路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【中山知子の取材備忘録・01.26】:石破首相リベンジへ…大相撲初場所で内閣総理大臣杯授与に動く 「自分の見せ方」どう演出?

2025-02-02 11:01:40 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【中山知子の取材備忘録・01.26】:石破首相リベンジへ…大相撲初場所で内閣総理大臣杯授与に動く 「自分の見せ方」どう演出?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・01.26】:石破首相リベンジへ…大相撲初場所で内閣総理大臣杯授与に動く 「自分の見せ方」どう演出? 

 「えーー」「それだけ?」「裏金は脱税ですから」「遅い!」。

 石破茂首相が、昨年10月の就任後、初めて臨んだ1月24日、通常国会召集日の施政方針演説。40分あまりの演説を本会議場で取材したが、冒頭のようなやじが節目節目でとんだ。あからさまに激しい内容はなかったけれど、最初から最後まで絶妙のタイミングでとび続けた。

通常国会召集日の施政方針演説では、用意した原稿に目を落とす場面が目立った石破茂首相(2025年1月24日撮影)
通常国会召集日の施政方針演説では、用意した原稿に目を落とす場面が目立った石破茂首相(2025年1月24日撮影)

 こうした野党のやじに、かつての政権では自民党席から反発するように「逆ヤジ」で対抗することもあったが、今回「援護射撃」は、まるでなし。何より、石破首相が語った内容に拍手が起きた場面は数えるほどで、しかも弱々しいパラパラ程度。石破首相の立場をあらためて実感した。

 「自分の言葉」が売りだったはずの石破首相は、やじに反応する時を含めて時折、顔を上げることもあったが、大半の時間は原稿に目を落として読んでいた。一体、どれくらいの国民が共感を覚えるのだろうと思う「楽しい日本」を目指すという、石破首相肝いりのキャッチフレーズも多く登場したが、原稿棒読みでちっとも楽しそうではない姿に、この肝いり場面ですら自民党席の拍手はほぼなかった。代わりに野党席から「何言ってるの?」と、やじがとんだ。

 衆院本会議の後、取材に応じた立憲民主党の野田佳彦代表が「暗い顔をして(楽しい日本と)語られても、メッセージが伝わってこない。言葉自体が空回りし、熱伝導のない演説だった」と感想を述べたが、たぶん、多くの人が感じたことだったのではないだろうかと感じる。

 「楽しい日本」をただ言葉として「読む」のではなく、説得力をもって「語る」という技が、首相には欠けていたような気がする。これはよく耳にすることだが、石破首相は「自分の見せ方」があまりにもヘタすぎやしないか、という指摘にも、だからこそなんとなくうなずいてしまう。

 そんな石破首相も、「見せ方」を意識し始めたのではないかと感じる動きが出ていた。今日1月26日、大相撲初場所の千秋楽が行われる国技館を訪れ、優勝力士に内閣総理大臣杯を手渡すことが発表された。これは、昨年11月の九州場所での「失態」(自民党関係者)のリベンジではないか、と見る向きがある。 

 というのも、石破政権発足後、初めての場所だった九州場所の千秋楽に政府の代表者がだれも出席せず、日本相撲協会の八角理事長が「代理授与」するまさかの対応に。相撲ファンも多い永田町ではちょっとした話題になった。事前に出席依頼を受けていたが、よく授与に登場する官房副長官の姿もなかった。

 この場所で初優勝したのは、大関琴桜(27=佐渡ケ嶽)。先代師匠で祖父の元横綱琴桜とは、石破首相は鳥取の同郷ということもあり「事前に調べたら分かることだったはず」と、おかんむりの声も聞いた。さすがに首相は、琴桜に電話をかけて初優勝をお祝いしたそうだが、間の悪さは否めなかった。林芳正官房長官の定例会見でも質問が寄せられ、林長官は関係者の日程の都合がつかなかったとして「今後は日程の都合が付く限り、政府関係者が出席をする」と釈明した。

 九州場所千秋楽の後、当コラムで、石破首相の「失点回復」は来年の初場所で実現するだろうか、と書いた。初場所は1年で3度しかない国技館開催の1つ。27日に衆議院の代表質問を控える石破首相も、授与に行けるチャンスがめぐってきた。NHKで生中継されることもあり、首相の国技館登場は「人気取り」の側面もあるとかつて聞いたが、支持率が高くない首相でも、施政方針演説の本会議場のように場内からやじが乱れ飛ぶようなことは、経験上、なかった。石破首相があまり得意ではない「自分の見せ方」という観点からすると、よほどの緊急事態が起きない限りは、大きな見せ場が到来する。

 ただ、国技館での「見せ場」はほんの一瞬。翌27日からは国会で、「楽しい日本」などについて、野党に総ツッコミを受ける可能性もある。ほんの一瞬だが大事な見せ場で、首相はどんな立ち回りを見せるのだろう。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。 

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2025年01月26日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・02.01】:与野党の「やってる感」出す演出もここまで

2025-02-01 07:56:00 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【政界地獄耳・02.01】:与野党の「やってる感」出す演出もここまで

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・02.01】:与野党の「やってる感」出す演出もここまで 

 ★予算委員会もさえない。自民党政調会長・小野寺五典が質問の冒頭「当初はこの委員会は昨日(30日)から始まる予定だった。熟議を掲げる国会だ。1日1日を大切にしなければならない。そうした点も十分考慮し、公平な委員会運営をお願いしたい」と立憲民主党の予算委員長・安住淳に注文をつけた。「2人は小野寺が宮城5区で当選9回、安住が同4区で当選10回とライバル関係にあり、さや当てのようなやりとりだった」(立憲議員)。公平な運営とは自民派閥の裏金事件で旧安倍派の元会計責任者の参考人招致を野党の賛成多数で議決。予算委での全会一致の原則が破られ多数決によって参考人招致を決めたのが不服らしい。

 ★今まで数で押し切ってきた自民党は劣勢に立つと平気で自分の行いなどお構いなしに批判する。それならば1月早々に国会を開けばよかっただけで参院選を控え、窮屈な日程で年度内に予算が可決するか否かの状況を作ったのは自民党と石破内閣自身だ。党3役の小野寺が言うべき言葉ではない。もっとも参考人招致は「本人が拒否している」という。議決に強制力はなく現時点では実現の可能性は低い。強制力のある証人喚問に進めるかが焦点だが「裁判で結審した元会計責任者より、裁判での説明との食い違いを安倍派5人衆、ことに元政調会長・萩生田光一や元参院幹事長・世耕弘成を証人喚問で呼ぶぐらいの気概が野党や安住にあれば本気度がうかがえるというものだ。自民党もこの際安倍派の政治とカネと党を分離して安倍派にきちんと責任を負わせればいい」(立憲中堅議員)。

 ★双方、やってる感を出す演出もここまで。本格論戦や選択的夫婦別姓などの各論に入っていけば今までのなあなあ国会の馬脚が露呈する場合もある。熟議どころか本気で国民のために汗をかくのはどの政党か。本気度を見せてほしい。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年02月01日  07:56:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・01.25】:「楽しい日本」石破節も現実的工程表は無理か

2025-02-01 07:40:10 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【政界地獄耳・01.25】:「楽しい日本」石破節も現実的工程表は無理か

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・01.25】:「楽しい日本」石破節も現実的工程表は無理か 

 ★第217回国会が開会し、首相・石破茂が施政方針演説で冒頭「今年は戦後80年、そして昭和の元号で100年に当たる節目の年です。これまでの日本の歩みを振り返り、これからの新しい日本を考える年」とし「我が国の生産年齢人口は、これからの20年で1500万人弱、2割以上が減少すると見込まれる。かつて人口増加期に作り上げられた経済社会システムを検証し、中長期的に信頼される持続可能なシステムへと転換していくことが求められる」と説き、社会や産業の構造的変化が急務と訴えた。

 ★続けて堺屋太一の著書を引き、「我が国は明治維新の中央集権国家体制において『強い日本』を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で『豊かな日本』を目指した。そしてこれからは『楽しい日本』を目指すべき。私もこの考えに共感する。かつて国家が主導した『強い日本』、企業が主導した『豊かな日本』、加えてこれからは1人1人が主導する『楽しい日本』を目指す。『楽しい日本』とはすべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し『今日より明日はよくなる』と実感できる。多様な価値観を持つ1人1人が、互いに尊重し合い自己実現を図っていける。そうした活力ある国家です」と読書好きな石破らしい言い方でこれからの日本を語ってみせた。

 ■このコンテンツは有料会員になると閲覧いただけます。 

 政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年01月25日  07:36:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・02.01】:予算委員会 首相の外交答弁に不安が残る

2025-02-01 05:00:40 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説②・02.01】:予算委員会 首相の外交答弁に不安が残る

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.01】:予算委員会 首相の外交答弁に不安が残る

 今月上旬にも開かれる日米首脳会談に石破首相がどう臨むかが一つの焦点となったが、首相の答弁は具体性を欠いていたと言わざるを得ない。

 衆院予算委員会で2025年度予算案の実質審議が始まった。

 自民党の中曽根康隆氏は、トランプ米大統領が北朝鮮を「核保有国」と述べたことについて、「北朝鮮と何らかのディール(取引)をしようと考えているのでは」と述べ、首相の見解を尋ねた。

 立憲民主党の源馬謙太郎氏は、トランプ氏に「防衛費を上げろと言われた時に受け入れることはないか」と問いただした。

 こうした質問に対し、首相は「日米同盟を新たな高みに引き上げていきたい」といった紋切り型の答弁を繰り返した。

 中露や北朝鮮が軍事的威圧を強める中、日本の安全をどう守るのか、首相が見解を示し、国民に理解を深めてもらう絶好の機会だったのに、総論に終始したのは残念だ。これでは熟議と言えない。

 首相は、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約の尖閣諸島への適用を確認する考えを示したが、これは過去の首脳会談で繰り返し米国が約束している。

 国際情勢が流動化し、日米同盟の重要性は増している。日米間に限らず、様々な国際社会の課題への対応策について、首脳会談で日米の足並みをそろえることができるのか、心配になる。

 日米間の当面の懸案は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題だろう。バイデン前米大統領は安全保障上の懸念を理由として、禁止命令を出した。この命令を覆すのは容易ではないとみられている。

 だが、トランプ氏が重視しているのは米国内の雇用のはずだ。日本製鉄による買収がいかに雇用を生み出し、米国の利益となるか、首相の説明が鍵を握ろう。

 事態の打開に向け、政府は日本製鉄と協議の上、一層の雇用創出策を軸に調整を図るべきだ。

 一方、衆院予算委は、政治資金規正法違反事件で有罪となった自民党旧安倍派の会計責任者の参考人招致を議決した。自民は反対したが、野党の賛成多数で決まった。ただ、会計責任者は招致に応じない考えだという。

 参考人招致は全会一致で議決するのが慣例で、多数決で決めたのは1974年以来51年ぶりだ。

 議決に強制力はないが、民間人の国会招致は、与野党とも慎重であるべきだ。「数の力」で乱用されることがあってはならない。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.29】:衆参代表質問 減税や無償化だけが争点か

2025-01-31 05:00:40 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.29】:衆参代表質問 減税や無償化だけが争点か

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.29】:衆参代表質問 減税や無償化だけが争点か

 減税や無償化の議論ばかりに審議時間を割いていて良いのか。政府と各党は国の針路や重要課題について、正面から論じ合うべきではないか。

 石破首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が、衆参両院の本会議で行われている。

 日本維新の会の前原誠司共同代表は「子育て世帯の負担を軽減するため、私立を含め所得制限のない高校無償化を実現すべきだ」と訴えた。立憲民主党の野田代表も同様に高校無償化を求めた。

 首相は「安定した財源の確保を考えながら、議論を重ねたい」と述べるにとどめた。

 高校無償化は、維新の看板政策だ。維新は、地盤の大阪府で実施しているような、所得制限を設けない形の無償化を全国で実現することを条件に、来年度当初予算案に賛成する考えを示している。

 ただ大阪府では、補助のおかげで授業料が少額で済むようになった私立高の人気が高まる一方で、公立は定員割れになるといった弊害も出ている。

 そもそも高校の授業料は既に相当程度軽減されている。このため、仮に全国で無償化を実施した場合、地方では私立高が少なく、また、公立高はほとんど無償化されているため、恩恵は高額所得者だけに限られることになる。

 維新の案では、年6000億円の財源が必要だという。多額の予算を投じることが妥当なのか。

 本来、教育を論じるのであれば、子供の学ぶ意欲をどう高め、人間性豊かな人材を育てていくかといった視点から教育のあり方を考えることが国会の役割のはずだ。

 国民民主党の西岡秀子衆院議員は、与党が昨年末に103万円から123万円への引き上げを決めた所得税の課税基準について、一層の拡大を求めた。

 財源を棚に上げてバラマキのような政策を次々に少数与党にのませようとする野党各党の姿勢は、無責任極まりない。夏の参院選のアピール材料にしようという思惑が透けてみえる。

 政府・与党もふがいない。野党におもねって譲歩を重ねて財政を悪化させてしまったら、国益を害するだけだ。

 野田氏は、早期の日米首脳会談を求め、首相は「協力関係を構築したい」と応じた。

 首相は来月、トランプ米大統領と会談する方向で調整している。国際情勢が 混沌 こんとん とする中、いかに日米同盟が重要であるかをトランプ氏に丁寧に説明し、信頼関係を構築する必要がある。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.29》:代表質問への首相答弁 国会重視の姿勢見えない

2025-01-29 02:05:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

《社説①・01.29》:代表質問への首相答弁 国会重視の姿勢見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.29》:代表質問への首相答弁 国会重視の姿勢見えない

 国会審議を通じて各党と主張をぶつけ合い、認識を共有して政策課題を解決する。そうした姿勢は見られなかった。

 石破茂首相が衆参両院で、施政方針演説に対する代表質問に臨んだ。しかし、国民生活に直結する重要課題で、明確な答弁を避ける場面が目立った。

 衆院本会議で代表質問をする立憲民主党の野田佳彦代表(手前)。奥は質問を聞く石破茂首相=国会内で2025年1月27日午後1時31分、平田明浩撮影

 とりわけ、国会を軽視していると受け取られかねないのは、選択的夫婦別姓制度を巡る答弁だ。

 制度の導入へ指導力を発揮するよう求めた立憲民主党の野田佳彦代表に対し、自民党内の議論を急ぎ、早期に結論を得る考えを示すにとどまった。

 一方、前日配信されたインターネット番組では、法律を改正して旧姓の通称使用を拡大する案が選択肢になると言及した。選択的夫婦別姓に対する党内保守派の反対を踏まえた折衷案である。

 国会の外で具体策を示しながら、国民の代表が議論する場では口を閉ざすのは理解に苦しむ。これでは論戦の深まりようがない。

 一部野党が求める「年収の壁」の大幅な引き上げや高校授業料無償化については、「政党間で協議を進める」と答弁するだけで、政権の考え方は示さなかった。

 予算案への賛成を取り付けるための材料として、与党が日本維新の会、国民民主党と個別に協議しているためだ。数合わせを優先し、国会の議論をないがしろにする振る舞いは受け入れられない。

 トランプ米大統領が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」から離脱すると宣言したことなどへの論評は避けた。外交への影響が大きいにもかかわらず、認識や対処方針を示さないようでは心もとない。

 主張を明確にしたのは企業・団体献金の扱いだ。政策をゆがめるリスクが指摘されているにもかかわらず、「禁止する理由はない」と断言した。

 自民総裁としての発言だと言うが、持論を述べたい時だけ立場を使い分けるのは、ご都合主義だと言わざるを得ない。「平成の政治改革」では、当時の責任者が全面禁止を想定していたはずだ。

 首相は国民の関心事に正面から答え、説明を尽くすことが欠かせない。今後行われる予算委員会を含め、国会との向き合い方が問われることになる。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月29日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

2025-01-26 07:03:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

 時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分かりにくいものが多いようだ。「戦後政治の総決算」(中曽根政権)、「品格ある国家」(宮沢政権)、「美しい国」(安倍政権)…。

 風格や重々しさを狙っているのか、どうも大げさで押し付けがましくもある

 ▼戦後政治で最も軟らかい政権キャッチフレーズかもしれない。石破首相の「楽しい日本」である

 ▼子どもじみたユートピア論を思わせるが、「楽しい」という個人の幸福感に焦点を当てるのは発想として悪くない。こういう政権スローガンは珍しい

 ▼もっとも「楽しい」の中身がよく見えぬ。元ネタは作家の堺屋太一さん。明治期に国は「強い国」を目指し、戦後の復興期や高度成長期は企業主導で「豊かな国」を目指した。3度目に日本が目指すべきは「楽しい国」という

 ▼施政方針演説で首相は「楽しい日本」とは「多様な価値観を持つ一人一人が互いに尊重し、自己実現を図っていける、活力ある国家」と説明した。異論はないのだが、具体像に乏しく「楽しい」と思える高揚感のようなものが足りない

 ▼「楽しい日本」の評判は与野党とも芳しくない。物価高、生活苦、政治とカネ、少子化など将来の不安。現実を前にして「楽しい」という言葉はどこかむなしくも聞こえる。まずはこの「楽しくない日本」をどうするか。その処方箋が見たかった。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2025年01月26日  06:48:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

2025-01-26 05:00:45 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

 過疎化が進む地方の活力を取り戻す、という石破首相の考え方に異論はないが、その方法が従来の政策の焼き直しばかりでは話にならない。

 通常国会が召集され、首相が衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。「令和の日本列島改造」と称し、地方創生を最重要政策として進める考えを強調した。

 首相は「官民が連携して地域の拠点をつくり、ハードだけではないソフトの魅力が新たな人の流れを生み出す」と述べた。

 そのための具体策としては、企業の地方移転の促進や農林水産業の高付加価値化、観光産業の活性化などを挙げた。ただ、これらの施策は目新しいものではない。

 政府は2014年以降、東京圏への一極集中の流れを変えようと地方創生に取り組んでいるが、思うような成果は得られていない。首相は初代地方創生相だった。

 同じテーマに再び挑み、結果を出そうというなら、従来の施策のどこに問題があり、何が不足していたのかを分析した上で、新しい政策を提示すべきではないか。

 首相はまた、目指す国家像として故・堺屋太一氏が唱えた「楽しい日本」を掲げた。多様な価値観を持つ個人を重んじ、自己実現を図っていく社会を指すという。

 個人の価値観は尊重されるべきだが、そうした考え方が行き過ぎた結果、自らの権利ばかりを主張する風潮が社会に広がり、とても「楽しい」とは言えない状況を生んでいる面は否めない。言葉が先行して実態に合っていない。

 首相は、防災対応の司令塔として、まず内閣府に次官級の「防災監」を置き、26年度に「防災庁」を地方に設置すると訴えた。

 現在、大規模な災害発生時には、内閣危機管理監が情報収集や関係省庁の指揮に当たっている。防災監を新設する意味は何なのか。

 災害時の復旧事業を発注する国土交通省や、廃棄物の処理を担っている環境省などと、防災庁との役割分担も不明確だ。混乱が生じないか、心配が先に立つ。

 首相は政治改革に関し、政党交付金や企業・団体献金などの収入源を挙げ、「それらのバランスはどうあるべきか」と述べた。「政党の規律をどのように考え、担保していくか」とも指摘した。

 様々な課題の論点を挙げ、問題提起をするのは首相の特徴と言える。だが、十分な根拠とともに明確な方針を示し、国民を説得するのがリーダーの役割だ。首相就任から間もなく4か月。いつまでも評論家のような姿勢では困る。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月25日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.25】:通常国会の開会 熟議へ石破首相の正念場だ

2025-01-25 16:00:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.25】:通常国会の開会 熟議へ石破首相の正念場だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.25】:通常国会の開会 熟議へ石破首相の正念場だ 

 通常国会が開会した。

 少数与党の石破茂政権は予算や重要法案の成立に向け、手腕が問われる。与野党は党利党略でなく、開かれた議論を通じ、一致点を見いだす新たな立法府の姿を示してもらいたい。

 石破首相がきのう、就任後初めての施政方針演説を行った。

 「戦後80年は民主主義を考える年」とし、「党派を超えた合意形成を図るため、与野党とも責任ある立場で熟議」する必要を訴えた。就任以来、言葉に行動が伴わないことが目立つだけに、今度こそ正念場となる。

 まず過去最大の総額115兆円に上る2025年度予算案の審議が焦点だ。規模ありきの防衛費や経済対策、増大する借金財政のリスクを中心に厳しいチェックが欠かせない。

 石破氏は昨年の臨時国会で補正予算案を28年ぶりに修正し、25年度予算案も修正に応じる構えを示す。予算委員長のポストを握る立憲民主党をはじめ、野党の責任は重大である。

 与党は「年収の壁」で国民民主党、「教育無償化」で日本維新の会の取り込みをうかがう。

 懸念されるのは、今夏の東京都議選、参院選を控え、「手柄」の分捕り合戦になることだ。密室協議で与党と取引し、予算賛成の「手打ち」を図るようでは、国民の不信を招こう。実現への財源も含め、国会を足場に論戦を交えてほしい。

 施政方針では「楽しい日本」の実現を掲げ、看板政策の「地方創生2・0」を「令和の日本列島改造」と位置づけた。大きく時間を割いたが、フレーズだけが躍っている感は否めない。

 地方の英知を集め、権限や財源の裁量を増やす抜本改革こそ求められよう。

 疑問なのは、与野党が3月末までに結論を出すことで合意した企業・団体献金の扱いなど、「政治とカネ」を巡る問題に言及が乏しかったことである。

 自民党派閥の裏金事件に続き、東京都議会自民会派でも同様の事件が発覚し、問題の根深さが浮き彫りになっている。

 しかし、衆参の政治倫理審査会でも裏金関係議員らは当事者意識のない答弁を繰り返し、真相は明らかにされていない。

 野党が求める安倍派会計責任者の参考人招致などにも、自民は後ろ向きだ。虚偽答弁が刑事罰に問われる証人喚問を含め、強制力のある調査に切り替えるべきではないか。野党の連携を求めたい。

 自民の一部を除き推進の声が高まる選択的夫婦別姓制度の導入、持続可能性が懸案の年金改革を巡る議論も注視したい。

 就任早々、内外に波紋を広げるトランプ米大統領を巡り、石破氏は「日米同盟をさらなる高みに引き上げる」と述べたが、持論の地位協定の改定に触れなかった。多国間協調の強化を含め、与野党で外交戦略を更新してほしい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月25日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.25》:首相の施政方針演説 肝心なことを避けている

2025-01-25 02:07:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

《社説①・01.25》:首相の施政方針演説 肝心なことを避けている

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.25》:首相の施政方針演説 肝心なことを避けている

 内外の懸案にどのように対処するのか。国民への説明を避けて通るようでは、理解と納得は得られない。

 通常国会が召集され、石破茂首相が施政方針演説を行った。今年1年間に取り組む政策の見取り図を示す場である。

 しかし、演説は具体性に乏しく、説得力を欠く内容だった。

<picture>衆院本会議で施政方針演説をする石破茂首相=国会内で2025年1月24日午後2時6分、平田明浩撮影</picture>

 衆院本会議で施政方針演説をする石破茂首相=国会内で2025年1月24日午後2時6分、平田明浩撮影

 国づくりのキャッチフレーズは示した。人口減少下で、国家や企業よりも国民一人一人が主役となる「楽しい日本」の実現を目指すという。 

 そのための政策の柱に据えたのが、地方創生による一極集中の是正だ。地方で若者や女性の居住を促す方策などを列挙したが、多くが従来の焼き直しである。

 経済政策も曖昧だ。「物価上昇に負けない賃上げ」を後押しするなどと述べるにとどまった。財政健全化に真摯(しんし)に取り組む姿勢もうかがえなかった。

 いずれも今国会で焦点となるテーマのはずである。

 「政治とカネ」の問題も踏み込み不足だ。幕引きを急ぐのではなく、政策をゆがめかねない企業・団体献金の禁止を決断すべきだ。

 「米国第一」を掲げるトランプ大統領とどう向き合うのか。最大の外交課題であるにもかかわらず、戦略は明示されていない。

 少数与党の政権にとって、今国会はまさに正念場だ。衆院で多数派を占める野党の協力を得なければ、国民生活を左右する来年度予算案などを可決できない。

 減税や歳出拡大を求める野党に対し、首相は「責任ある立場での熟議」を呼びかけた。財源の問題などを念頭に置いた発言だ。

 だが、そうであるなら、まずは政権が方針を明確化し、開かれた国会の場で議論するのが筋だ。一部野党との協議で「数合わせ」を優先するようでは、熟議の実現はおぼつかない。

 政権のビジョンを正面から語り、幅広い意見を踏まえて合意形成する。それこそが「熟議の国会」で求められる首相の姿勢である。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月25日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《余録・01.25》:満ち足り愉快な気持ちを表す…

2025-01-25 02:07:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

《余録・01.25》:満ち足り愉快な気持ちを表す…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.25》:満ち足り愉快な気持ちを表す…

 満ち足り愉快な気持ちを表す「楽しい」という言葉の語源は諸説ある。一説によると、手(た)を伸ばして喜ぶことに由来する(日本語源大辞典、小学館)

 ▲そんな伸びやかな心境を指す言葉が、政権のスローガンに登場した。石破茂首相が施政方針演説などで掲げた「楽しい日本」である。作家の故・堺屋太一氏の著作からの引用で、富国強兵による「強い日本」、経済が栄える「豊かな日本」に続く新しい国の姿としている。首相は演説で「今日より明日はよくなると実感でき、一人一人が自己実現を図れる」国づくりを強調した

衆院本会議で施政方針演説をする石破茂首相(手前)=国会内で2025年1月24日午後2時5分、平田明浩撮影
 
堺屋太一さん

 ▲故・安倍晋三元首相はかつて「美しい国、日本」を掲げた。「楽しい日本」は、社会の閉塞(へいそく)感を打ち破りたいというメッセージなのだろう。だが、困難に向き合いながら暮らす人々に、このかけ声は響くだろうか。目標とはいえ、現実との落差に違和感を覚える人も多いはずだ

 ▲国会では少数与党の厳しい現実が首相を待つ。「手を伸ばす」といえば、自民党は日本維新の会と教育無償化を巡り協議するなどテーマ別に各党と接点を探り、局面打開を図る。楽しいどころか、四苦八苦だ

 ▲偶然ながら、渦中にあるフジテレビの発展期のキャッチフレーズは「楽しくなければテレビじゃない」だった。組織のゆがみは当時から始まっていたのかもしれない

 ▲中身ある政策を示すことはもちろん、まずは政治とカネの問題に向き合い信頼を取り戻すことだ。さもないと「楽しい日本」の言葉ばかりが上滑りしてしまう。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年01月25日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.13】:2025年の政治 熟議深める新たな道筋を

2025-01-14 04:05:45 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.13】:2025年の政治 熟議深める新たな道筋を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.13】:2025年の政治 熟議深める新たな道筋を 

 2025年の政治は24日召集予定の通常国会で本格始動する。発足2カ月が過ぎた少数与党の石破茂政権下で、夏の東京都議選、参院選を控えた与野党の激しい攻防が予想される。
 
 しかし各党の真価が問われるのは論戦の中身である。
 
 開かれた議論を通じた幅広い合意に基づく政治をいかに実現するか。昨年の臨時国会でその萌芽(ほうが)は見えたが、新たな形はいまだ定まっていない。
 野党の協力なしには予算も法律も成立しない以上、与党にとっては妥協が大前提となる。だが「数合わせ」のために一部の野党の主張を丸のみするだけでは熟議とは言えない。
 野党も賛否のカードを単なる駆け引きに使う交渉は慎まねばならない。独自政策はそのリスクや財源についても一定の説明責任を果たすのが当然だ。
 政策全体の整合性を欠いたポピュリズム(大衆迎合主義)や党利党略を排し、与野党は立法府主導による国民本位の政治を真摯(しんし)に探り続けねばならない。

 ■1強体質脱却せねば

 通常国会は政府・与党が新年度予算案の衆院通過を目指す2月下旬から3月初めがまずヤマ場となろう。
 首相は政策ごとの部分連合で衆院審議を乗り切りたい構えだ。国民民主党と日本維新の会を対象に想定し、与党が所得税非課税枠「年収103万円の壁」の引き上げや教育無償化についてそれぞれ協議を続ける。
 しかし、焦点が個別政策に偏り、協議の詳細が国民に見えないのは問題だ。予算審議は国会での多党間による透明性の高い議論を基本とすべきである。
 首相は一見、低姿勢で丁寧に答弁しているようで結局は核心部分をはぐらかす場面が多い。自民1強時代は歴代首相によるそうしたかみ合わない答弁が国会の空洞化を招いた。
 同じ対応を繰り返すようでは熟議にはほど遠い。
 首相は昨年末、予算案が否決された場合に衆院を解散することも「あり得る」と述べた。野党をけん制する前に、国会の議論を実のあるものにするよう答弁姿勢を改めるのが行政府の長としての責務である。
 少数与党の国会はこれまでの1強政権が強引に押し通してきた政策を見直す好機にもなる。改めるべき第一は対米追随一辺倒と言われても仕方のない外交・安全保障ではないか。
 首相は2月以降に訪米し、今月大統領に就任するトランプ氏と首脳会談を行う見通しだ。
 その前に、米国からの巨額の装備品購入を続け膨張する一方の防衛費について、予算委員会での徹底論議が求められよう。
 ほかにも福島の教訓を忘れたかのような原発回帰路線や膨らみ続ける財政赤字など、重要な論点は多岐にわたる。
 国民生活を左右する予算案の全体像を問うとともに、細部の費目に至るまで点検する―。その上で、政府・与党は野党の意見に耳を傾けて予算案の組み替えに柔軟に応じる必要がある。

 ■企業献金は禁止が筋だ

 深刻な政治不信を招いた政治とカネの問題も、今度こそ抜本改革を成し遂げねばならない。
 30年前の改革の積み残し課題である企業・団体献金の禁止は3月までに結論を出す与野党合意がある。営利を目的とした企業が何の見返りも求めずに献金するのは考えにくく、政策がゆがめられかねない。
 野党はこうした問題でこそ一致して禁止に持ち込むべきだ。
 改革が必要なのは政治とカネに限らない。首相は年頭会見で選挙制度見直しの必要性に言及した。現行の小選挙区比例代表並立制は少数派の意見が反映されにくい。与野党は早急に協議の場を立ち上げるべきだ。
 選択的夫婦別姓は与党の公明党を含め自民党を除く大半の政党が賛意を示す。個人を尊重し、多様性に富んだ社会を目指す上で欠かせない制度だ。この国会で実現したい。

 ■野党は政権像を示せ

 仮に新年度予算案が成立しても、会期末には内閣不信任決議案が提出される可能性がある。野党が一致すれば可決する。その場合、衆院解散か内閣総辞職かの緊迫した展開となる。
 野党第1党の立憲民主党は、不信任案提出の重みを理解し、慎重に見極める必要がある。提出する場合は、野党連携の枠組みと政権構想を準備して国民に示さなければならない。
 7月の参院選の行方も不透明だ。与党が敗れて過半数割れとなるようなことがあれば、一気に政権交代の機運が高まろう。
 首相は、参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」の可能性を否定していない。
 
 だが、衆院への民意は昨年示されたばかりだ。同日選が与党に有利とみて、あわよくば衆院の過半数を回復したいとの思惑は筋が通らない。
 
 民主主義は手間暇と時間をかけて磨かれてゆく。有権者も目先の動きに惑わされず、冷静に政治の動向を見極めたい。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月13日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・01.07】:首相の年頭会見 国民と向き合う政治に変えよ

2025-01-11 07:00:15 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説・01.07】:首相の年頭会見 国民と向き合う政治に変えよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.07】:首相の年頭会見 国民と向き合う政治に変えよ 

 石破茂首相はきのうの年頭会見の冒頭で「民主主義を改めて考える年にしたい」と切り出し、民主主義という言葉を繰り返した。主権者である国民の声を聴き、野党とも合意形成を図る政治の原点をかみしめているに違いない。

 少数与党での政権運営に絡んで、首相は合意形成のため「野党にもこれまで以上に責任を共有してもらうことが求められる」と強調した。自らには「次の世代の国民に対して責任を持つ責任与党でなければならない」と課した。

 衆院選で大敗して2カ月余りが過ぎた。野党の賛成がなければ法案が通らない現実を前に、丁寧な説明や審議を心がける姿勢は見える。だが、臨時国会で規模ありきの政府補正予算案をほぼ変えず、国民民主党が提起した「年収103万円の壁」の引き上げで税や社会保障の抜本的な議論に持ち込むわけでもない。また日本維新の会とは教育無償化の政策協議を始めた。

 野党と個別協議に持ち込み、数合わせに躍起になっているように見える。将来世代に負担を先送りする、やみくもな財政出動にもつながりかねない。自民党の政権維持を最大の優先事項にする旧来の政治そのものではないか。1強時代に与党の事前調整で予算も法案も決め、数でごり押しして国会審議をないがしろにしてきたやり方を省みるべきだろう。

 長年のそうした政治が、経済力低下や低賃金、時代や家族の在り方とずれた社会保障と税、格差拡大を変えられずにきたのではないか。国政選挙の投票率低迷や既存政党への不信を招いた面もあろう。いわば民主主義の危機を招いたわけで、脱却すべきだ。

 最たる国民とのずれは「政治とカネ」の問題である。臨時国会でようやく使途の公開が要らない政策活動費の廃止など一定に政治資金改革を進めたが、企業・団体献金の禁止に踏み込んでいない。会見で首相は「真摯(しんし)に議論する」とし、本年度末までに結論を目指す考えを示した。

 これは30年前の政治改革で積み残した議題であり、なお生ぬるい。派閥裏金事件を巡っても、昨年末に開いた衆参両院の政治倫理審査会で当該議員が弁明に立ったが、真相解明どころか疑問は強まった。政治不信の払拭にはリーダーシップが欠かせないが、熱意が伝わってこない。

 通常国会で示すべきは、民主主義に資する国会への変革と、政策の熟議である。その点、会見で政府提出を目指す年金制度改革の法案について与野党協議を呼びかけたのは大事な一歩だ。103万円の壁の議論とも関わり、超高齢社会での社会保障の在り方で知恵を出し合う機会になる。

 昨年末から年頭にかけ、首相からは少数与党を巡る政局の発言が目立った。夏の参院選に合わせた衆参同一選の可能性に言及し、野党との大連立を「選択肢としてあるだろう」とも語った。会見で否定はしたが政権維持への執着ばかりが先立つように見える。

 少数与党として、国民と向き合う政治に変える務めこそ最優先で果たすべきだ。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月07日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.06】:石破政権の課題 ポピュリズム横行が目に余る

2025-01-08 05:00:35 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.06】:石破政権の課題 ポピュリズム横行が目に余る

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.06】:石破政権の課題 ポピュリズム横行が目に余る

 ◆難局の舵取りを任せられるのか◆ 

 少数与党が、政策を実現させるために野党の協力を仰ごうとするのはやむを得ない。

 だが、政権の維持に執着するあまり、財源の確保を棚上げして減税などの要求を唯々諾々とのんでいたら、国力は低下してしまう。そんな政治をいつまで続けるのか。憂うべき事態である。

 衆院で与党が過半数を失った昨年の臨時国会は、石破政権の低姿勢ぶりが際立った。

 ◆熟議には程遠い国会

 国民民主党の協力を得るため、所得税の課税が始まる「年収の壁」の見直しに動いた。日本維新の会にも秋波を送り、維新の掲げる教育無償化の協議を始めた。

 石破首相はこうした国会・政局運営を「幅広い合意形成を図るよう努力してきた。まさに熟議の国会になった」と評価したが、自らの延命目的で野党の「機嫌取り」をしているだけのように映る。とても「熟議」とは呼べまい。

 内外の課題は山積している。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策を進めるだけでは、難局を乗り切ることはできない。

 日本の人口は毎年のように数十万人規模で減り続け、少子化に歯止めはかからない。

 政府は「賃上げに取り組んでいる」と強調しているが、実質賃金の伸びは限定的だ。

 児童手当の拡充など、給付に偏った従来の少子化対策を練り直し、社会全体で子育てを支えていく仕組みを改めて考える必要があるのではないか。税と社会保障の制度を、より均衡のとれた形に改革していくことも大切だ。

 国際情勢が激変している中で、日本の外交力が試されている。

 中東ではパレスチナ自治区ガザでの戦闘による犠牲者が増え続け、人道危機は深刻だ。来月で3年となるロシアのウクライナ侵略を巡っては、欧米の「支援疲れ」が目立っている。

 中東諸国と良好な関係を築いてきた日本は、停戦に向けた協議を仲介するなど、もっと役割を果たせるはずだ。ウクライナ支援では、ミサイル防衛の装備など、防御に限った武器の輸出に道を開くことを検討してもいいだろう。

 悪化した日本周辺の安全保障環境への対応も、待ったなしの課題だ。防衛力の向上や日米同盟の強化、日米豪印など多国間協力を深めていく必要がある。

 ◆外交力が問われている

 多くの難題を抱えているのに、就任から3か月たった首相がいまだに日本の進むべき針路を示せないでいるのは嘆かわしい。国の 舵 かじ 取りを担うリーダーとしての資質を疑われるようでは困る。

 国会論議は昨年、自民党の政治資金問題一色だった。収支報告書への不記載は厳しく批判されなければならないが、この問題だけが国家の一大事であるかのように、「徹底追及」に専念する野党の姿勢には、違和感を禁じ得ない。

 今月下旬に始まる通常国会では重要法案の審議が控えている。

 政府機関や重要な社会インフラへのサイバー攻撃は相次いでいる。大規模な被害を未然に防ぐための「能動的サイバー防御」の法制化は急務といえる。

 政府は年金改革で、厚生年金の加入要件を変更し、多くのパート労働者などの加入を義務づける方針だ。

 将来受け取る年金が増す、とメリットを強調しているが、企業などからは、保険料負担が増えることへの反発も出るだろう。

 政府が、どれだけ納得の得られる説明をできるかが焦点だ。

 立憲民主党など野党は、選択的夫婦別姓を実現するための法案を提出するとみられる。

 首相も同調姿勢といわれるが、選択的夫婦別姓は、社会や家族のあり方に大きな影響を与える。

 夫婦が別々の姓を名乗る場合、子どもが、父親か母親と別姓になるといった問題を軽視すべきではない。国会運営への配慮で判断を間違えるようなことがあってはならない。慎重に議論したい。

 ◆民主主義の根幹を守れ

 与野党は2013年、有権者の政治参加を促進しようとインターネットによる選挙活動を解禁し、ネットの活用を広範に認めた。

 しかし、昨年の兵庫県知事選などでは、SNS上に真偽不明な情報が大量に出回った。偽情報が選挙結果に影響を与えかねない事態を放置することは許されない。民主主義の根幹である選挙の公正さをどう守るかは重い課題だ。

 今夏には参院選や東京都議選が予定されている。与野党は、選挙に関するSNS規制についての議論を急ぐべきだ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月06日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《24色のペン・01.07》:石破政権が歩み始める「いばらの道」=飼手勇介

2025-01-07 06:00:05 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

《24色のペン・01.07》:石破政権が歩み始める「いばらの道」=飼手勇介

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.07》:石破政権が歩み始める「いばらの道」=飼手勇介

 「石破政権は意外と続いていくのかもね」。昨年の臨時国会を乗り越えたこともあり、永田町で取材をしていると政権の行く末を楽観する声も耳にする。確かに報道各社の世論調査の内閣支持率は横ばいか微減が多く、30~40%を維持している。背景には、所得税がかかり始める「103万円の壁」を123万円まで引き上げるなど、少数与党として野党の意見に耳を傾け「国民生活を豊かにしてくれる政権」という期待値があるようにも見える。

2024年度補正予算案が可決された衆院本会議終了後、各党へのあいさつ回りで国会内を歩く石破茂首相(中央)=2024年12月12日午後6時、平田明浩撮影

2024年度補正予算案が可決された衆院本会議終了後、各党へのあいさつ回りで国会内を歩く石破茂首相(中央)=2024年12月12日午後6時、平田明浩撮影

 だが、その雰囲気は1月24日にも召集される通常国会で一変する可能性がある。参院選を7月に控え、与野党対決の度合いが一気に高まることが想定されるためだ。

 昨年の臨時国会で石破政権は、「壁」の引き上げや政治改革で譲歩を繰り返しながら、かろうじて野党の協力を取り付けて、補正予算や政治改革関連法を成立させた。

 一方、その過程では、立憲民主党が「本丸」と位置づける企業・団体献金の禁止法案について3月末までに結論を出すことで与野党が合意。立憲からすれば、2025年度当初予算の成立の条件として、企業・団体献金の禁止で自民党に譲歩を迫る「カード」を手にしたことを意味する。

 さらに、旧安倍派の元会計責任者に対する参考人招致や「壁」のさらなる引き上げなど、与野党の「譲れない一線」が明確になった。野党からすれば昨年の臨時国会は、通常国会に向けた「弾込め期間」だったともいえる。

 野党の協力がなければ、予算案も法案も成立させられない石破政権。さらに内閣不信任決議案の可決で野党が一致すれば、内閣総辞職か衆院解散の選択に追い込まれる。

 通常国会前半戦の最大の関門は、当初予算を成立させられるかだ。野党の協力が得られるかがカギを握る。ただ、国民民主党との「壁」の引き上げ交渉を担っている自民の宮沢洋一税調会長は「暫定予算を組むしかないだろう」と周囲に漏らしている。

 暫定予算とは、3月末までに予算を成立させられない場合に備え、4月以降の政府運営に必要な経費を盛り込んだ一時的な予算のことだ。編成すれば2015年以来、10年ぶりとなる。

 つまり宮沢氏は、国民民主との「壁」引き上げ交渉が難航すると予測しているのだ。その結果、衆院の予算通過は遅れ、3月末までには当初予算は成立しないと見ている。

 予算成立は政権継続の必須条件。追い込まれた石破政権は企業・団体献金の禁止や「壁」引き上げで、大幅な譲歩を余儀なくされるリスクをはらむ。

 どの野党とも連携が取れずにいると、数カ月分にも及ぶ暫定予算を組む可能性も出てくる。一方で、衆院で予算委員長ポストを握るのは立憲だ。予算成立を一定の大義名分もなく遅延させた場合、批判は立憲に向かいかねない。与党と立憲の「チキンレース」(自民閣僚経験者)が始まることになる。

 自民が更なる「壁」の引き上げに慎重なのは、必要となる恒久財源にメドが立っていないためだ。党内からは、大幅引き上げを強行すれば財務省が「石破政権打倒」に動くと警戒する声が上がる。自民中堅は「財務省からすれば『政権の継続のために、いったいいくら将来世代に借金のつけ回しをするのか』ということだ」と語る。

 故安倍晋三元首相も財務省を警戒した。「彼らは、自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来ますから」(安倍晋三回顧録)と記したほどだ。

 財務省は…

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