【社説①・12.28】:サイバー攻撃 重要インフラの防御体制築け
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.28】:サイバー攻撃 重要インフラの防御体制築け
航空会社と銀行という重要インフラが、年の瀬に相次いでサイバー攻撃を受けた。誰が、何のために仕掛けたのか。実態の解明とともに、防御体制の整備を急がねばならない。
日本航空と三菱UFJ銀行が26日、それぞれサイバー攻撃を受けたと発表した。いずれも、大量のデータを送りつけて、システムをマヒさせる「DDoS攻撃」を受けたとみられている。
日航では、各地の空港の手荷物預かりシステムなどに不具合が起き、国内線・国際線に多くの遅れが出たほか、一部の便が欠航を余儀なくされた。三菱UFJ銀行ではインターネットバンキングにログインしにくい状態となった。
日航によると、運航システムは影響を受けず、安全に支障はなかったという。三菱UFJ銀行も今のところ個人データの流出などは確認されていないそうだ。
とはいえ、基幹インフラが標的にされたことは、国民生活への脅威である。同じような攻撃が、いつまたあるかわからない。
特に年末年始は、人の移動が多く、混乱が広がりやすい。一方で企業の体制は手薄になりがちだ。万一、攻撃を受けた場合、適切に対処できる体制が整っているか、各企業で点検する必要がある。
警視庁は、電子計算機損壊等業務妨害容疑を視野に捜査を始めた。まずは通信記録を解析し、発信元を特定することが重要だ。どのような組織が関与しているのか、目的は何かなど、犯罪の構図を解明することが欠かせない。
国内では近年、DDoS攻撃のほか、機密データを暗号化して復旧の対価を求める身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」の被害も多発している。病院や港湾が標的となり、業務が一時的に立ち行かなくなるという影響が出た。
攻撃の多くは海外から行われる。警察は各国の捜査機関と連携し、摘発を進めてもらいたい。
サイバー攻撃の脅威に対しては、企業の対策や捜査力の強化だけでは対応しきれない状況になっている。攻撃を受けてから対処する方法にも限界があろう。
政府は、通信を監視し、重大な攻撃の予兆があった場合は、発信元のサーバーに侵入して無害化する「能動的サイバー防御」の導入を検討している。今回標的となった日航と三菱UFJ銀行は、この対象事業者となる方向だ。
攻撃の予兆を素早く把握できなければ「能動的」防御につながらない。今回は対処可能だったのかを調べ、今後に生かすべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。