路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【大谷昭宏のフラッシュアップ・07.08】:なぜこうまで米軍にひれ伏すのか

2025-02-22 00:00:00 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【大谷昭宏のフラッシュアップ・07.08】:なぜこうまで米軍にひれ伏すのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・07.08】:なぜこうまで米軍にひれ伏すのか 

 いま東京、大阪のミニシアターで「骨を掘る男」という変わったタイトルの映画が上映されている。6月23日の慰霊の日を前に、私はその男、具志堅隆松さん(70)を沖縄に訪ねた。ポスター画像

(C)Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production

 自らを「ガマフヤー」と呼ぶ具志堅さんは、かつての戦争で県民や兵隊20万人が亡くなった沖縄で、いまも壕(ガマ)に眠る遺骨を掘り(フヤー)続けている。案内していただいた南部の平和創造の森近くの壕をはじめ、これまで400体の遺骨を掘り出したという。

 「NO WAR」と書かれた帽子につけたランプの明かりが頼りの手作業。遺骨の近くに散らばるキセルとカンザシ、乳歯は、祖父と嫁、孫を想像させる。あごの骨が砕けた遺骨は小銃で自害した兵士のものか。

 だが、その具志堅さんが怒りで震えてくるようなことがいま起きつつある。

 海底が軟弱地盤で底なし沼のような辺野古新基地の埋め立てに、国などは沖縄南部の土を使う計画だという。沖縄県民が最後に追い詰められた南部は、いまも3000体の遺骨が眠っているといわれている。戦争に散った遺骨を、また戦争のための基地に運ぶのか。具志堅さんたちの怒りは治まらない。

 そんななか、またしてもこの1年で計5件の少女を含めた沖縄の女性に対する米兵の性犯罪が明らかになった。だが驚くことに政府と外務省は事件を知っていながら、沖縄県(県民)には県議選と沖縄慰霊の日がすむまでひた隠しにしていた。県民の反米軍感情の高まりを恐れたに決まっている。

 女性の生涯消えない傷に思いを寄せることもなく、なぜこうまで米軍にひれ伏すのか。いざというときに「私たちの国は二度と戦争をしない」と言えるのか。慰霊式での高校生の詩が浮かぶ。

 大切な人は突然 誰かが始めた争いで 夏の初めにいなくなった 泣く我が子を殺すしかなかった 一家で死ぬしかなかった- 

 また誰かが争いを始めようとしていないか。しっかりと目を見開いておきたい。

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 ■「骨を掘る男」の作品トップへ

 沖縄戦の戦没者の遺骨を40年以上にわたって収集し続けてきた具志堅隆松さんを追ったドキュメンタリー。

 沖縄本島には激戦地だった南部を中心に、住民の人々や旧日本軍兵士、さらには米軍兵士、朝鮮半島や台湾出身者たちの遺骨が、現在も3000柱近く眠っていると言われる。28歳から遺骨収集を続け、これまでに約400柱を探し出したという70歳の具志堅さんは、砕けて散乱した小さな骨や茶碗のひとかけら、手榴弾の破片、火炎放射の跡など、拾い集めた断片をもとに、その遺骨が兵士のものか民間人のものか、そしてどのような最期を遂げたのかを推察し、思いを馳せ、弔う。
 
 自身も沖縄戦で大叔母を亡くした映画作家・奥間勝也監督が具志堅さんの遺骨収集に同行して大叔母の生きた痕跡を追い、沖縄戦のアーカイブ映像を交えながら、沖縄の歴史と現在を映し出す。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2024年07月08日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.17】:米国の大統領令/多様性への攻撃をやめよ

2025-02-21 06:00:20 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.17】:米国の大統領令/多様性への攻撃をやめよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.17】:米国の大統領令/多様性への攻撃をやめよ 

 米国で、人種や性別、性的指向などの多様性に配慮する取り組みが大きく後退しつつある。米国内外への影響の広がりが懸念される。

 トランプ大統領は就任初日に、バイデン前政権が進めた「多様性・公平性・包括性(DEI)」を重視するリベラル路線の政策を終わらせる大統領令に署名した。さらにLGBTQ(性的少数者)を標的に、政府が認める性別は「男性と女性だけだ」とも宣言した。

 DEI政策は、すべての人に公平な機会を与えることで、多様な背景を持つ人の社会参画を後押しするのが狙いである。連邦政府は職員の採用や登用で人種などに偏りが出ないように努め、多くの大手企業がDEIの推進を目標に掲げてきた。

 一方、近年はトランプ氏の支持基盤とも重なる保守層の反発が強くなっていた。女性や有色人種、LGBTQが優遇され、白人男性が逆差別を受けている-との主張だ。トランプ氏はDEIの施策について「違法で不道徳な差別プログラム」と言い放った。

 こうした反動の背景には、格差拡大による不平等感の高まりや、国民の間でジェンダーや人権に関する意識の分断があるとされる。

 しかし、DEIの趣旨そのものが否定されているわけではない。トランプ氏は、その点を見誤ってはならない。大統領には、多様性の尊重と国民統合の両立を探りつつ、差別の是正に努める責務がある。

 まずは、DEIへの荒唐無稽かつ悪意に満ちた攻撃をただちにやめるべきだ。トランプ氏と側近らは、首都ワシントン近郊での旅客機事故やカリフォルニア州の山火事の拡大、インフレまでも「DEIを進めた結果、組織が対応を誤ったのが原因」などと主張している。根拠がない上にマイノリティーへの敵意すらあおりかねず、強く非難する。

 昨年以降、マクドナルドや小売りのウォルマート、交流サイトのフェイスブックを運営するメタといった米大手企業が、DEIに関する取り組みの終了や縮小を相次いで表明した。トランプ政権の意向に沿ったのだろうが、多様性の旗を振ってきた企業の変わり身の早さに驚く。

 DEIを重要な経営課題に据える日本企業は多い。米国の状況に動じることなく、経営陣は腰を据えて進めてもらいたい。海外と比べて遅れている女性登用には、一層の工夫や努力が求められる。

 多様性の重視は、脱炭素と同様に世界的な潮流であり、企業にとっての社会的責任でもある。後退の連鎖を止めるためにも、いま一度意義を再確認し、取り組む意思を明確にすることが重要だ。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月17日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・02.15】:米関税策の拡大 各国は粘り強く自制を促せ

2025-02-17 05:00:35 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説②・02.15】:米関税策の拡大 各国は粘り強く自制を促せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.15】:米関税策の拡大 各国は粘り強く自制を促せ

 トランプ米大統領が、高関税策を矢継ぎ早に具体化させている。発動の範囲を広げれば、世界経済に深刻な打撃を与えるだけでなく、米国にとっての弊害も大きい。 

 日本は各国とともに、米国と粘り強く交渉して、自制を促していかなければならない。

 トランプ政権は4日、中国からの輸入品に10%の追加関税を実施した。次いで10日には、鉄鋼とアルミニウム製品に25%の関税を課す方針を発表した。来月12日に発動する予定で、日本を含む全ての国や地域の製品が対象となる。

 貿易戦争を、さらに深刻化させる懸念が強いのが、13日に導入を指示した「相互関税」と呼ばれる大規模な措置である。

 相手国が米国よりも高い関税を課している場合、同じ水準まで米国の関税を引き上げ、負担を「対等」にしようとする戦略だ。

 米国の単純平均実行税率は3%台だが、新興・途上国は高くインドやブラジルは10%を超える。

 世界貿易機関(WTO)を核とする自由貿易体制では、経済の発展段階ごとに異なる関税を許容し、互恵的な関係を築いてきた。米国が一方的に関税を上げれば、信頼関係は根底から揺らぐ。憂慮せざるを得ない事態だ。

 米国は今後、数週間から数か月かけて国ごとに調査し、適用すべき関税率を決めるという。各国は、高関税政策が貿易の縮小を招き、誰の得にもならないことを繰り返し伝えていくべきだ。

 トランプ氏には、貿易赤字を削減する狙いがあろう。だが、海外に展開している米製造業が国内に回帰するには時間がかかる。

 むしろ、すぐ影響が出るのは物価高の加速という形ではないか。米産業界ではコスト増を心配する声が強まっている。トランプ氏は 真摯 しんし に耳を傾ける必要がある。

 日本も警戒せねばなるまい。日米貿易協定で関税は低いが、米政府は、規制や消費税などの税制、補助金を非関税障壁として、高関税を課す可能性があるためだ。

 米政府内に「日本の関税は比較的低いが、高い構造的障壁がある」と、日本を名指しする意見があり、検討対象になる見通しだ。

 基幹産業の自動車で、関連企業に高関税が課されれば、収益が悪化して賃上げ機運がしぼみ、日本経済の成長を阻みかねない。

 石破首相はトランプ氏との会談で、対米投資額を大幅に引き上げると伝えた。米経済への日本の貢献度の高さを訴え、高関税を回避する努力を尽くしてほしい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.13】:「ガザ所有」発言/パレスチナ軽視が過ぎる

2025-02-14 06:00:40 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.13】:「ガザ所有」発言/パレスチナ軽視が過ぎる

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.13】:「ガザ所有」発言/パレスチナ軽視が過ぎる 

 トランプ米大統領は、イスラエルの攻撃で荒廃したパレスチナ自治区ガザに関し、米国が長期的に所有し、再建や経済開発に取り組むと発言した。約200万人の住民は域外の安全な場所に恒久的に移住させるべきだとも提案した。パレスチナの人々と歴史を侮辱し、民族自治権を無視する暴言である。直ちに撤回し謝罪するべきだ。

 イスラエルのネタニヤフ首相との会談後の発言で、同国の意向を反映しているとされる。その後、米政府高官が移住はガザを再建する間の「一時的なもの」と釈明したが、トランプ氏は帰還を重ねて否定した。

 パレスチナは多くの国から国家承認を受け、国連総会にもオブザーバー参加している。米国は何の権限で所有するというのか。住民を強制的に移住させるのは明らかな国際法違反であり、「民族浄化」の批判を免れない。パレスチナや親米のサウジアラビアなど国際社会が強く反発するのは当然である。

 そもそもパレスチナ人の多くは1948年のイスラエル建国に伴い、故郷を追われた人やその子孫だ。93年のオスロ合意でパレスチナ国家樹立による「2国家共存」が打ち出された後も、イスラエルは入植政策を続けてきた。

 2023年10月に始まったガザの戦闘では、ほぼ全土に及ぶ苛烈な攻撃で住民は逃げ惑い、4万7千人を超える同胞を失った。停戦により住民が帰還を急ぐ中、追い打ちをかけるような行為は人道にもとる。

 トランプ氏は地中海のリゾート地を引き合いに「ガザを中東のリビエラにする」と発言するなど、地域に多大な影響力を持つ仲介国としての自覚はみじんも感じられない。

 第1次政権時にも、パレスチナ国家の首都に想定されるエルサレムにイスラエル大使館を移すなど、一方的な政策変更が目立つ。

 ガザの和平実現には国際協調が不可欠だ。米国とイスラエルが国際社会に背を向けるような言動を繰り返している状況も看過できない。

 イスラエルは、ガザの人々に食料や医療を提供してきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁じる法を先月施行した。トランプ氏も今月、国際刑事裁判所(ICC)が戦争犯罪の疑いでネタニヤフ氏らの逮捕状を出したことに対抗し、ICC職員に制裁を科せる大統領令に署名した。

 日本政府の対応も問われる。法の支配を重視し、力による現状変更を許さない方針を掲げる以上、容認するのは筋が通らない。米国におもんぱかるだけでなく、国際秩序を崩壊させかねない動きには断固とした姿勢を示さねばならない。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月13日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.14】:米露首脳が電話 ウクライナの主権を守れるか

2025-02-14 05:00:55 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.14】:米露首脳が電話 ウクライナの主権を守れるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.14】:米露首脳が電話 ウクライナの主権を守れるか

 ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく3年となるのを前に、米国のトランプ大統領が仲介に乗り出した。侵略を終わらせ、平和への道筋をつけられるか。 

 トランプ氏がロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ侵略の終結に向け、交渉をただちに開始することで合意した。その後、ウクライナのゼレンスキー大統領とも電話し、ロシアとの協議内容を伝えた。

 米露首脳は「そう遠くない将来」に、サウジアラビアで直接会談に臨むという。

 ロシアの侵略開始以降、米国のバイデン前大統領はプーチン氏との直接交渉を拒否してきたが、トランプ氏が方針を転換した。

 米欧はこれまで、領土奪還を目指すウクライナに武器を供与する一方、ロシアには経済制裁を加えて侵略をやめさせようとしてきた。だが、ロシアは中国の経済支援や北朝鮮からの派兵などによって孤立を回避している。

 このためトランプ氏は、従来のやり方では事態を打開できないと判断したのだろう。

 もっとも、トランプ氏がウクライナの頭越しにロシアと交渉を進め、ロシアに大幅に譲歩するのではないかとの懸念が拭えない。

 トランプ氏は、ロシアに占領された領土のすべてをウクライナが回復する可能性は低いとの見方を早くも示している。

 これでは、国際の平和と安全に責任を負うべき国連安全保障理事会の常任理事国でありながら公然と他国を侵略するロシアの暴挙を、容認することに等しい。

 プーチン氏はウクライナに対し、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州からの軍撤退や、北大西洋条約機構(NATO)加盟の断念を迫っている。

 こうした力による現状変更を追認すれば、東アジアなど他の地域でも同様の事態を招きかねず、そうなれば法の支配に基づく国際秩序は崩壊してしまう。

 ロシアに「戦利品」を与える形での停戦なら、トランプ氏でなくても誰でもできよう。トランプ氏は、得意の「取引」でプーチン氏の法外な言い分をはねつけ、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重して協議を進めてほしい。

 とはいえ、米国だけに交渉を委ねるわけにはいかない。仮に停戦が実現しても、その後の復興やウクライナの安全をどう保証するかなど、問題は山積している。欧州や日本は引き続きウクライナへの関与を続けるべきだ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月14日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.12】:辺野古くい打ち/地元無視した作業着手だ

2025-02-12 06:00:50 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.12】:辺野古くい打ち/地元無視した作業着手だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.12】:辺野古くい打ち/地元無視した作業着手だ

 米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、埋め立ての課題になっている軟弱地盤の改良に向け、防衛省が海底のくい打ち作業を始めた。沖縄県が政府に計画中止を求める中、移設工事はさらに本格化した。

 軟弱地盤は辺野古東側の大浦湾にあり、約7万本のくいを海面下最大70メートルにまで打ち込む。工期は4年以上とされる。玉城デニー知事は「国内に前例のない工事で、難工事が予想される」として改めて反対を表明した。作業着手は地元の声を無視した強行と言わざるを得ない。

 普天間飛行場の周囲には住宅などが密集する。政府は「危険性除去には辺野古移設が唯一の解決策」との立場を貫く。だが全体の工事完了は2033年ごろ、米側への引き渡しは36年ごろの予定である。順調に進んでも返還には10年以上がかかる。早期の問題解決にはならないと、地元が反発を強めるのも無理はない。

 国は20年、軟弱地盤改良への設計変更を県に申請した。県は認めず、法廷闘争の結果、福岡高裁那覇支部が知事に承認を命じた。その後、国は承認の代執行に踏み切り、昨年1月に大浦湾側の工事に着手した。代執行は過去になく、玉城知事が述べるように、県の自主性や自立性を侵害する対応と言うほかない。

 県が工事に同意しないのには理由がある。軟弱地盤の最深部は海面下90メートルに達し、マヨネーズに例えられるほど軟らかい部分がある。防衛省は関西空港などでも用いた工法と主張するが、無謀な工事ではないかとの疑念は払拭されていない。

 総事業費も増加している。現時点での試算は約9300億円で、既に当初の約2・7倍になり、さらに膨らむ懸念がある。埋め立て用の土砂も不足しつつある。東京ドーム16個分が必要で、政府は沖縄本島南部を調達先の候補とする。南部は沖縄戦の激戦地だ。遺骨が交じる恐れのある土の使用は到底許されない。

 県によれば、埋め立て海域には260以上の絶滅危惧種など5300種以上の生物が生息する。世界自然遺産の鹿児島県・屋久島の約4600種を超える。豊かな生態系が影響を受ける問題も看過できない。

 移設に反対する県に対し、政府は沖縄振興予算の減額という「ムチ」を振るう。21年度までは3千億円を上回ったが、22年度以降は2600億円台となり、25年度予算案でも2642億円と4年連続で減少した。

 これでは両者の溝は深まるばかりだ。石破茂首相はまず、玉城知事との対話を始めてもらいたい。日米が普天間返還で合意しながら30年近くが過ぎてしまった責任を、政府は重く受け止めるべきだ。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月12日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.11】:米がICC制裁 国際司法へ圧迫は容認できぬ

2025-02-11 05:00:50 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.11】:米がICC制裁 国際司法へ圧迫は容認できぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.11】:米がICC制裁 国際司法へ圧迫は容認できぬ

 日本など125の国と地域が加盟する国際刑事裁判所(ICC)への制裁は、法の支配に基づく国際秩序への攻撃にほかならない。米国に制裁の撤回を求める。 

 トランプ米大統領が、ICC職員らに制裁を科す大統領令に署名した。ICCが昨年11月、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したことを、同国と米国に対する「非合法で根拠のない行動」とした。

 大統領令は、職員とその家族に対し、米国内の資産凍結や、米国への渡航禁止などの措置を取るとしている。具体的な対象者はまだ明らかにされていない。

 ICCを巡っては、米連邦議会上院が制裁法案を否決していた。トランプ氏はイスラエル支持をより鮮明に打ち出すために、議会の承認を必要としない大統領令での制裁に踏み切ったのだろう。

 ICCは、集団殺害など重大な犯罪を犯した個人を訴追、処罰する独立の常設機関として、2002年に発足した。

 米国や中国、ロシア、イスラエルなどは未加盟だが、ICCが23年にウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した際には、当時のバイデン米政権が「妥当だ」と支持していた。

 トランプ政権に交代したからとはいえ、米国がイスラエルを擁護する目的のために、アフリカなど各地域の重大な犯罪も扱うICCに圧力を加えることは、司法に対する挑戦と言わざるを得ない。

 ICCの赤根智子所長は、米国の制裁について「断固拒否する」と非難する声明を発表した。フランスやドイツなど加盟する約80か国も連名でICCへの支持を再確認する声明を出した。

 この声明に日本が加わらなかったのは極めて残念だ。石破首相とトランプ氏との会談に悪影響を及ぼすことを懸念したのだろうが、ICCは現在、日本人が所長を務め、日本が最大の分担金を拠出している国際機関である。

 法に基づく国際秩序の重要性を主張してきた日本の対応としては、あまりにもふがいない。

 米国が制裁を発動すれば、対象者のみならず、資金や物品、サービスを提供する側にも影響が及ぶ可能性が高い。すでにいくつかの業者からICCとの取引を停止したいとの申し出があるという。

 林官房長官は「ICCの独立性や安全を尊重する」としている。ICCが活動を継続できるよう、具体的な行動で支えるべきだ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.09】:日米首脳会談 沖縄に危機招く追従だ

2025-02-11 04:00:30 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.09】:日米首脳会談 沖縄に危機招く追従だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.09】:日米首脳会談 沖縄に危機招く追従だ 

 石破茂首相とトランプ米大統領の初めての会談が日本時間の8日、米首都ワシントンで行われた。安全保障分野で日米の連携を一段と強化する方向性を示す一方、対等な日米関係を持論としてきた石破氏から日米地位協定改定への言及はなかった。

 在沖米軍兵による性的暴行事件が相次いだことへの抗議申し入れもなかった。

 石破首相は対米投資額を1兆ドルに引き上げることを約束するなど、米国の立て直しを掲げたトランプ大統領の歓心を買うのに腐心する印象だけが残った。強硬なトランプ外交を前にして、米国の関与をつなぎ止めようと軍事的、経済的な貢献を率先して差し出す日本の従属性がさらに強まっているのではないか。

 対米追従の犠牲となるのは、過重な基地負担を押し付けられる沖縄だ。会談では日米の外務、防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の早期開催も確認している。新たな日米首脳による外交関係が沖縄の負担の拡大や危険の増大につながることはないのか。石破首相は直ちに玉城デニー知事と面談し、対話を始めるべきだ。

 会談で両首脳は、日米同盟を新たな高みに引き上げることを確認したという。共同声明では、防衛費総額を5年間で計約43兆円とする岸田文雄前首相時代の方針を踏襲し、2027年度以降も日本として防衛力の抜本的強化を果たすことをうたっている。

 トランプ氏が日本の防衛費のさらなる増額に向け圧力をかけるのは確実という見方があるが、物価高に見舞われる国民生活や日本経済に防衛増税を受け入れる余力はない。唯々諾々と防衛費の膨張に従うことは許されない。

 共同声明では、日米同盟の抑止力・対処力のさらなる強化として、南西諸島におけるプレゼンスの向上や実践的な訓練、演習を通じた即応性の向上などを明記した。米軍普天間飛行場の返還に伴う辺野古新基地建設を着実に実施することにも言及した。沖縄に負担を押し付ける日米両政府の既定路線に変化はない。

 県政が反対する辺野古新基地建設をはじめとする過重な米軍基地の負担に加え、自衛隊の南西シフトによる軍備増強が進む。南西諸島が米中対立の前線となり、不測の事態で戦闘が生じかねない危険性が増している。

 玉城知事は「日米の連携強化が、過重な基地負担につながることはあってはならない」とコメントし、「平和的な外交・対話が極めて重要」と指摘した。日本が米国にくみして中国との覇権争いを助長すれば、沖縄が戦争に巻き込まれるリスクは高まる。アジア・太平洋地域の分断ではなく、緊張緩和に導く日米関係でなければならない。

 トランプ氏の無軌道な言動に国際社会が動揺する今こそ、周辺地域の信頼醸成を取り持つ自立した外交が日本に求められている。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月09日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トランプ氏】:プーチン氏とウクライナ巡り電話会談…「彼は人々が死ぬのをやめさせたいと思っている」

2025-02-09 15:43:30 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【トランプ氏】:プーチン氏とウクライナ巡り電話会談…「彼は人々が死ぬのをやめさせたいと思っている」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トランプ氏】:プーチン氏とウクライナ巡り電話会談…「彼は人々が死ぬのをやめさせたいと思っている」 

 【ワシントン=今井隆】米国のトランプ大統領は7日、ニューヨーク・ポスト紙のインタビューに応じ、ロシアのプーチン大統領と電話で会談したことを明らかにし、ウクライナにおける戦争の早期終結に向けた仲介に強い意欲を示した。

トランプ大統領(7日)=AP
トランプ大統領(7日)=AP

 インタビューは大統領専用機内で行われ、同紙が8日に報じた。プーチン氏との電話会談の時期は明らかにされていない。トランプ氏は電話会談の回数について問われると、「言わない方がいい」と述べるにとどめた。

 トランプ氏は、戦争終結に向けた具体的計画があると主張し、「早く終わらせたい。毎日人が死んでいる」と訴えた。戦場での殺りくをプーチン氏が「気にかけている」と語り、「彼は人々が死ぬのをやめさせたいと思っている」とも指摘した。インタビューに同席したマイク・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官に対し、「これらの会談を進めよう。彼らは会いたがっている」と指示した。

 トランプ氏は7日、ホワイトハウスで記者団に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と今週にも会談し、プーチン氏とも近く会談するとの見通しを明らかにしていた。

 ■ウクライナ侵略、最新ニュースと分析

 ■「反抗の象徴」は今 衛星画像で見るマリウポリ

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【社説①・02.09】:日米首脳会談 世界に貢献する同盟の時代に

2025-02-09 05:00:50 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.09】:日米首脳会談 世界に貢献する同盟の時代に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.09】:日米首脳会談 世界に貢献する同盟の時代に

 ◆平和の回復に協力して取り組め◆ 

 混迷する国際情勢。その動揺を加速させる一因ともなっているトランプ米大統領が就任後、対面で会う2か国目の首脳が石破首相だった。

 国際的にも注目された今回の会談で、両首脳は同盟の強化など、 概 おおむ ね日本側の期待に沿う内容で合意した。日米関係はインド太平洋地域にとどまらず、世界の平和と安定に貢献するという役割を帯び、新しい時代に入った。

 ◆日本側の主張概ね通る

 首相とトランプ氏がワシントンで2時間近く会談し、安全保障や経済など幅広い分野で協力していく方針を確認した。

 トランプ氏は会談後の共同記者会見で「米国の抑止力を使い、同盟国を100%守る。日米で協調し、平和を維持していく」と述べた。首相は「同盟国としての責任を共有し、役割を果たす用意がある」と応じた。

 「米国第一」を掲げるトランプ氏は就任後、カナダや欧州連合(EU)に関税を課す方針をちらつかせるなど、同盟軽視ともとれる外交を展開している。日本政府も首脳会談で、どんな要求をされるのかと警戒していた。

 だが会談は、米国にとって日本が重要な同盟国であることを内外に示す形となった。トランプ氏は会見で「日本は素晴らしい国だ」と述べた上で、石破氏について「偉大な首相になるだろう」と過大なまでの表現で持ち上げた。

 軍事・経済大国となった中国は、世界中で影響力を行使するようになった。トランプ氏がデンマーク領グリーンランドの領有に言及したのは、中国が北極海周辺で資源開発を視野に入れた活動を強めていることも背景にある。

 ロシアによるウクライナ侵略は間もなく3年となる。北朝鮮は、ロシアに派兵して侵略に加担し、その見返りとして軍事能力を高めていると言われる。

 国際社会での米国の力が相対的に低下する中、強権国家に 対峙 たいじ しながら、米国の利益を守っていくには日本の協力が不可欠だ、という判断が働いたに違いない。

 両首脳が会談後に発表した共同声明で「日米関係の新たな黄金時代を追求する」と打ち出したのも、幅広い分野での日米の協力が世界の安定に貢献する時代となっていることを象徴している。

  ◆鉄鋼買収問題で前進か

 安保分野では、米国が核を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」への揺るぎない関与を強調した。

 経済分野では、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことが決まった。日本企業の持つ優れた宇宙技術に関する協力や、先端半導体の開発を日米で促進していく方針も盛り込まれた。

 日米の懸案となっていたのは、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画だ。バイデン前大統領による禁止命令で頓挫する可能性があるが、今回の会談で事態打開を目指すことになった。

 トランプ氏は会見で「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意した」と語り、首相も「どちらかが利益を得るという一方的な関係にならない。大きな成果だ」と述べた。先行きは見通せないものの、前進が期待される。

 日米同盟の重みが増す中、日本の外交力も問われている。

 トランプ氏は就任後、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。荒廃したパレスチナ自治区ガザの所有と、住民の域外移住を提案した。

 こうした独善的な言動まで、手放しで支持するわけにはいかない。日本は、法の支配や国際協調の重要性を粘り強く米側に呼びかけていかねばならない。

 日本はイスラエル、アラブ諸国双方と良好な関係を築いてきた。その強みを生かし、中東の平和の回復にもっと力を尽くす必要がある。ウクライナの復興事業にも積極的に関わっていきたい。

 ◆主体的な外交が重要

 トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、国防支出を国内総生産(GDP)比で5%にまで引き上げるよう求めている。日本は、安保関連費を2027年度にGDP比で2%に引き上げる計画だ。

 共同声明では、日本が27年度以降も「抜本的に防衛力を強化していく」と明記された。防衛費を増額し続ける方針を示唆したものだ。この部分は、米側の要望で盛り込まれたと言われる。

 日本周辺の安保環境がかつてないほど悪化していることを考えれば、防衛力の強化は日本自身にとって最優先の課題だ。米国に求められて見直すのではなく、日本が主体的に取り組むべきだ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・02.05】:米通商政策 世界を翻弄するトランプ関税

2025-02-06 05:00:50 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・02.05】:米通商政策 世界を翻弄するトランプ関税

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.05】:米通商政策 世界を翻弄するトランプ関税

 カナダとメキシコへの高関税を1か月間延期する一方、中国には予定通り発動した。トランプ米大統領の高関税政策が世界を 翻弄 ほんろう している。 

 貿易戦争が本格化しないよう、各国は、トランプ氏の真意や出方について、よく見極めながら対処していくことが重要だ。

 トランプ氏は1日、カナダとメキシコからの輸入品に原則25%の関税、中国には10%の追加関税をかける大統領令に署名した。

 4日から実施予定だったが、土壇場の3日になって急変する。

 トランプ氏は、カナダのトルドー首相とメキシコのシェインバウム大統領とそれぞれ電話で会談し、国境警備の強化などと引き換えにして、発動を1か月間延期することで合意したという。

 トランプ氏が、高関税を突きつけたのは、中国で原料が製造されている合成麻薬「フェンタニル」と不法移民が米国内に流入することを阻止するためだとされる。

 カナダとメキシコに対する高関税を延期したのに、中国に対してだけ予定通り発動したのは、理解が難しい動きである。

 トランプ氏は3日、「24時間以内に中国とも話すつもりだ」と述べている。駆け引きが続いている可能性もあるのだろう。

 中国は、対抗措置として、10日から米国の石炭や液化天然ガス(LNG)に15%、原油や農業用機械などに10%の追加関税を課す方針を発表した。

 貿易戦争が誰の得にもならないことは自明の理である。トランプ氏は、世界の株式市場を動揺させるような行動をやめるべきだ。

 トランプ氏は選挙公約で、貿易赤字を問題視し、国内製造業を復活させるために高関税を行使すると訴えてきた。不法移民に対する強硬な姿勢も見せてきた。

 目に見える成果を早期に上げて支持層にアピールするため、取引(ディール)の手段として高関税を使おうというのだろう。

 だが、高関税は、カナダやメキシコに生産拠点を置く米製造業のコスト負担を増やし、国民の不満が強い物価高も助長する米国への弊害が改めて指摘された。

 高関税の延期は、トランプ氏が突然、方針を修正したように見える。初めから譲歩を引き出すための戦術だったのか。それとも株式市場の動揺などに慌てたのか。その予測不可能な行動には、警戒感を強めざるを得ない。

 各国は、トランプ氏が高関税政策を翻意するよう、粘り強く働きかけていく必要がある。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【米国】:街や農場から人影消える…トランプ政権の不法移民大量摘発で「外出できない」、出勤拒否も

2025-02-01 05:00:20 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【米国】:街や農場から人影消える…トランプ政権の不法移民大量摘発で「外出できない」、出勤拒否も

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米国】:街や農場から人影消える…トランプ政権の不法移民大量摘発で「外出できない」、出勤拒否も 

 トランプ米大統領が掲げる「史上最大の強制送還作戦」が本格化し、各地で不法移民の大量摘発が相次いでいる。移民の多い地域では拘束を恐れて外出を控え、街が「ゴーストタウン」と化していた。移民を多く雇う農場では、出勤拒否で収穫が遅れるなどの影響も出ている。(シカゴ 金子靖志、ベーカーズフィールド 後藤香代)

 ■妻子は米国市民権

 「拘束されると思うと外出もできない。不安で生きている心地がしない……」

 1月29日夕、中南米からの移民が8割以上を占めるシカゴ西部の街「リトルビレッジ」。市民団体による食料支援を受けに来たメキシコ出身のホセさん(42)(仮名)は声を潜めた。

1月29日、イリノイ州シカゴで有数の繁華街として知られ、移民が多く住む街「リトルビレッジ」。住民が拘束を恐れて外出を控え、「ゴーストタウン」と化していた=金子靖志撮影
1月29日、イリノイ州シカゴで有数の繁華街として知られ、移民が多く住む街「リトルビレッジ」。住民が拘束を恐れて外出を控え、「ゴーストタウン」と化していた=金子靖志撮影

 2歳の頃に両親に連れられて渡米し、今は米国の市民権を持つ妻と子ども2人と暮らすが、自身は不法滞在の身分だ。「私が強制送還され、家族と離ればなれになるのだけは絶対に避けたい」と話し、食料を受け取ると足早に帰路に就いた。

 リトルビレッジはシカゴ内で有数の繁華街として知られるが、拘束を恐れた移民が外出を控え、「ゴーストタウン」のようだった。

 トランプ政権は不法移民が集中するニューヨークやデンバーでも大規模な摘発を展開しており、拘束者数は連日1000人前後に上る。シカゴでは1月26日から本格的な取り締まりが始まり、30日までに少なくとも100人が拘束された。

 連日満席となるリトルビレッジのメキシコ料理店では、トランプ氏の就任直後から客足が途絶えた。同店のルイサさん(36)は「売り上げが激減し、将来がとても不安だ。このままでは従業員を解雇しなければならない」と語った。

 ■収穫されないオレンジ放置

 食べ頃のオレンジが実るカリフォルニア州中部ベーカーズフィールド近郊のオレンジ畑。1月29日に訪れると人影はなく、オレンジが収穫されずに放置されていた。州中部では農業労働者の約半数を占める不法移民が当局の拘束を恐れ、出勤を控える動きが出ている。

1月29日、カリフォルニア州ベーカーズフィールド近郊のオレンジ畑では、収穫期のオレンジが放置されていた=後藤香代撮影
1月29日、カリフォルニア州ベーカーズフィールド近郊のオレンジ畑では、収穫期のオレンジが放置されていた=後藤香代撮影

 州中部に本部を置く全米農業労働者組合の広報担当、アントニオ・デ・ロエラさん(29)は「この地域で200人近くが拘束された。ラテン系米国人も国境警備隊から滞在資格の証明を求められ、恐怖と不安が広がった」と語る。拘束された人には不法移民以外も含まれていたという。

 米農務省によると、全米の農業労働者のうち、不法移民は4割超に上る。拘束作戦が続けば、農業が人手不足に陥り、多額の経済損失が生じるとの見方がある。カリフォルニア州立大のリチャード・ギアハート准教授(経済学)は「食料価格が5%上昇して人々の消費行動に影響が及び、米国の国内総生産は年2~3%減少する」と分析する。

 一方、デ・ロエラさんは「不法移民を低賃金で搾取してきた経済構造にも問題がある」と指摘する。不法移民は建設現場などでも貴重な働き手となっており、移民の労働力に頼ってきた米国経済のあり方も、トランプ政権下で問われている。

 ■国際ニュースを英語で読む

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 国際 【北米・カナダ、トランプ米大統領が掲げる「史上最大の強制送還作戦」が本格化し、各地で不法移民の大量摘発が相次いでいる】  2025年02月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.27】:米経済政策 トランプ関税の自制求めたい

2025-01-31 05:00:20 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説①・01.27】:米経済政策 トランプ関税の自制求めたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.27】:米経済政策 トランプ関税の自制求めたい

 「米国第一」主義を掲げるトランプ米政権の保護主義的な関税政策は、世界経済に大きな悪影響を及ぼす。熟慮による自制を求めたい。 

 トランプ大統領は貿易赤字を問題視し、国内製造業の保護を狙いに、世界からの輸入品に一律10~20%の関税、中国に60%の追加関税をかける考えを示してきた。

 就任初日の20日は関税の発動を見送ったものの、慢性的な貿易赤字や不公正な通商慣行、通貨操作などについて、4月1日までに包括的な検討を行うよう指示した。分析結果を踏まえて、関税発動に踏み切る考えだとみられる。

 だが、高関税は貿易の縮小を招き世界経済に打撃を与える。報復関税の応酬で貿易戦争に発展すれば深刻な事態になろう。米国の物価高を助長する可能性も高い。

 トランプ氏は、ジレンマを抱えているはずだ。関税策は、短期的には製造業の労働者にアピールできるかもしれないが、高いインフレを招けば、逆に米国社会全体の不満が高まるだろう。

 まだ2か月以上の猶予がある。何が真の国益となるのかを考えて行動すべきだ。日本など主要国が、粘り強く自制するように働きかけていくことも大切になる。

 関税政策は、貿易不均衡の改善や税収増だけでなく、別の目的を達成するためのディール(取引)の道具という見方も強い。

 メキシコとカナダに25%の関税、中国には10%の追加関税を2月1日からかけることに強い意欲を示しているのは、その例だ。

 トランプ氏は、中国で原料が製造された合成麻薬が国境を越えて流入していることや不法移民を問題視し、是正を迫っている。

 カナダとメキシコには、日本だけでなく米国を含め、自動車産業などの生産拠点があり、高度なサプライチェーン(供給網)が構築されている。是正策を巡る交渉が進まずに、関税が発動されれば大きな混乱に陥ることは必至だ。

 カナダとメキシコは、関税回避に向けて、打開策を探ってほしい。打撃を受ける日本も米国側に懸念を伝えていってもらいたい。

 一方、国家エネルギー非常事態を宣言し、石油・天然ガスの掘削禁止措置や自動車排ガス規制などを次々と撤回した。電気自動車(EV)への税制支援策の廃止も目指すという。日本としても影響を精査することが重要になる。

 エネルギーは日本が協力できる分野だ。米国が増産する液化天然ガス(LNG)を輸入すれば互いに発展できるのではないか。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月27日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.30》:トランプ2.0 米のWHO脱退表明 国際協力後退させる愚行

2025-01-30 02:00:50 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

《社説①・01.30》:トランプ2.0 米のWHO脱退表明 国際協力後退させる愚行

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.30》:トランプ2.0 米のWHO脱退表明 国際協力後退させる愚行

 世界が築き上げてきた保健分野での多国間連携を後退させる愚行と言うほかない。

 米国のトランプ大統領が、就任初日に世界保健機関(WHO)から脱退する大統領令に署名した。新型コロナウイルス感染症への対応や、中国などと比べ米国の拠出金の負担が過大なことを理由に挙げた。WHO予算の約15%を占め、加盟国中で最も多い。

就任初日にホワイトハウスでWHO脱退の大統領令に署名するトランプ氏=ワシントンで20日、AP

 その後、負担が減れば離脱方針を再考するとも述べた。超大国の力を振りかざす「脅迫外交」を、人の命や健康に関わる領域でも繰り広げるのは問題だ。

 トランプ氏は1期目にも離脱を表明したが、半年後に民主党政権に交代したため、米国はWHOにとどまった。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/30/20250130k0000m030011000p/9.webp?1" type="image/webp" />昨年のWHO総会で会場に掲示されたWHOのロゴ=ジュネーブで2024年5月27日、ロイター</picture>
昨年のWHO総会で会場に掲示されたWHOのロゴ=ジュネーブで2024年5月27日、ロイター

 新型コロナへの対応で、WHOに問題があったのは確かだ。当初は発生源だった中国に配慮した姿勢が目立ち、緊急事態宣言の遅れにつながったと欧米から批判された。ワクチンを公平に分配する仕組みが十分に機能せず、途上国への供給が滞った。

 その教訓から、WHOの司令塔機能が強化された。感染症の世界的大流行(パンデミック)時に各国に強い対策を促せるよう、国際ルールが改正された。ワクチンの確保策などを盛り込んだ「パンデミック条約」も、採択を目指した交渉が続いている。

 こうした中で米国から資金と職員派遣が止まると、WHOの業務に支障が出る。情報の迅速な収集や共有に大きな痛手となり、緊急時の対策の実効性も損なわれる。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/30/20250130k0000m030010000p/9.webp?1" type="image/webp" />新型コロナ対策で記者会見するWHOのテドロス事務局長=2022年9月14日、WHOのウェブサイトより</picture>
新型コロナ対策で記者会見するWHOのテドロス事務局長=2022年9月14日、WHOのウェブサイトより

 トランプ氏は1期目に「コロナは奇跡のように消える」などと楽観的な発言を繰り返し、初動対応に失敗した。結果として米国では世界最多の100万人超の死者が出た。科学を軽視して国際協調に背を向ければ、感染拡大のリスクを世界に広めかねない。

 感染症の脅威は過去のものではない。経済のグローバル化で人の往来や物流が活発になり、温暖化に伴い病原体を媒介する野生生物の生息域も広がっている。

 次のパンデミックが、いつ起きてもおかしくない。WHOを中心とした国際的な協力体制の強化が不可欠だ。日本や欧州はその意義を訴え、米国に残留を働き掛ける必要がある。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月30日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《クローズアップ・01.29》:1週間でトランプ色広げ 大統領令駆使、公約着手

2025-01-29 02:05:00 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

《クローズアップ・01.29》:1週間でトランプ色広げ 大統領令駆使、公約着手

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《クローズアップ・01.29》:1週間でトランプ色広げ 大統領令駆使、公約着手

 米国で第2次トランプ政権が発足してから27日で1週間がたった。大統領令を駆使して一気に政策を転換し、人事権を使って官僚機構の「トランプ化」にも着手。想定通りとはいえ、急激な政策シフトに不安の声も上がっている。

トランプ米大統領を巡る動き

トランプ米大統領を巡る動き

 「歴史的な1週間だった」。トランプ大統領(共和党)は25日、西部ネバダ州で20日の就任後初めて開いた政治集会で、2期目の始動を自賛した。

 大統領選の公約に沿って350件近くの指示を出したと説明し、「モットーは『約束はなされ、そして果たされた』だ」と強調した。異論が多い政策も実行に移し、熱烈な支持層の間で求心力を保つことがトランプ氏の力の源泉だ。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【クローズアップ】 2025年01月29日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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