【社説・12.29】:休職教員の増加 教育環境の抜本的改善を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.29】:休職教員の増加 教育環境の抜本的改善を
長時間労働や業務過多など、現場が抱える課題がひずみとなって表れたと捉えるべきだろう。教育環境の抜本的な改善を図らなければ問題は解決しない。
全国の公立の小中高校と特別支援学校で、2023年度に精神疾患を理由に休職した教員が7千人を超え、3年連続で過去最多となったことが分かった。
文部科学省によると、主な要因として「児童生徒への指導に関すること」「職場の対人関係」などが挙げられるという。
休職者は若い年齢層に多い。年代別では30代が最多で、各年代の在職者数に占める割合では20代が最も高い。23年度に採用後1年未満で退職した教員は過去最多の788人に上った。3人に1人が精神疾患を理由としている。
希望を胸に教職に就きながら、子どもの成長に立ち会うやりがいを見いだせないまま、心を病んで辞めていく。そうした現場で次代を担う子どもたちが学んでいる現状を、深く憂慮せざるを得ない。
教員を取り巻く課題として、業務の多さとそれに伴う長時間労働、残業が反映されない給与の仕組みなどが指摘される。
23年度の月平均残業時間で、特に中学校では国が定める上限45時間を超えた教員が4割を超えた。専門家には「地域や家庭が担うべき役割も引き受け、限界を迎えている」と危惧する声もある。働き方改革は急務である。
政府は対策に乗り出し、26年度以降、公立中学校の1学級当たりの上限人数を、現在の40人から35人に順次引き下げることを決めた。小学校と同水準にし、教員の負担軽減を図る。
今後5年間で平均残業時間を3割減らし、月30時間程度に抑える目標も掲げた。理不尽な苦情も寄せる保護者対応に、校長OBを当たらせることも検討する。
教員に残業代の代わりに支給する「教職調整額」は、1972年に定めた「基本給の4%」を2025年度から段階的に引き上げ、30年度に10%へ増額する。
課題の根底には教員のなり手不足がある。25日の中教審では、多様な人材を教職に呼び込むため、専門性を持つ社会人に特別免許を与える制度の検討も諮問された。
県内では12月1日時点で公立校では70人の欠員が生じた。小学校教員の採用数は過去5年、いずれも募集人数を割り込んでいる。
県教委は採用試験の柔軟化に踏み切り、大学3年生を対象に試験を早める特別選考を実施した。25年度採用に向けて今年11月に初の追加募集をしたほか、26年度採用では従来の7月に加え、5月にも採用試験を行う。
国や地方自治体は現場の声を丁寧にくみ、着実に教員の処遇改善や確保策を進めてもらいたい。教育現場の危機的状況を共有し、社会で支える態勢も考えたい。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月29日 06:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。