路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:ガザの戦闘激化 民間人の犠牲回避に力尽くせ

2023-10-31 05:01:55 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【社説①】:ガザの戦闘激化 民間人の犠牲回避に力尽くせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ガザの戦闘激化 民間人の犠牲回避に力尽くせ

 イスラエルによる軍事作戦の激化により、パレスチナ自治区ガザの人道危機が深刻化している。民間人の被害がこれ以上拡大しないよう、一時休戦を急ぐべきだ。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスとの戦闘が「第2段階」に入ったと宣言した。

 ハマスから奇襲を受けたことへの反撃として、イスラエルはガザへの空爆を行ってきた。ここ数日は、戦車や部隊を投入する限定的な地上作戦も続けている。

 「第2段階」では、ハマス幹部や戦闘員の殺害とともに、ガザに張り巡らされた地下トンネルの破壊を目指しているという。イスラエルは近く、本格的な地上侵攻に踏み切るとの見方が強い。

 問題は、民間人の犠牲者が増えていることだ。ガザ当局は、イスラエルとハマスが交戦を始めた7日以降、8000人以上が死亡したと主張している。

 ハマスは、病院などの民間施設の地下にトンネルを掘り、軍事施設を置いているとされる。イスラエルがハマスの拠点を攻撃する場合、住民が結果的に「人間の盾」として使われることになる。

 民間人が犠牲になるように仕向けて、イスラエルが攻撃できないようにし、もし強行した場合には非難の矛先が向かうようにする戦術としか見えない。ハマスの卑劣さは際立っている。

 イスラエルに自衛の権利があるのは当然だが、過剰な侵攻で民間人の犠牲者が飛躍的に拡大すれば国際人道法違反だとの批判は避けられない。イスラエルの孤立は、ハマスの思うつぼだろう。

 ガザには約220万人の住民がいる。水や食料、医薬品、燃料などの搬入は、イスラエルの封鎖措置によって、約3週間にわたり、ほぼ停止されている。現地では物資の略奪が起きるなど、危機的な状況が伝えられている。

 国連総会は緊急特別会合で、ガザ情勢に関し、「人道的休戦」を求める決議を採択した。

 事実上、イスラエルに自制を促す内容で、ハマスへの非難を盛り込んでいない点は公正さを欠いていると言わざるを得ない。米国は反対し、日英なども棄権した。

 それでも、ガザの惨状は放置できないという国際社会の意思を、イスラエルは重く受け止め、危機に歯止めをかける必要がある。

 戦闘の中断と、ハマスがイスラエル奇襲時に連れ去った人質の早期解放に向けて、関係国は外交努力を加速させねばならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:診療・介護報酬 基盤強化で高齢化に備えたい

2023-10-31 05:01:50 | 【超高齢化・過疎・孤立・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅可能性自治体】

【社説②】:診療・介護報酬 基盤強化で高齢化に備えたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:診療・介護報酬 基盤強化で高齢化に備えたい

 高齢化が進み、医療や介護のニーズは高まる一方だ。将来に備えて、医療機関や介護施設の経営を安定させるとともに、人材の確保を進めておく必要がある。 

 政府が、2024年度の診療報酬と介護報酬の改定に向け、議論を始めた。年末の予算編成で増減率を決める。医療行為の価格である診療報酬は2年ごと、介護報酬は3年ごとに見直される。今回は6年ぶりの同時改定となる。

 25年には「団塊の世代」が全員75歳以上になり、医療や介護を必要とする人はさらに増える。

 今回の改定では、国民が安心して治療やサービスを受けられる体制を整えることが重要になる。従来の、報酬引き下げに偏った議論では済まされない。

 診療報酬改定では、来年4月から始まる「医師の働き方改革」への対応が論点になる。勤務医の残業時間は原則、年960時間までとなることから、医師の一部の業務を看護師らが担えるようにすることも検討すべきだ。

 国民の負担増を抑えるため、過剰な通院や薬剤の処方を減らすなど、これまで以上に効率化を進めることも大切だ。

 一方、介護報酬の改定では物価高への対応が急務となっている。電気代や食品の値段が上がっても、報酬は公定価格で決まっているため、変化に対応しにくい。

 全国老人福祉施設協議会の調査によると、昨年度は特別養護老人ホームの62%が赤字に陥った。赤字が6割を超えたのは初めてだ。通所や訪問などの在宅系サービスでは燃料代の負担が大きい。

 節電のため電球を間引いたり、職員はエレベーターの使用を控えたりと、涙ぐましい努力を続けている施設もあるという。

 経営が不安定になり、事業を継続できなくなれば、利用者や家族の生活に影響を及ぼしかねない。政府は、報酬の引き上げや補助金などで支援策を講じるべきだ。

 介護人材の不足も深刻な問題だ。厚生労働省の調査によると、昨年、介護分野の仕事に就いた人は54万人だったのに対し、離職者は61万人に上った。

 介護職は、高齢者の健康や命を預かるという責任を負う一方、賃金が低い。特に今年は春闘で正社員の賃上げが進んだため、介護分野と他産業との待遇差が開いたことも影響していよう。

 人材確保のためには、介護職員の待遇改善は喫緊の課題だ。介護分野で働く外国人を増やすことも考えねばならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:中国成長鈍化 「不動産不況」を克服できるか

2023-10-31 05:01:45 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説①】:中国成長鈍化 「不動産不況」を克服できるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中国成長鈍化 「不動産不況」を克服できるか

 中国の景気回復が鈍いことが、世界経済の懸念材料となっている。主な要因である不動産部門の低迷は出口が見えておらず、警戒が必要だ。

 中国の2023年7~9月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質成長率が、前年同期と比べて4・9%増となった。伸び率は4~6月期の6・3%から縮小した。

 先進国が主要な指標としている前期比では1・3%増と、4~6月期より伸びが拡大し、年率換算では5%強となった。

 中国政府が23年の年間目標とする「5・0%前後」は上回っているとはいえ、景気を落ち込ませた「ゼロコロナ政策」を終えた後の回復としては、力強さを欠く。先行きはなお楽観できない。

 GDPの3割を占めるとされる不動産部門の不振が深刻だ。1~9月の不動産開発投資は、前年同期比で9・1%減った。不動産開発大手の経営危機が相次ぐ。

 中国では、家計資産に占める不動産の割合が欧米と比べて際立って高く、不動産価格が下落すると消費を落ち込ませる。

 だが、中国政府は、格差拡大を防ぐために不動産向け融資を制限した経緯もあり、不動産会社の救済など、抜本的なてこ入れ策には動きにくいのだろう。

 不動産不況は地方政府の財政にも波及している。中国の地方政府は、不動産開発向けに土地使用権を売り、その収入を主な財源としている。市況の低迷で財政が悪化し、大規模な景気対策を講じるのが困難な状況となっている。

 国際通貨基金(IMF)は最新の経済見通しで、24年の世界の成長率予想を引き下げた。その大きな要因は中国経済の減速だ。

 中国の景気に世界の関心が集まっているにもかかわらず、中国側で、統計の不透明な運用が起きているのは問題である。

 中国では若年層の失業率が高く、6月の16~24歳の失業率が約21%と、集計を始めた18年以降で最悪になったが、7月分以降はこの数字を公表していない。

 中国政府は、統計の精度を高めるためと説明している。しかし、経済政策の失敗が露呈するのを避けるためだとの指摘も多い。昨年10月にも、GDP統計の公表を突然、一時見送ったことがある。

 米政府は中国に統計の透明性向上を強く求めている。透明性が損なわれれば、他国企業にとって貿易や投資の判断が難しくなる。中国政府は、世界第2位の経済大国としての責務を自覚すべきだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説②】:薬の不正試験 医療の信頼を揺るがす行為だ

2023-10-31 05:01:40 | 【事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件・ネット上の誹謗中傷他】

【社説②】:薬の不正試験 医療の信頼を揺るがす行為だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:薬の不正試験 医療の信頼を揺るがす行為だ

 薬の安全性や有効性にかかわりかねない不正が相次いでいる。現時点で健康被害は確認されていないというが、医療への信頼を傷つける行為であり、見過ごすことはできない。

 ジェネリック医薬品(後発薬)大手の沢井製薬が、販売中の胃薬の品質試験を国が承認していない方法で行っていたと発表した。

 不正があったのは、薬が胃の中で溶け出す働きに問題がないか調べる試験だ。期待される結果を出すために、溶けにくい経年劣化したカプセルから、薬の中身を別のカプセルに詰め替えていた。

 担当者は問題だと思わず、この方法が8年も続いていた。不正のあった九州工場で製造された薬は自主回収するという。

 後発薬業界では不正が続発している。業務停止が相次ぎ、薬不足を招いた。しかも今回は、業界大手で発覚した。業界のコンプライアンス(法令順守)意識の低さは深刻だと言うほかない。

 このほか、新しい薬や医療機器の臨床試験(治験)を巡る不正も明らかになっている。

 治験を行う医療機関を支援する会社「メディファーマ」が、123件の治験でデータ改ざんなどを行っていた。このうち25件は、すでに国が製造販売を承認し、製品化されていた。不正は10年以上繰り返されていたという。

 厚生労働省の立ち入り検査で、治験の条件に合わない人を対象にしていた例が確認された。決まった時間に薬を投与していないのに、計画通りだったかのように書き換えていたケースもあった。

 治験を担当する医師らが受けるべき研修に、社員が代理で参加した例もある。医療機関側の関与を疑わざるを得ない。

 治験の作業や対象者確保の負担を減らす意図があったのか。不正が業界で横行していないかも含めて、厚労省は調査を進め、厳正に対処してもらいたい。

 いずれも今のところ、薬の効能などに問題はないとされているが、患者に悪影響がなかったか、十分精査する必要がある。

 こうした不正が長期間、野放しにされてきたことも問題だ。

 厚労省は監視を強化し、再発防止に努めてほしい。企業側も自ら不正排除に取り組むべきだ。

 近年は「科学的根拠に基づく医療」を重視する考え方が普及した。医師の経験や勘に頼る医療から、データをもとに診断や治療をする医療が一般的になっている。薬のデータ不正がまかり通れば、科学的な医療など成り立たない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:来年の春闘 経済の好循環を始動する好機

2023-10-31 05:01:35 | 【雇用・正規、非正規・パート・賃上げ・失業率・求人・労働組合・労働貴族の連合】

【社説①】:来年の春闘 経済の好循環を始動する好機

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:来年の春闘 経済の好循環を始動する好機

 日本経済は、長く続いた低成長から脱し、高い賃上げと経済成長の好循環を実現できるかどうかの転換期にある。そうした認識を労使で共有し、次の春闘に臨んでもらいたい。

 連合は、2024年の春闘で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給分を合わせて、「5%以上」の賃上げを求める基本構想をまとめた。

 今年の春闘では「5%程度」の要求だったが、「程度」を「以上」にかえて表現を強めた。物価高による家計の負担増を踏まえ、今春闘より、さらに賃上げを加速させる意志を示したものだ。

 今春闘は、連合の集計で平均賃上げ率が3・58%と、30年ぶりの高水準となった。しかし、物価高に賃上げが追いつかず、物価上昇分を差し引いた実質賃金は8月に前年同月比2・5%減と、17か月連続のマイナスとなっている。

 来年こそ、物価上昇を上回る賃上げを実現すべきだ。連合は、その重要性を強く訴えてほしい。

 岸田首相は、今国会の所信表明演説で「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革を図ると強調した。その意識を企業経営者にも浸透させたい。

 企業はこれまで、コスト削減を最優先してきた。人件費を抑えて確保した利益は、株主への配当や内部留保に回し、積極的な投資をしなかった。賃金の低迷で消費は上向かず、投資も滞って成長につながらない悪循環に陥った。

 国際通貨基金(IMF)は、日本の名目国内総生産(GDP)が23年にドイツに抜かれ、4位に転落するとの見通しを示した。

 最近の円安の影響も大きいが、長期間にわたり、企業が賃上げや投資など利益の効果的な活用を怠ってきたツケでもある。

 来年の春闘は、そうした流れを反転させる好機とも言える。

 既に、サントリーホールディングスが7%程度の引き上げを表明するなど、高い賃上げを掲げる企業が出ている。大事なのは、その動きを中小企業や非正規雇用にも波及させることである。

 燃料費や原材料費の上昇などで中小企業の経営は厳しい。取引する大企業がコスト上昇分を取引価格に転嫁することを認め、中小企業が賃上げの原資を確保しやすくするようにすることが大切だ。

 政府の後押しも欠かせない。賃上げをした中小企業への税制優遇措置や補助金の支給など、支援策を大胆に拡充する必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:「闇バイト」強盗 背後にいる首謀者の解明急げ

2023-10-31 05:01:30 | 【事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件・ネット上の誹謗中傷他】

【社説②】:「闇バイト」強盗 背後にいる首謀者の解明急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:「闇バイト」強盗 背後にいる首謀者の解明急げ

 SNSを通じて集められた「闇バイト」の若者らによる強盗事件などが後を絶たない。凶悪犯罪の連鎖を断ち切るには、背後にいる首謀者の摘発が欠かせない。

 警察庁によると、闇バイトの若者らを使った強盗や侵入窃盗事件は、この2年間に22都道府県で計70件起きている。154人が摘発されたが、大半は末端の実行犯で、犯罪を指示したメンバーの実態は十分に解明されていない。

 東京・銀座の高級時計店に5月、仮面姿のグループが押し入った事件では、16歳の少年を含む実行犯4人が逮捕された。暴力団関係者から金銭を要求されていた1人が強盗を持ちかけられ、知人らを誘って犯行に及んだという。

 指示役から携帯電話などで襲撃する店や方法を伝えられ、言われるままに事件を起こした。実行犯の1人は裁判で「組織が絡んでいて逃げられないと思った」と述べており、背後に首謀者グループの存在があるとみられている。

 闇バイトに応募した若者は「捨て駒」にすぎない。指示役や首謀者を突き止め、逮捕しない限り、同様の事件はなくならない。

 昨年から続いていた広域強盗事件では、「ルフィ」などと名乗る指示役とみられる男3人が逮捕された。フィリピンを拠点に、秘匿性の高い通信アプリを使って犯行を指示していたという。

 逮捕の決め手は、海外のアジトを割り出し、最新のデジタル鑑識技術を使って指示メッセージの復元に成功したことだ。

 海外警察との連携や、デジタル解析能力の向上が、今後一層、重要になることは間違いない。民間とも協力し、最先端の技術を身につけた人材を増やしてほしい。

 銀座の事件は、「ルフィ」らの逮捕から3か月後に起きた。銀座の指示役は別にいたことになる。相次ぐ強盗事件には、複数のグループが暗躍しているのだろう。

 闇バイトは従来、特殊詐欺の実行犯として利用されてきたが、防犯対策の進展で収益が減ったことで、手っ取り早い方法として強盗が増えたとも指摘されている。

 被害者が襲われて死亡したケースもあり、事態は深刻だ。首謀者の摘発を急がねばならない。技術面や法制度上の課題を洗い直し、早期に対策を講じるべきだ。

 闇バイトは「高額報酬」をうたっているが、実際には、実行役が報酬を受け取れず、しかも逮捕後は厳罰が待っている。安易に応募する若者らに、いかに割に合わないかを認識させる必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:袴田さん再審 早期の決着が何よりも重要だ

2023-10-31 05:01:25 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①】:袴田さん再審 早期の決着が何よりも重要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:袴田さん再審 早期の決着が何よりも重要だ

 87歳の被告は、長期に及ぶ拘束の影響で意思疎通が困難になり、出廷できなかった。この先も、延々と裁判を続けることがあってはならない。

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑が確定した袴田巌被告の再審公判が静岡地裁で始まった。再審は、被告を無罪とすべき明らかな証拠が新たに見つかった場合、裁判をやり直す手続きだ。

 袴田さんは今回、心神喪失の状態にあると判断され、公判への出廷を免除された。罪状認否では、姉のひで子さんが「巌に真の自由を与えてください」と述べて無罪を求めた。一方、検察側は袴田さんが犯人だと改めて主張した。

 検察と弁護側の双方が提出した証拠は多数に上り、今後は審理を十数回重ねるという。来年3月に予定されている結審が延びる可能性もあるとみられている。

 事件の発生から、すでに57年が経過している。これ以上、裁判を長期化させることは許されない。双方が立証の要点を絞り、審理を迅速に行う必要がある。

 焦点は、事件の約1年後に、現場近くのみそ工場のタンクから発見されたシャツなどが、犯行時の着衣かどうかだ。衣類には血痕の赤みが残り、最初に死刑を言い渡した1審判決は、袴田さんが事件当時に着ていたと認定した。

 これに対し、再審開始を決定した東京高裁は、実験の結果などから、1年以上みそに漬けると赤みは消えるはずだと指摘した。衣類は不自然で、捜査機関が 捏造ねつぞう した可能性もあると述べた。

 検察側は再審公判で、血痕の赤みについて、専門家の鑑定結果などを基に反証するという。ただ、この論点は過去の裁判で入念に審理された。これまでの蒸し返しにならないよう、有罪の明白な証拠を示すことが不可欠だ。

 これまでの道のりは、あまりに長いと言わざるを得ない。

 袴田さんは1981年に再審を申し立てた。2014年に静岡地裁が再審開始を決定し、死刑執行が停止されて釈放された。

 その後も、再審開始の是非を巡る裁判が9年も続き、裁判所の判断も二転三転した。死刑になるかどうかの瀬戸際で、司法に 翻弄ほんろう され続けたと言うべきだろう。

 再審制度のあり方を考え直すべきではないか。再審開始決定が出たら速やかに再審を開始し、公開の法廷で検察側と弁護側が主張を尽くす形にしてはどうか。半世紀を超えて裁判が続くような事態を繰り返してはなるまい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月28日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:衆院予算委員会 減税の効果と影響を吟味せよ

2023-10-31 05:01:20 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説②】:衆院予算委員会 減税の効果と影響を吟味せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:衆院予算委員会 減税の効果と影響を吟味せよ

 一時的な減税や給付は経済や財政にどれほどの影響を及ぼすのか、政府の答弁では判然としなかった。岸田首相は、国民の疑問に丁寧に答えなければならない。

 衆院予算委員会で質疑が始まり、政府が近く取りまとめる経済対策が論点になった。

 自民党の萩生田政調会長が減税の理由を ただ したのに対し、首相は「国民に物価高の中で頑張ってもらうために、所得税、住民税という形でお返しする」と述べた。

 政府は、所得税と住民税について、1人あたり4万円の定額減税を行う方針だ。住民税非課税世帯には、1世帯あたり7万円を給付することを検討している。

 物価高で国民の負担感は増しており、低所得者を支援する狙いは理解できる。だが、税収が増えたからといって減税をしていたら、1000兆円超もの国の借金はいつまでたっても減るまい。

 立憲民主党の長妻政調会長は「個人の減税と世帯への給付が混在し、不公平だ」と指摘した。

 今の制度設計では、減税は扶養家族も含むため、例えば4人家族なら16万円が減税されるが、給付は世帯あたりのため、家族が何人いても7万円になる見通しだ。

 首相は「不公平が生じないような取り組みを指示している」と述べ、制度の見直しを示唆した。

 こうしたわかりにくさが生じているのは、首相の「減税ありき」の姿勢が原因ではないか。増税に関する自らへの批判を気にして焦っているようにしか見えない。

 岸田内閣はこれまで、防衛力強化や少子化対策に取り組み、そのための財源を確保しようとしてきた。ところが減税論議が盛り上がったために、少子化対策など、それ自体の議論が停滞している。

 防衛力強化も少子化対策も、待ったなしの課題だ。負担のあり方を含めて、具体的な内容を詰めなければならないのに、その議論が深まらないのは残念だ。

 予算委では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済策も議論となった。被害者への賠償を逃れるため、教団が資産を海外や別の団体に移しているのではないか、と指摘されている。

 立民と日本維新の会は、宗教法人への解散命令請求が出た段階で、裁判所が財産の保全を命令できるようにする法案を提出した。与党も実務者協議を始めた。

 憲法が保障する「信教の自由」や財産権との関係を踏まえ、被害者救済のために何ができるのか、真剣に検討すべきだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月28日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:中国の核軍拡 不透明な実態が緊張を高める

2023-10-31 05:01:15 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説①】:中国の核軍拡 不透明な実態が緊張を高める

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中国の核軍拡 不透明な実態が緊張を高める

 透明性を欠いたまま、核兵器を含めた軍備を拡張する中国の動きは、日本など周辺国にとって深刻な脅威である。地域の緊張を自ら高めていることを中国は認識すべきだ。

 中国の軍事・安全保障に関する米国防総省の年次報告書によると、中国が保有する運用可能な核弾頭数は推計500発超に達した。2030年には1000発を超す可能性が高いとしている。

 20年時点の保有数は200発台前半と推計されていた。この3年で約300発増えたことになる。米国防総省は、中国が米国の予測を上回る勢いで核戦力を増強していることに強い懸念を示した。

 中国は、核政策の基本方針として「先制不使用」や「最低限の核戦力保持」を掲げているが、核弾頭や大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの保有数を公表していない。その主張は説得力を欠く。

 中国外務省は、米国の今回の報告書に対して反発を示す一方で、肝心の核弾頭数を増やしたかどうかについては言及しなかった。

 中国の核弾頭数は、米露間の核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約」(新START)が戦略核弾頭の配備上限としている1550発に着実に近づいている。中国が米露と並ぶ核大国となることを目指しているのは明らかだ。

 中国は米国の核軍縮交渉の呼びかけに応じていない。保有数で大きく上回る米側の削減が先決だと主張しているが、核戦力を増強するための時間稼ぎではないか。

 中国の国防を巡る不透明さは核戦力にとどまらない。李尚福国務委員兼国防相は、2か月近く動静が途絶えた末に解任された。兵器調達に関する汚職などが取り沙汰されているが、中国は解任理由を明らかにしていない。

 後任も発表されず、国防相不在という異例の事態が続いている。こうした状況では、不測の衝突を回避するための軍当局間の対話など期待できない。

 今回の米報告書では、中国が、日本や韓国、米軍基地のある米領グアムを射程に収める中距離弾道ミサイルを急速に増やしていることも明らかになった。

 中国は19年に失効した米露の中距離核戦力(INF)全廃条約に参加していないため、米国を圧倒するまでに中距離ミサイル戦力を増強した。中国が北朝鮮の核・ミサイル開発を黙認していることも日米韓共通の懸案だ。

 日本は米韓と連携し、敵のミサイル発射拠点を破壊する反撃能力の保有を急ぐ必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月27日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:秋の読書月間 書店で出会う「心に残る1冊」

2023-10-31 05:01:10 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【社説②】:秋の読書月間 書店で出会う「心に残る1冊」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:秋の読書月間 書店で出会う「心に残る1冊」

 インターネットで手軽に本を買える時代だが、書店には思わぬ良書と出会える喜びがある。活字文化を支える「街の本屋さん」の減少に歯止めをかけなければならない。 

 きょうから「秋の読書推進月間」が始まった。スマートフォンの普及などに伴い、出版業界は紙の書籍や雑誌の不振が続いている。

 最近の用紙費や輸送費の高騰で、新刊の平均価格は前年比2・2%増の1268円に上った。値上がりによる買い控えで活字離れが加速しないか心配だ。

 文部科学省の調査で、2001年生まれの男女に1か月間に読んだ紙の本の数を尋ねたところ、「0冊」が6割を超えていた。

 読書は私たちを未知の世界に誘い、知識と知恵を与え、人生を豊かにしてくれる。スマホで得る情報だけでは、社会生活に必要な情操を十分に養えないだろう。

 小中学生では、読書が好きな児童生徒ほど成績が良いとの調査結果もある。時間に追われる時代だからこそ、子どもの頃から本を手に取り、ゆっくりと活字に親しむ環境を守ることが欠かせない。

 ふと立ち寄って本選びを楽しめる地域の書店は、そんな場の一つだ。しかし全国の書店数は1万1000余りとなり、最近20年でほぼ半減した。書店が一つもない「無書店自治体」は、全国の市区町村の26%に上るという。

 本紙の世論調査では、街に書店がない現状に61%の人が改善の必要があると思う、と回答した。書店を守るために何をすべきなのか、官民で考える必要がある。

 店主の目利きでユニークな本をそろえたり、カフェや雑貨売り場を併設したりといった個性的な書店が人気を呼んでいる。

 書店不足の解消を目指し、出版取次大手は東京都心の駅にスマホで入店や決済ができる書店をオープンさせた。店員が不要なため、長時間営業が可能だという。

 各書店は、読者の幅広いニーズにこたえられるよう、工夫を凝らしてもらいたい。

 難病の先天性ミオパチーを患う市川沙央さんの「ハンチバック」が芥川賞を受賞したことで、障害者の読書環境が注目された。

 4年前に施行された読書バリアフリー法は国や自治体に、本の朗読サービスの拡充などを促しているが、まだまだ障害者が利用しやすい状況だとは言い難い。

 本を読みたくてもかなわない人がいる。国や自治体は、全ての人が活字文化の恩恵を受けられるよう、環境づくりを急ぐべきだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年10月27日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【2023年10月29日 今日は?】:政府が第1回宝くじ発売、1枚10円で1等賞金は10万円

2023-10-31 00:00:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【2023年10月29日 今日は?】:政府が第1回宝くじ発売、1枚10円で1等賞金は10万円

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【2023年10月29日 今日は?】:政府が第1回宝くじ発売、1枚10円で1等賞金は10万円

 ◆10月29日=今日はどんな日

  政府が第1回宝くじ発売、1枚10円で1等賞金は10万円(1945)

一攫千金の夢を求める長い行列(写真は1968年当時。時事通信フォト)

 

一攫千金の夢を求める長い行列(写真は1968年当時。時事通信フォト)

 

 ◆出来事

  ▼山形県酒田市の中心部で大火。翌日鎮火するまで商店街など約22㌶焼き尽くす(1976)▼中国共産党が「1人っ子政策」撤廃。導入から36年ぶりの政策転換(2015)

 1976年10月29日当夜の写真。炎がなめるように街を飲み込み、空を赤く染めた

 ◆誕生日

  ▼中村福助(60年=歌舞伎役者)▼高嶋政宏(65年=俳優)▼つんく♂(68年=シャ乱Q)▼堀江貴文(72年=実業家)▼前園真聖(73年=元サッカー選手)▼酒井健太(83年=アルコ&ピース)▼長谷川純(85年=俳優)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・今日は?】  2023年10月29日  00:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・10.15】:「晩節を汚さなければ…」細田博之氏の衆院議長辞任会見 無念さより意欲ばかりがクローズアップ

2023-10-30 07:30:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【中山知子の取材備忘録・10.15】:「晩節を汚さなければ…」細田博之氏の衆院議長辞任会見 無念さより意欲ばかりがクローズアップ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・10.15】:「晩節を汚さなければ…」細田博之氏の衆院議長辞任会見 無念さより意欲ばかりがクローズアップ 

 細田博之衆院議長(79)が、議長職の辞任を発表した10月13日の記者会見。事前に、時間は30分と示され(実際は50分あまりに延びた)、参加資格も記者クラブ加盟の1社1人などのさまざまな制約が設けられた。日刊スポーツも参加を断られ、出席はできなかった。当初は、質疑応答中の撮影も認められていなかったほどだ。ジャニーズ事務所の記者会見で問題になった「NGリスト」どころか「NGだらけ」。普段から簡単に入ることができない議長公邸が、会見の場所になったことも含めて、「排除の論理」が前提にされた記者会見の場のように感じずにはいられなかった。

細田博之氏(20年10月)
細田博之氏(20年10月)

 記者会見にこうした制約が設けられることは珍しいことではなく、いろいろな制約のために記者会見に出席できなかった経験は何度もある。ただ、細田氏に今回求められていたはずの説明は議長辞任の経緯だけでなく、週刊文春が報じたセクハラ疑惑、そして何より、国民の間に被害も出ている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる、自身との関係など多岐にわたった。

 細田氏はこれまで、質疑が生じる記者会見の場では、説明をしていなかった。きちんと説明してこなかったツケもあり、今回、多方面から追及されるのは分かっていたはずだが、細田氏は、会見の場はあくまで議長辞任に関することが目的で、そのほかのテーマについて話す場では、必ずしもない、という趣旨の発言をしていた。

 それなら「議長」と「議員個人」として会見を分けて行えばよかった。体調の問題からそうした柔軟な対応が取られることは考えにくく、そうなるとあの場で質問が集中することは分かっていたはず。記者クラブ側は少なくとも1時間以上を求めていたという中での「30分」という時間設定には、疑問しかわかない。会見の趣旨は異なるが、かつて鳩山由紀夫氏が首相在任中、政治資金規正法違反で元公設秘書が在宅起訴されたことを受けて会見した際は、議員個人の問題でもあり、首相官邸ではなく国会近くのホテルで会見が行われ私たちも取材ができた。

 衆院議長というポジションは、学生時代に「三権の長」の一角と習ったが、永田町を取材していると、あらためて立場の重さを実感する。国会開会中、議長室の周りの警備は厳重で、その一角は緊張感が漂う。議長室のエリアにも、記者会見を行える応接室のような部屋がある。今回の細田氏の記者会見で思い出したのが、8年前の2015年4月、その場所で行われた町村信孝氏の衆院議長辞任の記者会見だ。町村氏も、体調不良を理由に任期途中での辞任となった。

 この時、町村氏も細田氏と同様、軽度の脳梗塞と診断されたことを理由に挙げた。過去に1度、同じ診断を受けたことに触れながら「二度あることは三度ある。議長の責務の重さを考えて、いささかでも悪影響がある恐れがあることは避けなければならない」として、辞任の意向を表明。議員は辞職しないとして、今後の議員活動についても語っていたが「一定の時間がたって、引き続き十分な活動ができればいいと思うが、私というよりドクターの判断。ある一定の時間がたったところで判断しないといけない」と語っていた。

 町村氏は議長の辞任から2カ月後に亡くなったが、あの時の辞任会見で感じたのは、議長を辞めることへの無念さ。今後の活動にも触れていたが、ガツガツした意欲というより、当面の自身の健康問題との向き合い方を、淡々とした口調で語っていたことを覚えている。

 一方、細田氏の会見では、任期半ばで議長を辞めることへの無念さがあまり伝わってこなかった。議長は辞任するが今後の衆院選出馬に意欲を示し、体調不良を理由に議長は辞めるのに国会議員の職を続けるというのは考えが甘いのではないか、との指摘も多く出ていた。もちろん、進退はご自身の判断というのが大前提で、第三者がとやかく言うべき問題ではないのかもしれないが、細田氏の言葉の節々には、体調不良の問題ではあったとしても、衆院議長を辞任することが「重い決断」であるという思いは、あまり感じられなかった。

 問題や疑惑を抱える中での「引責辞任」ではないのかとの指摘は否定しておられたが、実際は「このまま議長を務めていくには、あまりにも多くの問題を抱えすぎたからではないか」(政界関係者)との分析には、うなずける側面がある。

 細田氏は1990年の初当選から当選11回を数え、官房長官や数々の閣僚、自民党幹事長など要職を歴任してきた重鎮だが、問題や疑惑について誰もが納得できるような説明がないまま、執念のようにも思える今後の活動への意欲ばかりが、クローズアップされた形になった。「晩節を汚されなければよいのだが」。記者会見の後に聞いた、こうした声は少なくない。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)

 

 

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年10月15日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・10.01】:「寸止め芸」定着の岸田首相 伝家の宝刀・衆院解散めぐる、におわせと火消しの繰り返し

2023-10-30 07:30:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【中山知子の取材備忘録・10.01】:「寸止め芸」定着の岸田首相 伝家の宝刀・衆院解散めぐる、におわせと火消しの繰り返し

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・10.01】:「寸止め芸」定着の岸田首相 伝家の宝刀・衆院解散めぐる、におわせと火消しの繰り返し 

 衆議院の解散を決める権限というものは、時の首相にとって「伝家の宝刀」といわれる。この宝刀を抜こう、抜こうとしているように見せながら、実際にはなかなか抜かない「解散寸止め芸」(野党関係者)が、板についてきたようにもみえるのが、最近の岸田文雄首相の言動だ。

岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)
岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)

 解散について「今は考えていない」というフレーズを繰り返し、「じゃあ今じゃな ければ、後になったら考えるのか」と、周囲を疑心暗鬼にさせる。やるともやらないとも受け止められないコメントなら「解散風」が強まるのは当然。今回は、臨時国会の召集にあたって、提出されれば審議が必要になる補正予算案を提出するかどうかを、首相が当初はっきりさせなかったこともあって、先週の永田町は、解散の有無から、いつ衆院が解散されるのかというステージに上がり、ざわつく日が続いていた。

 臨時国会の召集日をいつにするかについても腹のうちを明かさず、提出となれば、ある程度の程感がみえる補正予算案の提出の有無にも触れなかったため、臨時国会召集日の「10・20冒頭解散か」と、ざわつきの盛り上がりは右肩上がりになった。結果的に岸田首相は9月29日になって、補正予算案を臨時国会に提出すると表明。「10・20解散」の臆測を自ら沈静化、火消しすることになったが、自身が説明するまではざわつく周囲の状況を見ながら、自分の権力というものをあらためて確認しているかのようにもみえた。

 岸田首相は今年6月の通常国会最終盤にも、解散について「情勢をよく見極めたい」と踏み込んで大騒ぎになったことを受け、2日後に「考えていません」と打ち消したことがある。「におわせ」からの「打ち消し」という手法は、今回もほぼ同じだった。前出の野党関係者は取材に「岸田首相の『解散寸止め芸』は不誠実だ」とも批判したが、「10・20解散」は消えても「首相は何をやってくるか分からない」という疑心暗鬼は、今も消えていないとも明かした。 

 政界には、「首相は衆院解散と公定歩合については、うそをついてもいい」という言い伝えがあるといわれる。かつて佐藤栄作首相が、解散の可能性を聞かれた際に「頭の片隅にもない」と語りながら実際に衆議院解散に踏み切り、後日「頭の片隅にはなかったが、頭の真ん中にあった」と言ったというのは、今も語り継がれていることだという。岸田首相の最近のコメントも「先送りできない問題に一意専心に取り組む。今はそれ以外は考えていない」(20日、訪問先のニューヨークで)「経済対策をはじめとする先送りできない課題に一意専心取り組む、それ以外のことは今考えていない」(29日、報道陣の取材に)と、言質を取らせないような巧妙な構成となっている。

 最近、よく出てくる「一意専心(他に心を向けず、ひとつのことだけに集中する、の意味)」という「岸田ワード」は、かつて大相撲で若ノ花(のちの3代目若乃花)が1993年7月の大関昇進時の口上で使ったことで知られる。口上は力士の強い決意を示す言葉として知られる。岸田首相の「一意専心」が額面通りなら解散はしないというふうにも受け止められるが、言葉と行動がマッチしているのか、いないのか、あいまいなのが岸田首相流でもある。これまでの手法から、首相が「政局好き」というのはつとに知られるが、「政局好きと政局巧者は違う。首相は『かき回す』のがうまいだけ」(自民党関係者)との声も聞いた。

 首相の腹のうちは、誰にも分からない。解散、解散と騒いでいるのはこちら側だけで、実際は、岸田首相は当面、衆院解散するつもりはない、と見る向きもあるようだ。冷静に考えると、内閣支持率は上がっていないし、防衛費増額に向けた財源確保のための増税を打ち出すなどしていることで、SNS上では「増税メガネ」と批判され、たびたびトレンドワードになるほど。解散風をあおっても、その先の選挙に向けて風が吹くのかどうか、見通せていないようにも感じる。

 風が吹いていない時は、崖から飛び降りてでも自分で風を起こす、と言ったのは小池百合子東京都知事だが、「勝負師」ともいわれる岸田首相がそうした賭けに出るほどの明確な戦略があるのかも今は、見えてこない。定番化した岸田首相の「寸止め芸」がどう展開していくか、気の抜けない日々が続く。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年10月01日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

2023-10-30 07:30:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・09.24】:小泉進次郎氏が福島の海で語った言葉の原点は新人議員時代「平均寿命通りに生きれば…」とも 

 政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に踏み切ってから24日、1カ月が経過した。これを受け、中国が日本産海産物の輸入禁止に踏み切り、輸出減少に伴う売り上げの減少や、価格の影響への懸念もくすぶる。そんな中国側の動きを念頭に「非科学的な攻撃みたいなもの」と言及したのは、自民党の小泉進次郎元環境相(42)だ。

南相馬市の北泉海岸近海でとれたヒラメの刺し身を賞味する小泉進次郎元環境相(2023年9月17日撮影)

 処理水海洋放出を受けた風評被害対策の一環で9月に入り、福島県南相馬市の海を2度訪れた。南相馬は日本有数のサーフ・スポットとして知られる。1度目は3日、子どもたちのサーフィン教室にプライベートに近い形で参加して波に乗り、処理水の安全性を示すために地元の海で自らサーフィンをする動画を、自身のインスタグラムなどに投稿した。2度目は17日、党サーフィン議連の幹事長として同僚議員らとサーフィンの国際大会が訪れた海岸を視察。視察後の取材に処理水放出やそれを受けた中国の対応などに対し、より踏み込む形で発信をした。

 日本政府や岸田文雄首相は機会を見つけては、中国側に禁輸の即時撤廃を申し入れているとされる。そんな中で、サーフィンという手段を用いて海に入り、中国側に反論する形を取った進次郎氏に対しては賛否があるが、普段は厳しい声が多いSNSでも評価する声が上がった。1度目の訪問でサーフィンをした際、自身のインスタグラムに「パフォーマンスといわれても構わない」と投稿し、目を向けてもらうことを優先したことをにじませていた。

 2009年の初当選時からしばらく、進次郎氏がその時々の話題やテーマについてぶら下がり取材で語るのが、恒例だった。党要職や大臣に就きその機会は少なくなり、環境相退任後は、自民党神奈川県連会長や国会対策副委員長という裏方の調整役となり、公の場で肉声を聞く機会はさらに減った。久しぶりにスポットライトが当たる形になった今回、福島や震災復興への今の思いを、久しぶりに耳にする機会になった。

 東日本大震災と原発事故が起きた時、進次郎氏は野党自民党の当選したばかりの新人議員だった。2009年の衆院選で自民党は旧民主党に惨敗。政権を失った当時の選挙で初当選したのは進次郎氏と伊東良孝氏、斎藤健氏、橘慶一郎氏の4人しかいない。新人議員の時から震災や原発事故からの復興に携わる、自民党の数少ない議員の1人だ。最初は野党議員として、2期目以降は与党議員として、国会議員生活の大半に「震災からの復興」が重なってきた。

 震災発生時に29歳だった進次郎氏は、自民党青年局長時代に「TEAM11」を立ち上げ、被災地訪問を続けた。当時からの交流、新たに生まれた交流は今も続くと聞く。個人的には、国会議員であろうがなかろうが、それぞれの立場でさまざまな関わり方があると感じているが、進次郎氏は当時から、若い自分だからこそ将来の復興を見届ける責任があるとたびたび口にしてきた。

 国や東京電力はこれまで、原発の廃炉には30~40年かかるとしている。処理水放出についても同様の年月が見込まれているが、予定通りに終わるのかどうか、誰も見通せない。今、政権の中枢を担う総理大臣や担当の大臣も、「完了」を見届けられる立場にある人はほとんどいないだろう。そういう中で、新人議員の時から震災と復興に向き合う時間を長く持てる立場にある進次郎氏にとって、どんな形であっても目を向けることが、自身の責任の1つだと思っているのではないかと感じる。それが今回は、学生時代から親しんできたサーフィンという形になったのではないかとも感じる。

 進次郎氏はかつて「平均寿命(男性は81・05歳=2022年)どおり生きれば、私は原発の廃炉まで見届けることができる立場」と述べ、被災地への取り組みは「ライフワーク」と話していた。16日の視察後の取材にも「処理水の放出はこれから何十年と続く。今はこうやって注目してもらっているけれど、間違いなくこれから注目度は下がる。それでも継続して地域の皆さんの声を聞いて、廃炉と、復興の最後まで取り組み続けることがいちばん大事」と話した。

 「TEAM11」の活動時に掲げられたテーマは「継続は力なり」だった。言葉の持つ責任の重さは、これからもずっと問われ続けていくのだと思う。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)

 

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年09月24日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ニュース裏表】:岸田首相はまだ解散を諦めていない 「明るさ」の意味はどこにある 伊藤達美

2023-10-30 07:00:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【ニュース裏表】:岸田首相はまだ解散を諦めていない 「明るさ」の意味はどこにある 伊藤達美

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ニュース裏表】:岸田首相はまだ解散を諦めていない 「明るさ」の意味はどこにある 伊藤達美 

 もしかすると、岸田文雄首相は、まだ年内解散を諦めていないのではないか。23日に行われた所信表明演説を聞いて、そんな思いがよぎった。

 岸田首相を取り巻く状況は厳しい。内閣支持率は低迷し、演説の前日に投開票が行われた参院高知・徳島補選は惨敗、衆院長崎4区補選も辛勝という結果だった。

岸田首相はいつ「解散・総選挙」を決断するのか

 〝解散なし〟が確定すれば来年秋の総裁選に向けた「ポスト岸田」政局がスタートする。「ポスト岸田」は「岸田首相」という可能性もなくはないが、現在の流れでいけば「岸田降ろし」の色彩を帯びるのは避けられないだろう。

 ところが、所信表明演説での岸田首相はことのほか明るかった。「カラ元気に過ぎない」と言われればそうかもしれないが、「何か考えているのではないか」と思わせるものがあった。

 演説では「私は何よりも経済に重点を置く」と強調した。「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資が牽引(けんいん)する成長型経済」への変革を訴えた。

 また、「日本経済は、30年ぶりの変革のチャンス」「この30年間、コストカット最優先の対応を続けた」「30年ぶりの3・58%の賃上げ」「30年ぶりの株価水準」と「30年ぶり」を多用し、成果をアピールした。

 確かに、岸田政権の2年間で、安倍晋三、菅義偉両政権が10年かけて成し遂げられなかった「デフレ脱却」が、もう一歩のところに来ているのは事実だ。岸田首相としては、何としてもデフレ脱却を成し遂げたいとの強い思いがあるのだろう。政策実現への意欲を前面に出した演説だったといえるのではないか。 

 筆者は、岸田首相が「先送りできない課題」を進めようとするなら、総選挙による「国民の信」を得ておくことが必要ではないかと指摘してきた。賛否が大きく分かれる問題であれば、なおさらだ。

 国民の信を得ないまま、これらの課題を進めていくのは、むしろ「傲慢」との批判すら受けるのではないか。

 岸田首相が表明した所得税減税も、賛成派からは「中途半端」、反対派からは「バラマキ」と批判され、「総裁選目当て」とまで揶揄(やゆ)されている。解散を先送りし、政権の正当性に疑問符がつけられている状況を放置していることに原因があると見るべきだ。

 しかし、解散するにしても来年度予算の編成作業を考えると、物理的に厳しい。それでも、しゃにむに解散に突き進もうとするなら、小泉純一郎首相が2005年、参院の郵政改革法案否決を理由に解散に踏み切ったケースに匹敵する強い決意が必要だ。

 果たして、そこまでの決意はあるのだろうか。いずれにせよ、岸田政権は、いまが正念場といえるのではないか。(政治評論家)

 元稿:夕刊フジ 主要ニュース 主要ニュース 社説・解説・コラム 【話題・連載「ニュース裏表」】  2023年10月29日  09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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