【社説②・01.15】:日本郵便に指導 委託の締め付け見直せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.15】:日本郵便に指導 委託の締め付け見直せ
配達現場への不合理な締め付けは、自らの足元も崩しかねない。
日本郵便が、ゆうパックの配達の委託を巡り、公正取引委員会から下請法違反の疑いで昨年6月に行政指導を受けていたことが明らかになった。
委託先の配送業者から求められたコスト上昇分の価格転嫁に十分に応じず、同法が禁じる「買いたたき」の恐れがあるとされた。
さらに誤配達などに対し、根拠を明示せず内規で定めた「違約金」を徴収していたことも、不当な利益提供の要請と疑われた。
運送業の人手不足と待遇改善が課題となる中、自社の収益確保を優先し、一方的に負担をしわ寄せするのでは物流インフラの持続性を損なう。国内大手として責任と姿勢が問われよう。
締め付けのいびつさが際立つのが違約金制度だ。誤配達、たばこの臭いといったクレーム事案で委託業者に科している。誤配達は1件につき5千円、たばこ臭は1万円を目安とするが、公取委の調査で数万円に及ぶなど大幅に上回る設定をしていた局があった。
日本郵便は、違約金による「ミスの抑止効果」を掲げる。公取委は制度自体を違法認定していないが、徴収額や算出根拠などが明確でないとして違反と判断した。
競合他社と争うサービス品質の向上策とはいえ、委託業者では高額な違約金で稼ぎが削られるのを敬遠し、所属ドライバーが流出しているという。人材難に拍車をかける状況は改めねばなるまい。
また、委託料へのコスト転嫁にも日本郵便の腰は重い。中小企業庁が2023年に行った調査で、発注元がどれだけ応じたかの項目で最低評価とされた。自社の点検で、協議せず据え置くなど不適切なケースが全国約140郵便局・支社であり、改善するとした。公取委はその後も要請に十分応じていないと問題視した。
日本郵便は、デジタル化による年賀状など郵便物減少で採算が厳しく、物流事業は稼ぎ頭だ。コスト上昇は利益を押し下げ、配達の運賃に反映させれば顧客が離れるのではとの懸念がある。
同社は指導に対し、提案した委託料引き上げに全委託先の合意を得たとし、違約金は徴収対象などのばらつきを今年4月をめどに統一、金額を下げると説明する。
ゆうパックを集配する全国の郵便局の約9割は、外部業者に委託している。公正な取引関係であらねば、持続可能な事業の土台となるまい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月15日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。