路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

2025-01-11 02:01:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

 東京電力福島第1原発事故で生じた「除染土」の処分が実現しない限り、福島の復興は完了しない。

 事故では大量の放射性物質が広範囲に放出された。福島県内の住宅地や農地などの除染で集められた土は約1400万立方メートルに及び、東京ドーム約11杯分に相当する。原発の立地する双葉、大熊両町に設けられた中間貯蔵施設に搬入された。

 地元は最終的に県外で処分することを条件に施設の建設を容認した。保管開始から30年に当たる2045年3月までに処分を終えることが法律で定められている。

東京電力福島第1原発(奥)の周辺に、除染で出た土を保管する中間貯蔵施設が広がる=福島県双葉町で2024年3月3日、本社ヘリから渡部直樹撮影

 その実現に向けて、政府は昨年末、すべての閣僚が参加する会議を設置した。今夏までに処分の具体的な工程表を策定する方針だ。

 国は放射性物質濃度が一定の水準を下回った除染土を再利用する方針を打ち出している。道路の盛り土や農地の造成など全国の公共事業で使うことが想定される。

 県内では、こうした用途での安全性を確認するための実証事業が進められている。国際原子力機関(IAEA)は昨年9月、政府の計画について「安全基準に合致している」との判断を示した。

 ただ、科学的に安全とされても、それだけで再利用の受け入れが進むわけではない。不安や風評被害への懸念が払拭(ふっしょく)されていないからだ。

 除染土の4分の1は汚染のレベルが高く、再利用しないことになっている。これらは県外で最終処分されるが、スケジュールや場所は決まっていない。

 こうした状況について、国民の理解は進んでいない。環境省が23年12月に実施した調査によると、除染土の再利用や最終処分を知らない人の割合は福島県外では7割以上に達した。

 福島原発から供給された電力は首都圏を中心に使われてきた。消費地こそ重く受け止めなければならない問題だ。

 廃炉作業も予定より遅れ、古里を奪われた人々の焦燥感は強まっている。事故の後始末の道筋を早急に示すのが政府の責務だ。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月11日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

2024-12-19 15:00:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

〈福島第1原発事故を見つめた14年〉①
 
 東京電力福島第1原発事故の発生初期から取材班キャップを6年ほど務め、その後は編集委員として、今なお深刻な影響を与え続ける事故の実態を取材し続けてきました。

 ◆どうして途中で追うのを止められる?

 「ずっと同じ取材を続けられるね」と問われることもあります。
でも福島の原発事故は歴史的な大事件で、私にとっては既存の価値観を根底から揺さぶられました。
 
事故収束作業が続く東京電力福島第1原発(奥左から1~4号機)と、県内各地の除染で発生した汚染土の貯蔵施設(2024年11月撮影)

 事故収束作業が続く東京電力福島第1原発(奥左から1~4号機)と、県内各地の除染で発生した汚染土の貯蔵施設(2024年11月撮影)

 事故収束作業は10年や20年で終わるようなものではありませんし、どう終わらせるのかもはっきりしません。
 
 まき散らされた膨大な放射能の影響は、30年かけてやっと半分になるので、元の水準に下がるまでざっと300年かかります。
 
 私が一生かけても終わらない状況なのに、どうして途中で追うのを止められるでしょうか?

 ◆被災者から問いに、啖呵を切って…

 かつてそろそろキャップを後進に、という話が持ち上がったとき、上司から「この後どうしたいんだ?」と問われ、即座にこう懇願しました。

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 元稿:東京新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【記者コラム】  2024年12月18日  15:00:00  これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。

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【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

2024-12-04 05:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

 政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故を巡って発生した「除染土」の処理に向け、具体策を検討する全閣僚会議を設置し、月内に初回会合を開く方針を固めた。2045年までに福島県外で全量を最終処分する必要があるが、受け入れ先の確保などで課題が指摘されており、省庁横断で取り組むことで対応を加速させる狙いがある。

 ■仮設住宅の展示棟で「同窓会」、東日本大震災後に避難生活送った住民が再会…岩手県住田町

首相官邸
首相官邸

 複数の政府関係者が明らかにした。 

 会議のトップは林官房長官が務め、復興相、環境相、国土交通相、総務相、農相ら全閣僚が参加する方向だ。除染土の処理に関わる省庁の枠を環境省などの一部から広げ、政府として多角的に問題に対処する姿勢を明確にする。

 除染土は、原発事故後に住宅地や農地などで実施した除染作業の際にはぎ取られた土。同原発が立地する同県大熊、双葉両町に設けられた中間貯蔵施設に累計約1300万立方メートルが搬入されており、東京ドーム約11杯分の量になる。中間貯蔵のあり方などを定めた法律で、国は45年までに県外で最終処分を完了させるよう義務づけられている。

除染度を巡る状況
除染度を巡る状況

 除染土の4分の3は、放射性セシウム濃度が1キロ・グラムあたり8000ベクレル以下で、安全に再利用できる基準を満たしている。政府は8000ベクレル以下の土は、飛散防止の対策を行った上で、道路工事のアスファルトの土台に使用するなど、公共事業の資材を中心に活用することを検討している。残りは埋め立てなどで最終処分する考えだ。

 政府はこれまで、除染土に通常の土をかぶせた畑でキュウリやダイコンを収穫したり、道路の盛り土に活用したりと、福島県内で安全性を確認する実証事業を行ってきた。

 一方で、環境省は22年度、東京都新宿区の新宿御苑などで花壇や芝生での再利用の実証事業を計画したが、地元の反対で頓挫した。

 政府は今後、公共事業を発注する国交省、農地利用を所管する農林水産省など、各省庁間で役割を分担し、処理を具体化させていく方針だ。

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 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・災害・東日本大震災・福島第一原発事故】  2024年12月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを

2024-11-19 07:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを 

 国内の原子力施設では史上最悪の事故を起こした東京電力福島第1原発の2号機から溶け落ちた核燃料(デブリ)が初めて取り出された。小石状の約5ミリ大で重さは約07グラム。廃炉に向けて一歩前進との評価も、東電などからは聞こえてくる。

 しかし、デブリは炉心溶融(メルトダウン)の起きた13号機に推計で約880トンもある。採取開始は当初計画より3年遅れ。国や東電が目標とする2051年までの廃炉完了は現実的に不可能ではないのか。計画をこのままにしておくのは無責任だ。抜本的な見直しが求められる。

 デブリは放射線量が非常に高いため人は近づけず、取り出しには遠隔操作の機械やロボットを使わざるを得ない。初歩的ミスやカメラの不具合などで作業着手は3回延期された。事故発生から13年半たって、今回初めて取り出せたものの、わずかな量。試験取り出しとの位置付けで、展望が開けたわけでもない。

 今回のデブリは、原発運転時の核分裂で生じる放射性物質が検出され、核燃料の一部だと分かった。今後1年程度かけて分析を進め、取り出し工法の検討などに生かすという。本格取り出しは1年以上も後になるのだろうか。

 しかも、13号機ごとにデブリの状態は異なり、今回の分析結果だけでは、デブリの全体像はつかめない。

 計画では、30年代初頭に最もデブリの多い3号機で大規模な取り出しを始める。ただどうやって取り出すか決まっておらず、先は見通せない。

 そもそも880トン全て取り出すのに何年かかるのか。取り出したデブリはどこに置くのか。作業に伴い生じる放射性廃棄物も膨大な量になる。福島県や住民は、どちらも県外搬出を望んでいるが、受け入れる所があるだろうか。

 深刻な事故を起こした米国のスリーマイルアイランド原発では、10年かけ、ほとんどのデブリを取り出した。しかし今もわずかに残っている。

 デブリの量は福島の2割弱しかなかった。制御棒などと均一に溶けて圧力容器内にとどまったが、福島は原子炉のタイプが違うため、デブリは均一ではない。圧力容器の外にある格納容器にまで達してしまった。そんなデブリの取り出しは世界に例がなく、極めて難しい。成功例が当てはまるとは到底思えない。

 加えて、スリーマイルでは仮とはいえ、搬出先が決まってから作業に入った。たとえ取り出せたとしても、置き場の決まっていない福島とは前提条件が全く異なっている。

 むしろ、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故対応の方が参考になるかもしれない。デブリは取り出さず原子炉建屋ごとコンクリートで覆う「石棺」で放射性物質の飛散を防いでいる。専門家の中には、この方法を勧める人もいる。

 51年までに廃炉を完了する方針は、事故発生から1年もたたないうちに決められた。国や東電は、その後の知見を踏まえつつ、デブリ取り出しが進まない現状に誠実に向き合うべきだ。計画を練り直さなければならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月18日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、

2024-11-15 06:10:15 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、 

 雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、本県の初代民選知事・岡田正平だった。1949年の県議会本会議で、こう訴えた

 ▼「日本の政治は明治の薩長藩閥の政治以来常に日の当たる地域に向けての政治だった」「新しい地方自治法が敷かれても今日なお暖国中心の政治が行われ、積雪寒冷地帯は画一行政の弊に苦しんでいる」

 ▼かつては中央省庁に雪対策を陳情しても「どんな大雪でも春になれば解けてなくなるでしょう」と、軽くあしらわれたこともあったという。そんな感覚は今でも根強いのか。先日の本紙記事を読んでそう思った

 ▼原発の重大事故と大雪が重なった際、屋内退避などにはどう取り組めばいいのか。不安を抱える県内の自治体からは詳細な対応基準を求める声が上がる。それなのに中央の当局からは、つれない声しか聞こえてこないようだ

 ▼事故時の屋内退避の運用を検討するチームを設けている原子力規制委員会は、自然災害での対応の検討は「範疇(はんちゅう)外」としている。原子力防災を担当する内閣府は、被ばくを避けるより自然災害対応を優先する「基本的考え方」を提示しているので「解決済み」との立場だという

 ▼自宅に退避したものの、大雪がなお続いたとしたら。雪下ろしはどうしたらいいのか。自宅からさらに別の場所には避難できるのか。この地に生きる身からすれば、不安は尽きない。そうした憂いに寄り添うことがなければ、再稼働の地元同意など到底おぼつかないのだが。

 元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【日報抄】  2024年11月15日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.14】:デブリ初回収 廃炉の難しさ浮き彫りに

2024-11-15 06:10:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.14】:デブリ初回収 廃炉の難しさ浮き彫りに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.14】:デブリ初回収 廃炉の難しさ浮き彫りに

 廃炉に向けて重要な一歩であることは間違いない。同時にその困難さが改めて浮き彫りになったともいえる。

 本当に計画通りに廃炉ができるのか。工程を見直す必要はないのか。政府と東京電力は説明を尽くしながら、着実に作業を進めなければならない。

 東京電力が福島第1原発2号機で溶融核燃料(デブリ)を試験的に取り出したと発表した。2011年3月の事故後初めてとなる。

 回収したのは小石状の約5ミリ大で、重さは約0・7グラムだ。12日には原発敷地外に搬出し、茨城県にある日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送した。1年程度かけて詳しく分析する。

 炉心溶融が起きた1~3号機にデブリは計880トンあると推計されている。極めて強い放射線を出し、その取り出しは廃炉工程の最難関とされる。

 試験的とはいえ初めて回収に成功したことは前進だが、課題も明らかになった。

 政府と東電は、事故から30~40年となる41~51年に廃炉を終える計画を描いている。

 デブリの取り出し開始は当初21年の計画だったが、既に3年遅れたことになる。原子炉格納容器の内部調査が難航し、機材の開発も遅れたことが大きな要因だ。

 今後は研究所に輸送されたデブリを活用して取り出しの工法や保管方法の検討に入るが、技術的な課題は山積している。将来の処分場所も決まってない。

 武藤容治経済産業相は「一部の作業に遅れが生じているが、全体の工程に現時点で影響はない」と述べ、計画に変更はないとした。

 しかし、51年までの廃炉は「現実的ではない」「極めて難しい」と指摘する研究者もいる。

 先行きが見通せない状況を最も不安に思っているのは福島原発事故の被災者だ。政府と東電は廃炉を巡る状況について丁寧に説明し、理解を得る必要がある。

 東電の管理能力不足が露呈したことも深刻な問題だ。

 デブリ取り出しは8月に開始したが、格納容器に回収装置を押し込むパイプの並び順を間違える初歩的ミスが初日に発覚し、中断を余儀なくされた。再開後はカメラが映らなくなる不具合が発生し、2度目の中断を迫られた。

 福島第1原発の廃炉は必ず実現しなければならない国家的事業だ。東電はその使命感と緊張感を忘れてはならない。

 11日に発足した第2次石破茂内閣は近くまとめる経済対策で、安全性が確認された原発を最大限活用する方針を明記する予定だ。

 東電柏崎刈羽原発についても政府は再稼働を目指している。岸田文雄前政権時代から原発回帰を鮮明にしているが、福島原発事故と廃炉の行方から目を背けるようなことがあってはならない。

 元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月14日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

2024-11-13 05:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ

 福島第一原子力発電所の廃炉は、困難で長い道のりになる。政府と東京電力は、廃炉をやり遂げるという強い決意をもって、着実に作業を進めなければならない。 

 東電は、福島第一原発2号機から、溶け落ちた核燃料(デブリ)を採取した。デブリの回収は、原発事故から13年半を経て初めてとなる。この先数十年続く廃炉作業は、最難関とされる工程の入り口に差しかかったばかりだ。

 当初、東電は8月に作業を始める予定だった。しかし、取り出し装置を原子炉内に押し込むパイプの接続順が間違っていることが判明し、出だしからつまずいた。

 その後、東電は9月に作業を再開したが、今度は途中でカメラが映らなくなり、中断を余儀なくされた。高い放射線量の下で、電気回路に異常が生じたことが原因だと推定されている。

 廃炉の現場で安定して作業を進めることの難しさがあらわになったと言えよう。

 福島第一原発の廃炉は、世界でも例のない挑戦で、今後も未知の障害に見舞われることは避けられないだろう。廃炉作業には、東電のほか、関係メーカーや下請け企業などの協力も欠かせない。

 複雑なプロジェクトを統括するため、東電はこれまでの失敗から教訓をくみ取り、管理体制の見直しや技術開発などを進めていくことが求められる。

 1~3号機には現在、計880トンものデブリが残る。今回、採取に成功したデブリはほんのひとかけらで、重さは0・7グラムにすぎず、デブリ全体の特性を反映しているかどうか明らかではない。

 茨城県の研究機関に送られ、組成や硬さなどが分析される。結果は、デブリ取り出し工法の決定や収納容器の設計に生かされる。量や質が十分でない場合は、再度のサンプル採取も検討すべきだ。

 デブリの本格的な取り出しは、建屋全体を水没させる「冠水工法」、 充填 じゅうてん 材で固めたうえで掘削する「充填固化工法」など異なる工法が検討されている。いずれも今回の試験的採取よりはるかに大がかりとなり、難度も高い。

 政府は2051年の廃炉完了を目標としているが、既に当初計画より3年遅れている。いずれ計画を見直すことが避けられなくなるのではないか。その場合、必要となるコストや影響について、十分に説明することが不可欠だ。

 東電は、まずは最大限の努力を尽くし、本格的な取り出しに向けた準備を整える必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月13日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

2024-11-13 04:01:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.13】:原発デブリ回収 廃炉の現実を直視せよ

 東京電力が福島第1原発2号機で発生した溶融核燃料(デブリ)を試験的に回収した。 

 デブリは、原発事故によって核燃料が溶け落ち、原子炉内にあった構造物と混じり合って固まったもので、極めて強い放射線を出す。

 今回取り出したのは、5ミリ程度の小石状で重さは0・7グラム。東電は研究施設で成分や構造を分析し、今後の取り出し方法の検討に生かす。

 デブリの回収は、2011年3月の原発事故後初めてだ。

 ただ1~3号機にあるデブリは推計880トン。今回の回収は、先が見えない道のりのスタート地点に立ったに過ぎない。

 事故後、当時の民主党政権がまとめた廃炉工程表は10年以内のデブリ取り出し開始を掲げた。

 目標は自公政権も引き継いだが、前段となる原子炉格納容器の内部調査は難航した。デブリを取り出すための機器の開発も遅れ、3度の延期を繰り返してきた経緯がある。

 今回の回収作業も、当初は8月に始める予定だったが、取り出し装置の不備が分かり中断。その後、装置が故障するトラブルもあり、2度の中断を余儀なくされた。

 取り出し装置の不備は、東電や元請け企業が現場を下請け任せにし、自ら確認していなかったことが原因だった。

 廃炉作業の根幹に関わる初歩的なミスで、東電の姿勢が問われる。

              ■    ■

 東電は、廃炉に向けたデブリの取り出しについて(1)2号機で24年度末までに範囲を広げ微量を採取(2)20年代後半に規模を拡大(3)30年代初頭に大規模な作業ができる3号機で本格開始-するとし、事故から30~40年の41~51年には廃炉を完了するとしている。

 しかし、既にデブリの取り出し開始は3年遅れている。

 試験的に取り出したデブリの分析から何が得られるのかも現時点では未知数だ。肝心な回収の工法すら定まっていない中で、880トンものデブリを本当に全て取り出すことができるのか。

 取り出した後はどのように保管し、最終的にどう処分するのかも決まっていない。

 政府や東電は現状を直視し、今後の現実的な廃炉の道筋を示すべきだ。

             ■    ■

 国内の原発は事故後、安全確認のためいったん全ての運転が停止された。

 徐々に再稼働され、先月は被災地で初めて宮城県の女川原発が再稼働した。

 だが6日目には、トラブルを起こして再び停止を余儀なくされた。

 福島の事故の教訓は生かされているのか。

 岸田文雄政権は22年、事故後に歴代政権が維持してきた「原発の依存度低減」を転換し、最大限の活用を表明した。

 このまま原発に頼り続けていいのか。廃炉の現実に向き合い、エネルギー政策を根本から見直すことも求められる。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月13日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

2024-11-12 04:00:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.11】:福島第1デブリ回収 廃炉への一歩につなげよ

 廃炉に向けた第一歩となるよう、東京電力と政府の今後の取り組みに注目したい。

 2011年3月の東日本大震災で大規模な事故が起きた福島第1原発の廃炉作業に向け、東京電力は2号機から溶融核燃料(デブリ)の試験的な取り出しを完了した。強い放射線を出すデブリの取り出しは廃炉工程で最難関とされる。事故後初めてとなる今回の回収を、廃炉作業に生かさねばならない。

 東日本大震災で、福島第1原発の1~3号機は原子炉が冷却できなくなり、炉心溶融(メルトダウン)を起こした。デブリは溶け落ちた核燃料と制御棒などの構造物が混ざったもので、高い放射線を出す上、性状もよく分かっていない。1号機に279トン、2号機に237トン、3号機に364トンと、合わせて880トンあると推計されている。

 今回回収されたのは、5ミリ程度の小石状で、重さは約0・7グラムだ。今後、日本原子力研究開発機構の施設で成分や結晶状態、放射線量などを分析し、本格的な取り出しに向けての工法や保管方法などの検討に活用するという。全体量からすればわずかだが、次につながる一歩であることは間違いない。

 しかし、ここに至るまでにも多くの課題があった。当初は21年開始の計画だったが、機材の開発などが難航し3度の延期を繰り返した。ことし8月22日、開始に向けた準備作業の段階でパイプの並び順を間違える初歩的なミスが発覚し中断。再開後の9月17日には採取装置のカメラの映像が遠隔操作室に映らなくなる不具合が発生した。

 パイプの並び順ミスは、下請け企業に任せ東電社員が一度も確認していないことが原因だ。カメラの不具合も高い放射線の影響とされるが、不具合発生は想定できたとの指摘もある。いずれも基本的なミスであり、東電の管理能力に問題はなかったのか。東電は一層の緊張感を持って作業に当たってほしい。

 政府と東電は2051年までに廃炉を完了させる計画だが、解決すべき課題は山積している。東電は20年代後半に段階的に取り出し規模を拡大させ、30年代初頭から3号機での本格的な取り出しを始める青写真を描く。

 しかしデブリは1~3号機で性状や分布状況が異なるとみられ、本格的な取り出しには複数の場所から採取する必要がある。また、取り出したデブリや廃炉に伴い生じる放射性廃棄物をどこで保存し、処分するかも不透明なままだ。膨大な量の取り出しには作業の難航も予想され、廃炉完了時期も危ぶまれる状況だ。政府や東電に加え学識経験者も含めた議論を加速させねばならない。

 原発事故から13年半。廃炉作業がいたずらに長引けば、被災者らの不信感を増大させる。東電と政府には常に真摯(しんし)かつ丁寧な説明が引き続き求められている。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月11日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

2024-11-05 06:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない 

 東京電力は、福島第1原発事故で生じた溶融核燃料(デブリ)を2号機から試験的に取り出す作業を、約40日ぶりに再開した。

 2011年3月の事故発生後、10年以内に取り出しを始める計画だったが、工法変更などで3回延期された。今年8月の準備作業開始後も初歩的ミスで一時中断し、9月10日にようやく着手した。ところが採取装置の先端にあるカメラの映像が見えなくなり、2台を交換した。

 国と東電による廃炉工程では、使用済み核燃料の取り出し開始までを第1期、その後を第2期としており、今回の着手によって最終盤の第3期に移った。しかし「最大の難関」とされるデブリの取り出しは、冒頭でつまずきを重ねた。今後の廃炉作業に不安を抱かざるを得ない。

 取り出し装置はパイプをつなげた伸縮式で、最長約22メートルになる。原子炉格納容器の貫通部から入れて、先端の爪形器具で少量のデブリをつかむまでには至った。

 デブリは冷却できなくなった核燃料が溶け落ち、固まったものだ。1~3号機を合わせると880トンあると推計される。試験的に採取するのは3グラム以下、耳かき一杯分程度で、全量のごく一部に過ぎない。作業全体の道のりはあまりにも遠い。

 東電は段階的に取り出しの規模を拡大し、2号機に続いて3号機、1号機の順に進める計画だ。しかし大規模な採取方法は検討中で、極めて高い放射線を出すデブリの処分先も決まっていない。技術的な問題だけではなく、社会的な合意も含めて廃炉の先行きは見通せない。

 8月に起きたのはパイプの並べ順のミスだった。背景には現場を下請け任せにしてきた管理体制があるとされる。協力企業の作業員らの準備に関し、東電や元請けの三菱重工業が一度も確認していなかった。

 カメラの問題に関し東電は「高い放射線量の影響で帯電し、異常な電流が流れた可能性が高い」とみる。当初、放射線による故障は考えにくいとしていた。今後も想定外のトラブルが起きないとは限らない。

 現時点で東電は事故から30~40年とする廃炉の完了目標を堅持している。作業でデブリを巡る知見が得られれば、目標変更を余儀なくされる不都合なデータであっても、速やかに国民に示す姿勢が求められる。

 作業員の被ばくも懸念される。格納容器外の装置周辺では毎時2~4ミリシーベルトの放射線量が検出されている。放射線業務従事者の年間被ばく線量限度は50ミリシーベルトとはいえ、一般の人の限度(1ミリシーベルト)を15~30分で超える量だ。過酷な現場である。東電は下請け任せにせず、安全を最優先にした進行管理を徹底してもらいたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

2024-04-15 07:12:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:原発事故対策 避難計画は不要なのか

 原発は、どれほど対策を講じても事故の可能性をゼロにはできない。万が一の際、周辺住民の安全確保を左右するのが避難計画だ。それを、まさか裁判所がこうも軽んじるとは驚きを禁じ得ない。

 住民が関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1~4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請。このうち美浜3号機と高浜1、2号機は営業運転開始から40年を超えて再稼働した「老朽原発」で、3、4号機も来年40年になるが、福井地裁は3月末、訴えを退けた。
 
 住民側は施設の老朽化に加え、基準地震動(耐震性の目安になる揺れの強さ)が低く見積もられているなど、安全性が確保されていないと主張。県の避難計画も実効性に欠けると訴えてきた。
 
 一層の不安をかきたてたのが能登半島地震だ。北陸電力志賀原発が立地する石川県志賀町で震度7を観測し、原発にさまざまなトラブルが発生した。
 
 現地で多数の建物倒壊や道路寸断が起きたことを受け、住民側は「地震による原発事故が起きた場合、屋内退避も避難もできず、被曝(ひばく)を強いられることになる」とあらためて書面を出して訴えた。
 
 これに対し、地裁は「原子力規制委員会において新規制基準への適合が認められ、その審査基準において不合理な点はない」と断じたが、そもそも規制委は、原子炉の状態が国の規制基準に適合しているかを審査するだけで「安全」を保証するものではない。
 
 しかも福井地裁は「避難が必要になるような事態が起きる危険性は立証されておらず、避難計画の不備については判断するまでもない」と住民の訴えを一蹴した。
 
 しかし「避難が必要になるような事態が起きない安全性が立証されている」という事実がない以上、判断を避ける理由にはなるまい。規制委の「適合」を根拠に、深刻な事故は起きないと決め付けているだけではないか。原告側が上訴したのも当然だ。
 
 国は原発から30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けているが、規制委は避難計画を評価の対象外としており、避難計画に不備があるかを判断するのは、まさに司法の役割であろう。
 
 避難計画は事故の際、住民を放射能被曝から守る「命綱」とも言うべきものだ。それを軽んじるような司法の姿勢には、強い違和感を覚える。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月12日  08:23:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

2023-10-30 07:30:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも 

 政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に踏み切ってから24日、1カ月が経過した。これを受け、中国が日本産海産物の輸入禁止に踏み切り、輸出減少に伴う売り上げの減少や、価格の影響への懸念もくすぶる。そんな中国側の動きを念頭に「非科学的な攻撃みたいなもの」と言及したのは、自民党の小泉進次郎元環境相(42)だ。

南相馬市の北泉海岸近海でとれたヒラメの刺し身を賞味する小泉進次郎元環境相(2023年9月17日撮影)

 処理水海洋放出を受けた風評被害対策の一環で9月に入り、福島県南相馬市の海を2度訪れた。南相馬は日本有数のサーフ・スポットとして知られる。1度目は3日、子どもたちのサーフィン教室にプライベートに近い形で参加して波に乗り、処理水の安全性を示すために地元の海で自らサーフィンをする動画を、自身のインスタグラムなどに投稿した。2度目は17日、党サーフィン議連の幹事長として同僚議員らとサーフィンの国際大会が訪れた海岸を視察。視察後の取材に処理水放出やそれを受けた中国の対応などに対し、より踏み込む形で発信をした。

 日本政府や岸田文雄首相は機会を見つけては、中国側に禁輸の即時撤廃を申し入れているとされる。そんな中で、サーフィンという手段を用いて海に入り、中国側に反論する形を取った進次郎氏に対しては賛否があるが、普段は厳しい声が多いSNSでも評価する声が上がった。1度目の訪問でサーフィンをした際、自身のインスタグラムに「パフォーマンスといわれても構わない」と投稿し、目を向けてもらうことを優先したことをにじませていた。

 2009年の初当選時からしばらく、進次郎氏がその時々の話題やテーマについてぶら下がり取材で語るのが、恒例だった。党要職や大臣に就きその機会は少なくなり、環境相退任後は、自民党神奈川県連会長や国会対策副委員長という裏方の調整役となり、公の場で肉声を聞く機会はさらに減った。久しぶりにスポットライトが当たる形になった今回、福島や震災復興への今の思いを、久しぶりに耳にする機会になった。

 東日本大震災と原発事故が起きた時、進次郎氏は野党自民党の当選したばかりの新人議員だった。2009年の衆院選で自民党は旧民主党に惨敗。政権を失った当時の選挙で初当選したのは進次郎氏と伊東良孝氏、斎藤健氏、橘慶一郎氏の4人しかいない。新人議員の時から震災や原発事故からの復興に携わる、自民党の数少ない議員の1人だ。最初は野党議員として、2期目以降は与党議員として、国会議員生活の大半に「震災からの復興」が重なってきた。

 震災発生時に29歳だった進次郎氏は、自民党青年局長時代に「TEAM11」を立ち上げ、被災地訪問を続けた。当時からの交流、新たに生まれた交流は今も続くと聞く。個人的には、国会議員であろうがなかろうが、それぞれの立場でさまざまな関わり方があると感じているが、進次郎氏は当時から、若い自分だからこそ将来の復興を見届ける責任があるとたびたび口にしてきた。

 国や東京電力はこれまで、原発の廃炉には30~40年かかるとしている。処理水放出についても同様の年月が見込まれているが、予定通りに終わるのかどうか、誰も見通せない。今、政権の中枢を担う総理大臣や担当の大臣も、「完了」を見届けられる立場にある人はほとんどいないだろう。そういう中で、新人議員の時から震災と復興に向き合う時間を長く持てる立場にある進次郎氏にとって、どんな形であっても目を向けることが、自身の責任の1つだと思っているのではないかと感じる。それが今回は、学生時代から親しんできたサーフィンという形になったのではないかとも感じる。

 進次郎氏はかつて「平均寿命(男性は81・05歳=2022年)どおり生きれば、私は原発の廃炉まで見届けることができる立場」と述べ、被災地への取り組みは「ライフワーク」と話していた。16日の視察後の取材にも「処理水の放出はこれから何十年と続く。今はこうやって注目してもらっているけれど、間違いなくこれから注目度は下がる。それでも継続して地域の皆さんの声を聞いて、廃炉と、復興の最後まで取り組み続けることがいちばん大事」と話した。

 「TEAM11」の活動時に掲げられたテーマは「継続は力なり」だった。言葉の持つ責任の重さは、これからもずっと問われ続けていくのだと思う。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)

 

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年09月24日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰

2023-10-16 08:01:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰 

 東日本大震災の取材でお世話になって以来、毎年秋、妻の実家から届くスダチをお贈りしている宮城県南三陸町の漁師さんからさっそくお礼の電話をいただいた。「今年はもう少しましな大きさのものを送れると思うんだあ」。話はすぐに昨年、折り返し届いたサンマのことに。たしかに去年、高い燃料費、赤字覚悟で遠くまで漁に出て取ってきたというサンマは、失礼ながら悲しいほど小ぶりだった。

 それが今年はウクライナ問題でここ2年中止になっていたロシアが主張するEEZ(排他的経済水域)内の漁が解禁になり、60隻が漁に出ていて大きめのサンマが期待できるのではないかという。だが、話はすぐに処理水の海洋放出問題に。

 「おらとこはカキとワカメだからいいけど、ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるかどうか」という。中国の日本からの水産物全面禁輸が伝わるや値崩れが起き、廃業を考える業者も出ているという。国の漁業補償はあるが、そうしたものより、中国がこれで大儲(もう)けしている乾燥ホタテ加工用の恒久的な施設は造れないものか。だが、そういった声はなかなか届かない。

 深刻な問題はまだある。秋口、三陸沖にやってくる大群を追うカツオの一本釣り。欠かせないのは漁場にまく生きたイワシだ。これがないとカツオの群れは寄ってこない。だが、海面水温はいまも異状な高さで、浜のいけすで泳がせているイワシが次々と死んでしまって、出漁時、確保できないのではないかという。

 サンマにカキ、ワカメ、ホタテにカツオ、そしてイワシ。浜風がいささかいつもと違う、みちのくの秋の漁場の様子を運んできてくれるようだった。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2023年09月25日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

2023-10-08 00:06:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【深層探訪】:処理水への理解に濃淡 中国のIAEA批判は裏目―放出1カ月で各国反応

 ウィーンで開かれている国際原子力機関(IAEA、加盟177カ国)総会は27日、各国代表による一般討論演説が終了した。東京電力福島第1原発からのトリチウムを含む処理水の海洋放出が始まって1カ月余り。3日間の演説で登壇した133カ国のうち、明確に反対を表明したのは中国だけだった。ただ、演説で示された理解や容認は中国のIAEA批判に対する反発の側面もあり、各国の姿勢には濃淡がある。

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(右)と面会する高市早苗科学技術担当相=25日、ウィーン

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(右)と面会する高市早苗科学技術担当相=25日、ウィーン

 ■政府、ロシアの禁輸同調警戒 日本産水産物、風評拡大を懸念

 ◇権威守る

 演説で処理水放出への反応を示した国の大半は、IAEAによる独立した立場からの監視や日本の取り組みを支持した。ドイツやイタリアなど欧州勢が目立ち、「日本の協力姿勢と透明性を評価する」(ブルガリア)との声もあった。

国際原子力機関(IAEA)総会で演説するニュージーランドの代表=27日、ウィーン

国際原子力機関(IAEA)総会で演説するニュージーランドの代表=27日、ウィーン

 

 「IAEAの権威を守ることは、われわれの利益になる」。欧州のある外交官は7分間の演説で、国益に直接結び付かないようにも見える処理水放出への支持を打ち出した理由について、こう語った。

 中国はIAEAの関与について「独立性に欠ける」「(データが)真実か分からない」などと主張。これが裏目に出て「IAEAの権威に対する挑戦」(日本政府関係者)と受け止められた。核不拡散ににらみを利かせるIAEAの威光が弱まれば、核施設の査察や監視業務に悪影響を及ぼしかねないという危機感が、欧州の放出計画支持の動きにつながった。

 ◇同調広がらず

 一方、中国への同調は広がりを欠いた。シリアは「非常に憂慮すべきこと」と懸念を示したものの反対はせず、これまで中国と歩調を合わせてきたベネズエラやロシアは沈黙。国連総会で批判を展開したソロモン諸島は、IAEA非加盟のため発言機会がなかった。

 同じ太平洋諸国では、ニュージーランドとオーストラリアが明確な支持を表明。ただ、ニュージーランドは、太平洋地域が抱える核実験の傷に触れ「重大な関心事だ」とも訴えた。容認の構えを見せた韓国は「汚染水」という表現も用い、IAEAに監視を緩めないよう注文を付けた。

 ◇「最後の一滴まで」

 IAEAを抱き込む形で理解獲得を進めてきた放出計画は、ひとまず軌道に乗ったと言える。各国代表によるおおむね前向きな言及に、日本の外交官の一人は「勇気づけられた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 放出は数十年に及ぶとされる。IAEAのグロッシ事務局長は「最後の一滴まで」監視を続けると強調。日本政府代表として登壇した高市早苗科学技術担当相も「最後の一滴まで」安全を確保すると口をそろえた。

 日本政府とIAEAは原発の推進で利害が一致しているだけに、そうした両者の近さへの不信感は国内外でくすぶる。中国が発動した日本産水産物の輸入禁止措置には、ロシアも追随する動きがある。国際社会に広がりつつある日本の放出計画への支持が確かなものになるかは、今後の取り組み次第だ。 

 ◇IAEA総会での処理水放出に関する主な発言(発言順)

 【中国】原発事故による核汚染水の放出は前例がない。放射性物質の蓄積がもたらす海洋への影響には大きな不確実性があり、日本から信頼できる説明はない。
 【韓国】汚染水放出計画の安全性を慎重に審査したグロッシ事務局長の指導力に感謝。効果的な監視が続くことを切に期待。
 【ブラジル】(ウクライナ南部)ザポロジエ原発での支援構築や(東京電力)福島第1原発の現場常駐など、非常に困難な状況でのグロッシ事務局長の指導力に敬意。
 【ドイツ】IAEAの専門性と中立性を全面的に信頼。
 【イタリア】IAEAの包括報告書と監視を歓迎。
 【シリア】非常に憂慮すべきだ。解決に向け、地域の全ての国が協力して取り組むよう求める。
 【マレーシア】IAEAの科学的で技術的な判定を大いに評価。
 【ニュージーランド】核(実験)の遺物がトラウマのように残っており、重要な関心事。対話と情報共有への継続的な取り組みを歓迎。
 【オーストラリア】IAEAの独立した科学に基づく助言を全面的に信頼。日本の透明性や国際的な関与を歓迎。
 【エクアドル】安全性を確保するという日本の姿勢を認識。水産業と敏感な生態系を抱えており、更新される情報を注視。(ウィーン時事)

 元稿:時事通信社 JIJI.com 社説・解説・論説・コラム・連載 【深層探訪】  2023年09月28日  17:14:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない

2023-10-02 08:01:00 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない 

 「決して賛成ではないけれど、反対はしない」。私はテレビなどでこのようにコメントしている。福島第1原発処理水の海洋放出が、ついに24日から始まった。

 「安全性への理解は深まった」としながらも、「科学的安全と社会的安心は違う」とする全漁連会長の言葉に、震災から10年、このコラムに福島の道の駅で見かけたミニトマトについて書いたことを思い出した。

 他県産と同じ値をつけたまっ赤なトマトに、町の職員は「やっとここまできた」と顔をほころばせた。大気や海洋、土壌汚染、子どもの甲状腺…。それらが報じられるたびに農産物は買いたたかれ、嫌というほど思い知らされた風評被害。

 そしてこのたびも、そんな風評被害で福島を苦しめるなと政党や市民団体の人々が東電や福島県庁前に立つ。だが手にしたボードには「処理水」ではなく、決まって「汚染水」と大書きされている。それを目ざとく報じる中国など一部の国々。福島の生産者や、あの日、道の駅でミニトマトを前にした町の職員はこの光景をどんな思いで見ていることか。

 問題の本質は、そこにないはずだ。2度とこんな事態を引き起こさないことではないのか。そのためには脱原発。新規建設はもちろん、再稼働もとんでもない。時間がかかろうとも、原発ゼロの国にするしかない。

 この時期、多くの人々の胸に去来する、詠み人知らずの句がある。

 〈八月は六日 九日 十五日〉

 そこにそこに「過ちは 繰返しませぬから」の思いを込めて、「二十四日」をつけ加えたらどうだろう。海洋放出が続く向こう30年間、せめてこの日を忘れずにいたい。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2023年08月28日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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