【社説②】:若者の大麻使用 危険性伝え拡大防止を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:若者の大麻使用 危険性伝え拡大防止を
大麻に絡む事件で検挙される人が急増している。
法務省が公表した2020年版犯罪白書によると、19年は前年より22%増えて4570人となった。増加は6年連続で、4千人を超えたのは初めてだ。
特に若年層の増加が目立つ。30歳未満は31%増の2559人で全体に占める割合が56%に達した。
若い世代に乱用が広がっている実態が浮かび上がったと言える。
警察は取り締まりを徹底して大麻のまん延を防ぎ、厚生労働省などと共に大麻の害を若年層に伝える活動をさらに強化すべきだ。
覚醒剤や大麻などを合わせた薬物犯罪全体の検挙数が1万4千人前後で推移する中で、大麻はこの6年で3倍近くになった。
年齢層別では、20歳未満が前年比42%増の609人と増え方が急激だ。道内でも18年に12人増え15人となった。
厚生労働省によると、「大麻は害が少ない」といったネット上の誤った情報を若者が軽信している可能性があるという。一部の国で合法化されていることも背景にあるかもしれない。
危険ドラッグの取り締まりが強化されたため大麻に流れる「大麻回帰」という現象が起きているとの見方もある。覚醒剤より安価に入手できることも大きいようだ。
しかし大麻はゲートウェイドラッグと呼ばれ、毒性の強い薬物に移る入り口になると指摘される。
大麻に含まれる成分は記憶障害などを引き起こすと考えられ、依存性もある。危険性は明白だ。
若者に乱用が広がる現状は将来に禍根を残しかねない。正しい情報を伝える取り組みが重要だ。
入手先になることが多いとされるダンスクラブやライブハウス、SNSなどを通して、若者が大麻の実態を認識できるような工夫が必要だろう。
滋賀県警は大学生ボランティアに協力してもらいツイッターに大麻の危険性を訴えるマンガを連載している。参考にしたい。
学校での薬物乱用防止教育の拡充も求められる。
今年は大学の運動部員による大麻使用も相次ぎ発覚した。多くの部員を抱え、指導者の目が行き届かなくなっているのではないか。
大麻の密輸事件の摘発も増えている。水際対策を強めてほしい。
検察や刑務所など関係機関は、検挙された若者が社会に戻る際、支援施設や依存者の自助グループにつなげるなど、立ち直りを支える手だてをいっそう考えたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年11月26日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。