と述べている。

 一方で13条などに反し「違憲」と言うのでは、憲法の条文相互に齟齬(そご)や矛盾があることにならないか。

 憲法は同性婚を想定しておらず、民法や戸籍法が同性婚を認めていないとしても、「違憲」の問題が生じる余地がないのは明らかだ。同性婚を認めよ―と言うなら、憲法改正を唱えるのが筋だろう。

 憲法は同性婚を禁じていないなどとして違憲と断じるのは、牽強(けんきょう)付会で無理がある。

 林芳正官房長官は判決を受け、同性婚を法的に認めるべきかについては「国民生活の基本に関わる問題で、国民一人一人の家族観とも密接に関わる」と慎重な考えを示した。

同性愛など性的少数者への差別や偏見をなくす取り組みが必要なのは言うまでもない。

 一方で社会の根幹を成す婚姻や家族制度について、幅広い議論と理解を欠いたまま拙速に進めれば、社会の分断を招くばかりである。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年12月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《発言・12.19》:生成AIでの俳優の人権侵害=池水通洋・協同組合日本俳優連合副理事長

2024-12-19 02:01:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《発言・12.19》:生成AIでの俳優の人権侵害=池水通洋・協同組合日本俳優連合副理事長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《発言・12.19》:生成AIでの俳優の人権侵害=池水通洋・協同組合日本俳優連合副理事長

 俳優・声優2500人ほどが集まり、相互に自分たちの活動環境や出演条件、著作権などを考え、改善のため活動している協同組合日本俳優連合(通称・日俳連)という組織があります。

 俳優たちはさまざまな問題を抱えています。自分の実演が公開され、放送され、送信され、固定され販売されることには一定のルールがあり、問題があれば利用者らとの話し合いが行われています。

<picture>池水通洋氏</picture>
池水通洋氏

 ところが、最近の「生成AIに関する問題」は、これまでになかった悩ましい問題です。

 ■この記事は有料記事です。残り1062文字(全文1278文字)

 ■続きは、会員登録後、お読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【発言】  2024年12月19日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.18】:同性婚判決 幸福求める権利の保障を

2024-12-18 06:05:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.18】:同性婚判決 幸福求める権利の保障を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.18】:同性婚判決 幸福求める権利の保障を 

 愛する人と新しい家庭を築きたい願いは、男女のカップルでも同性カップルでも変わらない。同性であるために法的な婚姻ができないのは、幸福追求権を定めた憲法13条に違反するという画期的な判決が出た。

 同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定が憲法違反かどうかを争った訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は「違憲」と判断した。

 13条だけではない。法の下の平等を掲げた14条1項、婚姻について定めた24条2項にも違反しているとした。

 結婚を望む同性カップルの基本的人権や個人の尊厳に、大きく踏み込んだ憲法判断である。原告らは「想像以上の判決」と感極まり涙した。

 判決を社会全体で受け止めたい。政府や国会は同性カップルの人権が侵害されている現実を直視し、法改正に動くべきだ。

 同種の訴訟は全国5地裁で6件起こされている。高裁判決は3月の札幌、10月の東京に次ぐ3件目で、全てが「違憲」となった。司法が法制化を迫る流れが定着したと言えるだろう。

 13条違反に言及したのは福岡高裁が初めてである。婚姻を「人にとって重要かつ根源的な営み」と捉え、希望が最大限に尊重されなくてはならないのに、同性カップルは道が閉ざされていると断じた。

 特筆すべきは新たな制度を作らず、異性婚と同じ制度の利用を求めたことだ。そうでなければ、法の下の平等に当たらないと指摘した。

 明快で説得力がある。「私たちは特別な権利や優遇を求めておらず、婚姻の選択肢を平等に欲しい」という原告の願いと合致する。

 多様な家族観や性的少数者の権利に対する国民の理解は進んでいる。今年春の共同通信社による世論調査では、同性婚を認める方がよいと答えた人が7割を超えた。

 同性婚に否定的な声も根強くある。「同性間では子どもができない」などが理由だ。

 今回の判決は、こうした主張は憲法違反や不合理なものとしてことごとく退けられ、同性婚を法制度として認めない理由は「もはや存在しない」と言い切った。

 それでも政府は「国民の家族観とも密接に関わる」として、同種の訴訟を見守る姿勢を崩さない。石破茂首相も慎重な言い回しに終始する。

 国会の動きが鈍いのも残念だ。同性婚が可能な国・地域は40に迫る。国際的な潮流も認識してほしい。

 性的指向は自分の意思で変えられず、疾患や障害ではない。同性婚が認められても、異性婚の権利を制約しない。

 福岡高裁の判決は、同性婚に否定的な意見を持つ人は法制度が変わることに不安や違和感があるとみられ、制度が整えば払拭されるとの見方を示している。

 国民の理解を深めるためにも、具体的な法改正論議を始める必要がある。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月18日  06:00:00  これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い

2024-12-16 09:31:35 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説①・12.15》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い 

 憲法13条は、国民がそれぞれの価値観に基づいて「幸福」を求めることを、公共の福祉に反しない限り尊重して、国はその条件を整える責務があると規定している。

 同性婚を法的に認めないのは、この幸福追求権を侵害すると初めて認めた画期的な判決だ。福岡市と熊本市の同性カップル3組が、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁が法規定は憲法13条に違反すると認定した。

 「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」とした上で、「婚姻の成立と維持について、法的な保護を受ける権利を等しく有している」と判断している。

 さらに法の下の平等を定めた14条と、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた24条2項にも違反するとした。

 全国の5地裁に起こされた計6件の同種の訴訟で、これまでに出された3件の高裁判決は、全て違憲と判断したことになる。地裁判決は違憲が2件、違憲状態が3件だ。唯一合憲とした大阪地裁も、現状を放置すれば将来は違憲となる可能性を指摘している。

 福岡高裁は今回の判決で「婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられる」として、「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」とも述べた。司法の違憲判断は定着したといえる。

 弁護団は声明で「(13条に対する違憲判断で)全国で主張してきた全ての憲法上の論点について、裁判所から違憲と認める判断が出たことになる」と評価した。

 林芳正官房長官は記者会見で、「確定前の判決だ」として静観する姿勢を示しただけだ。ただ、石破茂首相は5日の衆院予算委員会で「(同性婚が認められないことで苦しむ人たちの)声を傍観することはしない」と述べている。法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める。

 今回の福岡高裁の判決は、法整備のあり方にも言及し、異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した。

 これまでの判決では、同性婚を法的に認めないのは違憲とした上で、方向性としてパートナーシップ制度など「婚姻に類する制度」を例示した地裁もあっただけに、福岡高裁判決の意義は大きい。

 異性婚と別の制度で同性婚を法制化しても、新たな差別を生み出すだけである。政府、国会は今回の判決を重く受け止めるべきだ。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月14日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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