路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【ラサール石井 東憤西笑・05.09】:憲法記念日に、憲法9条を変えて戦争のできる国にしたい与党と「ゆ党」がうごめく不気味

2024-05-12 07:30:50 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ラサール石井 東憤西笑・05.09】:憲法記念日に、憲法9条を変えて戦争のできる国にしたい与党と「ゆ党」がうごめく不気味

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ラサール石井 東憤西笑・05.09】:憲法記念日に、憲法9条を変えて戦争のできる国にしたい与党と「ゆ党」がうごめく不気味

 5月3日は憲法記念日。毎年憲法論議が盛んになる。今年はとくに、自民党がやりたくて仕方がない憲法改正。それを推し進めたい側の意見が目立った。考えてみれば憲法記念日に改憲を考えるのは、お父さんの誕生日にお父さんを取り換える相談をしているようなもので、不謹慎な話だ。

<picture>5月3日、有明防災公園で行われた護憲集会には3万2000人が参加した(C)日刊ゲンダイ</picture>

 5月3日、有明防災公園で行われた護憲集会には3万2000人が参加した(C)日刊ゲンダイ

 与党とその周りにまとわりつく「ゆ」党の皆さんがとくにうるさい。9条を書き換え、基本的人権をなくし、緊急事態条項を取り入れ、要するに日本を「戦争のできる国」にしたい人たちだ。

 国民民主党の玉木代表は「安全保障を議論するのは、どういうときなら戦争していいんだということを国民と共有するプロセス」などと言い出した。おい、おい。おい!日本は戦争を永久に放棄してるんだぞ。もう改憲されたみたいに言うな。

 そして彼は、衆議院が解散した直後の災害や有事が起こって選挙ができない時のための、前議員の任期延長を主張する。

 だが、現在は「参院緊急集会」という制度がある。これは先の戦争で、衆院が任期延長により真珠湾攻撃などの権力乱用をした反省を基に作られた制度で、衆院がない間参院が機能するものだ。

 政権が国民に信を問うために選挙を行うのなら、何かしら問題があったはずだ。その政権が有事だからと、そのまま居座るのは危険な話だ。だいたい長期間、日本中で選挙ができないなどというのはどんな有事だ。ゴジラが日本を縦断したのか。

 維新の音喜多議員は「緊急事態条項は強権的なイメージを持たれがちですが全くの逆。権力者の暴走を防ぎ、国民の権利を守るために極めて重要」と言ったがこれこそ全くの逆。デタラメだ。過去にドイツはこのためにヒトラー政権が生まれた。

 維新の馬場代表は「我が国の手足を縛ってきた現憲法」と言った。この人は何もわかっていない。憲法が縛るのは時の政権だ。

 子供たちに出される憲法の基本クイズがある。「憲法を守るのは誰でしょう?」答えは「国民」ではなく「権力者」だ。立憲主義とは「政治権力が憲法によって実質的に制限されなければならないという政治理念」だ。

 憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とある。

 改憲ではなく憲法を守らねばならない。

 そもそも法律も守らない裏金泥棒集団が、戦争のできる国にしてまた一儲けしようとするために改憲するなどチャンチャラおかしい話なのだ。 

ラサール石井
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 ■ラサール石井 タレント

 1955年、大阪市出身。本名・石井章雄(いしい・あきお)。鹿児島ラ・サール高校から早大に進学。在学中に劇団テアトル・エコー養成所で一期下だった渡辺正行、小宮孝泰と共にコント赤信号を結成し、数多くのバラエティー番組に出演。またアニメの声優や舞台・演劇活動にも力を入れ、俳優としての出演に留まらず、脚本・演出も数多く

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「ラサール石井 東憤西笑」】  2024年05月09日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【岸田政権】:憲法記念日に「I AM NOT KISHIDA」と叫ぼう

2024-05-12 07:29:30 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【岸田政権】:憲法記念日に「I AM NOT KISHIDA」と叫ぼう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【岸田政権】:憲法記念日に「I AM NOT KISHIDA」と叫ぼう

 日本国憲法が施行されてから、すでに77年。平和憲法が日本の軍拡化にブレーキをかけてきたのは間違いない。歴代の首相は、憲法9条を盾にして、軍拡を求めるアメリカの要求をかわしてきた、とはよく言われることだ。

 もし、日本国憲法がなかったら、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争……と、日本はアメリカの要求に従い、いくつかの戦争に参戦していたに違いない。日本国憲法が、防波堤になっていたのは確かだろう。

 ところが、その防波堤が風前のともしびと化している。先月、国賓待遇で訪米した岸田首相が「日米 軍事一体化」を勝手に約束してしまったからだ。大手メディアはあまり深刻に報じなかったが、「日米首脳会談」で合意した内容は衝撃的である。

<picture>浮かれ気分で有頂天、勝手に約束(日米首脳会談)/(C)ロイター</picture>

 岸田はバイデン大統領に対して、「日本はアメリカのグローバルなパートナーとして、インド太平洋地域、世界の課題解決の先頭に立つ」と約束。さらに、アメリカ議会で行った演説でも「日本は控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強くコミットした同盟国へと自らを変革してきた」「日本はかつてアメリカの地域パートナーだったが、いまやグローバルなパートナーとなった」と明言してしまった。

 要するに、東アジアだけでなく、世界中どこでも米軍と一緒に戦うという宣言である。

 自衛隊と米軍の「一体化」についても、共同声明に盛り込んでしまった。「日米の指揮統制の枠組みを向上させる」と明記している。よほど待ち望んでいたのか、バイデンは「日米同盟が発足して以来、最も重要な改善だ」と大喜びしている。具体的には、まず今年度中に自衛隊に「統合作戦司令部」を新設し、在日米軍司令部のカウンターパートにするようだ。現在、在日米軍の指揮権はインド太平洋軍(ハワイ)が持っているが、指揮権を在日米軍に委ねることになるという。

 軍事評論家の前田哲男氏はこう言う。

 「これまでも日米は、基地の共同使用など、一体化を進めてきましたが、首脳会談で合意した『指揮統制』の連携強化は決定的です。アメリカは、自衛隊を米軍の別動隊として使うつもりなのでしょう。日本政府は、自衛隊と米軍の指揮系統は別だと説明するでしょうが、世界一の軍事力を誇る米軍に対し、自衛隊が主体的に判断できるとは思えない。そもそも指揮統制の連携強化は、同盟国との『統合抑止』戦略を取るアメリカが働きかけていたもの。台湾有事が起きた時、自衛隊を全面活用するつもりなのでしょう」

 ◆もう米国の要求を断れない


自衛隊と米軍の一体化へ(日米合同演習)/(C)共同通信社

 こうなると、もう日本は「わが国は憲法の制約があるので」と、アメリカの要求をかわすことは難しくなるのではないか。日本のトップがアメリカの議会で「日本はアメリカのグローバルなパートナーだ」と公式表明してしまった以上、アメリカの要求を断れるはずがない。

 しかも、自衛隊が戦うのは、台湾有事に限らず、全世界に及ぶ恐れがある。

 駐米大使だった杉山晋輔氏は、岸田の米議会演説と日米共同声明について日本記者クラブでこう解説している。

「日米安全保障条約に依拠する場合も、そうでない場合も、日本近傍の地域、北朝鮮や台湾海峡の平和と安定のため米国と戦うと共に、グローバルに米国のパートナーとしてやっていくことを表明した」

 安保条約に関係なくても、米軍と一緒に戦うということらしい。

 バイデン政権の国家安全保障戦略は、同盟重視の意義を「敵が我々の大陸に到達する前に脅威を打ち砕く」と記述している。自国の損害を最小化し、国益を確保するために同盟国を使うということだ。

 はたして岸田は、どこまで深く考えて共同声明を発表し、議会演説をしたのだろうか。国賓待遇に気を良くしたからなのか。あるいは、それが国賓待遇の条件だったのか。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。

「もともと岸田首相は、なにを聞かれても、検討しますと答え『検討使』と揶揄されていた総理です。深い考えはないのでしょう。アメリカに気に入られれば政権は安泰、という程度の認識なのだと思う。しかし、自衛隊と米軍の一体化は、戦後の日本を大きく変えるものです。日本は戦争の当事者になる恐れがある。なぜ、勝手に決めてしまったのか。日本国憲法も空洞化してしまいかねません」

 国民の支持を失った岸田は、破れかぶれでなにをしてくるか分からない。これ以上、総理をつづけさせたら大変なことになる。憲法記念日に国民は「アイ・アム・ノット・キシダ」と叫ぶしかない。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・岸田政権・対米政策・憲法改正問題】  2024年05月03日  13:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.03】:きょう憲法記念日 国民主権を取り戻す時だ

2024-05-05 05:05:35 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説・05.03】:きょう憲法記念日 国民主権を取り戻す時だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.03】:きょう憲法記念日 国民主権を取り戻す時だ  

 日本国憲法の施行から77年がたった。自民党派閥の裏金問題を巡り、かつてない深刻な政治不信が渦巻く中で憲法記念日を迎えた。
 
 政治とは誰のもので、誰のためにあるのか。民主政治の原理を根本から問わねばならない事態だ。
 答えは憲法前文にある。主権は国民にあると宣言し、こう続く。
 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」
 厳粛な信託を受け憲法擁護義務を負う代表者、つまり国会議員が裏金をつくり、信頼を失墜した。憲政の危機だ。信を失った人たちに憲法改定を議論する資格はない。
 国民主権を取り戻し、議会制民主主義を鍛え直す。それが今日、国の最高法規の憲法が私たちに課す最重要の命題ではないか。

 ■政治に緊張感与えよ

 政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるよう政治資金の収支を公開し、政治活動の公明と公正を確保し「もって民主政治の健全な発達に寄与する」。政治資金規正法は目的をこう記す。
 それと正反対に収支を監視から遮断する。政党が支給する政策活動費を、自民党は「政治活動の自由」を盾に使途の公開すら拒む。
 第2次安倍晋三政権下の森友学園、桜を見る会の問題では、決裁文書改ざん、事実と異なる数々の首相答弁など、隠蔽(いんぺい)体質が真相究明を阻んだ。裏金問題と同根だ。
 長く続いた1強多弱の政治が権力のおごりを生み、不正の土壌になってきたのではないか。
 国民の側も問われている。
 国政に強い関心を持ち続け、不正に毅然(きぜん)と抗議の声を上げる。信を託すに値しないと判断したら選挙で厳しい審判を下す。そうやって政治に常に緊張感を与えるのは、主権者の責務でもある。

 ■再び破局へ進まぬか

 1946年11月の憲法公布に際し、衆院憲法改正特別委員会の委員長を務めた芦田均は次のような趣旨のことを書き残した。
 明治期の自由民権思想は結実しなかった。自由思想の成熟すべき地盤が用意されていなかった。
 古来わが社会生活は、個人が集団の内に埋没して、人格の自主自由に基づく個性の独立という現象は極めて希薄であった。
 従って満州事変以降、政権が武門の手に移っても、議会、国民共に立憲政治を擁護する情熱に乏しく、面従腹背の日を重ねて今日の悲運を招いたのである。
 吾等は改めて民主主義の真髄を体得する必要に迫られた。(「新憲法解釈」)
 民主主義の基盤の弱さから、軍部の独走を許し破局に至った。過去の話と片付けられようか。
 安倍政権は知る権利を脅かす特定秘密保護法制定や集団的自衛権の行使容認など、日本を「戦争ができる国」に導く道を進んだ。
 岸田文雄政権は敵基地攻撃能力の保有を認め、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の輸出解禁を閣議決定した。
 まともな国会論議がないまま、武力による国際紛争の解決を否定した憲法9条の空洞化が進んだ。
 今国会では秘密保護法制の拡大を主眼とし、保護対象を経済安全保障分野にも広げる「重要経済安保情報保護・活用法案」が衆院を通過した。
 憲法が国家権力を縛る立憲主義をないがしろにし、国家が国民を監視し統制を強める。立法府による行政府へのチェックが弱く、三権分立も十分に機能していない。
 その結果、国が誤った方向に進んでいるとも気付かず、気付いても正すことができなくなる―。
 私たちはいつか来た道を歩んでいるかもしれないとの認識を持ち、権力を監視する必要がある。

 ■「任期延長」の危うさ

 衆院憲法審査会では大規模災害や武力攻撃など緊急事態時の国会議員の任期延長を中心に、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が条文案作成を求めている。
 だが憲法54条は、衆院解散後に緊急の必要があるときに備えた参院の緊急集会を規定している。
 そこに屋上屋を架すような任期延長は、有権者が選挙権を行使できなくなり、国民主権が侵害される危険性に警戒が必要だ。政権の延命に利用される恐れがある。
 大規模災害や感染症のまん延などの際、国が自治体に「指示権」を行使できる条項を盛り込んだ地方自治法改正案も提出された。
 憲法の緊急事態条項新設へとつなげる狙いが透けて見える。
 安倍政権では、憲法53条に基づいて野党が臨時国会の召集を求めても政府は無視し、大義の乏しい衆院解散を繰り返した。
 立憲主義軽視の政権が、「緊急事態」を口実にさらに恣意(しい)的な権力の行使を可能とするような改憲は認められない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季・05.03】:日本の憲法

2024-05-05 05:05:30 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【卓上四季・05.03】:日本の憲法

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.03】:日本の憲法

 柴田元幸さんは英米文学の名うての翻訳家である。オースター、サリンジャー、ブコウスキー…。こうした人気作家の作品を柴田さんは生き生きとした日本語で幅広く届けてきた

 ▼この達人が日本国憲法の英訳版を和訳した(「対訳 英語版でよむ日本の憲法」)。どういうことか。敗戦後の占領下、日本政府の官報は日本文と英文の2種あった。憲法の公布時に憲法の英訳版が英文官報に掲載された。これを先入観を持たずに<宇宙人の目>で翻訳した

 ▼幸福追求権を定めた13条はこうなった。<人はみな、個人として尊重せねばならない。生命・自由の権利、幸福を追求する権利は、それが公の福利を妨げないかぎり、法律の制定をはじめ国政において何より尊重せねばならない>

 ▼この条文に柴田さんはアメリカ独立宣言の響きを聞き取ったという。確かに日本国憲法にはフランス革命時の人権宣言をはじめ、人類が掲げてきた理想や知恵が流れ込んでいる。達意の翻訳だからこそ、憲法の本質や精神がよく表れたともいえるだろう

 ▼かつて池澤夏樹さんも同様の翻訳を試みている(「憲法なんて知らないよ」)。戦争放棄を含めて、憲法の理念の実現へ向けて努力が必要だ―。前書きで呼び掛けた。世界で戦禍が続くいま、重みを増している

 ▼きょうは憲法記念日だ。言葉の専門家である文学者の試みから、憲法を考えてみるのもいいだろう。 

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな

2024-05-05 05:04:35 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな 

 日本国憲法の施行から77年を迎えた。国会で憲法改正に前向きな勢力は改憲発議に向けて議論を急いでいる。しかし、国民の大半は「急ぐ必要はない」との考えだ。国内で改憲の機運や議論が盛り上がっているとは言えない。慎重な議論を重ねるべきだ。

 共同通信が実施した郵送方式の世論調査で、改憲の議論を「急ぐ必要はない」が65%だったのに対し「急ぐ必要がある」は33%にとどまった。
 岸田文雄首相は自民党総裁任期の9月までを改憲目標としている。世論調査では改憲が「必要」「どちらかといえば必要」が合計で75%となったが、その中でも改憲を「急ぐ必要がある」は41%だった。
 そもそも改憲論議は総裁任期に合わせてせかすような性質のものではない。国民がついていかないのは当然ではないか。改憲を目指す自民、日本維新の会の支持層でも「急ぐ必要がある」は46%だった。改憲に理解を示す層でも期限を切った論議を是とはしていないのだ。
 9条改正については必要性が「ある」が51%、「ない」が46%と拮抗(きっこう)した。
 憲法9条は戦力不保持を規定するが、政府は自衛権は認められていると説明し、自衛隊を設置した。それにとどまらず、解釈改憲を重ねることで自衛隊の配備、増強を進めてきたのである。
 集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制については憲法学者や専門家から憲法違反の指摘を受けながら可決、成立させてきた。
 長距離ミサイルなど敵基地を攻撃する能力の保有は戦後日本の安保政策の大転換にもかかわらず、これを閣議決定で推し進めてきたのだ。
 これらの軍事増強の動きに対し、憲法は一定の歯止めとなってきた。国民の理解が得られない速さで改正を推し進め、憲法を形骸化させるような拙速な論議は戒められなければならない。
 沖縄の施政権返還から今月で52年となる。返還と同時に沖縄にも実効性をもって憲法が適用されることになったが、その理念が現時点でも十分に生かされているとは言い難い。沖縄への基地の押しつけはその最たるものだ。日米安保体制の重圧を沖縄が背負い続けている実態は法の下の平等に反する。
 辺野古新基地を巡り、沖縄県行政の権限を無視するような国の姿勢は憲法の地方自治の規定にそぐわない。改憲を急ぐよりもその理念を軽んずるような国の姿勢こそ見直されるべきである。
 社会の在り方やニーズの多様化で、改憲の論点も9条改正だけではなく、同性婚や衆院解散権などさまざまだ。
 新たな権利の確立が必要だとして改憲に理解を示す人たちも多いだろう。一方で教育の充実や参院選挙区の合区など項目によっては法制度の改定によって対応できるものもあろう。論点をより整理することが先決だ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.03】:岸田政権と憲法 平和主義の原点、見つめ直せ

2024-05-04 07:01:45 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説・05.03】:岸田政権と憲法 平和主義の原点、見つめ直せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.03】:岸田政権と憲法 平和主義の原点、見つめ直せ 

 岸田文雄首相が、自身の自民党総裁任期である9月までの憲法改正を目指す姿勢を崩していない。

 派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、島根1区など先の衆院3補欠選挙で党支持層の離反が浮き彫りになった。総裁選での再選や次期衆院選をにらみ、時間的に非現実的でも改憲をアピールすることで求心力を確保する狙いがあるのではないか。

 だとしたら、憲法を政治利用していると指摘されても仕方あるまい。国民は見透かしているのだろうか。77回目の憲法記念日を前に共同通信社が実施した世論調査で、改憲の国会議論を「急ぐ必要がある」は33%にとどまった。皮肉にも首相が前のめりになるほど、改憲を遠ざけている。

 首相は根っからの改憲派ではない。党政調会長だった2017年の衆院代表質問では当時の安倍晋三首相に「改正のための改正であってはならない」とくぎを刺していた。安倍氏からの禅譲を期待しながら首相の座を目指すうち、改憲の旗を振り始めた。

 岸田政権は防衛力を強化するため22年末、安全保障関連3文書の改定を閣議決定した。ロシアがウクライナに侵攻し、中国は台湾統一への野心を隠さない。北朝鮮はミサイルの発射を繰り返し、性能を向上させている。日本を取り巻く安保環境が厳しさを増しているのは確かだろう。

 だが防衛力強化の中身とその進め方は、憲法の三大原則である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義をないがしろにしていると言わざるを得ない。

 3文書には他国のミサイル発射拠点などを攻撃する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有とともに、武器輸出に道を開く防衛装備移転三原則の運用指針見直しが掲げられた。中でも注目されたのは英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の日本から第三国への輸出解禁である。与党協議を経て3月、閣議決定された。

 14年の集団的自衛権行使容認から、閣議決定による安保政策転換が続く。本来は関連法案を提出し、国会で憲法との整合性について議論を尽くすべきだ。政策決定手続きから国民の代表を排除する運用は民主主義の形骸化を招く。改めるよう強く求める。

 憲法は前文で「全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有する」と平和主義をうたう。同時に平和を人権の問題として捉える。その精神を踏まえて日本は、国際紛争を助長しないよう武器輸出を厳しく制限してきた。

 背景には銃後の市民が犠牲になった戦争の反省がある。特に米国による広島、長崎への原爆投下では、女性や子どもを含む非戦闘員に多数の死者が出た。だからこそ被爆地は核廃絶とともに、核兵器を使わせないために戦争を起こさせないよう訴えてきた。

 被爆地選出の首相はいま一度、平和主義の原点に立ち返るべきだ。「平和国家としての基本理念を堅持する」と繰り返したところで、武器が売られた先で起こるかもしれない犠牲を正当化するのであれば、平和国家とはいえまい。

 元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:憲法記念日 平和を守るため議論深めたい

2024-05-04 05:01:30 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説①】:憲法記念日 平和を守るため議論深めたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:憲法記念日 平和を守るため議論深めたい

 ◆具体的な条文案をまとめる時だ◆ 

 施行から77年を迎えた現行憲法が、日本に平和の尊さと民主主義の理念を定着させ、経済的発展の土台となったことは疑いようもない。

 だが、憲法を守ろうとするだけでは、激動する国際情勢や内政の課題に適切に対処できなくなっている。平和を維持していくために何が必要かという観点から、最高法規のあり方を不断に議論し、必要な改正を進めたい。

 ◆悪化した安全保障環境

 ロシアによるウクライナ侵略や中東の紛争が長期化し、米欧が主導してきた戦後の国際秩序は崩壊の危機に直面している。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮はもとより、軍備増強を図る中国も、日本の安全を脅かす存在となった。

 政府は、憲法制定時に想定していなかった事態が起きると、新たな憲法解釈に沿って法律を作り、乗り切ってきた。だが、法秩序の根幹である憲法を改めずに対処するのは限界に来ている。

 読売新聞の世論調査では、憲法改正に賛成の人は過去最高の63%だった。安全保障環境の悪化を国民も懸念している。

 にもかかわらず、国会の憲法論議は低調だ。衆院憲法審査会での討議は今国会で3回だけだ。

 岸田首相は「自民党総裁の任期中に改正を実現したい」と繰り返し述べている。

 それならばもっと世論を喚起するための見解を表明すべきだが、そうした発信は少ない。改正に前向きな発言も、保守層の支持をつなぎとめるためのポーズではないか、と疑いたくなる。

 立憲民主党が、政治資金規正法違反事件で処分された自民党議員を審査会から外すよう求めたことも、議論が進まない一因だ。憲法論議に政局を絡めるかのような姿勢は、あまりにも前時代的だ。

 自民党は、審査会内に条文案の起草委員会を設けるよう求めている。具体的な条文案を基に議論する方が、論点や課題が明確になり、国民の理解も深まるだろう。

 自民党は2018年、自衛隊の明記、緊急事態対応、参院選の合区解消、教育の充実の4項目の憲法改正案を発表した。このうち、衆院の審査会では緊急事態対応の議論が先行している。

 自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党は、大規模災害などで選挙を行えない場合に備え、国会議員の任期を延長できる規定を設けるべきだと主張している。

 憲法が定める「参院の緊急集会」は、衆院解散から特別国会召集までの70日間を前提としている。

 もっと長期にわたる有事や災害に見舞われても、必要な法律を制定できるようにするなど、国会が機能を果たせるようにしておくことは大切だ。

 ◆9条改正から逃げるな

 極端に悪化した安全保障環境を踏まえれば、9条についても踏み込んだ議論が欠かせない。

 日米首脳は4月の会談で、安全保障政策で「協働」していく決意を示した。自衛隊と米軍を一体的に運用していく方針だ。

 自衛隊が従来の「盾」(専守防衛)にとどまらず、米国の「矛」(攻撃力)の役割の一部を担うようになれば、日米同盟は一層強固になろう。

 防衛政策の変更を念頭に、最近は自民の一部議員が自衛隊の明記では不十分だとし、戦力不保持を定めた9条2項を削除して自衛権の行使を盛り込むよう提案している。

 安倍内閣は15年、日本の存立が脅かされる事態に限り、集団的自衛権の行使を可能にする法整備を行った。だが今も、政府は自衛権の行使は最小限にとどめるという立場で、装備品も防衛に特化したものに限っている。

 国民の生命、財産を守るため、憲法に自衛権を明記し、敵基地攻撃能力の保有を含め、防衛力を強化していく狙いは理解できる。各党は議論を掘り下げるべきだ。

 ◆1票の格差どう考える

 「1票の格差」をどう考えるかも、重い課題である。

 司法は近年、「法の下の平等」を「投票価値の平等」に読み替え、格差是正を求めてきた。これを受け、参院は隣接県を一つの選挙区にする合区を導入した。衆院も人口変動に応じて、たびたび区割りを変更している。

 しかしこのままでは、過疎地の声を国政に届ける議員がいなくなってしまう。有権者が選んだ代表に政治を託すという、代議制民主主義が揺らぎかねない。

 地方の声を反映させるため、参院議員を「地域代表」に位置づけるという自民党の改憲案は選択肢だ。衆参両院の役割分担の見直しも含めて検討する必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【讀賣世論調査】:憲法改正「賛成」63%、9条2項「改正」は最多の53%

2024-05-03 05:15:30 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【讀賣世論調査】:憲法改正「賛成」63%、9条2項「改正」は最多の53%

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【讀賣世論調査】:憲法改正「賛成」63%、9条2項「改正」は最多の53% 

 読売新聞社は憲法に関する全国世論調査(郵送方式)を実施し、憲法を「改正する方がよい」との回答が63%(前回昨年3~4月調査61%)と、3年連続で6割台となった。憲法を「改正しない方がよい」は35%(前回33%)だった。

 改正賛成派の割合は、調査が郵送方式となった2015年以降で最も高かった。調査方法が異なるため単純な比較はできないが、面接方式だった04年調査の65%に次いで2番目に高かった。

 戦争放棄を定めた9条1項を改正する必要は「ない」とした人が75%(前回75%)だった。一方、戦力の不保持などを定めた9条2項を改正する必要が「ある」が53%(同51%)で過去最多となり、「ない」の43%(同44%)を上回った。憲法に自衛隊の根拠規定を追加する自民党案について、「賛成」は56%(同54%)、「反対」は40%(同38%)だった。

 憲法改正賛成派が増えた背景には、日本を取り巻く安全保障環境の変化があるとみられる。中国の軍備増強や日本の領海への侵入が安全保障上の脅威だと「感じる」との回答は、「大いに」59%、「多少は」34%を合わせて93%に上った。

 9条を今後どうすればよいと思うかを尋ねると、「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」が44%(前回43%)で、「これまで通り解釈や運用で対応する」が38%(同37%)、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」が14%(同15%)と続いた。

 国会で憲法に関する議論を進める際、AI(人工知能)などデジタル技術の発展をふまえるべきだと「思う」は58%で、「思わない」の39%を上回った。

 調査は3月12日~4月18日、全国の有権者3000人を対象に実施し、2002人から回答を得た(回答率67%)。

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 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【選挙・世論調査】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ぎろんの森】:憲法公布と「文化の日」

2023-12-16 07:45:10 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ぎろんの森】:憲法公布と「文化の日」

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森】:憲法公布と「文化の日」

 先週の金曜日、11月3日は「文化の日」でした。関東地方は天気も良く、連休の初日でしたので、出かけられた方も多かったと思います。

 東京新聞はこの日、文章量が通常の2倍に当たる長文の社説「憲法公布の日に考える 国家の危機と『無鉄砲』」を掲載しました。
 
 1891(明治24)年、来日中のロシア帝国皇太子ニコライが警備中の巡査に切りつけられた「大津事件」を巡る裁判が題材です。巡査の死刑を求める明治政府の圧力に抗し、裁判所が法律に従って無期懲役と判じて司法の独立を守ったことを取り上げ、近年の司法が政治から独立しているか問いかける内容です。
 
 この社説に対して、読者から「東京新聞がこの日の社説で『憲法公布の日に考える』と題して論じたことは、大切なことと思い、かつ敬意を持つ」と励ましの手紙をいただきました。
 
 
 祝日である文化の日は1946(昭和21)年のこの日、日本国憲法が公布されたことにちなみ、48(同23)年から設けられました=写真は当日の東京新聞社説。
 
 憲法が施行された5月3日の憲法記念日と同じく、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を三大理念とする現行憲法には重要な祝日です。
 
 ただ、そうした意識は薄れているのかもしれません。本紙以外の在京紙で文化の日に関する社説掲載は産経新聞の「食に宿る和の心を未来へ」だけで、憲法を論じた新聞社はありませんでした。
 
 11月3日は明治天皇の誕生日で、47(昭和22)年までは「明治節」の祝日だったことから超党派議員連盟は文化の日に「明治の日」を併記する法改正を目指しています。
 
 しかし、文化の日は国民主権の現行憲法の公布にちなんだ日であり、明治憲法の天皇主権とは相いれません。
 
 本紙はこれまでも文化の日や憲法記念日という節目に、現行憲法の三大理念の大切さを指摘する社説を掲載してきました。明治の日併記を目指す議員連盟の動きとは一線を画し、これからも憲法の三大理念の重要性を訴え続けたいと考えています。 (と)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろん森】  2023年11月11日  07:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説①】:憲法公布の日に考える 国家の危機と「無鉄砲」

2023-11-04 07:13:50 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説①】:憲法公布の日に考える 国家の危機と「無鉄砲」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:憲法公布の日に考える 国家の危機と「無鉄砲」 

 来日中のロシア帝国皇太子ニコライが、警備中の巡査・津田三蔵にサーベルで切りつけられる大事件が起きました。
 
 1891(明治24)年の出来事です。現在の大津市であったので「大津事件」と呼ばれます。ニコライは頭部に傷を負いましたが、命に別状(べつじょう)はありませんでした。

 ◆戦争になるとうわさも

 でも、ロシアは列強の一つでした。後の皇帝・ニコライ二世となる人物でもありました。小国に過ぎなかった当時の日本国内には大激震が走りました。
 
 ロシア艦隊は神戸港にあり、武力報復の可能性がありました。多額の賠償金や領土割譲を求められるとも、うわさされました。
 
 明治天皇がすぐに自ら見舞いに向かったほどです。緊迫した時間が続きました。
 当時の首相は松方正義。内相や法相ら閣僚は犯人の津田を「死刑にすべし」と主張します。伊藤博文まで「戒厳令を出してでも」との考えでした。
 
 外交問題を通り越して、国家の危機そのものだったのです。
 
 でも、ニコライは死んではいません。当時の刑法では一般人に対する謀殺未遂罪が適用され、最高刑は無期徒刑(無期懲役)までです。死刑にはできないのです。
 そこで政府は皇室のための法を用いるよう圧力を加えます。天皇や皇族に危害を加えた者は死刑にできました。しかし、ニコライは皇太子とはいえ外国人です。日本の皇室に適用される法を使えるはずがありません。
 
 「大津事件」(尾佐竹猛著、岩波文庫)を読むと、「帝国の安危存亡」「国家存在せずんば法律も生命なし」などの言葉で危機が語られます。国家あってこその法であり、法に縛られて国家がなくなっていいのか-そんな議論が沸騰します。何が何でも「死刑に」が政府の考えでした。
 
 明治憲法はその2年前の89(同22)年に発布されています。欧米式の法制度を整備してきたのは明治政府自身ですし、憲法により司法権は独立しています。
 
 つまり、政府から強い圧力があっても、司法権はそれをはねつけることができます。たとえ国家の危機であったとしても…。
 
 事件から16日後に注目の判決がありました。津田三蔵に対して死刑ではなく「無期徒刑」が言い渡されました。

 ◆「三権分立」はどこに?

 大津事件は芦部信喜著「憲法」(岩波書店)にも司法権独立の侵害が問われた事件として紹介されています。裁判の問題点を指摘しつつ、「強大な政府の圧力から司法部全体の独立」を守った意義が記されています。
 
 よちよち歩きの法治国家でしたが、基本を忠実に守ったのです。
 
 司法権の独立は日本国憲法76条にも定められています。「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」という格調高い条文です。
 
 しかし、近年の裁判所は本当に独立しているのでしょうか。
 
 憲法九条の枠を超えた集団的自衛権の行使容認。それに基づく安全保障法制の違憲訴訟では、憲法判断どころか最高裁はいとも簡単に原告の訴えを一蹴しました。
 憲法53条に基づいた臨時国会召集要求に内閣が応じなくても、最高裁は不問に付しています。
 
 米軍普天間飛行場の移転に伴う沖縄・辺野古の埋め立て訴訟では、沖縄の自治も民意も踏みにじる判決でした。
 
 最大3倍超もの格差がある参院選の訴訟でも、最高裁は「合憲」にしてしまいます。
 
 元首相の国会答弁を発端にした学校法人・森友学園の公文書改ざんで、自殺した財務省職員の遺族が文書公開を求めても、裁判所は国の言い分どおり「不開示」を認めます。理不尽です。
 
 政治向きの話になると、とたんに裁判所は腰が引けてしまう印象です。こんな事例は近年、目立ちます。内閣や国会の「裁量」を重んじて、すべてがうやむやにされていないでしょうか。
 
 三権分立が溶けていくような感覚さえ持ちます。

 ◆司法こそ裁量の発揮を

 再び大津事件の話に戻してみます。作家・吉村昭氏の「ニコライ遭難」(新潮文庫)には、こんなくだりがあります。
 
 「裁判官というものは、ずいぶん無鉄砲なことをするものだね」
 伊藤博文の判決に対する率直な感想でした。「無事に終始し、国家にとって幸せだった」とも。
 
 一見「無鉄砲」と映っても、司法の毅然(きぜん)たる姿勢は世界に通じ、国家を守ります。
 
 司法には自らの「裁量」をいかんなく発揮してほしいものです。良心をもって。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年11月03日  07:13:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ここがおかしい 小林節が斬る!・05.02】:憲法記念日に向けて(4)改憲が「目的」化した改憲こそ有害無益だ

2023-05-13 06:30:30 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ここがおかしい 小林節が斬る!・05.02】:憲法記念日に向けて(4)改憲が「目的」化した改憲こそ有害無益だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ここがおかしい 小林節が斬る!・05.02】:憲法記念日に向けて(4)改憲が「目的」化した改憲こそ有害無益だ

 長年にわたり自民党の改憲論議と付き合ってきたが、今、改めて総括してみたが、自民党は何を改憲したがっているのか? が私には本当に理解できない。

 最近の安全保障環境の激変に対して、自民党は「9条を改憲して自衛隊を『軍隊』にして国防力を強化しないと国が守れない」と言い始めている。

 しかし、現実に政府自民党は、現行9条の下で「解釈変更」と称して、海外派兵を既に解禁し、防衛力の向上(敵基地攻撃能力の保持)にも着手している。しかも、その自民党政権に主権者国民は安定多数の議席を与え続けている。だから、実際には改憲の必要はない。

<picture>小林節慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ</picture>

   小林節 慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ

 もしも、国家の存続の危機が迫っているのなら、憲法改正を発議して、2カ月以上もの公論のために政治的空白を作るほうが危険である。

 しかも、今、自民党が考えている改憲案は、維新と国民民主の協力を得て、「緊急事態条項」を新設するものである。

 しかし、現行の12条と13条の下で、国民保護法、災害対策基本法、感染症対策基本法等の緊急事態法制(法律群)が整備されている以上、緊急事態条項(憲法)の新設は不要である。しかも、すでに本コラムで述べたように、自民党案は有害無益なものである。 

 にもかかわらず、改憲にこだわる自民党は、その内容のいかんにかかわらず、「改憲」自体を目的化してしまっていることになる。

 自民党は、かねて、敗戦によりアメリカから現憲法を「押し付け」られたことにこだわり、「自主憲法」の制定を目指してきた。

 ■現行憲法は今の日本に馴染んでいる

 しかし、戦後世代の多くにはそのような恨みはない。世界史の大きな流れの中で、ドイツ、イタリア、日本の専制国家群がアメリカ、イギリス、フランスの自由主義国家群に敗れた。その結果、日本は、今の自由で民主的で豊かな国に変わることができた。その入り口が日本国憲法である。

 戦後復興の過程で、日本国民はアメリカ製の憲法に馴染んでそれを使い熟してきた。私はそれで十分だと思う。


◆本コラム 待望の書籍化! 大好評につき4刷決定(Kindle版もあります)

『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

小林節
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 ■小林節慶応 大名誉教授

 1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ここがおかしい 小林節が斬る!」】  2023年05月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.29】:憲法記念日に向けて(3)“憲法”が何かわかっていない自民党「憲法は権力者を縛るもの」だ

2023-05-13 06:30:20 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.29】:憲法記念日に向けて(3)“憲法”が何かわかっていない自民党「憲法は権力者を縛るもの」だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.29】:憲法記念日に向けて(3)“憲法”が何かわかっていない自民党「憲法は権力者を縛るもの」だ

 40年も前から自民党の改憲論議と付き合ってきた私が、一番悩まされた点は、自民党の改憲マニアたちが「憲法とは何であるか?」を正しく理解しようとしないことである。

 英米の法律家なら、誰でも座右に置いているブラック法学辞典(BLACK's LAW DICTIONARY)の憲法(constitution)の項には次のように書かれている。

<picture>小林節慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ</picture>

   小林節 慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ

 「憲法は、国家の基本法で、国家生活において従うべき基本原則を定め、政府を組織し、政府に権限を配分しかつそれらを限界付けており、全ての権威は国民に由来する。憲法に反する政府の行為は全て無効である」

 要するに、憲法は、主権者国民の最高意思として、国家権力(つまり政治家以下の公務員)を拘束する規範で、憲法に反する公の行為は全て無効である。これが世界の常識で、それ以外の「憲法」などあるはずがない。

 にもかかわらず、自民党の改憲論者の中には、上記の定義の「一部だけ」を取り上げて、憲法には、国家に「授権」するものと国家権力を「制限」するものがあり、「自分は前者の憲法観を採る」などと議場等で公言する者も多い。つまり、憲法は単に「権力者に権力を授けるもの」だと言う。

 だから、自民党の2012年改憲草案は、「国民が憲法を尊重し」「権力者がその憲法を擁護する」(102条)などと書いてあり、その国民が守るべき憲法で、国民に日の丸と君が代を尊重しろと命じ(3条)、国防に協力することを求めている(9条の3)。

 これでは、憲法が国民を縛る刑法と同じで、実質的には憲法ではなくなってしまう。

 今、国会では、自民、維新、国民民主の改憲派3党で3分の2以上の議席がある。しかも、衆参の憲法審査会で着実に議論を重ねている。だから、改憲の発議が国会の専権である(憲法96条)以上、今年、国会が改憲発議を決定することは十分にあり得る。

 しかし、最終的な決定権は国民投票に委ねられている(同96条)。

 憲法による拘束を煩わしいと感じている権力者たちが提案してくる改憲案は、前述のように「改正」と称する「改悪」である可能性がある。だから、主権者国民としては、賢明に対応すべき時が迫っている。

◆本コラム 待望の書籍化! 大好評につき4刷決定(Kindle版もあります)

『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

小林節
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 ■小林節慶応 大名誉教授

 1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ここがおかしい 小林節が斬る!」】  2023年04月29日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.28】:憲法記念日に向けて(2)専守防衛の担い手・自衛隊に対する共通の理解が必要だ

2023-05-13 06:30:10 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.28】:憲法記念日に向けて(2)専守防衛の担い手・自衛隊に対する共通の理解が必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.28】:憲法記念日に向けて(2)専守防衛の担い手・自衛隊に対する共通の理解が必要だ

 私は、40年以上も憲法論議に深く関わってきたが、いつも不思議に思うことに、あの有名な9条について、主権者国民の間に共通の理解が存在していない。

 1項について、ある者は「一切の戦争を放棄した」のだから、もはや戦争は起こらないと言う。しかし他の者は、「国際紛争を解決する手段としての戦争」つまり国際法の用語としての「侵略戦争」のみを放棄しているのだから、自衛戦争はできると主張する。

 2項について、ある者は、「戦力」を持たないのだから、自衛隊は違憲だと言う。しかし他の者は、自衛のための「必要・最小限」を超えていないから、自衛隊は合憲だと言う。

 いずれにしても、まるで言葉の遊びのようで、素直に腑に落ちる話ではない。しかし、国の存立に関わる防衛政策に関する国民的合意の証しになる憲法条文について、共通の理解が存在しないことは、全ての国民にとって大変危険なことである。

<picture>小林節慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ</picture>

   小林節 慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ

 9条を改憲の対象にするか否か以前の問題として、9条の意味に関する国民的合意の存在は不可欠であろう。参考までに、私は、9条の意味を次のように考えている。

 まず1項は、パリ不戦条約(1928年)以来の国際慣行として、「国際紛争を解決する手段としての戦争」つまり「侵略戦争」のみを禁じている。だから、そこでは「自衛戦争」は留保されている。

 ところが2項で、国際法上の「戦争」を行う条件である「交戦権」と「戦力つまり軍隊の類い」が禁じられているために、日本は、海外派兵が不可避な「戦争」は自衛のためであれ許されていない。

 では、現に存在する「自衛隊」は何なのか? それは65条の行政権に根拠のある「軍隊の如き、実力を備えた第二警察」である。

 つまり、わが国から他国を攻めることはしないと9条で宣言しても、他国がわが国を攻める意思を全て封じることはできない。そして、不幸にして他国軍がわが国に攻め込んできた場合には、国内と公海・公空のみを戦場として、その敵軍を排除する役割を自衛隊が担っていることになる。 =つづく

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 1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

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【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.27】:憲法記念日に向けて(1)「緊急事態条項」は不必要だ 現行憲法の下で法律を整備すれば済む話

2023-05-13 06:30:00 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.27】:憲法記念日に向けて(1)「緊急事態条項」は不必要だ 現行憲法の下で法律を整備すれば済む話

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ここがおかしい 小林節が斬る!・04.27】:憲法記念日に向けて(1)「緊急事態条項」は不必要だ 現行憲法の下で法律を整備すれば済む話

 1955(昭和30)年に結党して以来、自民党は憲法改正を党是としてきた。その一番の狙いは9条の改正である。2012年に党議決定された改正草案に明記されているように、自衛「戦争」と「国防軍」を認めて、普通の軍事大国になることを目指している。

 しかし、9条改憲には国民の抵抗感が強いため、まずは国民の過半数が賛成しやすいものから「お試し改憲」をということで「緊急事態条項の新設」に焦点が移った感がある。

 それに対して維新と国民民主が同調する動きを示したために、今年は史上初の改憲国民投票が提案される可能性がある。

<picture>小林節慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ</picture>

   小林節 慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ

 しかし、この提案は後述するように全く不必要なもので、こんなもののために800億円もの国費を使って、2カ月以上もの公論のために政治的空白をつくることは無駄である。

 自民党の広報資料は次のように説明している。

 「有事や大規模災害の時に国民の生命、財産を保護することは国家の最も重要な役割である。しかし、日本にはそのための規定がないから、それを憲法に明記しよう」

  しかし、現行憲法は、12条と13条で、人権も公共の福祉に譲らなければならない場合がある旨を明記している。だから、非常時(戦争、大災害、パンデミック)には、国家の機能を維持するという「公共の福祉」のために、人権を制約できる法律(国民保護法、災害対策基本法、感染症対策基本法等)が現に整備されている。だから、改憲を行う必要などない。

 もちろん、東日本大震災、コロナ・パンデミック等の実体験に照らしてそれらの法律を整備する必要は常にある。

 自民党が2012年に党議決定した緊急事態条項は要するに次のものである。

「首相が緊急事態を宣言したら、首相は、本務の行政権に加えて、国会から立法権と財政処分権を奪い、地方自治体に対する命令権も持つ。さらに、私たち国民は公の命令に従う義務を負う」

 まるで首相に対する全権委任法である。

 このように、自民党が考えている緊急事態条項は、現実に不必要なだけでなく、極めて危険なものでもある。つまり、提案されてきたら否決する以外にない代物である。 (つづく)

◆本コラム 待望の書籍化! 大好評につき4刷決定(Kindle版もあります)

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 1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ここがおかしい 小林節が斬る!」】  2023年04月27日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・05.05】:改憲派が護憲派が気勢も、国民は冷静なのだ

2023-05-12 07:40:10 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【政界地獄耳・05.05】:改憲派が護憲派が気勢も、国民は冷静なのだ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・05.05】:改憲派が護憲派が気勢も、国民は冷静なのだ

 ★憲法記念日のあれこれがニュースになっているが、首相は2月26日の自民党大会で「時代は憲法の早期改正を求めている」という。3日に都内で開かれた第25回公開憲法フォーラム「急げ、憲法に国防条項・緊急事態条項の明記を!」にビデオメッセージを寄せた首相は「時代は憲法の早期改正を求めている」と再度訴え、「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、自衛隊を憲法にしっかりと位置づけることは、極めて重要なこと」とし、「憲法改正の主役は国民だ」「憲法改正に向けた機運をこれまで以上に高めることが重要」とした。そもそも内閣の総理が改憲に積極的な対応に国民が慣れてしまっただけで、立場としてはおかしなことだと冷静に見るべきだ。

 ★また民間憲法臨調代表・桜井よしこが「憲法改正について、はるかにわれわれ国民の方が前を走っていないか。政治は国民の意思をもっと吸い上げてほしい」とした。一方、護憲派市民団体主催の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」で共産党委員長・志位和夫は「岸田政権の大軍拡ストップ、この一点で立場の違いを超えて、国民的大運動を起こそう」と訴えた。また立憲民主党代表代行・西村智奈美は「憲法を守らない政権に改憲を発議する資格はない」とした。

 ★1日の共同通信社の世論調査では憲法改正の機運は国民の間で「高まっていない」が「どちらかといえば」を含め計71%という。国会での改憲議論を「急ぐ必要がある」は49%、「急ぐ必要はない」は48%で賛否が拮抗(きっこう)する。恒例行事の政治ビジネスのように改憲派同士が集まり、護憲派同士が集まって気勢を上げている限りこの数字は上がったり下がったりを繰り返すが議論は進まない。「国難迫る」と安全保障でおどかして改憲しても本当の憲法改正にはならないし、志位の言うように「大軍拡ストップ、この一点」でまとまったところで変化は生まれない。国民は桜井の言うほど前を走るどころか冷静だ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年05月05日  07:43:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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