路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

《なるほドリ・01.11》:姫路城が値上げするの? 国内最高の2000~3000円に 物価高で維持費も高騰=回答・村元展也

2025-01-11 02:00:50 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

《なるほドリ・01.11》:姫路城が値上げするの? 国内最高の2000~3000円に 物価高で維持費も高騰=回答・村元展也

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《なるほドリ・01.11》:姫路城が値上げするの? 国内最高の2000~3000円に 物価高で維持費も高騰=回答・村元展也

 なるほドリ 姫路城(ひめじじょう)の入城料が値上げされるって聞いたよ。

 記者 現行は18歳以上で1000円です。兵庫県姫路市は2024年12月、これを2000~3000円程度に値上げすると発表しました。条例(じょうれい)の改正を経(へ)て26年春ごろの実施(じっし)を目指します。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/11/20250111ddm003070164000p/9.webp?2" type="image/webp" />国内で最初に世界遺産登録された姫路城=兵庫県姫路市で2023年、村元展也撮影</picture>
国内で最初に世界遺産登録された姫路城=兵庫県姫路市で2023年、村元展也撮影

 Q 2~3倍になるってこと?

 A そうですね。天守閣(てんしゅかく)に入る料金としては国内最高額です。ただし、姫路市民は1000円程度に据(す)え置(お)き、18歳未満は小学生以上300円から一律無料とします。「子どもたちに姫路城に接してほしい」との思いからです。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【なるほドリ】  2025年01月11日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・12.14》:歴史的建造物の復興 未来へ技術つなぐ施策を

2024-12-14 02:07:40 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

《社説②・12.14》:歴史的建造物の復興 未来へ技術つなぐ施策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.14》:歴史的建造物の復興 未来へ技術つなぐ施策を

 地域の記憶が深く刻まれた歴史的建造物は、人々の心のよりどころとなっている。かけがえのない文化的価値を次世代へ残すために欠かせないのが伝統技術だ。

 大規模火災に見舞われたパリのノートルダム大聖堂が再建され、5年半ぶりに一般公開された。中世ゴシック建築の傑作として知られ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産でもある。

修復作業が進むノートルダム大聖堂=パリで2024年11月29日、ロイター

 火災では高さ90メートル超の尖塔(せんとう)や、鉛板ぶき屋根の3分の2が焼け落ちた。数千本の木材を用いた複雑な構造で、重い屋根を支える骨組みも灰となった。

 再建にあたっては、現代的なデザインに変更し、耐火材料を使用すべきだとの意見もあった。だが、採用されたのは、伝統的な工法や材料を使って復元する方法だ。 

 建造当時に使われたものに似通った石灰岩や、樹齢200年を超えるオーク材などが集められた。手工具を使い、昔ながらの技術を守り続けている大工らの技と献身がなければ、再建は難しかったであろう。

 日本でも2019年に那覇市の首里城で火災が起き、正殿などを焼失した。現在、伝統的な技法を駆使した復興作業が進む。

 26年秋の完成を目指す正殿は、近年、古文書などから明らかになった知見を生かし、沖縄戦で失われる前の塗装の色や彫刻の意匠が再現される見込みだ。

 一方で、宮大工の技や赤瓦製造、塗装彩色など琉球王国以来の技術の継承が課題として浮かび上がっている。

 16年の熊本地震で崩れた熊本城の石垣も、石工が伝統技法を守りながら約30年後の完成に向けて修復に取り組んでいる。

 いずれの復元も、将来の担い手育成のため、若い人たちが作業に加わり、熟練者から技術を学ぶ機会になっている。

 火災や災害は不幸な出来事だが、職人の仕事の価値が改めて注目された意義は小さくない。

 日本の「伝統建築工匠の技」はユネスコの無形文化遺産にもなっている。とはいえ、人手不足が強まる中、放置していれば担い手の先細りは避けられない。

 先人の英知を引き継いでいくため、国は支援を一層、充実させるべきだ。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月14日  02:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・12.08】:「酒造」が文化遺産 継承発展の契機としたい

2024-12-08 05:03:55 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【主張①・12.08】:「酒造」が文化遺産 継承発展の契機としたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.08】:「酒造」が文化遺産 継承発展の契機としたい 

 日本の「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

 日本酒や焼酎、泡盛と地域色豊かな酒を造る技術が世界に認められたのは喜ばしい。

 酒は、祭事や婚礼といった日本の行事に不可欠で、酒造りが地域社会の結束に貢献しているとの評価だ。背景にある文化的価値への理解を深めるとともに、さらなる発展の契機にしたい。

発酵中のもろみを混ぜる蔵元の男性=兵庫県明石市

 日本酒は日本固有のこうじ菌の働きでコメの発酵を促し造られる。その独特の芳醇(ほうじゅん)な味わいはほかにはない特長だ。同じ醸造酒でも、ブドウの糖分を利用するワインなどとは異なるわが国独自の酒である。

 現代の酒造りの原型は室町時代にさかのぼる。地域の風土や環境に合わせて進化し、杜氏(とうじ)や蔵人らの技術が引き継がれてきた。各地から喜びの声が上がるのも、多くの地域で酒造りが行われてきた証しである。

 一方で、現場の高齢化が進んでいる。その伝統を守りつつ、時代にあった変革も進めていかなくてはならない。

 近年の市場は厳しい。農林水産省の調べでは、日本酒の国内出荷量は昭和48年をピークに減少し、昨年はその4分の1以下だった。多様な酒類との競合や健康志向による低アルコールブームなども要因だ。

 ただし輸出は増加傾向にある。平成25年に無形文化遺産に登録された和食の人気に伴い日本酒の需要が高まっている。

 業界のまとめによると、昨年度の輸出金額は10年前に比べて約4倍に増えた。海外ではすでに「SAKE」でも通じるが、登録による、さらなる認知度アップが期待される。

 酒は郷土の歴史や文化を色濃く映す産物だ。地域色が強いということはそれだけ地場産業が多いことでもある。 

 東日本大震災や熊本地震、今年の能登半島地震でも多くの酒蔵が被害を受けた。クラウドファンディングなどを通じた支援も広がっている。今後も息の長い支援、応援を続けたい。

 古来、酒は神事と深く関わり霊力を宿すとされている。神にささげた後に酒宴を開き、人々も口にすることで加護を得ると信じられてきた。技術の継承はもとより、心のよりどころとなってきた精神文化も受け継いでいくことが大切だ。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年12月08日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・12.06》:酒造の遺産登録 文化を醸す拠点として

2024-12-06 09:31:50 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

《社説①・12.06》:酒造の遺産登録 文化を醸す拠点として

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.06》:酒造の遺産登録 文化を醸す拠点として 

 日本酒や焼酎などの「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

 酒蔵が78を数え、新潟県に次いで多い信州にとっても朗報だ。酒造りの多面的な価値を共有したい。

 カビの一種こうじ菌を使い、地元の水とともに米や麦などを発酵させて造る酒には、土地ごとの味わいがある。気候、風土に応じて杜氏(とうじ)や蔵人らが磨いてきた技術、経験、知識のたまものだ。

 人々の暮らしと深くかかわり、地域文化を育んでもきた。季節の祭事や婚礼といった行事に酒はつきもので、共同体のまとまりに一役買ってきた。

 原料となる穀物を供給する農業と、それによって維持される田畑や水環境が織りなす景観も、酒造りが取り持ってきた大切な一面といえるだろう。

 そうしたさまざまな価値を、ユネスコは「伝統的酒造りはコミュニティーにとって強い文化的意味を持つ」と評価した。

 産業としての酒造りを取り巻く環境は大きく変わりつつある。

 健康志向や酒の好みの多様化で国内消費が縮小し、昨年度の日本酒の国内出荷量は1970年代の4分の1以下に落ち込んでいる。杜氏の数も昨年は全国で700人余と、60年代半ばの5分の1ほどに減っている。

 一方で国外では、2013年に無形文化遺産になった「和食」とともに人気が高まっている。

 各蔵は販路を海外に見いだし、輸出を増やそうとしている。洗米などの一部工程が体験できる酒造りツアーもインバウンド(訪日客)に好評という。登録でこうした動きにも弾みがつくだろう。

 地域の“文化拠点”として、酒造りや酒蔵が新たに担う公共的役割にも注目したい。

 県内でも、市民参加で酒米作りに取り組み、荒廃しがちな棚田の保全につなげる試みが広がる。古くからの重厚な建物が多い酒蔵で演奏会を開いたり、地産地消がテーマの街歩きを企画したりといった取り組みも各地で盛んだ。

 酒蔵と地域とがかかわり合い、相互に「環境の持続可能性に貢献する」ことは、ユネスコも期待を寄せている点である。

 気がかりなのは温暖化だ。必要な米の収量や品質に影響が出かねず、発酵の温度管理も難しくなってきているという。隣の岐阜県では北海道に移転した酒蔵もある。今回の登録は、地域を守っていくために何ができるのかも、私たちに問いかけている。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月06日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.06】:「泡盛」無形文化遺産 沖縄が育んだ宝 次代へ

2024-12-06 04:01:30 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・12.06】:「泡盛」無形文化遺産 沖縄が育んだ宝 次代へ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.06】:「泡盛」無形文化遺産 沖縄が育んだ宝 次代へ

 泡盛や日本酒、本格焼酎などの「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。沖縄の歴史と風土、文化が育んだ酒が世界に認められたことを誇りに思う。芳醇(ほうじゅん)な香りと深いこくを多くの人に堪能してもらいたい。 

 沖縄関係では2010年の「組踊」、18年の宮古島のパーントゥなど「来訪神 仮面・仮装の神々」に次いで3件目となる。

 伝統的酒造りは手作業を中心とした日本独自の技術で、風土に応じ杜氏(とうじ)や蔵人が伝統的に培ってきた技術の価値が認められた。泡盛は黒こうじ菌を使うのが大きな特徴。クエン酸を大量に生成することで他のこうじ菌よりもろみの酸度を高くすることができる。雑菌による腐敗を抑え、温暖多湿の沖縄に適している。

 若い酒をつぎ足し古酒を育てる「仕次ぎ」など貯蔵法も独自性を持つ。琉球王国時代から約600年の歴史を持ち、沖縄戦までは100年、200年といった古酒も家宝として数多く存在していたという。

 ユネスコの政府間委員会は、伝統的酒造りの知識と技術が「社会にとって強い文化的な意味を持つ」と評価。泡盛は神事やシーミー(清明祭)、ウガン(御願)、ハーリーなどに欠かせないもので、重要な役割を果たしている。

 酒造業界からは、国内外での知名度アップや好調な外国人観光客の需要増への期待も高まる。同時に、地元でも泡盛の良さを再認識する機会にしたい。

               ■    ■

 王国時代から育まれてきた泡盛だが、79年前の沖縄戦では、製造の中心地であった首里も大きな被害を受けた。工場や蒸留機などの設備が戦火にさらされた。

 戦後、酒造関係者たちは、泡盛造りに欠かせない黒こうじ菌がない、という問題に直面した。

 1946年、幸いにも首里の酒造所跡で灰土に埋まっていたむしろを見つけた。泡盛を造るとき、米を広げて黒こうじをまき、米こうじをつくるためのものだ。半ば朽ち果てたような状態のむしろの繊維をもみほぐし、蒸した米の上に落とした。

 24時間後の朝。蒸した米の表面は緑がかった黒色に一変していた。戦後、泡盛の復興が始まった瞬間だ。

 物資不足の中、泡盛を口にした時に、戦世がようやく終わったことを実感した県民も多かったという。

 関係者は「平和でないと酒造りはできない」と語っている。

              ■    ■

 泡盛はカラカラや抱瓶などの優れた酒器の発達を促した。琉球料理との関係も深く、ラフテーなどの豚肉料理、豆腐ようなどには調理の際に泡盛が使われる。

 泡盛の出荷量は減少傾向でビールやハイボール、ワインなど好みの多様化、飲酒の機会が減るなど社会的な要因で、増加に転じるのは容易なことではない。

 泡盛の魅力はもちろん、文化や歴史を伝える酒造所見学ツアーや海外でのプロモーション強化など、ユネスコ効果を最大限にする地道な取り組みが必要だ。

 元稿:沖縄タイムス社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月06日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.02】:初代門司駅遺構 専門家と市民の声大切に

2024-12-02 06:05:30 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・12.02】:初代門司駅遺構 専門家と市民の声大切に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.02】:初代門司駅遺構 専門家と市民の声大切に 

 古墳や神社仏閣、書画と違い、都市や国の発展を担い、役割を終えて地中に埋まった遺構は歴史的価値を実感しづらい。

 北九州市門司区で出土した明治期の初代門司駅関連遺構と、その場所で市が進める公共施設の整備は、さまざまな課題を提起している。

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取り壊し作業が始まった「初代門司駅」の関連遺構=2024年11月28日午前10時55分、北九州市門司区、朝日新聞社ヘリから、山本壮一郎撮影

 1891年に開業した初代門司駅は、本州や大陸につながる九州の玄関口だった。発掘調査で、機関車庫の基礎と赤れんがの壁、駅本体の外郭石垣などが見つかった。

 市は2027年度完成を目指し、門司区役所や図書館、ホールを集めた複合公共施設を造る計画を進める。現在の区役所は老朽化が著しい。市民の利便性を高める目的は理解できる。

 遺構は全面的に取り壊す方針だったが、武内和久市長は先月、一部を現地で保存する考えを表明した。別の場所にも部分的に移築する。

 方針転換を促したのは、専門家を中心に国内外に広がった遺構の保存要望だ。

 明治期の高い技術力、近代化の過程を示す「国史跡級」と評価が高まり、国際記念物遺跡会議(イコモス)は市に保存などを求める「ヘリテージ・アラート」を出した。

 市にとって想定外の反響の大きさだったろう。一部であっても保存、展示にかじを切ったことは歓迎したい。

 ここに至る市の対応には問題がある。保存を求める専門家や市民の意見を十分に聞かず、学術的な評価を避けていたからだ。

 遺構の解体は市の文化財保護審議会に諮らずに決めた。副市長は今年2月、市議会で「立ち止まって調査することは価値付けにつながり、文化財指定につながる最初の一歩となる」と発言した。

 調査をして遺構の保存や整備が必要になると、複合公共施設の着工が遅れかねない。そうした市の本音がうかがえる。市議会でも議論が尽くされたとは言い難い。

 歴史資産の保存と開発は、これまでも各地で議論になった。大切なのは結論を出す過程である。

 開発と鉄道遺構保存を両立させた先例が東京にある。JR東日本が高輪ゲートウェイ駅付近で進める再開発で発見された高輪築堤(ちくてい)だ。

 1872年に日本初の鉄道が新橋-横浜間に開通する際、東京湾の浅瀬に線路を敷くために造られた。

 約800メートルの遺構が確認され、石積みの堤を船が横切るための橋梁(きょうりょう)部を含む120メートルが国史跡に指定された。JR東日本は有識者や行政を交えた委員会で検討を重ね、現地保存と公開を決めた。

 北九州市は今後、初代門司駅関連遺構を一部保存するまでの経緯を検証すべきではないか。

 日本イコモス国内委員会は保存の在り方について要望を続けている。専門家や市民の意見に耳を傾ける姿勢が欠かせない。

 元稿:西日本新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【金口木舌・11.19】:「泡盛文化を継ぐ」

2024-11-19 04:00:30 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【金口木舌・11.19】:「泡盛文化を継ぐ」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・11.19】:「泡盛文化を継ぐ」 

 古酒作りに失敗した。約15年前に甕(かめ)に詰めた泡盛が大幅に減った。途中、数回飲んでつぎ足す「仕次ぎ」を試したが、封が甘かったか。甕の漏れか。いずれにしても残念な結果だ

 ▼泡盛は瓶でも熟成される。なぜ甕貯蔵かというと、容器内の空気量と甕に含まれるミネラル分が鍵らしい。酸化と化学変化が熟成を促す。先人が築いた貯蔵法。独自の酒造法とも言える。「古酒を育てる」奥深さの一つだ

 ▼ユネスコの評価機関は泡盛など日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。麴(こうじ)菌を使った独特の技術などが選定理由のよう。とりわけ黒麹菌を使う泡盛は固有の文化を築いた

 ▼発酵学第一人者の小泉武夫さんによると、世界でも極めて珍しい菌という。クエン酸が生み出され、腐敗を抑える。亜熱帯の地で酒造りを確立した先人の知恵がここにも

 ▼登録は12月に正式決定の見込み。琉球料理など「沖縄の伝統文化」登録の運動にも弾みがつく。小泉さんは登録の目的を「文化の継承と保護」と提唱する。泡盛は世界に誇れる文化となろう。そんなことを思い浮かべながら、「仕次ぎ」の再挑戦を考えている。 

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年11月19日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.16】:伝統的酒造り 文化遺産を復権の弾みに

2024-11-17 06:03:40 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・11.16】:伝統的酒造り 文化遺産を復権の弾みに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.16】:伝統的酒造り 文化遺産を復権の弾みに 

 日本酒や焼酎の知名度が世界的に高まれば、消費の拡大や担い手確保が期待できる。伝統文化である酒造りの技をさらに磨き、九州など生産地の活性化につなげたい。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は日本酒や本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。12月のユネスコ政府間委員会で正式決定する見通しだ。

 伝統的酒造りはカビの一種であるこうじ菌を使い、蒸したコメなどの原料を発酵させる。日本古来の製造技術で、複数の発酵を同じ容器の中で同時に進める工程は世界でも珍しい。

 各地の風土や気候に合わせて、杜氏(とうじ)たちが手作業で洗練させ、継承してきた。

 勧告は伝統的酒造りの知識と技術が「個人、地域、国の三つのレベルで伝承されている」と評価した。

 祭事や婚礼といった日本の社会文化的行事に酒が不可欠であることや、酒造りが地域の結束に貢献していることなどが、登録に必要な基準を満たすと判断した。的確な捉え方である。

 日本酒や焼酎などの国内市場は、高齢化や消費者の嗜好(しこう)の変化で縮小している。

 国税庁によると、2022年度の日本酒を含む清酒の出荷量は40万7千キロリットルで、約50年前の4分の1に減少した。泡盛を含む本格焼酎(単式蒸留焼酎)は39万3千キロリットルで、焼酎人気が続いていた07年度と比べ3割減っている。

 こうした中で蔵元が期待を寄せるのが海外市場だ。清酒の輸出は近年急増しており、輸出額は12年の約89億円から23年は約411億円に伸びている。

 13年に「和食」が無形文化遺産に登録され、海外で和食人気が高まったことも追い風となった。

 ウイスキーなど洋酒を含む日本産酒類の23年の輸出額は1344億円で、世界の酒類市場の0・1%程度に過ぎない。伸びしろは大きい。

 日本を訪れる外国人観光客が日本酒や焼酎を味わう機会が増えており、国内消費も幅が広がりそうだ。和食に限らず、さまざまな食に合った酒を勧めるなどPRに工夫を凝らす必要がある。関係者の努力に期待したい。

 酒類に対し、関税や輸入規制などのハードルを設けている国が少なくない。関税や規制の緩和、輸入手続きの簡素化などには政府の働きかけが欠かせない。

 優れた酒造りを担うのは、高い技能と経験を持つ杜氏や蔵人と呼ばれる職人だ。有志でつくる日本酒造杜氏組合連合会に所属する杜氏は、1965年に3683人を数えたが、22年は約5分の1の712人まで減った。

 九州の生産地にとっても悩みの種だ。無形文化遺産登録は、身近な酒造りの価値を多くの人が認識するきっかけになる。ぜひ後継者の育成に弾みをつけたい。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月16日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・11.15】:日本の酒造り 内外に伝えたい文化的な価値

2024-11-15 05:00:30 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説②・11.15】:日本の酒造り 内外に伝えたい文化的な価値

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.15】:日本の酒造り 内外に伝えたい文化的な価値

 日本酒や焼酎、泡盛などを造る技術の文化的な価値が、世界に認められた。国内外の多くの人々に、その歴史や技法、洗練された味わいを知ってもらう契機としたい。 

 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の評価機関が日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。12月に正式決定される見通しだ。

 日本の酒造りは、こうじ菌を使って米や麦の発酵を促し、酒の風味を豊かにするのが特徴だ。室町時代に原型が確立され、その技は今も受け継がれている。

 酒は、神への感謝を示すため、神棚などに供え、結婚や誕生といった祝いの場でもふるまわれてきた。一年の無事を祈る正月の 屠蘇 とそ や、ひな祭りの白酒などは、季節の風物詩でもある。

 今回、ユネスコの評価機関は、日本の酒が「社会文化的な行事に欠かせず、地域の結束に貢献している」と評価した。

 古来、日本の生活に溶け込み、暮らしを彩ってきた酒の文化に触れることは、日本文化を考えることにも通じるだろう。

 無形文化遺産の制度は、芸能や行事、伝統工芸などの保護を目的としている。これまで日本からは、能楽や歌舞伎、和食など22件が登録された。日本酒は和食と相性がいい。共に発展できるようなメニューなども工夫したい。

 日本酒の国内出荷量は、ピークだった1973年度の4分の1以下まで減り、酒蔵の数も半分以下の1600程度となっている。好みの多様化で他の酒を飲む人が増え、若者らの「日本酒離れ」も指摘されている。

 一方、海外では日本食レストランが増え、日本酒の需要が高まっている。輸出量はこの10年で約2倍に増えた。日本の酒造りの現場を見てもらう「酒蔵ツーリズム」で、訪日外国人客を呼び込もうという取り組みも広がっている。

 日本酒でも、ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」の発売時期のように、大きなキャンペーンを行ってはどうだろうか。

 各地の酒造会社は、能登半島地震で被災した酒蔵を支えるためのプロジェクト「能登の酒を止めるな!」を展開している。クラウドファンディングで寄付を募ったところ、これまでに約5200万円が集まったという。

 日本の伝統技法をこれからも守っていかなければならない。国や業界は、日本の酒造りへの理解を深め、消費を拡大させるため、さらに知恵を絞ってほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に

2024-11-06 07:00:20 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に 

 日本酒や本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが確実になった。日本古来の酒造りが、文化として世界に認められたことは喜ばしい。

 伝統的酒造りはカビの一種であるこうじ菌を使うのが特徴で、500年以上前に原型ができたとされる。米や麦などを蒸す、こうじを作る、もろみを発酵させるなどの技術を各地の自然や気候に応じて杜氏(とうじ)らが手作業で洗練させ、継承してきた。

 ユネスコの評価機関は、酒造りの知識と技術が「個人、地域、国の三つのレベルで伝承されている」と評価した。祭事や婚礼などの行事に欠かせず、地域の結束にも貢献しているとした。まさに、それぞれの土地の農業や風土に根差した産品である。

 世界のアルコール類の中でも、発酵の手法は極めて珍しい。「並行複発酵」と呼ばれ、原料に含まれるでんぷんを、こうじ菌で糖に変える作用と、糖に酵母を加えてアルコール発酵させる作用を同じ容器の中で同時に進める。同じ醸造酒のワインやビールに比べ、日本酒のアルコール度数が高いのはそのためだ。

 中国地方の各地でも酒造りの歴史は刻まれてきた。とりわけ広島県東広島市西条は京都・伏見、兵庫・灘と並び「日本の三大酒どころ」と称される。

 酒造りに広島の技術は大きく貢献してきた。その最たるものは、東広島市安芸津出身で「吟醸酒の父」と呼ばれた酒造家三浦仙三郎(18471908年)が生んだ軟水醸造法だろう。

 広島の水はカルシウムやマグネシウムが少ない軟水で、酒造りにはそぐわないとされていた。発酵が進みにくい点を逆手に取り、発酵に長時間かける方法を確立。まろやかで繊細な広島の酒を誕生させた。広島は一大産地になり、この方法を習得した杜氏が全国で活躍した。

 酒造りを文化として見直す機運は近年、高まっていた。広島杜氏組合は5年前に三浦の著書「改醸法実践録」を復刻。組合長の石川達也さんは翌年、杜氏として初めて文化庁長官表彰を受けた。今年2月には、「西条酒蔵群」が酒蔵として初の国史跡になった。

 ただ、日本酒の国内消費量は減少傾向が続いている。新型コロナウイルス禍で激減したお酒を楽しむ機会も、なかなか戻り切らない。杜氏の後継者不足や、酒造りに使う木おけなどの木製品の作り手の高齢化も問題になっている。

 酒造り文化を後世につないでいく上で、ユネスコ無形文化遺産への登録は追い風になるに違いない。日本酒などの多様な魅力を、まずは今まで以上に多くの人に感じてもらいたい。職業として酒造りに関わる若者も増えるといい。官民が力を合わせて維持、発展に力を注ぐべきだ。

 海外に知ってもらう機会が増えれば、輸出の拡大につながる。10年前に無形文化遺産に登録された「和食」と組み合わせれば、外国人観光客を引き寄せる効果も期待できるだろう。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月06日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・11.06】:こうじ菌と日本人

2024-11-06 07:00:10 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【天風録・11.06】:こうじ菌と日本人

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・11.06】:こうじ菌と日本人

 こんなにも日本人に大切にされるカビはあるまい。かつて、広島市内の酒蔵を取材する前に杜氏(とうじ)から厳命された。数日間は納豆を食べるのを控えて―と。酒造りの鍵を握る、こうじ菌の働きを納豆菌に邪魔させないためだ

 ▲杜氏自身の制約はもっと厳しく、酒を仕込む冬を「命を削る季節」と熱く語った。彼らもきのう、この一報をさかなに乾杯したに違いない。日本酒や焼酎など、こうじ菌を使う伝統的な酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなった

 ▲古文書をたどると奈良時代に「黴(かび)生(は)えき、すなわち、酒を醸(かも)さしめて」の表現が見える。各土地のコメや水、そして人の情熱と合わさって、あまたの味や香りを生んだことに改めて驚く

 ▲酒都西条をはじめ日本酒造りが盛んな広島県は「近代焼酎の父」も育んだ。福山市出身の河内(かわち)源一郎だ。明治末に大蔵省技官を務めた鹿児島でこうじ菌研究を重ね、新種を発明。今も国内産焼酎の8割以上で使われる

 ▲河内はこうじ菌を培養するシャーレを肌身離さず、夜も懐に抱いて眠ったと伝わる。長い歴史と先人の努力を思えば、一滴もおろそかにはできない。日本人である誇りと喜びまで味わえるのだから。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2024年11月06日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.06】:酒造り無形遺産/世界に広めたい伝統文化

2024-11-06 06:00:20 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・11.06】:酒造り無形遺産/世界に広めたい伝統文化

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.06】:酒造り無形遺産/世界に広めたい伝統文化 

 日本政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に申請していた日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」が、同機関の無形文化遺産に登録される見通しとなった。12月2日からパラグアイで開かれるユネスコ政府間委員会で正式決定される。

 国内には古くからの酒どころが各地にある。ユネスコの評価機関は酒造の知識や技術が「個人、地域、国の三つのレベルで伝承されている」と評した。日本の風土や社会と深く結びついた「酒」の伝統文化が国際的に認められた意義は大きい。これを世界に広め、地場産業の振興などにつなげる契機にしてほしい。

 無形文化遺産は伝統芸能や工芸技術、祭礼行事などが対象で、2006年発効の保護条約に基づき登録される。国内の登録は歌舞伎や能楽、和食などに続いて23件目となり、各国の中でも多い。日本の芸能や文化の豊かさを示している。

 伝統的な技術で造られる酒には、醸造酒の日本酒、蒸留酒の本格焼酎や沖縄の泡盛のほか、もち米と焼酎を使った本みりんなどがある。日本酒だけをみても国内各地にさまざまな地酒があり、極めて多様だ。

 その中で兵庫県は日本酒生産量の3割を占める。神戸と西宮にまたがる全国随一の灘五郷をはじめ、伊丹や播磨、淡路などの産地がある。歴史は古く、奈良時代の「播磨国風土記」にも酒に関する記述がある。丹波や但馬の杜氏(とうじ)が技を磨き、酒造り唄(うた)を伝承してきた。酒米の王者・山田錦も北播磨の試験場で生まれた。

 こうした日本酒との深いゆかりがある兵庫にとって、今回の登録は非常に喜ばしい。国内外に酒どころとしての発信を強め、地域ブランドを高める取り組みに期待したい。

 伝統的酒造りは日本古来の高度な技術に支えられてきた。カビの一種であるこうじ菌を使い、コメなどの原料を発酵させる。複数の発酵を同じ容器の中で進める製法は、世界的にみても珍しいという。

 戦前の沖縄にあった泡盛の酒造所は、激しい地上戦で壊滅状態になった。しかし焼け跡のむしろから奇跡的に見つかった黒こうじ菌などで戦後に復興された。酒造文化が容易に継承されてきたものではないという点も忘れてはならない。

 懸念されるのは、酒造りに関わる人たちの高齢化が急速に進んでいる問題だ。酒米の生産者や酒造りに使う木製品の業者も同様の傾向で、後継者不足は深刻化している。

 このままでは、古代から連綿と続いてきた日本独自の無形文化が先細りしかねない。政府や自治体は酒造りを産業としてだけでなく、後世に引き継ぐべき伝統と位置付け、有効な支援策を進めてもらいたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月06日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に

2024-11-06 04:01:20 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.06】:無形文化遺産に酒造り 後世につなぐ追い風に 

 ユネスコの評価機関が勧告した。12月にパラグアイで開かれる政府間委員会で正式決定する見通しだ。

 勧告の中で「酒は日本の生活に根ざし、社会的文化的な行事に欠かせない」と強調する。経験を積み重ねた杜氏(とうじ)や蔵人たちの仕事が「酒の品質を決定する」と高く評価した。

 沖縄では、泡盛が地域の神事やシーミー(清明祭)、ウガン(御願)などの文化を支えている。琉球王国時代から受け継がれてきた酒造りが認められたことを喜びたい。

 「伝統的酒造り」は、麹(こうじ)菌を使い、米や麦といった原料を発酵させる日本古来の技術だ。500年以上前に原型が確立し、各地の気候や風土に合わせながら受け継がれてきた。

 泡盛には黒麹菌を使うのが大きな特徴になる。製造過程でクエン酸を大量に生成することで、他の麹菌より、もろみの酸度を高くすることができる。雑菌による腐敗を抑え、温暖多湿の沖縄に適している。

 若い酒をつぎ足し古酒を育てる「仕次ぎ」など、貯蔵法にも独自性を持つ。

 沖縄の歴史と風土、それに職人たちの知恵と技術が溶け込んだ文化である。

 先人が培った製法を、世界が認めたことになる。

 守り抜く意識を高め、次世代に伝承する決意を固める機会としたい。

           ■    ■

 商品としての泡盛には課題も多い。

 出荷量は2004年をピークに、23年までの20年間で半減以下に落ち込んだ。

 ビールやハイボール、ワインなど好みの多様化に加え、飲酒の機会が減ったといった社会的要因がのしかかっている。

 5月には沖縄の復帰から続く泡盛の酒税軽減措置の段階的な削減が始まった。酒税分を価格転嫁することで、他の酒類との厳しい競争にさらされている。

 泡盛は県内消費が8割を占め、海外への輸出は全体の数%に過ぎない。

 観光客を含めた県内消費を伸ばすとともに、海外販路の拡大が重要だ。

 各酒造所は商品開発や、炭酸割りといった新たな飲み方の提案などで生き残りを懸けている。

 世界的な知名度を上げ、魅力の発信によりいっそう力を入れてもらいたい。

               ■    ■

 沖縄関係では「組踊」と「宮古島のパーントゥ」に次いで、3件目のユネスコ無形文化遺産登録になる。

 県は、しまくとぅばや琉球料理、三線、空手など「沖縄の伝統文化」の登録に向け、すでに推進協議会を設置している。首里城正殿の完成する26年までの国への提案を目指している。

 登録によって文化の継承や観光客の増加、地域の活性化、経済発展など、多くの利点が想定される。

 同時にオーバーツーリズムなどの課題もある。地域全体で沖縄の伝統文化を守り、後世につなぐ取り組みが求められる。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月06日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.06】:泡盛が文化遺産登録へ 海外発信の好機としたい

2024-11-06 04:00:20 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説・11.06】:泡盛が文化遺産登録へ 海外発信の好機としたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.06】:泡盛が文化遺産登録へ 海外発信の好機としたい 

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が泡盛を含む日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。12月上旬に正式に登録される見通しだ。沖縄が誇る銘酒を海外に発信する大きな好機としたい。

 沖縄の風土が育んだ泡盛が世界に認められる契機となる。落ち込む出荷量を上向かせ、いかにブランディングして世界に売り込むかが今後の課題となる。

 日本政府は、こうじ菌を使った「伝統的酒造り」として、日本酒や焼酎造りと共に泡盛の文化遺産登録を申請していた。黄こうじや白こうじが使われる日本酒や焼酎と違い、泡盛は黒こうじのみを用いることが特徴だ。

 15世紀ごろにシャム(現在のタイ)から伝わった蒸留技術を発展させてきた。沖縄戦によって各酒造所で守り育ててきた黒こうじが失われたが、研究者が戦前に保存していた菌をつなぐ形で、戦後に奇跡的に復興を果たした。

 黒こうじは発酵の過程でクエン酸を出す。強い酸性にもろみが保たれるため、雑菌が繁殖しない。多湿な気候に合致した製法である。風土に培われ、苦難の歴史も乗り越えてきた酒と言えよう。

 課題は出荷量の落ち込みだ。県酒造組合のまとめでは、2023年の泡盛の総出荷量は前年の22年比で3・4%減の1万2865キロリットルだった。出荷先別で見ると県内、県外、海外向けのいずれも前年より減少した。比較する22年は沖縄の施政権返還50年に当たった。節目で需要が高まり、前年から出荷量の増加は18年ぶりだった。しかし、この特需を維持して伸ばすことはできていないのだ。

 23年は海外出荷分の落ち込みが激しく、47・2%減。中国や米国向けが特に減った。日本酒も国内消費が減少傾向にあるものの、海外向けは輸出額が増えている。日本の酒に対する注目度は高く、海外の購買層は拡大している。泡盛も海外需要を伸ばすことができるはずだ。

 泡盛産業の振興に向け、沖縄国税事務所が取り組みを進めている。台湾を母港に宮古島を巡るクルーズツアーの乗船客を対象に、船内での試飲会や料理との組み合わせの提案などプロモーションを実施。宮古島市内で酒造所を回るバスツアーも企画した。帰国後にも楽しめるよう、台湾での取扱店の情報提供まで細かく対応している。

 同じく蒸留酒のウオッカを好むポーランドに着目した事業はユニークだ。現地の卸業者やシェフ、バーテンダーらに泡盛を知ってもらい、普及を促す事業も進めている。

 古酒に新酒をつぎ足していく「仕次ぎ」など、独特の楽しみ方を知ってもらうことができれば、欧米でも需要は高まるはずだ。知名度向上に向けた、またとない機会である。業界、行政が一丸となり、泡盛産業の新たなステージを切り開いてもらいたい。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月06日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:「軍艦島」遺産 歴史全体語る努力こそ

2023-10-02 07:33:40 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【社説②】:「軍艦島」遺産 歴史全体語る努力こそ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:「軍艦島」遺産 歴史全体語る努力こそ

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が、長崎市の端島(はしま)(通称・軍艦島)を含む文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に関する日本の取り組みを認める決議を採択した。

 朝鮮半島出身労働者に関する説明が不十分と指摘した2021年の決議から一転した形だが、韓国など関係国との対話の継続も促しており、日本政府は引き続き誠実な対応に努める必要がある。
 
 産業革命遺産が15年に登録される際、韓国が軍艦島の炭鉱などでの朝鮮半島出身者の強制労働を理由に反対したため、日本側は「犠牲者を記憶にとどめるために適切な対応を取る」と約束した。
 
 日本政府は「産業遺産情報センター」を東京都内に設置したが、朝鮮半島出身労働者への差別的対応はなかったとする元島民の証言を紹介したため、韓国側が反発。ユネスコも21年の決議で日本側の説明に不備があるとして「強い遺憾」を表明していた。
 
 今回の決議は、同センターに犠牲者を追悼するコーナーを設置するなど戦時徴用を巡る展示を充実させた日本側の対応を評価する一方、調査や検証をさらに行い、24年12月までに追加報告するよう求めてもいる。
 
 これは、ユネスコが日本の対応にお墨付きを与えたわけでなく、今後も対応を注視する姿勢を示したことを意味する。
 
 韓国政府は「遺産の全体的な歴史を理解できるよう解説を強化する、という自らの約束を履行するよう期待する」と表明した。
 
 尹錫悦(ユンソンニョル)政権は日韓関係の強化を重視しており表現は控えめだが、負の側面を含む歴史の全体像を提示する取り組みを続けるよう、日本政府に求めている。
 
 日本が来年の遺産登録を目指す「佐渡島(さど)の金山」(新潟)でも韓国側は徴用問題を指摘する。日本側には「日韓の関係改善が進み、影響は限定的」との楽観論もあるが、日本側の対応次第で韓国が態度を硬化させる可能性はある。
 
 自国の歴史観だけに拘泥すれば国際的な理解は得られまい。日本政府には引き続き丁寧な説明と対話継続の努力を求めたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月02日  07:32:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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