【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した
能登半島地震で始まった2024年が幕を閉じる。
【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.30】:回顧2024 人権の重みを再認識した
能登半島地震で始まった2024年が幕を閉じる。
【天風録・12.29】:憲法25条と避難所
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.29】:憲法25条と避難所
広島大初代学長も務めた思想家の森戸辰男は、ことし没後40年だった。日本国憲法制定に衆院議員として関わり、この画期的な権利を付け加えた足跡も知られる。「健康で文化的な最低限度の生活」。つまり生存権である
▲憲法25条のその言葉を題名にした漫画が世に出て10年。東京の区役所で生活保護を担当する新人ケースワーカーの奮闘を描いて人気を集め、ドラマ化もされた。久々に新刊を手にし、場面ががらり変わったのに驚いた
▲大災害である。台風による荒川の洪水で首都が広く水没し、250万人が避難所に身を寄せる。女性や要配慮者のスペースの確保、被災者の心のケア…。混乱続きの現場を若き公務員の目で捉える設定に引き込まれた
▲作者柏木ハルコさんも事前取材で疑問を抱いたに違いない。令和日本の避難所で本当に生存権が守られるのかと。懸念された通りに災害関連死が急増した能登半島地震と重ねたくもなる
▲政府は1人当たりの面積など避難所の改善にやっと着手した。憲法の権利を守れなかった歴代政権の責任を思う。森戸は「政者正也」という論語の言葉を好んだ。政治とは正しい道を行うこと―。能登の被災地は避難所がまだ残る。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年12月29日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
【社説①・12.26】:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.26】:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った
人権侵害の重大さへの警告を強め、解消への法改正を厳しく迫ったといえよう。
同性婚を認めない民法などの規定を問う訴訟の控訴審判決で、福岡高裁が幸福追求権を保障した憲法13条に違反すると初めての判断を示した。
13条はすべての国民が個人として尊重され、幸福を求めることを保障し、公共の福祉に反しない限り立法や国政で最大限の尊重を受けることが明記されている。
判決は、同性カップルが婚姻制度の対象外で、異性婚なら認められる相続権など重要な法的権利がなく、法的に保護されていないことが幸福追求権の侵害と認定した。
その上で、婚姻は完全に当事者の自由意志で、制約し得る「公共の福祉」にも反せず、「(同性婚を)法制度として認めない理由はもはや存在しない」と言い切った。
同性婚を巡る訴訟は全国5地裁で6件起こされた。二審では今年3月の札幌高裁と10月の東京高裁に続く違憲判決で、法の下の平等を定めた14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項の違反認定も引き継いだ。
同性婚を認める司法の流れはほぼ固まり、より強く示されたといえる。
重要なのは、判決が現行の婚姻制度を同性婚に適用すべきとしたことだ。
原告は「特別な権利ではなく、異性愛者と同じように結婚がしたいだけ」と強く求めていた。一審の福岡地裁判決が「同性婚を婚姻と似た別の制度で認める余地がある」と言及したことに強く反発していた。
婚姻制度と別の制度をつくれば、法の下の平等を損なうだけでなく、新たな差別を生みかねない。こうした指摘は夫婦別姓を巡る訴訟でもなされている。重要な論点を踏まえた高裁判決といえよう。
共同通信社の今春の世論調査では「同性婚を認めるほうがよい」が7割を超えるなど、多様な家族観や性的少数者の権利についての社会の理解は深まっている。
石破茂首相は判決を受けた国会答弁で、同性婚の実現により日本の幸福度は増すとの認識を示したが、政府として具体的な動きは見えない。
旧来の家族観に固執する自民党保守層への配慮が要因のようだ。だが、「同性婚は異性婚の権利を妨げる事態は想定できない」「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの(婚姻への)介入は許されない」と明快に断じた今回の判決を、正面から受け止めるべきではないか。
判決は損害賠償を認めなかったが、同性婚を認めない現行制度を廃止しなければ国に賠償責任が生じ得るとも指摘し、法制化を強く促した。
政府と立法府の不作為はもはや許されない。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月26日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.22》:タリバンの女性迫害 状況改善へ各国は関与を
これでは女性は医療を受けるに値しないと言うに等しい。いかなる理由があろうとも、人権をないがしろにすることは許されない。
イスラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンで、医療教育機関への女性の通学が禁じられた。医学部を含む中高等教育からは既に締め出されていたが、助産師や看護師などの養成学校は例外的に認められていた。
男性の医療従事者による診療などを女性が受けることはタブー視されている。女性の担い手がいなくなれば、劣悪な医療環境がさらに悪化しかねない。
助産師は、現在でも2万人近く不足している。世界保健機関(WHO)の推定では、1日当たり24人の妊産婦が命を落としている。死亡率は日本の100倍以上で、世界最悪の水準だ。
タリバンが3年前に実権を握った際、内外に表明した統治方針とも矛盾している。
「イスラム法の枠内で」との条件付きながら、女性の就労や教育を容認する姿勢を見せていた。だが実際には締め付けを強める一方である。
国連機関や国際NGOで働くことが禁じられた。今年8月に制定された法律によって公の場で歌ったり、大きな声を出したりできなくなり、全身や顔を布で覆うことが義務づけられた。夫や親族以外の男性を見ることも禁止された。
パリ・オリンピックでは国際オリンピック委員会(IOC)が男女3人ずつを招待したが、タリバン当局者は「女子スポーツは禁じられている」と語り、男性だけを自国代表とみなすと表明した。
戦火で疲弊した経済の復興は進んでいない。地震や洪水、干ばつの被害を繰り返し受けてもいる。国連によると、人口の5割を超す約2400万人が支援を必要としている。
抑圧的な統治を続けるタリバンは各国から非難されており、政権として承認した国は一つもない。国際的な孤立が一因となって、十分な支援が届いていない。
人道危機に手を差し伸べるのは国際社会の責務である。日本を含む各国は、人権状況を改善するようタリバンに要求しつつ、窮状にある人々への支援を強める方策を探るべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説・12.23】:部落地名訴訟 「差別されぬ権利」定着を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:部落地名訴訟 「差別されぬ権利」定着を
「差別されない権利」を認める画期的な司法判断が確定した。部落差別をはじめ、あらゆる差別をなくす取り組みに生かしたい。
裁判のきっかけになったのは、2016年に川崎市の出版社「示現舎」の代表が被差別部落の地名リストをウェブサイトに公開し、出版を計画したことだった。
出典は戦前に政府の外郭団体がまとめた全国部落調査だった。被差別部落を特定する情報をウェブで公開すれば差別を助長する。極めて悪質な行為である。
部落解放同盟の幹部を含む被差別部落出身者ら約230人は、出版社代表らを相手取り、地名リストの公開禁止や出版差し止めを求める裁判を起こした。
23年の東京高裁判決は、原告に関係する地名の公表や出版禁止を被告に命じた。注目すべきは、その論拠だ。
法の下の平等を定める憲法14条1項などを基に「人は誰しも差別を受けることなく、尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有する」と指摘した。
地名がさらされ、差別される不安を抱く人たちの「差別されない権利」が侵害されたと認めたのである。公表禁止の対象は一審の25都府県から31都府県に拡大した。
21年の東京地裁判決はプライバシー権の侵害を認めたものの、差別されない権利は認定しなかった。
高裁判決は今月上旬に最高裁で確定した。原告団と弁護団は「インターネットの発達に伴い、新しい形での部落差別が激化している現状を踏まえた判断」と評価している。
ネット空間には、被差別部落に対する卑劣な言葉や間違った情報があふれている。怖いのは、部落差別を知らない人がこうした情報に同調し、再拡散することだ。
国民の中には「部落差別は過去の出来事」と思い込んでいる人が少なくない。
その傾向は法務省が20年にまとめた国民の意識調査でも明らかだ。「現在も部落差別はあると思うか」の問いに、24・2%が「もはや存在しない」と答えた。割合は高齢になるにつれて高くなる。
部落差別はなくなっていない。今も存在する。
結婚差別や差別落書きなどで、つらい思いをしている人たちがいる。福岡、九州でも差別と闘っている人たちがいる。差別の現実を直視して、教育や啓発を続けなくてはならない。
16年に施行された部落差別解消推進法は活用されているだろうか。法に沿って条例を制定した自治体は決して多くない。自治体ごとに、幅広い世代に正しい意識を定着させることが必要だ。
差別されない権利は部落差別だけでなく、障害者、性的マイノリティー、外国人などさまざまな差別の防止や被害救済に活用したい。
原告は法制化を求めている。議論に値する。
【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:同性婚判決/幸福求める権利誰にでも
同性婚を認める司法のメッセージがより明確になったと言える。
同性同士の結婚を認めない民法の規定は憲法違反だとして、九州の同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は幸福追求権を保障した憲法13条に違反するとの初判断を示した。
賠償請求は退けたが、全国5地裁計6件で争われている同種訴訟の二審で3件連続の違憲判断である。今回は「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と、これまでの違憲判決と比べても強い表現で立法府に法整備を促した。
福岡高裁が13条違反を示したことで、法の下の平等(14条)、個人の尊厳と両性の本質的平等(24条)など一連の訴訟で争点となった憲法の条項全てで違憲判断が出された事実は重い。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、早期の法制化に向けて議論を始めるべきだ。
福岡高裁判決で特筆すべきは「婚姻は人にとって重要かつ根源の営み」とし、同性婚の制度がない現状は13条の幸福追求権を侵害しているとほぼ全面的に認めた点だろう。同条の「公共の福祉に反しない限り」との規定についても検討し、同性婚の存在は異性婚の権利を妨げず、公共の福祉に反しないと結論付けた。
同性カップルを自治体が公的に認める「パートナーシップ制度」は、導入する自治体が450を超えたが居住地によって運用の差があるなど課題が残る。判決は「同制度では不平等は解消されない」とくぎを刺し、異性婚なら認められる相続権などの法的権利がないのは「重大な制約」だと断じた。
一審の福岡地裁判決は男女の婚姻とは別の制度を設けることにも議論の余地があるとしたが、原告側は新たな差別や偏見を生む恐れがあるとして控訴した。高裁判決は「同性カップルに異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ憲法違反は解消しない」と明言し、原告らの主張を認めた。
「少数者の権利を尊重し保護することは、憲法が強く要請するところだ」との指摘を真摯(しんし)に受け止めねばならない。
二審で3件目の違憲判決を受け、公明党の斉藤鉄夫代表は「婚姻の完全平等へ法整備を進めるべきだ」とし、立憲民主党の野田佳彦代表は「国会で対応しなければならない」と述べた。自民党では保守派を中心に慎重論が根強いが、石破茂首相は同性婚が実現すれば「日本全体の幸福度は増す」との認識を示した。
共同通信社が今春実施した世論調査では、同性婚を「認める方がよい」が73%だった。国民の理解が進み、立法を促す司法判断も積み上がっている。政治が決断する時だ。
【社説・12.22】:【同性婚訴訟】:国会は直ちに議論始めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:【同性婚訴訟】:国会は直ちに議論始めよ
【主張①・12.22】:「同性婚」判決 男女間の前提崩し不当だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.22】:「同性婚」判決 男女間の前提崩し不当だ
同性婚を認めない民法などの規定について福岡高裁は「違憲」判決を出した。男女という異性間を前提とする婚姻制度を崩す不当な判断である。
同性カップル3組が提訴していた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟のうち、高裁では札幌、東京に続き違憲とされたが、受け入れられない。
福岡高裁での口頭弁論を終え、記者会見する原告の(左から)ゆうたさん、こうぞうさん、こうすけさん、まさひろさん
一連の違憲判断は、個人の権利擁護に偏り、行き過ぎた解釈で同性婚を認めるよう導き出したと言わざるを得ない。
福岡高裁は法の下の平等を定めた憲法14条などのほか、幸福追求権を保障した13条にも違反するとの初判断を示した。
「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」などとし、同性カップルを婚姻制度の対象外としている法規定は、幸福追求権の侵害にあたると言う。
しかし婚姻制度は、国側が主張してきたように、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。
婚姻の自由を定めた憲法24条1項で、婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定している。
「両性」が男女を指すのは明らかだ。今回の判決の中でも「同性婚を認めないことが24条1項違反とまでは解しにくい」と述べている。
一方で13条などに反し「違憲」と言うのでは、憲法の条文相互に齟齬(そご)や矛盾があることにならないか。
憲法は同性婚を想定しておらず、民法や戸籍法が同性婚を認めていないとしても、「違憲」の問題が生じる余地がないのは明らかだ。同性婚を認めよ―と言うなら、憲法改正を唱えるのが筋だろう。
憲法は同性婚を禁じていないなどとして違憲と断じるのは、牽強(けんきょう)付会で無理がある。
林芳正官房長官は判決を受け、同性婚を法的に認めるべきかについては「国民生活の基本に関わる問題で、国民一人一人の家族観とも密接に関わる」と慎重な考えを示した。
同性愛など性的少数者への差別や偏見をなくす取り組みが必要なのは言うまでもない。
一方で社会の根幹を成す婚姻や家族制度について、幅広い議論と理解を欠いたまま拙速に進めれば、社会の分断を招くばかりである。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《発言・12.19》:生成AIでの俳優の人権侵害=池水通洋・協同組合日本俳優連合副理事長
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《発言・12.19》:生成AIでの俳優の人権侵害=池水通洋・協同組合日本俳優連合副理事長
俳優・声優2500人ほどが集まり、相互に自分たちの活動環境や出演条件、著作権などを考え、改善のため活動している協同組合日本俳優連合(通称・日俳連)という組織があります。
俳優たちはさまざまな問題を抱えています。自分の実演が公開され、放送され、送信され、固定され販売されることには一定のルールがあり、問題があれば利用者らとの話し合いが行われています。
ところが、最近の「生成AIに関する問題」は、これまでになかった悩ましい問題です。
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元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【発言】 2024年12月19日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説・12.18】:同性婚判決 幸福求める権利の保障を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.18】:同性婚判決 幸福求める権利の保障を
愛する人と新しい家庭を築きたい願いは、男女のカップルでも同性カップルでも変わらない。同性であるために法的な婚姻ができないのは、幸福追求権を定めた憲法13条に違反するという画期的な判決が出た。
同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定が憲法違反かどうかを争った訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は「違憲」と判断した。
13条だけではない。法の下の平等を掲げた14条1項、婚姻について定めた24条2項にも違反しているとした。
結婚を望む同性カップルの基本的人権や個人の尊厳に、大きく踏み込んだ憲法判断である。原告らは「想像以上の判決」と感極まり涙した。
判決を社会全体で受け止めたい。政府や国会は同性カップルの人権が侵害されている現実を直視し、法改正に動くべきだ。
同種の訴訟は全国5地裁で6件起こされている。高裁判決は3月の札幌、10月の東京に次ぐ3件目で、全てが「違憲」となった。司法が法制化を迫る流れが定着したと言えるだろう。
13条違反に言及したのは福岡高裁が初めてである。婚姻を「人にとって重要かつ根源的な営み」と捉え、希望が最大限に尊重されなくてはならないのに、同性カップルは道が閉ざされていると断じた。
特筆すべきは新たな制度を作らず、異性婚と同じ制度の利用を求めたことだ。そうでなければ、法の下の平等に当たらないと指摘した。
明快で説得力がある。「私たちは特別な権利や優遇を求めておらず、婚姻の選択肢を平等に欲しい」という原告の願いと合致する。
多様な家族観や性的少数者の権利に対する国民の理解は進んでいる。今年春の共同通信社による世論調査では、同性婚を認める方がよいと答えた人が7割を超えた。
同性婚に否定的な声も根強くある。「同性間では子どもができない」などが理由だ。
今回の判決は、こうした主張は憲法違反や不合理なものとしてことごとく退けられ、同性婚を法制度として認めない理由は「もはや存在しない」と言い切った。
それでも政府は「国民の家族観とも密接に関わる」として、同種の訴訟を見守る姿勢を崩さない。石破茂首相も慎重な言い回しに終始する。
国会の動きが鈍いのも残念だ。同性婚が可能な国・地域は40に迫る。国際的な潮流も認識してほしい。
性的指向は自分の意思で変えられず、疾患や障害ではない。同性婚が認められても、異性婚の権利を制約しない。
福岡高裁の判決は、同性婚に否定的な意見を持つ人は法制度が変わることに不安や違和感があるとみられ、制度が整えば払拭されるとの見方を示している。
国民の理解を深めるためにも、具体的な法改正論議を始める必要がある。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月18日 06:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
《社説①・12.15》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
憲法13条は、国民がそれぞれの価値観に基づいて「幸福」を求めることを、公共の福祉に反しない限り尊重して、国はその条件を整える責務があると規定している。
同性婚を法的に認めないのは、この幸福追求権を侵害すると初めて認めた画期的な判決だ。福岡市と熊本市の同性カップル3組が、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁が法規定は憲法13条に違反すると認定した。
「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」とした上で、「婚姻の成立と維持について、法的な保護を受ける権利を等しく有している」と判断している。
さらに法の下の平等を定めた14条と、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた24条2項にも違反するとした。
全国の5地裁に起こされた計6件の同種の訴訟で、これまでに出された3件の高裁判決は、全て違憲と判断したことになる。地裁判決は違憲が2件、違憲状態が3件だ。唯一合憲とした大阪地裁も、現状を放置すれば将来は違憲となる可能性を指摘している。
福岡高裁は今回の判決で「婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられる」として、「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」とも述べた。司法の違憲判断は定着したといえる。
弁護団は声明で「(13条に対する違憲判断で)全国で主張してきた全ての憲法上の論点について、裁判所から違憲と認める判断が出たことになる」と評価した。
林芳正官房長官は記者会見で、「確定前の判決だ」として静観する姿勢を示しただけだ。ただ、石破茂首相は5日の衆院予算委員会で「(同性婚が認められないことで苦しむ人たちの)声を傍観することはしない」と述べている。法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める。
今回の福岡高裁の判決は、法整備のあり方にも言及し、異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した。
これまでの判決では、同性婚を法的に認めないのは違憲とした上で、方向性としてパートナーシップ制度など「婚姻に類する制度」を例示した地裁もあっただけに、福岡高裁判決の意義は大きい。
異性婚と別の制度で同性婚を法制化しても、新たな差別を生み出すだけである。政府、国会は今回の判決を重く受け止めるべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説・12.16】:同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.16】:同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ
動きの鈍い国会に対し、対応を強く迫る司法からの警告だ。同性同士の結婚を認めない民法などの規定を問う訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は憲法13条に違反すると、初めての判断を示した。
13条は全ての国民が個人として尊重され、幸せを追求する権利を保障する規定だ。一人一人がありのままに認められ、他人も同じように尊重される。憲法の三大原則の一つ「基本的人権の尊重」の土台でもある。
同性婚を巡る訴訟は、全国5地裁で計6件起こされた。二審では、これまでの札幌高裁、東京高裁を合わせて3例全てで違憲判決が出た。司法では同性婚を認める方向性が固まったと言えよう。
福岡高裁の判決は、同性カップルを法的保護の対象にしていない点を問題視した。婚姻は「重要かつ根源的な営み」で、両当事者の希望を最大限尊重するよう憲法が国に求めているとした。男女のカップルと等しい権利があると認め、現状について「制約は重大だ」と踏み込んだ。
原告らはさまざまな困難を訴えてきた。相続、税制上の優遇、社会保障、親権と、日々の暮らしや人生の岐路で、家族として法的な保障を受けられない事態に直面する。多様な生き方を認めよと正面から言い切った判決は、当事者の思いに応えるものだ。
今年3月の札幌高裁判決は憲法24条1項で初判断を示した。婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」とする規定は、同性婚も異性間と同程度に保障していると認めた。10月の東京高裁判決は「性的指向により法的な差別的取り扱いをしている」と注文を付け、法の下の平等を定めた14条1項に違反するとした。
婚姻に関わる法制定での個人の尊厳を掲げた24条2項を含めて、各地の訴訟で争点となった憲法の条項は全てで違憲判断が出た。人権侵害を放置できないとの危機感がうかがえる。立法措置を求めるメッセージに他ならない。
背景には社会情勢の変化があろう。今春の共同通信社の世論調査で同性婚を「認める方がよい」が7割を超えた。自治体では関係性を公的に証明するパートナーシップ制度が広がるが、地域差があり、法的保障が不十分だとも知られるようになった。
今回の判決は、婚姻について「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの介入は許されない」と指摘した。同性婚を法制度として認めない理由は「もはや存在しない」と断じた。政治は重く受け止めなければならない。
これまで自民党政権は、伝統的な家族観を重んじる保守派の強い反対を踏まえ、国会での議論に後ろ向きだった。同様に石破茂首相も就任前から後退し、「国民の家族観と密接に関わる」として消極姿勢を見せる。だが注視する段階はとっくに過ぎた。
国会は少数者の権利を守る手法を編み出すことも仕事のはずだ。家族観が関わるなら、なおさら合意形成していく努力が要る。法整備の実現に向けて直ちに議論を始めなければならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
【社説・12.15】:同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.15】:同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時
同性同士の結婚を認めない民法などの規定は、幸福追求権を保障した憲法13条に違反する。
福岡市と熊本市に住む同性カップルが国を訴えていた裁判で、福岡高裁が示したのは「基本的人権の尊重」の礎となる13条に踏み込んだ初判断だった。
高裁段階では3件目の違憲判断となる。新たな論点からの「異議」を重く受け止め、国会に早期の法制化を求める。
憲法13条は「全て国民は個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」と定めている。
岡田健裁判長は判決で婚姻は「根源的な営み」と言及。「新たな家族を創設したいという願望は男女と同性で何ら変わりがない」とし、同性カップルを制度の対象外とする規定は幸福追求権を侵害していると結論付けた。
時代は確実に進み、共同通信が今春実施した世論調査で、同性婚を「認める方がよい」は73%に上った。
同性婚は「公共の福祉」に反せず、「法制度として認めない理由はもはや存在しない」との判断も明快である。
一つ屋根の下で暮らし、深い愛情で結ばれるカップルなのに相続人になれなかったり、共同親権を得られないなど法の恩恵を受けられないのは理不尽だ。
地位を明確にすることで、誰もが生きやすい社会づくりを進めたい。
■ ■
同性婚を巡る訴訟は、全国5地裁で6件起こされている。
一審は「違憲」2件、「違憲状態」3件、「合憲」1件と判断が割れたが、二審は札幌、東京、福岡とこれまで全てで「違憲」判断が下されている。
原告側が憲法に違反すると訴えてきたのは(1)幸福追求権を保障した13条のほか(2)法の下の平等を定めた14条(3)両性の合意のみに基づいて婚姻が成立するとした24条1項(4)個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項-だ。
初の二審判決となった3月の札幌高裁は、24条1項に関し「同性間の婚姻も異性間と同程度に保障している」と初判断を示した。
今回、福岡高裁が13条違反に踏み込んだことで、各地の訴訟で争点となった憲法の条項全てで、違憲判断が出たことになる。
司法の流れは、はっきりしている。
■ ■
機は熟しているにもかかわらず、政府のコメントはいまだに「他の同種訴訟の判断も注視したい」だ。
自治体ではパートナーシップ制度の導入が進むが、判決は同制度の拡充などで「不平等は解消されない」と国に苦言を呈する。
世界の潮流からも、人権の観点からも、これ以上放置できない問題である。
判決後、原告らが掲げた横断幕にはこう書かれていた。「国会、まだ立法せんと」
最高裁の結論を待つことなく、法制化へ動かなければならない。
元稿:沖縄タイムス社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月15日 04:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
憲法13条は、国民がそれぞれの価値観に基づいて「幸福」を求めることを、公共の福祉に反しない限り尊重して、国はその条件を整える責務があると規定している。
同性婚を法的に認めないのは、この幸福追求権を侵害すると初めて認めた画期的な判決だ。福岡市と熊本市の同性カップル3組が、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁が法規定は憲法13条に違反すると認定した。
「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」とした上で、「婚姻の成立と維持について、法的な保護を受ける権利を等しく有している」と判断している。
さらに法の下の平等を定めた14条と、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた24条2項にも違反するとした。
全国の5地裁に起こされた計6件の同種の訴訟で、これまでに出された3件の高裁判決は、全て違憲と判断したことになる。地裁判決は違憲が2件、違憲状態が3件だ。唯一合憲とした大阪地裁も、現状を放置すれば将来は違憲となる可能性を指摘している。
福岡高裁は今回の判決で「婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられる」として、「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」とも述べた。司法の違憲判断は定着したといえる。
弁護団は声明で「(13条に対する違憲判断で)全国で主張してきた全ての憲法上の論点について、裁判所から違憲と認める判断が出たことになる」と評価した。
林芳正官房長官は記者会見で、「確定前の判決だ」として静観する姿勢を示しただけだ。ただ、石破茂首相は5日の衆院予算委員会で「(同性婚が認められないことで苦しむ人たちの)声を傍観することはしない」と述べている。法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める。
今回の福岡高裁の判決は、法整備のあり方にも言及し、異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した。
これまでの判決では、同性婚を法的に認めないのは違憲とした上で、方向性としてパートナーシップ制度など「婚姻に類する制度」を例示した地裁もあっただけに、福岡高裁判決の意義は大きい。
異性婚と別の制度で同性婚を法制化しても、新たな差別を生み出すだけである。政府、国会は今回の判決を重く受け止めるべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《思索のノート・12.01》:女性差別「肯定」、Z世代の男性をつかむ 米大統領選で拡大した「マノスフェア」〈時代の羅針盤を求めて〉
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11月5日に投開票があった米大統領選は、共和党候補ドナルド・トランプが民主党候補カマラ・ハリスに勝利した。
トランプは、民主党の伝統的な支持層を切り崩すことに成功した。
これまでトランプの主要な支持層は白人労働者だったが、今回トランプはヒスパニック系や黒人などマイノリティーの労働者にも支持を広げた。
さらにトランプの重要な票田となったのは…(残り1551文字/全文1722文字)
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元稿:信濃毎日新聞社 主要ニュース 文化・芸能 【思索のノート】 2024年12月01日 12:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。