路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【好評既刊・朝日新書】:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 朝日新聞取材班 著

2025-04-01 08:11:50 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【好評既刊・朝日新書】:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 朝日新聞取材班 著

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【好評既刊・朝日新書】:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 朝日新聞取材班 著

 大阪・関西万博が2025年4月、ついに開幕する。各国パビリオンでの展示のほか、有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会などさまざまな催しがあり、お祭りムードが醸成されるだろう。

 しかし、本当にそれでいいのだろうか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。
巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだ。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。

 ▼朝日新聞ネットワーク報道本部の行政担当グループ、大阪経済部、大阪社会部の担当記者が中心となって執筆した本。

 ▼維新の指導者たちが、安倍政権をうまく巻き込みながら、万博を現実のものにしていった過程、数名の識者による現状の問題点の指摘などが記されている。

 ▼2013年、大阪の寿司屋で湧いて出たアイデアが万博誘致の始まりだという。軽薄な話だと感じた。

 ▼スキャンダルが続く維新の実情が万博の印象と関連づけられることは、関西のイメージダウンにも繋がる。本当にこの万博は人々の幸福に繋がるものになるのだろうと思わされた。
 
 ◆目次◆
  第1章 維新混迷
  第2章 膨らみ続けた経費
  第3章 海外パビリオン騒動
  第4章 夢洲が招いた危機
  第5章 万博への直言

・定価:924円(税込)
・発売日:2025年02月13日
 
 元稿:朝日新聞出版 主要出版物 朝日新書 政治・経済・社会 【話題・朝日新書『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治】  2025年02月13日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

2025-04-01 08:11:40 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

 ◆誤算を認めないニッポンの縮図

 理念がない、仕切り屋もいない、工事も進まない。なぜこんな事態のまま進んでしまったのか? 政治・建築・メディア・財政・歴史の観点から専門家が迫る。

大阪・関西万博 「失敗」の本質 松本 創(編著) - 筑摩書房

 ■内容紹介

 開幕前からあえて「失敗」と断じることには反発も当然あるだろう。だが、こうしたメガイベントというのは、五輪もそうだが、事前に批判すれば「楽しみにしてる人もいるのに水を差すのか」「成功へ努力する関係者の足を引っ張るのか」と言われ、事後に検証すれば「終わったことをいつまでも」「今さら言っても遅い。なぜ事前に言わないのか」と批判されるのである。どんな形であれ、とりあえず終わってしまえば、なんとなく「やってよかった」という空気ができ、それに乗じて関係者は「大成功だった(私の手柄だ)」と言い募る。「成功」の基準がないから、いくらでも恣意的に語られてしまう。そうなる前に、「失敗」と見る立場から問題を整理し、指摘しておくべきだと考えたのである。
(「はじめに」より)

 第1章 維新「政官一体」体制が覆い隠すリスク―万博と政治  木下功

 「歓喜の夜」から一転、次々と噴き出す課題/夢洲は本当に「負の遺産」なのか/橋下知事の「ベイエリア・カジノ構想」から始まった/「松井試案」を後押しするベンチャー経営者/支え合う維新と安倍政権、絡み合うIRと万博/万博は「府市一体の成果」とアピールする維新/予算増を予測できぬ協会、容認する維新首長/15万人が避難? 現実味を欠く防災対策/橋とトンネルは避難路に使えるか/「夢洲は液状化しない」想定の誤り/爆発事故で問われた万博協会の説明不足/巨大事業を検証する仕組みがない/大阪府HPから消えた万博議事録

 第2章 都市の孤島「夢洲」という悪夢の選択―万博と建築  森山高至

 日本の万博出展史に見る海外パビリオンの重要性/建設遅れは参加国ではなく開催国の責任/「夢洲」という悪条件―埋め立て安定せず、地盤沈下続く/地盤対策上の制約その1―長すぎる杭と撤去の問題/地盤対策上の制約その2―掘削制限で地下室が作れず/浚渫土からもメタンガス。爆発の危険は今後も/アクセス悪く電源もなし、「都市の孤島」の難工事/厳しい残業規制が工事進捗の足かせに/参加国をフォローせず、タイプXを勧めた万博協会/参加国の焦り―設計者や工事業者見つからず/電通の不在とゼネコンの「逃げ腰」/木造リングが覆い隠す深刻すぎる工事遅れ/本質見ず、議論もなし。暴走する「机上の空論」

 第3章 「電通・吉本」依存が招いた混乱と迷走―万博とメディア  西岡研介

 東京五輪談合事件の衝撃と余波/電通が牽引した戦後の博覧会60年史/大阪府・市と政府、維新と自民の不協和音/電通が万博に消極的になった理由/吉本興業の「地方創生」ビジネス、大阪府・市との蜜月/読売グループがカジノを批判する理由/IRにらみで万博を盛り上げる吉本の思惑/「大﨑体制見直し」と「松本スキャンダル」/吉本も万博から「完全撤退」/万博協会の失敗は「人事」と「財務」/「哲学」のない万博に成功はあるか

 第4章 検証「経済効果3兆円」の実態と問題点―万博と経済  吉弘憲介

 万博コスト増への反論で持ち出される「経済効果」/そもそも経済波及効果とは何か―短期と中長期の二面から/短期効果と中長期効果、それぞれの問題点/経済波及効果を計算する三つのステップ/経済波及効果と事業の「正当性」は関係ない/万博の短期経済効果はどのように変化してきたか/消費動向、2024年問題……実態と乖離した3兆円試算/「来場者2820万人」の高すぎるハードル/レガシー効果は「公益性」の有無で決まる/公共事業を長期的視点で評価するために/独自調査で判明「大阪でも低い万博評価」/万博の公益性と相容れない維新の「個人の利益追求」志向

 第5章 大阪の「成功体験」と「失敗の記憶」―万博と都市  松本創

 博覧会の成功、湾岸開発の失敗、カジノの未来/博覧会都市の始まり「第五回内国勧業博覧会」/都市を広げ、人・物の流れ変えた70年万博/維新ブレーン・堺屋太一の提案から始まった/「万博に取りつかれた男」との空疎な質疑/排除と差別、博覧会の「負の歴史」/テクノポート計画の挫折、大阪五輪の惨敗/維新の原点「府庁移転計画」と「湾岸開発」/夢洲開催案は本当に検証されたのか/大阪IR―少数の推進派と大多数の無関心/万博を狂わせたIRの誤算―橋爪教授の見解/「過去の成功体験」が「同じ失敗」を呼ぶ懸念
 
 ■初版年月日 2024年8月6日 
 ■定価 990(10%税込)
 
 ■著作者プロフィール 松本創
( まつもと・はじむ )

松本 創(まつもと・はじむ):1970(昭和45)年、大阪府生れ。神戸新聞記者を経て、2021年3月現在はフリーランスのライター。2016(平成28)年、『誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走』で日本ジャーナリスト会議賞を受賞。2019(令和元)年、『軌道―福知山線脱線事故JR西日本を変えた闘い』で講談社本田靖春ノンフィクション賞、井植文化賞を受賞する。ほかに『日本人のひたむきな生き方』『ふたつの震災―[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介氏との共著)などがある。(西岡研介氏との共著)などがある。

 元稿:筑摩書房 主要出版物 ちくま新書 政治【政府・大阪府市・「大阪・関西万博「失敗」の本質」】  2024年10月24日  16:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大阪・関西万博】:「これで2週間後にオープンは不可能だろう」 最新の工事状況に識者が指摘…Xで拡散される

2025-04-01 08:11:20 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【大阪・関西万博】:「これで2週間後にオープンは不可能だろう」 最新の工事状況に識者が指摘…Xで拡散される

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【大阪・関西万博】:「これで2週間後にオープンは不可能だろう」 最新の工事状況に識者が指摘…Xで拡散される

 ◆「万博パビリオン工事の状況。1階部分はまったく未完成」の意見も

  2週間後に開幕を控えた大阪・関西万博期待感も高まっているが、最新のパビリオン工事の状況に識者からは「これで2週間後にオープンは不可能だろう」などと指摘する声が挙がっている。<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26">大阪・関西万博の会場全景【写真:産経新聞社】</button>

大阪・関西万博の会場全景【写真:産経新聞社】(産経新聞社)

 ■ 【写真】「これで2週間後にオープンは不可能だろう」…識者が指摘した関西万博の最新の工事状況  

 確かに開幕2週間前の様子とは思えない。資材が山積みされている。「万博パビリオン工事の状況。1階部分はまったく未完成。これで2週間後にオープンは不可能だろう」とXで指摘したのは建築エコノミスト森山高至氏だった。 

 これがX上で拡散され、様々な声が寄せられている。「まぁこれだけパッとみたら何とも分からないですね」「日本の技術力をもってしても無理そう…」「これ完成は3ヶ月後でしょうね」「パビリオンのオープン後工事とかまあ普通にあるしなあ」などと注目が集まっている。  

 万博を巡っては、“2億円トイレ”やパビリオン予約システムのわかりづらさなどが話題となっている。

 ■ENCOUNT編集部

 元稿:ENCOUNT 主要ニュース 社会 【話題・大阪・関西万博・数多くの課題満載】  2025年03月31日  13:34:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

2025-04-01 08:11:10 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

 大阪・関西万博開催まで2週間となった。だが、1970年の大阪万博を知っている私には、“異常”とも思える盛り上がりのなさである。

 70年万博は高度成長の真っただ中、「人類の進歩と調和」をテーマに、アメリカのアポロ12号が持ち帰った「月の石」がアメリカ館で展示され、長蛇の列ができた。

 今回は不況と物価高の真っただ中、「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマで、目玉は日本の観測隊が“南極で発見”したラグビーボール大の「火星の石」だという。この国の宇宙船が月面着陸に成功したのは昨年の1月だから、アメリカに遅れること半世紀以上。それでも石は持って帰れなかったから、南極で拾った(?)火星の石らしきものでお茶を濁すようだ。

 もともと今回の万博は不純な動機で開催が決まったのである。大阪維新の会が牛耳っていた大阪府と大阪市が万博誘致を言い出し、維新主導で全てが決まっていった。

 維新は選挙のたびに「誘致に成功したのは維新の功績」と宣伝してきた。メタンガスが埋まっている人工島「夢洲」を万博会場にしたのも、やはり維新が誘致したギャンブル場・カジノを隣に建設するためだったといわれている。

 だが、パビリオン建設が遅れ、当初の建設予算が2倍近くの2350億円に膨らんでくると、「万博は国家事業」と言い出したのである。無責任極まりない。

 チケットの売れ行きはすこぶる低調。昨年3月には建設現場の火花が土壌から発生したメタンガスに引火して爆発。今年3月には万博のシンボル・大屋根リング(木造・周長約2キロ)の下の護岸が浸食されていることが発覚し、リングの安全性が疑問視されるなど、呪われているかのようである。

 同月17日には石毛博行事務総長が、開幕前のリハーサルとして来場者を入れる「テストラン」の際、報道機関の取材を認めないと言った。その理由を「参加国の要請があった」としたが、大幅に遅れている建設現場を見られたくないということだろう。

 だが、フライデー(4月4.11日号)が、オーストリア、インドネシア、スペインなど6カ国の開幕約1カ月前のパビリオン建設現場写真を入手した。中には外装さえ完成していないところもある。

 作業員の一人は苦笑いしながら、「絶対に間に合わない」と話す。

 「だって、47カ国が出展するタイプA(各国が独自に建設するパビリオン=筆者注)のパビリオンが、3月10日時点でわずか8棟しか完成してないんですよ? 来場者の目に触れる部分だけ間に合わせて、開催期間中も工事を進めて仕上げるつもりでしょう。運営もさすがに焦ったのか、2月から3交代制の24時間態勢での突貫工事が始まりました」

 遅れている理由は、昨年2月まで夢洲の地盤改良工事をしていたこと。さらに、昨年4月から建設業界にも時間外労働の上限規制が導入され、間に合わせるのが難しいと大手ゼネコンが引き受けなかったため、地元の中小の工務店や建設会社が請け負ったが、安い日当しか出せないので作業員が集まらないからだという。

 先の作業員がこう嘆く。

 「急ぐあまり、『工事がストップするから、小さなケガぐらいだったら報告するな』とお達しが出ている現場もあるそうです。労務管理もヘッタクレもありません」

 6000円も払って“張りぼて”パビリオンなんか見たくない!

 ■(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

 ■関連記事

 元稿:日刊スポーツDIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「週刊誌からみた「ニッポンの後退」」】  2025年03月30日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【こちら特捜部】:「大阪・関西万博」開幕まで、あと半月 「ワクワク」かそれとも…大阪の街の人々に直前の思いを聞いてみた

2025-04-01 08:10:50 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【こちら特捜部】:「大阪・関西万博」開幕まで、あと半月 「ワクワク」かそれとも…大阪の街の人々に直前の思いを聞いてみた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特捜部】:「大阪・関西万博」開幕まで、あと半月 「ワクワク」かそれとも…大阪の街の人々に直前の思いを聞いてみた 

 4月13日の開幕まで半月に迫った大阪・関西万博だが、盛り上がりに欠けている。入場券の売れ行きは伸び悩み、会場となる人工島・夢洲(ゆめしま)を巡っては、メタンガスの発生や災害時の避難場所の確保など、安全面の懸念が尽きない。大阪維新の会が主導し、同じ夢洲に計画される「カジノありき」ともされてきた万博。直前の課題を追った。(中川紘希、森本智之)

 ◆「経済上昇の起爆剤になるのでは」

「ミャクミャク」のモニュメントが設置されている大阪市役所前。写真撮影を楽しむ人の姿も見られた=大阪市北区で

「ミャクミャク」のモニュメントが設置されている大阪市役所前。写真撮影を楽しむ人の姿も見られた=大阪市北区で

 万博公式キャラクター「ミャクミャク」の巨大モニュメントが、陽気に寝そべる大阪市役所前。「こちら特報部」は今月下旬、街行く人々に思いを聞いた。
 「考えられへん。大腸みたいでやめてほしいわ」。のっけからミャクミャクに厳しいのは、市内に住む嶽(たけ)正男さん(75)だ。
 とはいえ万博自体は大歓迎という。「体がついていかないかもしれないけど一度は行きたい。経済上昇の起爆剤にもなるのでは」。維新の支持者といい、同じ夢洲に計画されるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)にも期待する。「整備すれば観光客を増やせる。ごみ捨て場とされた夢洲を活用できるのはすごい」

 ◆「せっかくやるんなら盛り上げんと」

 大阪市開平小4年の女子児童(10)も、遊んでいた友人と「学校の遠足で行く。楽しみ」と声を合わせた。校長先生が発表すると、みんなで「うおーっ」と盛り上がったという。ただ、会場では昨年3月、建設工事中に地中から発生したメタンガスが原因とみられる爆発事故が起きている。「怖くはないけど、少し気になっている」
市街地に掲げられた大阪・関西万博を宣伝する旗=大阪市北区で

市街地に掲げられた大阪・関西万博を宣伝する旗=大阪市北区で

 スマートフォンでミャクミャクを撮影していた羽曳野市の女性看護師(55)は「爆発したらそのときはそのときや。名前も見たことないような国のパビリオンに行ってみたい」と覚悟も口にする。ガイド本を買って期待を高め、通期パスを購入。既に3回分の予約を済ませたという。
 一方で心配するのは多額の会場整備費。当初と比べ約1.9倍の最大2350億円まで上振れした。「ペイする(採算を合わせる)のは無理かもしれないけど、せっかくやるんなら盛り上げんと」と語った。
 開幕を直前に控え、不満をのみ込んで楽しもうとする人がいる一方、開催に否定的な声も少なくない。

 ◆「お金を使うなら、能登の被災者を支援した方が」

 市内の男性(71)は「橋下徹府政以来、大阪では格差が広がり、経済は停滞している」と嘆く。オンラインでの入場券購入も複雑として「行く気せえへん。(1970年大阪万博のアメリカ館で展示された)月の石のような目玉もない」ときっぱり。「赤字は目に見えている。お金を使うなら、能登の被災者を支援した方がよっぽどいい」
大阪・関西万博デザインのマンホールふた=大阪市北区で

大阪・関西万博デザインのマンホールふた=大阪市北区で

 元路上生活者で小売業の男性(62)=東淀川区=は「万博とIRは経済効果が不透明。推進すること自体、ばくちのようなものだ」と批判する。維新が「生活保護世帯を減らした」と主張してきたことに触れ、「ネットカフェ難民など見えない貧困は増えている。万博にお金をかけるより、福祉を必要とする人にサービスが届くよう情報発信を強化して」と提案した。
 東大阪市のアルバイトの女性(50)は、万博会場で警備員として働く予定という。「地震で人工島が崩れることや来場者から感染症をうつされないか」と心配しつつ、時給は2000円と高額で「息子が金銭面で困っている。自分が何とか稼がないと」と話した。

 ◆若者は「万博より消費税などの減税を」

 「万博に行きたくない」という若者の声も目立った。関西医科大3年の黒埼颯斗さん(22)=奈良市=は「『維新が万博を誘致した』とアピールしてばかり。逆に冷めてしまった」と苦笑。遊びに行く友人もいるというが「『こっち(自分)は行かんなあ』と伝えた。チケットも高いしワクワクしない」という。
清水寺へ続く坂に張られた大阪・関西万博のポスター

 清水寺へ続く坂に張られた大阪・関西万博のポスター

 確かに、入場券は大人の1日券で750...、残り 1550/3099 文字

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 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・こちら特捜部・大阪・関西万博】  2025年03月29日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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『ルポ 大阪万博』:「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑

2025-04-01 08:10:40 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

『ルポ 大阪万博』:「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:『ルポ 大阪万博』:「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑 

 大阪・関西万博2025が4月からいよいよ始まる。その実態は会場建設費が2度も上ぶれし、パビリオンの建設が遅れるなど、問題が噴出し続けた。なかでも今回の万博のシンボルともいえる「大屋根リング」の建設は大きな波紋を呼んだが、実際に会場デザインを引き受けた建築家はその意義についてどう考えているのか。

〈ルポ大阪万博〉「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑

〈ルポ大阪万博〉「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑

 『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』より一部抜粋・再構成してお届けする。

 ◆大屋根リング構想

 2025年日本国際博覧会基本計画。

 事務総長の石毛博行が率いる万博協会が2020年12月25日、公表した。会場のデザインやパビリオンの配置、イベント、来場者の輸送など万博全体について網羅した計画だ。

 このなかでは、万博の支出と収入の資金計画を示した。支出は大きく分けて二つ。一つが運営費で、809億円を見込んだ。スタッフの人件費、イベントの運営、会場の清掃などにあてる。入場券の売り上げで702億円、その他の収入(パビリオンの賃料やグッズ販売)で107億円をまかなうとした。

 もう一つの支出が、会場建設費の1850億円。当初の1250億円から1・5倍(600億円増)にした。これが1度目の上ぶれだった。

 増えた600億円の内訳は、暑さ対策などに約320億円、飲食店や物販施設などの整備に約110億円。そして、通路上の屋根の整備で約170億円とした。

 屋根はもともとつくる考えがあり、1250億円のうち約180億円を見込んでいた。さらに約170億円を積んで設計を変え、計約350億円の屋根をつくることになった。

 これが後に波紋を呼ぶ「大屋根リング」への設計変更だった。

 この時は「えいや」の大ざっぱな計算ではなく、それぞれの施設にかかる金額を積み上げて算出した。

 万博担当相の井上信治は基本計画の公表に先立って11日、大阪府知事の吉村洋文、大阪市長の松井一郎と市役所で会った。

 井上は「可能な限り経費は削減する」と話した。増えた分の負担についても、国、府市、経済界で3等分にしたい考えを伝えた。

 吉村はこう応じた。

 「万博成功のためと理解しているが、(建設費)増加の話はこれで最後にしてほしい」

 それから13日後。府市は基本計画に同意した。
 
 松井は記者団に、強調した。

 「万博を成功させるための投資。必要経費だ」

 一方、府市の議会は前後して、政府に意見書を出した。再び上ぶれする事態になれば3等分のルールにこだわらず、「国が責任をもって対応すること」とし、増えたら国がすべて負担すべきだと求めた。

 ◆過激なコンセプト

 「これって誰が喜ぶの?」

 「発想がハコモノ的だ。(高速通信の)『5G』で競う新たなデジタル時代に、誰が上ったり歩いたりするかも分からない不確かなものにそんな金を出すのか」

 「この(未来志向の)万博で、海や空を見るために(大屋根リングを)つくるのかと思うと、何とも不思議だ」

 大屋根リングの建設計画が2020年12月に明るみに出ると、関西の経済界からは疑問や批判の声が上がった。

 考案したのは、建築家の藤本壮介だ。

 1971年、北海道生まれ。東京大学工学部を卒業して、建築家になった。

 2000年に建築設計事務所を東京で立ち上げ、その後はパリにもオフィスを構えた。フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)を受賞するなど、世界でも知られた建築家だ。

 日本では「マルホンまきあーとテラス」(宮城県)、「白井屋ホテル」(群馬県)、「武蔵野美術大学美術館・図書館」(東京都)などを手がけた。

 藤本によると、19年冬から20年春にかけて、建築家の視点から万博協会の関係者と意見を交わす機会があったという。万博協会からその後、パビリオンの配置なども含めて考える「会場デザイン」を引き受けてもらえないかと打診を受けた。

 「最初は万博に対して懐疑的というか、全く意識もしていなくて、『今の時代に万博をやる意味はあるのかな?』と思っていた。納得したうえで引き受けたかったので、いろいろと本を買って、万博の経緯や課題を勉強した。

 僕の中では1970年の大阪万博のような最先端、未来を見せてくれる『見本市』としての万博では、もはやないんだろうと。当然、今回もいろんな新技術が見られると思うが、アップルなど各企業が個別に新たな技術を発表する時代なので、そこが主役の状況じゃないよな、と」

 「ただ、当時は米国のトランプ大統領が世の中を騒がせて、『分断』が叫ばれていた。そんな時代に世界の約8割の国・地域が万博という小さな1カ所に集まり、半年間も一緒に過ごすのはすごいし、クレージーで過激なコンセプトだなと。

 (170年超の歴史がある)万博は1周回って、そのフォーマット自体にすごくポテンシャルがありそうだと感じた。建築家としても『世界が集まる場所をつくる』という以上にやりがいのあるプロジェクトはなかなかないと思った」

 「東京五輪もそうだったし、万博も批判はあるだろうなとは思っていた。しかし自分は建築家なので、たとえ批判されてもつくり上げる側に回る方が、自分にとって納得感はあるんじゃないかと思い、引き受けた」

 藤本は朝日新聞の取材(2024年7月)で、そう振り返った。

 ◆空にはかなわない

 大屋根リングは、突然思いついたわけではないという。藤本は、さまざまな考えをめぐらせていた。

 入場ゲートから流れてきた人が会場を回る導線はどう考えれば良いだろうか。来場者がまっすぐ進むと一部に集中しすぎるので、丸く回るのがスムーズだろう。夏の暑さを考えると、屋根は必要だ。屋根に上れるようにして、屋外劇場みたいに使えないか……。

 2020年夏に夢洲へ行ったのが一つのきっかけとなり、丸い大屋根リングをつくる方向で考えが落ち着いたという。

 「天気がよくて、雲が美しかった。めちゃめちゃきれいな空を見た時に、『建築はこの空にはかなわないな』と思った。それならば、(下から見上げることで)空を切り取れるようなリングをつくり、たくさんの国の人たちみんなで空を見上げるストーリーがいいなと」なぜ、大屋根リングを木造にしたのか。

 藤本によると、欧州や米国など世界的に木造の大規模建築が注目されているという。

 「リングを世界にアナウンスするなら、木造以外はないと思った。樹齢30年ぐらいまでの木は多くの二酸化炭素を吸い、それ以上に年をとると、あまり吸わなくなる。樹齢30年ぐらいで切って、また植林するサイクルができれば、二酸化炭素も吸ってくれるし、建材も半ば自然に供給される」

 「(木は)『未来の建材』とも言われるが、日本ではそんな肌感覚はないだろう。1000年以上の木造の伝統がある日本で、大規模な木造建築が普及しないのはもったいなさすぎると思っていたところ、万博の話があった」

 ただ当初は、大屋根リングのような大規模の木造建築を日本でつくれるかは見通せなかったという。木材を加工して、大屋根リングに使う大きさの集成材をつくれる工場が多くないためだ。

 コストの問題もあるので、鉄骨で同じ規模の大屋根リングをつくった場合の値段を積算してもらった。それを超えない値段で、木造でつくれるなら、木造にしようという方針を万博協会と話し合って決めたという。

 ◆どこにお金をかけるかが大事

 「(鉄骨の値段を)超えるならやっぱり、説明ができないなと。たしかに金額だけを見ると結構あるが、あの規模の建築で坪単価が約130万円は、専門家からすると安いと思っている。あの大きさや性能で344億円。いまの物価上昇の中でゼネコンさんが工夫をしてくれて、額を抑えてくれた」

 「何の印象も残らない万博にならないよう、どこにお金をかけるかが大事だ。(会場建設の)ほかのところへの予算配分を少しずつ抑え、リングにどのぐらいお金をかけるか考えた。リングは日よけの屋根でもあるが、上にのぼれるし、ランドマークにもなる。

 『大阪の万博と言えばこれだ』とわかりやすく伝わる。単に機能的な建物という だけでなく、どれだけ世界に伝わるかも含めた額としては、決して高くないと思っている」

 藤本は大屋根リングの上で盆踊り大会などを開き、「世界のつながりを体感できる特別な場所になれば」と考えている。

 写真/shutterstock

 ◆『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)

朝日新聞取材班
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
2025年2月13日
924円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4022953001

 大阪・関西万博が2025年4月、ついに開幕する。各国パビリオンでの展示のほか、有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会などさまざまな催しがあり、お祭りムードが醸成されるだろう。
 しかし、本当にそれでいいのだろうか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。
巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだ。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。

 ◆目次◆
  第1章 維新混迷
  第2章 膨らみ続けた経費
  第3章 海外パビリオン騒動
  第4章 夢洲が招いた危機
  第5章 万博への直言

 元稿:集英社 主要出版物 集英社オンライン 政治・経済・社会 【話題・『ルポ・大阪万博』】  2025年03月16日  12:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ③大阪万博閉幕後に起きる建物の処理という大問題…35年前の花博「いのちの塔」は閉鎖・放置で雨漏りがひどい

2025-04-01 08:10:30 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ③大阪万博閉幕後に起きる建物の処理という大問題…35年前の花博「いのちの塔」は閉鎖・放置で雨漏りがひどい ■カネがかかりすぎる2025年大阪万博の遺構事業

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ③大阪万博閉幕後に起きる建物の処理という大問題…35年前の花博「いのちの塔」は閉鎖・放置で雨漏りがひどい ■カネがかかりすぎる2025年大阪万博の遺構事業

 ※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

 
 4月13日に開幕する大阪・関西万博は、閉幕後の経済問題も今から指摘されている。なぜ、課題は尽きないのか。万博の取材を長期にわたり続けてきた朝日新聞取材班は「万博とIR(統合型リゾート)の二兎を追った計画が想定通りにならなかった余波が、開催中ばかりでなく開催地の未来にも及んでいる」という――。 

大阪メトロ中央線の新駅「夢洲駅」の開業式典であいさつする大阪府の吉村洋文知事=2025年1月18日、大阪市此花区
写真=共同通信社
大阪メトロ中央線の新駅「夢洲駅」の開業式典であいさつする大阪府の吉村洋文知事=2025年1月18日、大阪市此花区

 ◆四半世紀ほどかけて完成した夢洲駅

 2024年10月31日。大阪メトロ中央線の「夢洲ゆめしま駅」が初めて報道陣に公開された。

 内装を手がけた大阪港トランスポートシステム(大阪市の第三セクター)の鉄道事業部長・森川一弘は、誇らしげに話した。

 「夢洲は万博やIRの予定地でもあり、世界各国から利用客が訪れる。わくわくして地上に出られるよう、設計した」

 夢洲駅(地下2階建て)は隣の人工島・咲洲さきしまにある終点駅「コスモスクエア駅」から3.2キロを延伸して建てられた。大阪市が800億円超を負担するなど、総額で約1000億円に上る見込みのプロジェクトが実を結んだ。

 2001年に着工したが、大阪への五輪誘致の失敗で工事が止まった時期もあり、完成まで四半世紀ほどかかった。

 地下1階の改札階(幅17メートル、長さ190メートル)には16基の改札がずらりと並び、壁面の大型サイネージ(幅約55メートル、高さ約3メートル)が目を引く。災害時などに多くの人がとどまれるよう、柱はほとんどなくした。年齢や性別にかかわらず使える「オールジェンダートイレ」も設けた。

 地下2階のホーム階(ホーム幅10メートル、長さ160メートル)の中央には門の形をした照明をいくつも設け、光のゲートを進むような演出を施した。天井はアルミニウムの素材を使って、運行ダイヤ図を「折り紙風」に表現している。

夢洲駅のホーム。天井は折り紙がモチーフという=2024年10月31日、大阪市此花区
夢洲駅のホーム。天井は折り紙がモチーフという=2024年10月31日、大阪市此花区〔出典=『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)〕

 近未来を感じさせる夢洲駅は万博の会期中、フル稼働が見込まれる。来場者のピーク時には、1日あたり約13.3万人が使う想定となっている。

 だが万博が終わった後は、利用者がぐんと減る可能性が高そうだ。IRの開業が30年秋ごろまでずれ込んだ結果、「空白の5年間」が生じるからだ。

 万博とIRの二兎を追った計画が想定通りに進まなかった余波は、万博中のIR工事中断要請にとどまらず、夢洲駅の今後にも及んでいた。

 府市大阪港湾局の担当者は、市議会常任委員会(24年3月)で説明した。

 「(夢洲の)物流施設の従業員は約300人。その従業員に加え、1日に数千人規模のIR工事作業員の来訪が見込まれており、鉄道の利用も見込める」

 一方、大阪メトロは「空白の5年間」の利用者数を算出していないという(24年11月時点)。広報担当者はこう話した。

 「たしかに万博後の数年は利用者が少ない時期はあるだろう。ただ20年という長期で見れば、全体で黒字化できる」 

 ◆跡地に大屋根リングは残すべきか

 IRを生かした「国際観光拠点」をめざす夢洲の開発は、どう進むのか。

 府市はコンテナターミナルなどを除いた夢洲の中心部を「観光・産業エリア」としている。北から「1期」(70ヘクタール)、「2期」(50ヘクタール)、「3期」(40ヘクタール)に分けて、開発の計画をつくっている。IR予定地が「1期」のほとんどを占め、万博会場の中心部が「2期」にあたる。

 府市が2期開発について23年に市場調査をすると、サーキット場、野外ライブ会場、ホテル、商業施設といった提案が計11事業者から寄せられた。その結果も踏まえて、2期開発の方向性を示す「マスタープラン」を万博の開幕前に公表する考えだ。

 万博の跡地に関する議論で注目されるのが、大屋根リングだ。

 万博協会がリングの利活用法を24年2月に募ると、自治体や大手ゼネコン、木材加工メーカーなど20者から提案があった。このうち有力とみた13者に聞き取りをして、建材として再利用が見込めるのは、全体の約2割(約6000立方メートル)と試算した。価格については、「ほぼ無料」との声が多かったという。

 「リングは圧倒的な存在感ですから、おそらく来場される方は『これは残すべきだ』ってなると思う。いろいろ課題はあるけれど、一部を残してレガシー(遺産)にしていく方がいいんじゃないか」

 府知事の吉村(洋文)は4月、出演したテレビ番組でそう語った。

 ◆閉幕後の万博レガシーへの不安

 リングを完全に残すなら、防火対策などで「300億円程度かかる」(関係者)という声も出ている。それは現実的ではないとして、リングの一部をモニュメントとして残す案も万博関係者らから聞かれる。

 大阪市の担当者は「リングをすべて残すなら、関係機関とさらなる調整も必要になる。マスタープランで、リングの活用案をどこまで書き込めるか分からない」と話した。

 市は万博が終わる頃、2期開発を担う事業者を募り始め、27年春には万博会場の跡地を引き渡したい考えだ。だが、ある幹部は不安も口にする。

 「事業者が見つかるかどうかも、課題になるかもしれない」

 会場中心部に約1500本の木を植える「静けさの森」についても、保存を望む声が上がった。来場者の憩いの場となり、弁当を食べても良いという。完成が近づくにつれて多くのトンボが飛ぶなど、生物たちも森に集い始めていた。

 静けさの森をデザインした忽那くつな裕樹は24年10月11日、夢洲で報道陣に語った。

 「万博協会との約束事としては、(閉幕後に)更地にして返すという話だったが、『そんなことやったら、いのち輝かへんやろ』と。個人的にはこの森をレガシーとして残して、緑が真ん中にある街の未来を描いていくべきだと思っている」

報道公開された静けさの森=2024年10月11日、大阪市此花区
報道公開された静けさの森=2024年10月11日、大阪市此花区〔出典=『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)〕 

 ◆「お荷物」となった過去のレガシー

 ただ、過去の万博のレガシーを残す試みは、成功したとは言いがたい。

 1990年に国際花と緑の博覧会(花博)が開かれた鶴見緑地(大阪市鶴見区・守口市)では、展望台を備えた「いのちの塔」(高さ約90メートル)が、緑地運営の「お荷物」になってきた。いのちの塔は2010年、採算が取れずに閉鎖して、その後は放置されている。内部は雨漏りがひどく、エレベーターも故障で動かない。

放置されている「いのちの塔」=2022年9月30日、大阪市鶴見区
放置されている「いのちの塔」=2022年9月30日、大阪市鶴見区〔出典=『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)〕

 いのちの塔のそばには、松下電器産業(現パナソニック)の創業者・松下幸之助が花博後に市に寄贈した国際陳列館(花博記念ホール)も残っている。

 だがホールの近年の稼働率は、3割に満たない。22年度は25.6%、23年度も29.8%で、ボクシングの試合や地元のカラオケ大会で使われたという。

 古くなった空調の設備などは修理しないといけないが、30年以上前につくられた機材なので、部品が手に入らない。機材を交換するには壁やドアを壊す必要もあり、コストは約2億円に上るとされる。

 ◆花博のレガシー遺構にかさむ赤字

 数年前には、国際園芸博を27年に開く横浜市の担当者が視察に来て、花博のレガシー遺構の現状などを尋ねて帰ったという。応対した大和リースの社員は「花博後に残った施設には、将来の用途や老朽化対策への考慮が甘かったものもある」と話す。

 24年7月に鶴見緑地を訪れた奈良県の男性は印象をこう述べた。

 「いくつかの建物は廃墟のようだ。放置期間が長引けば、修理費もかさむ。イベント後の建物の処理は、来年の万博でも問題になるだろう」

朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)
朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)

 大阪市によると、鶴見緑地には花博のレガシー遺構が八つある。産官学でつくる「懇話会」が、花博の開幕直後に保存を市に提言したという。

だが市は社会のニーズの変化などを踏まえ、いのちの塔や花博記念ホールなど6施設について、「利活用が困難な場合は撤去もやむをえない」とする報告書を19年にまとめている。

 市はレガシー遺構を含めた鶴見緑地の管理委託料として、年6億円余りを大和リースなどに払っている。事実上、緑地の維持費だ。

 大和リースなどは新たな店舗を誘致するなどの集客策で収支の黒字化を狙うが、22年度は約4600万円、23年度も、新設した施設に絡む汚染土の処理費用がかさんで約2億円の赤字に終わった。

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だからコメの値段が下がらない、下げるつもりもない…JA農協のために備蓄米を利用する農水省の呆れた実態
「国立大学」を国が管理するのは先進国で日本だけ…橋爪大三郎「じり貧研究者を量産する文科省は解体すべき」
 
 元稿:ビジネス誌「プレジデント社」 主要出版物 PRESIDENTOnline 政治・経済・社会 【話題・『ルポ・大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』】  2025年03月02日  09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ②経済効果6兆円の胸算用は誰がしたか…大阪万博とIRの「ブラックユーモア」な組み合わせはこうして生まれた

2025-04-01 08:10:20 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ②経済効果6兆円の胸算用は誰がしたか…大阪万博とIRの「ブラックユーモア」な組み合わせはこうして生まれた ■万博誘致が実現に動いた"2015年の会食"

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ②経済効果6兆円の胸算用は誰がしたか…大阪万博とIRの「ブラックユーモア」な組み合わせはこうして生まれた ■万博誘致が実現に動いた"2015年の会食"

 ※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

 4月13日に開幕する大阪・関西万博は、10年前には「夢物語」だったという。実現にいたる経緯はどのようなものだったのか。朝日新聞取材班は「万博の誘致が実現に動いたのは、2015年12月に行われた大阪府知事らと安倍政権との会食だった」という――。

JR大阪駅直結の地下街とつながるエレベーター上に設置された、万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の大型バルーン=2025年2月18日、大阪市北区
写真=共同通信社
JR大阪駅直結の地下街とつながるエレベーター上に設置された、万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の大型バルーン=2025年2月18日、大阪市北区
 

 ◆大阪都構想の政策としての万博とIR誘致

 大阪万博の話がもちあがった2013年の翌14年、誘致に向けた検討が本格的に動きだした。

 大阪維新の会の府議団などは8月6日、府の施策について提言を出した。

 「東京オリンピックが開催される2020年は、IR(統合型リゾート)の誘致が大阪で可能になれば、東西の2極において世界中から日本に注目が集まる年となる」
 「IRとともに(25年に)国際万国博覧会の開催が可能となれば世界中から大阪へアプローチするイベントとなる」

提言にはそんな言葉を並べ、万博の誘致を促した。府知事の松井(一郎)は同じ日、政策企画部企画室に対して、誘致について検討するよう指示した。

 それから9日後。大阪維新の会は、大阪都構想の住民投票に向けた政策素案(マニフェスト)を発表した。

 大阪都として実現する政策として、万博の開催やIRの誘致を掲げた。都構想でめざす街の姿をアピールするのが狙いだった。IRはカジノのほか、ホテル、国際会議場、展示場、ミュージアムなどが集まる統合型リゾートだ。それらを実現して「国際エンターテイメント都市」をめざし、年2%以上の経済成長を果たすという目標を掲げた。

 ◆6カ所の「国際博覧会開催可能地」の例示

 だが翌15年5月17日、大阪都構想は住民投票で否決された。

 反対70万5585票、賛成69万4844票。差はわずか、1万741票だった。

 橋下(徹)は「(住民投票の結果を)大変重く受け止める。悔いのない政治家としての人生をやらせてもらった」と話し、大阪市長の任期(15年12月まで)を終えてから政界を去った。

 都構想はかなわなかったが、万博の誘致は続けられた。

 住民投票から約2カ月後の7月28日。府市や財界の幹部、有識者でつくる国際博覧会大阪誘致構想検討会の4回目の会議で、府が委託した調査会社は「国際博覧会開催可能地」を例示した。選ばれたのは、次の6カ所だった。

 ・彩都東部+万博記念公園(吹田市など)
 ・服部緑地(豊中市)
 ・花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区など)
 ・人工島・舞洲(大阪市此花区)
 ・大泉緑地(堺市)
 ・りんくう公園+りんくうタウン(泉佐野市など)

 府側はこれらについて、開催の規模に合う100ヘクタール(阪神甲子園球場約26個分)以上の用地が確保できると見込んだ。鉄道や道路など、交通の利便性も高いと考えた。

 ◆関西経済界が示した慎重論と難色

 その後の万博誘致を引っ張ったのは、松井だった。都構想が否決されてから半年後の15年11月の知事選で「万博誘致」を公約に掲げ、再選を果たした。同じ日の大阪市長選では、後に「維新の顔」となる吉村洋文が橋下の後継指名を受けて出馬し、初当選した。

大阪府知事選で当選を決めて記者会見に臨む松井一郎=2015年11月22日、大阪市北区
大阪府知事選で当選を決めて記者会見に臨む松井一郎=2015年11月22日、大阪市北区〔出典=『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)〕

 松井の前には、大きな壁が立ちはだかった。万博を開くためには協力が欠かせない関西経済界が、難色を示したのだ。経済界は万博の開催が決まった後、巨額の出資も引き受けている。だが当時は、慎重論が根強かった。

 「投資への効果が期待できない」
 「いまの時代に、いったい何をアピールするのか」

 2005年の愛知万博では経済界が会場建設費の3分の1を負担したが、大阪にはトヨタ自動車のように中核になる企業も見当たらなかった。

 府は約3.3兆円と見積もった府域への経済波及効果を記したパンフレットをつくり、企業を回った。だが、反応は冷ややかだったという。

 ◆府知事が頼った安倍政権とのパイプ

 ある関西財界の幹部は言った。

 「費用対効果をシビアに見る必要があり、(各企業に寄付を割り当てる)『奉加帳方式』による募金は難しい」

 松井が状況を変えるために頼ったのが、安倍政権とのパイプだった。憲法の改正に前向きな維新は、自民の「悲願」を達するための協力相手として期待されていた。松井は首相の安倍晋三や官房長官の菅義偉と親交が深かった。万博が政権の後押しを受けて成長戦略に組み込まれれば、関西経済界も無視できなくなるだろう――。そんな思惑があったとみられる。

 万博の誘致は当時、「夢物語」(府幹部)だと思われていた。事態が動いたのが、15年12月19日の会食だった。東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急。その中にある日本料理店「水簾すいれん」で、松井、橋下、安倍、菅の4人が向き合った。

 松井が万博の必要性を訴えると、安倍は東京五輪後に経済を底上げする一手として、関心を示した。関係者によると、安倍はその場で菅に協力するよう指示。菅はすぐに経済産業省に連絡して、万博について大阪府と検討するよう指示したという。

 ◆急浮上した人口島「夢洲」での開催

 年が明けて2016年1月14日。松井は首相官邸で菅と会い、「大阪万博から55年後の25年に万博を開催したい」と正式に協力を求めた。

 健康・長寿を万博のテーマにする考えも説明した。誘致に挑むには閣議了解が必要になるが、菅は「検討する」と応じたという。

談笑する首相の安倍晋三(右)と官房長官の菅義偉=2015年8月10日、首相官邸
談笑する首相の安倍晋三(右)と官房長官の菅義偉=2015年8月10日、首相官邸〔出典=『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)〕

 「国家プロジェクトとしてやろうという国の意思表示がはっきり出れば、大阪の経済界も参加してもらえると思う」

 人工島・夢洲での開催が、突如として浮上する。

 6つの「開催可能地」が例示されてから約10カ月後の16年5月21日。松井は東京都内で菅に再び会い、会場は夢洲を軸に考える方針を伝えた。

 大阪府・大阪市(府市)はすでに、夢洲をIRの候補地として位置づけていた。交通インフラの整備や周りの開発が進めば、IRの誘致に向けて相乗効果が得られると考えたという。数キロ圏内にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンがあり、集客での利点もあるとみた。

 当時の関係者は後に、こう振り返った。

 「6カ所の候補地が挙がっていたが、(心の中の)『本命』はずっと夢洲だった。堺屋太一さんは70年大阪万博の会場(万博記念公園)で2度目の万博開催を推していたが、さすがに森は開発できない。ほかの候補地も広さの確保などで問題があった」

 ◆万博とIRのセットは「ブラックユーモアのようだ」

 健康・長寿を掲げる万博と、ギャンブル依存症が懸念されるIRをセットで考える発想には、疑問の声も上がった。

朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)
朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)
 
 「ブラックユーモアのようだ」(大学名誉教授)

 「(万博とIRは)相性が悪い」(府関係者)

 だが「維新一強」の府市は、万博とIRの二兎を追う戦略で突き進む。府は誘致構想の原案を取りまとめ、6月16日に経産省などに伝えた。

 テーマは「人類の健康・長寿への挑戦」とした。発展途上国での飢餓や感染症の広がり、先進国で進む高齢化などを踏まえ、設定したという。府が成長戦略の柱に据える先端医療分野を生かす狙いがあった。

 会場の候補地は「夢洲」と記した。参加は150カ国・機関、来場者数は3000万人を目標として掲げた。会場建設費は1500億〜1600億円と見込み、全国での経済波及効果は6兆円とはじいたのである。

【関連記事】
【第1回】開催まで2カ月を切ったのに…巨額の公費をつぎこんだ大阪万博が盛り上がりに欠けるワケ
だからコメの値段が下がらない、下げるつもりもない…JA農協のために備蓄米を利用する農水省の呆れた実態
手取りは増えない、増やすつもりもない…増税はすんなり決めるのに、減税は拒み続ける自民党・財務省の非常識
これで人口8000万人になっても発展していける…経済アナリスト・馬渕磨理子が指摘する「日本経済浮上の兆し」
「国立大学」を国が管理するのは先進国で日本だけ…橋爪大三郎「じり貧研究者を量産する文科省は解体すべき」
 
 
 元稿:ビジネス誌「プレジデント社」 主要出版物 PRESIDENTOnline 政治・経済・社会 【話題・『ルポ・大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』】  2025年02月27日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ①「開催まで2カ月を切ったのに…巨額の公費をつぎこんだ大阪万博が盛り上がりに欠けるワケ」

2025-04-01 08:10:10 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ①「開催まで2カ月を切ったのに…巨額の公費をつぎこんだ大阪万博が盛り上がりに欠けるワケ」 ■「負の遺産」への万博誘致を推し進めた大阪維新の会

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:『ルポ 大阪・関西万博の深層』迷走する維新政治 ①「開催まで2カ月を切ったのに…巨額の公費をつぎこんだ大阪万博が盛り上がりに欠けるワケ」■「負の遺産」への万博誘致を推し進めた大阪維新の会

 ※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

 大阪・関西万博が2025年4月13日、ついに開幕する。『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)の執筆を担った朝日新聞記者の箱谷真司さんは「大阪への注目が高まるのは嬉しいことだが、巨額の公費をつぎ込んだからには成果は厳しく問われるべきだ」という――。

 ◆シンボルは344億円の「世界一高い日傘」

 海風の心地よさをかき消すような、強い日差しが注いでいた。数分歩くとシャツに汗がにじみ、秋の訪れはまだ感じられない。

 2024年10月11日午後3時。大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲ゆめしま(大阪市此花区)では、開幕が約半年後に迫った大阪・関西万博の会場建設が急ピッチで進んでいた。

 目を引いたのが、万博のシンボル・大屋根リング。1周2キロ(直径675メートル)で、高さは12〜20メートル。世界最大級の木造建築物とされ、会場中心部を取り囲むように建つ。建設費は344億円に上り、野党の国会議員が「世界一高い日傘」と批判するなど、物議をかもした。

 リングの75段の階段を上がり、来場者が歩ける空中歩廊に着いた。すでに1周はつながり、芝生を張る作業が続いていた。そこから会場中心部を見渡すと、「万博の華」と言われる各国のパビリオン(展示館)を建てる現場が見えた。

 完成した海外パビリオンはなく、大半は鉄筋の足場が組まれていた。数十のクレーンが立ち並び、重機の鈍いエンジン音や「カンカンカン」と金属をたたく音が響く。長袖・長ズボン姿の作業員らは、木製の板を運んだり、施設の外装をチェックしたりしていた。

パビリオンなどの建設が進む大阪・関西万博の会場=2025年2月12日、大阪市此花区の夢洲
写真=共同通信社
パビリオンなどの建設が進む大阪・関西万博の会場=2025年2月12日、大阪市此花区の夢洲
 ◆万博開催への相次ぐ疑問と批判

 空気が変わったと感じたのは、2023年7月だった。

 各国が独自に建てるパビリオンの建設遅れが表面化し、国民から大きな批判を招いた。さらにその後、公費が3分の2を占める会場建設費の2回目の上ぶれが決まり、当初想定の2倍に近い最大2350億円に膨らんだ。建設の現場では爆発火災が起きた。

朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)
朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書)

 細胞(赤色)と水(青色)をモチーフにした公式キャラクター「ミャクミャク」が腕を突き上げるポスターは街中にどんどん増えたが、開催に向けた機運はなかなか高まらなかった。

 大阪で強い地盤を誇る維新も、万博への批判が一因となって低迷する。

 府内の首長選などでは、公認した候補が相次いで敗れた。大阪維新の会を母体とする国政政党・日本維新の会は一時、野党第1党をうかがう勢いだったが、立憲民主党や国民民主党が躍進した24年10月の衆院選で、議席を減らした。

 ◆巨額の公費をつぎ込んだ成果のゆくえ

 大阪・関西万博は2025年4月13日、ついに開幕する。

 有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会……。パビリオンでの展示以外にもさまざまな催しがあり、「明るいニュース」を見聞きする機会も増えると思う。関西出身の私にとっても、大阪への注目が高まるのは嬉しいことだ。

 一方で、巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われる。人口減が急速に進むなか、お金や人材といった限られた資源の使い道は、これまで以上に真剣に考えないといけない時代だ。東京五輪をめぐる談合事件を受け、巨大イベントの開催に厳しい視線が注がれている状況でもある。

 万博が終われば、主催側は「成功」をしきりにアピールするだろう。だがそれを額面通りに受け取って良いのか、公費に見合うイベントだったのか、貴重な機会を十分に生かし切れたのかは、一人ひとりが考えるしかない。

 
 元稿:ビジネス誌「プレジデント社」 主要出版物 PRESIDENTOnline 政治・経済・社会 【話題・『ルポ・大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』】  2025年02月20日  09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【マイナ保険証】:「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

2025-03-30 07:03:20 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【マイナ保険証】:「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【マイナ保険証】:「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

 昨年12月に健康保険証の新規発行が停止されてから間もなく4カ月。今年12月以降は現行の保険証が使えなくなるが、政府が利用促進を図るマイナ保険証のトラブルは相変わらず絶えない。

 健康保険証とマイナ保険証の併用を訴える全国保険医団体連合会(保団連)が27日、昨年12月2日以降のマイナ保険証利用に関する実態調査の中間集計を公表。全国の医療機関を対象に先月13日から実施し、今月14日までに得た回答8330件を集計した。全国調査は健康保険証の新規発行停止後、初めてだ。

 政府はマイナ保険証のメリットのひとつに「窓口業務の負担軽減」を掲げるが、調査に寄せられた窓口業務についての回答は、「とても負担を感じる」が15.7%、「負担を感じる」が45.2%。約6割の医療機関が業務負担を感じているのが実態だ。

 これまで散々指摘されてきたマイナトラブルも改善している様子はない。「特にトラブルはない」との回答はわずか10.9%。残る9割の医療機関は何かしらのマイナトラブルに見舞われており、患者氏名などが「●」で表示されるケースが最多の64.2%。「カードリーダーの接続不良・認証エラー」(43.6%)や「資格情報が無効」(37.9%)も解消されていない。

 とりわけ問題なのが「マイナ保険証の有効期限が切れていた」というケース。昨年5月以降のトラブルを集計した前回調査(10月公表)では20.1%だったのに、今回は30.6%に増えている。なぜか。

 マイナカードの有効期限は10年。一方、マイナカードを保険証として使うために必要な「電子証明書」の期限は5年。ただでさえややこしいのに、券面に記載されているのはカードの有効期限だけ。電子証明書の期限は自分で確認して券面に記入する必要がある。この不親切な仕組みのせいで、電子証明書が切れている「ウッカリさん」が続出しているのだ。

 病院で「アッ!」と気が付いても、時すでに遅し。電子証明書は原則、役所窓口での更新が必須。不親切かつ面倒である。

 マイナ制度を所管する総務省は、2025年度に更新が必要な電子証明書を約1580万件と想定している。26年度は約1430万件、27年度は2100万件に上る。これから期限切れに伴う「資格無効の多発が懸念される」(保団連事務局)のだ。

 現状、医療機関の大半はマイナトラブル時に健康保険証を使っている。やっぱり併用した方がいい。

 ■関連記事

 元稿:日刊スポーツDIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・厚労省・マイナ保険証】  2025年03月30日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《余録・03.30》:漫画家、手塚治虫(故人)は…

2025-03-30 02:03:30 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

《余録・03.30》:漫画家、手塚治虫(故人)は…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・03.30》:漫画家、手塚治虫(故人)は…

 漫画家、手塚治虫(故人)は1970年の大阪万博と関係が深かった。開催直前、コミック誌「週刊少年マガジン」(講談社)の表紙を「万博怪獣エキスポラ」と題した手塚の奇抜な絵が飾った

 ▲シンボルだった太陽の塔に、各パビリオンを合体させた怪獣だ。巻末に「(怪獣が)どんな偉力を見せるかは(開幕してからの)お楽しみだ」とメッセージを寄せた

1970年の大阪万博。フジパンロボット館でロボットとの交流を体験する子供たち=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で

 ▲鉄腕アトムの作者である手塚自ら、パビリオン・フジパンロボット館のプロデューサーも務めた。41体のロボットと見物客がふれあえる施設で、人気を博した。テーマのひとつは「ロボットの未来」。見分けがつかないほど人に似たロボットが量産され、人に取って代わる世界が描かれた

 ▲事情に詳しい橋爪紳也・大阪公立大学特別教授によると、未来のロボットについて「それはあなたです」と見物客に指摘する謎かけのような展示もあった。「その証拠にあなたは時々、誰かに使われているロボットみたいだと思うでしょう」などと問いかけて出口に。「文明への鮮烈な風刺でした」と橋爪さんは評する

 ▲来月開幕の大阪・関西万博でもロボットは主要テーマだ。「いのちの未来」館は人間そっくりのアンドロイドやロボット約30体が未来を表現するという

愛知県児童総合センター(同県長久手市)でいまも活躍を続けるフジパンロボット館の楽団ロボットたち=同センター提供

 ▲手塚の予見に現実が近づいてきたのかもしれぬ人工知能(AI)時代のロボットだ。ちなみにフジパン館にあった楽団ロボットなど5体はいまも愛知県児童総合センター(長久手市)で活躍中。子どもたちに夢を与えている。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年03月30日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・03.16》:大阪万博1ヵ月 なお課題は山積している

2025-03-16 09:31:55 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

《社説①・03.16》:大阪万博1ヵ月 なお課題は山積している

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・03.16》:大阪万博1ヵ月 なお課題は山積している 

 機運が高まらない。開幕まで1カ月となった大阪・関西万博だ。

 前売り券の売れ行きにそれが表れている。目標の1400万枚に対し、今月5日時点で800万枚余と6割に満たない。うち700万枚は経済界が企業に引き受けさせた分である。

 入場券収入は運営費に充てられる。販売低迷が続けば収支が赤字に陥る可能性がある。これまでも多額の公金が投入される会場整備費などの膨張が批判されてきた。この上、税金で赤字の穴埋めをするなし崩しは許されない。

 売りにしてきた「並ばない万博」が裏目に出た。予約制で混雑を防ぐためだったが、入場券購入の仕組みが複雑になりすぎた。

 ネットでID登録し、電子入場券を事前購入する。さらに来場日時の予約、交通機関や入場ゲートの選択、パビリオンや催事の申し込み…と慣れない人は大変だ。しかも観覧先の予約は抽選で、希望がかなうとも限らない。

 批判を受け、コンビニで買える紙チケットや予約枠に空きがある日の当日券販売など、ここにきて対策が次々打ち出されている。だが、予約済みの人と、動きが読めない当日券の人をうまくさばけるのか、かえって混乱を招きかねないとも懸念されている。

 そもそも予約制としてきた背景には入場者を制限せざるを得ない立地上の制約がある。会場の夢洲(ゆめしま)は人工島のため、アクセスはシャトルバスで橋を渡るか、地下鉄で乗り入れるかしかない。

 1日20万人超の来場者を見込む公共交通の運行にわずかでもトラブルが生じれば、どうなるか。カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)の建設と抱き合わせて夢洲開発に万博を組み込んだ「つけ」ともいえる。

 海外パビリオンの建設遅れも響く。自前建設する47カ国のうち建設工事の完了証明を得たのはわずか2割。1970年大阪万博の月の石、2005年愛知万博の冷凍マンモスといった集客の目玉が見当たらない中、何をどう楽しめるかはっきりしないのでは入場券販売が伸び悩むのも当然だ。

 入場券購入のID登録を通じて個人情報が流用されないかも懸念材料だ。万博にかかわる国内外の関連当局や協賛企業、広告会社などに提供される場合があるというが、明確な歯止めが要る。真夏の熱中症も侮れない。

 主催する国や大阪府・市がこれらの疑問、懸念一つ一つに解を示すことができなければ、デメリットは看過できないものになる。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月16日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.23】:万博チケット/「入場者第一」に立ち返れ

2025-02-25 06:00:40 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【社説①・02.23】:万博チケット/「入場者第一」に立ち返れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.23】:万博チケット/「入場者第一」に立ち返れ 

 事業費の膨張や建設の遅れなど多くの問題を抱えながら、大阪・関西万博の開幕まで50日を切った。一部パビリオンの公開など機運を高める仕掛けが相次ぐ中で、浮上した新たな問題がチケットの売れ行き不振だ。

 日本国際博覧会協会(万博協会)は前売りだけで1400万枚の販売を見込むが、現状は800万枚弱と半分強にとどまる。うち約700万枚は企業が購入しており、市民向けの販売低迷は目を覆うばかりだ。

 地元経済界のトップとして企業にチケット購入を働きかけてきた関西経済連合会の松本正義会長も「企業の責任は全うした」と、追加購入に否定的な考えを示す。万博協会はチケット販売や入場方法について、入場者第一の立場に立ち返って再検討してもらいたい。

 協会は当初、スマートフォンを活用した電子入場券を徹底する方針だったが、事前に日時の指定が必要な上、勤務先など個人データの入力も求められるなど手続きが煩雑で、購入意欲は高まらなかった。

 こうした手法を協会が取り入れたのは「並ばない万博」を目指したためだ。それ自体は評価できるが、さまざまな立場の人がチケットを買いやすいよう、もっと配慮するべきだった。

 このまま販売低迷が続けば、万博の収支が赤字になる可能性は否定できない。吉村洋文大阪府知事の要請を受けて、石破茂首相は当日券導入の方針を打ち出した。首相に言われるまで動けないところに、硬直した協会の組織運営が透けて見える。

 万博の会期は184日間に及ぶ。過去の万博の成功体験から「始まれば人気に火が付く」との声も聞くが、社会環境の変化を無視した楽観論に聞こえる。

 万博協会は混雑緩和のため、近隣の専用駐車場に車を置きシャトルバスで会場に向かう「パーク・アンド・ライド」について、料金を時期や時間などに応じて変動させる「ダイナミックプライシング」を導入した。この手法は、入場チケットの価格設定にも採り入れられるのではないか。

 社会の関心を高めるには、全容を早く発表することが重要になる。魅力的な内容なら、おのずとチケットも売れるはずだ。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・02.11】:赤字責任は?ID取得で個人情報抜き取り?不安なままの大阪・関西万博

2025-02-18 07:40:10 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【政界地獄耳・02.11】:赤字責任は?ID取得で個人情報抜き取り?不安なままの大阪・関西万博

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・02.11】:赤字責任は?ID取得で個人情報抜き取り?不安なままの大阪・関西万博 

 ★4月13日の開幕までいよいよ2カ月となった大阪・関西万博。工事は遅延、目玉企画なし、参加辞退のパビリオンもちらほら出て前売りチケットは売れず。国民人気は薄い。その後のカジノ建設念頭主導したのは大阪維新の会で、誘致を始めチケット販売に大阪の衛星都市の子供たちの動員や企業に精力的に販売したがうまくいかず、そうなると国策だから政府仕事逃げ始めた。赤字の責任をどこが引き受けるか、開幕前からそんな報道が目立つ。

写真・図版
 
 新たにポスターなどに使われる大阪・関西万博のPR画像=2025年日本国際博覧会協会提供

 ★万博のチケットを購入するためには万博IDの登録が必要になる。それを5日、衆院予算委員会でれいわ新選組共同代表・大石あきこが政府に問うた。「万博IDを取得する時、チケットを買う方の個人情報が抜き取られると今、Xで話題だ。万博協会の個人情報保護方針に同意しないとチケットが買えず、個人情報が抜き取られる」と指摘した。ユーザーの基本情報(氏名、ニックネーム、性別、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス、パスポート番号、国籍または居住国に関する情報等)、生体情報(顔画像、音声、指紋等)、所属先に関する情報(企業名、団体名、部署名、役職等)と濃厚な内容だ。政府参考人として呼ばれた内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理・茂木正は「万博IDを取得するときに必要なものは非常に限定的で氏名、生年月日、電話番号、メールアドレス、居住国、これが必須情報、それ以外の情報は万博IDの取得時には不要」とした。

 ★大石は「それしか使いませんと言っているだけで、個人情報保護方針には、これだけ抜きますよと書いてある。だから問題だと言っている」と問うと、茂木は「御指摘の個人情報保護方針は協会が定める個人情報保護に関する方針だが、これは業務を進めていく上で必要な個人情報の扱いをある意味包括的に定めている方針。来場者の個人情報もあるが、万博会場で働かれる職員の方、これは日本人も外国人もいる。包括的に」と説明した。大石がたださなければそんな説明はされない。聞かれないから答えないの典型だ。ID取得に不安を覚えた。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年02月11日  07:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・02.16】:迫る万博開幕 入場券の販売見直しが急務だ

2025-02-17 05:00:45 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【社説②・02.16】:迫る万博開幕 入場券の販売見直しが急務だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.16】:迫る万博開幕 入場券の販売見直しが急務だ

 巨大イベントの開幕まで2か月を切ったが、前売り券の売り上げが思うように伸びていない。来場者を呼び込めるよう、魅力の発信と販売方法の改善を急がねばならない。 

 4月13日に開幕する大阪・関西万博の前売り券は、運営主体の日本国際博覧会協会が1400万枚の販売を目標に掲げているが、まだ半分程度しか売れていない。すでに売れた券の多くは、経済界への割り当て分とみられている。

 2005年の愛・地球博(愛知万博)は、開幕の半年前には目標の800万枚をほぼ達成していた。大阪・関西万博の出足の鈍さが目立つ結果となっている。今後は、個人による購入をどう増やしていくかが課題だ。

 前売り券の販売促進には、会場のパビリオンやイベントの魅力発信が欠かせない。日本からは、iPS細胞で作った「心臓」や火星の石、人気のアニメやゲームを活用した出展が予定されている。

 しかし、万博の公式サイトを見ても、抽象的な理念の説明に終始し、展示の内容などを明らかにしていない国が少なくない。

 協会は、価値観が多様化する中、「万博の目玉は絞れない」としているが、それでは来場者は何を楽しみにすればいいのか。参加国と連携し、より具体的な展示物や体験内容の紹介に努めるべきだ。

 販売の不振は、前売り券にあたる電子チケットの購入方法が複雑なことも一因だとされる。最初に公式サイトで「万博ID」を取得し、前売り券を購入する。

 そのうえで来場日時を指定し、さらに抽選や先着順となるパビリオンやイベントについては、別途予約の申し込みを要する。

 会場の混雑を避け、並ばずに済むよう採用された方式だが、予約を徹底するあまり、煩雑さが増し、敬遠された面は否めない。

 協会はこれまで前売り券のみの販売を想定していたが、大阪府の吉村洋文知事らは5日、協会を監督する国のトップである石破首相に会い、会場で予約なしで買える「当日券」の新設を要望した。

 チケットの販売数を伸ばすためには、会場で簡単に買える仕組みが必要だと判断したのだろう。協会は、首相の指示を受け、当日券販売の検討を始めた。

 実現すれば「並ばない万博」は看板倒れになりそうだ。また、当日券を買っても、予約で埋まった人気パビリオンには入れない可能性があるなど、不透明な点も残る。現場が混乱しないよう、適切な運用方法も重要な検討課題だ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月16日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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