路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

2024-05-20 07:23:20 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

 東京新聞が16日に掲載した社説「報道の自由度 権力監視の決意新たに」に対し、読者から激励の声をいただきました。うれしい限りです。

 
 社説の内容は、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した2024年の報道自由度ランキング=地図は自由度の一覧=で、日本が180カ国・地域中の70位になったことを受け「報道の自由度の順位が低いことは謙虚に受け止めつつ、報道・言論機関として権力監視の役割を誠実に果たし、権力の圧力には屈しないとの決意を新たにしたい」というものです。
 
 これに対し、読者から「全くその通り。今後も歴史の検証に堪える記事を期待する」「日本でも報道の自由が脅かされている。報道の自由を守るためにしっかり主張しているので応援したい」との意見や要望をいただきました。
 
 報道の自由度は旧民主党政権当時の10年、11位に上昇した後、下落していますが、私たちは順位にかかわらず、報道の自由が失われていると感じたことはありません。
 
 権力側の動きは常に監視、警戒する必要があるものの、本紙の論説委員は欧米メディアが問題視する記者クラブに頼っていませんし、報道への圧力が強まったとされる第2次安倍晋三政権以降も自由に主張してきたからです。
 むしろ旧民主党政権は発足当初、次官らの記者会見を禁止するなど政府の情報発信を統制しましたので、報道の自由度が11位と高かったことに違和感を覚えます。
 
 読者からは「新聞は世論を代弁して、しっかり発言してほしい。政府や米国だけでなく、野党や中国、ロシアに対しても堂々と意見を言ってほしい」との声も届きます。
 
 私たちは社説を書くに当たり「権力に厳しく、人に優しく」という心構えで臨んでいます。日ごろの自民党政権に対する厳しい論調は、たとえ政権が代わろうが、相手が外国政府であろうが、変わることはありません。 (と)
 
 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】  2024年05月18日  07:12:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

2024-01-05 07:15:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 『政府に芸能や音楽業界をしっかり監督し、指導するような監督官庁がないことでセクハラが横行しているとの指摘もある』(望月衣塑子・東京新聞社会部記者)

<picture>望月衣塑子氏</picture>

              望月衣塑子氏

               ◇  ◇  ◇

 これは12月27日の官房長官記者会見で、望月氏が質問としてあげた彼女の意見。性加害をしたという噂のある芸人の(某週刊誌にスクープされた)、名前を出してこういった。

 望月さんは、リベラルや左派サイドの、目立つインフルエンサーでもある。あたしは彼女とはリベラルの仲間だと思っているし、彼女はリベラル寄りのニュースを広く拡散してくれる人。だからこそ、もうはっきりという。

 望月さん、なんでもかんでも国を責めるのが正義で、そしてそれがリベラルのカッコいい姿だと思ってません? この世の性加害をなくしたいという気持ちはわかる。しかし、性というデリケートなことに、国の監視や管理を求めてはいけない。

 この世のほとんどの性は自然に営まれる。銃の乱射事件が起こった時に、国に銃の規制を求めるのとは違う。

 性は自由なもの。自由であるべき性に対し国の干渉を許してしまえば、あたしたちの内心の自由も侵されることになる。性に完璧や潔癖を求めることは、差別にもつながってしまうだろう。

 望月さんや望月さんをリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 人に優しく、寛容なリベラルであったら、推定無罪を貫くべきだ。罪が確定できるまで、国会で個人の名をあげつらって糾弾するのは違う。

 芸能や音楽業界の国の監督とは、治安維持法の特高警察のようなものか? リベラルが、窮屈な世の中を望むのか?

 国の関与で早急に性犯罪のゼロを目指すことは、我々の大切なものを壊す危険につながる。リベラルこそ死守すべき、個人の自由だ。

 それは、性被害をなくすための努力を放棄することではない。確定した罪に対し相応な罰があり、被害者も救済できる、それがあたしの望む世だ。でもって、性の自由もね!

室井佑月
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 ■室井佑月 作家

 1970年、青森県生まれ。銀座ホステス、モデル、レースクイーンなどを経て97年に作家デビュー。TBS系「ひるおび!」木曜レギュラーほか各局の情報番組に出演中。著書に「ママの神様」(講談社)、「ラブ ファイアー」(集英社文庫)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」」】  2024年01月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を

2023-04-11 07:40:00 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を 

 ★どこぞのこたつ記事は2日、TBS系「サンデーモーニング」で前法大総長・田中優子防衛費を「軍事費」と表現したことがニュースだという。ちなみにこたつ記事とは取材する直接取材せず、テレビやラジオ、ネットで知ったことをそのまま書くことで、こたつに入りながらでも書けることからその名がついたという。話を戻すと世界の軍事費ランキングに米・中・露・印などと並んで日本もランクインしているが、その時に我が国の予算は防衛費だと表記を変えるメディアはいない。ここ数年、メディアは自ら適正適切言葉を使わず、和らげる表現意図的に使ってきた。それでいて使い分けてもいる。

 ★今や犯罪抑止のために不可欠な防犯カメラ。しかし、運用当初は監視カメラとメディアも表記していた。いつの間にか印象が180度変わる表現が当たり前になった。しかし、その役割はいまだ監視が目的に変わりはない。同番組では先月26日にもキャスターがどの番組でも使いたがる「卒業」は使わず「降板」報告をした。これもこたつ記事になったが言葉適切使い方だ。売春を援助交際やパパ活と言い換えたとしても、本質は変わらないことを承知で、新しい言葉やぼんやりとさせる言葉で和らげようとするやり方は社会には存在するだろう。だが、それに引きずられるメディアの表記はいかがなものか。

 ★本来、メディアはこの言い換えに長年腐心してきた。言葉狩りにならぬように、しかしながら差別を助長しないように注意を払い、表現の自由を守ろうとしてきた。だが昨今の言い換えは正確性に欠け、あいまいに拍車をかけるだけのものや、事の本質を避けようとするために言い換えられる場合もある。そしてそれらが政治の表現をあいまいにし、本質論を遠ざけた温床になってはいまいか。点検を急ぐべきだ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年04月04日  07:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

2023-02-04 06:20:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

 共同通信の記事によると、防衛省は人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したとのこと。複数の政府関係者への取材で判明したという。

<picture>AIで国民心理をコントロール(防衛省)/(C)日刊ゲンダイ</picture>

 AIで国民心理をコントロール(防衛省)/(C)日刊ゲンダイ

 インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭するのが目的だという。

 こうした報道に対し、防衛省は「全くの事実誤認であり、防衛省として、国内世論を特定の方向に誘導することを目的とした取り組みを行うことはありえない」と否定したが、そりゃそうだよね。

 「これから国民の洗脳工作を行います」などと言うわけがない。防衛省は「情報戦対応」も含めた体制整備を実施するとも述べていたので、これまでやってきた世論工作に積極的にAIの技術を活用するということだろう。

 例によってネトウヨ「論壇人」の類いが、この先、小遣いをもらえるとでも思っているのか、「共同通信による世論誘導だ」などと騒いでいたが、バカのふりをしているのか本物のバカなのか。

 わが国において世論工作が続けられているのは公然の事実である。元官房長官の野中広務は、官房機密費を使って政治評論家やジャーナリストにカネを配っていたことを証言している。

 「インフルエンサー」に世論誘導させるのもお馴染みの手口。これを露骨な形でやり始めたのが小泉純一郎政権だった。2005年のいわゆる郵政選挙の際、自民党と内閣府が広告会社につくらせた企画書には竹中平蔵と著名人を対談させることにより世論を誘導する戦略が描かれている。

 そして実際、竹中とタレントのテリー伊藤による政府広報「郵政民営化ってそうだったんだ通信」が新聞折り込みチラシとして全国に撒かれた。

 防衛予算の大幅増額のためにユーチューバーらに「厳しい安全保障環境」について説明させる計画の件では、防衛相(当時)の岸信夫が「インフルエンサーと呼ばれる方々に、まず理解をしていただけるような説明を行うことは重要だ」と述べ、計画の存在を事実上認めている。

 プロパガンダによりバカを洗脳し動員する悪質な連中が権力を握った結果が今の日本の惨状である。 

 

◆本コラム待望の書籍化!重版決定!kindle版も発売中です。
それでもバカとは戦え」(日刊現代・講談社 1430円)

 適菜収

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 ■適菜収 作家

 近著に「日本人は豚になる」「ナショナリズムを理解できないバカ」など。著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年12月24日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年12月17日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

2023-02-04 06:20:40 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

 作家・ジャーナリストを名乗る門田隆将という人物がいる。現実と妄想の区別がつかないので、自分の願望に沿うデマを垂れ流し、整合性がなくなれば陰謀論に逃げ込む。

 森友学園の決裁文書改ざん問題を苦に自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんを巡る記事で名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之議員、杉尾秀哉議員が産経新聞社と門田に計880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は計220万円の支払いを命じた。

<picture>東京地裁は、門田隆将氏に支払いを命じる判決(C)日刊ゲンダイ</picture>

 東京地裁は、門田隆将氏に支払いを命じる判決(C)日刊ゲンダイ

 問題の記事には「(両議員は)財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺は翌日だった」とある。両議員が訪れたのは東京の本省で、自殺した職員には面会していない。

 判決は、「当該」との単語が使われ、連続した2文で構成されたこの文章を読めば「読者は、両議員が自殺前日にこの職員を集団的に批判、問責し、自殺の要因になったと理解する」と判断。被告側の「『つるし上げ』の対象は自殺した職員ではないと容易に理解できる」という主張を退けた。

 その後、門田は謝罪するどころか〈唖然…左傾化し正義を捨てた日本の司法〉とツイート。意味不明。そもそも門田は過去に大量のデマを垂れ流してきたいわくつきの人物である。

 今年9月、玉城デニーが沖縄県知事選に出馬した際、門田は〈正体を隠す事なく玉城知事が「誓いましょう!この選挙で玉城知事と共に、日本政府から、アメリカから、沖縄を取り戻す!」と独立宣言〉とツイート。しかし門田が引用した動画は2018年9月に玉城が総決起大会で米軍基地に反対した発言を切り取ったものであり、独立を唱えたものではなかった。

 ネット上に転がっている陰謀論を真に受けたのかは知らないが、米大統領選ではバイデンが不正投票に関わったと決めつけた。

 なお、毎日新聞は事実誤認を拡散させた人物として門田の名前を挙げている。愛知県知事リコール署名不正問題に関しても門田は署名のルールに関するデマを流し、江川紹子から〈「ジャーナリスト」を名乗る者が、簡単に確かめられる事実について、虚偽情報を広げる不幸〉と批判された。安倍晋三は統一教会の天敵だったという荒唐無稽な話も繰り返しているが、デマ屋は表舞台から退場すべきだ。(文中敬称略) 

  

◆本コラム待望の書籍化!重版決定!kindle版も発売中です。
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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年11月19日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

2023-02-04 06:20:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

 独立行政法人国民生活センターの資料によると、全国の消費生活センターなどには、占いサイトやアプリに関する相談が年間1000件以上寄せられており、2019年度以降、増加しているとのこと。

<picture>公共の電波で伝えるものでは…</picture>

      公共の電波で伝えるものでは…

 相談事例を見ると〈「必ず宝くじの高額当選に導く」と言われたがいつまで経っても結果が出ない〉〈無料鑑定で三つの「徳」を授けてもらえると言われたが、無料鑑定期間を過ぎても最後の一つを授かることができず、高額なお金を支払ってしまった〉などとばかばかしいものが並んでいたが笑ってはいられない。

 人間は疲れたり追い込まれると判断能力が低下する。こうした人間の一部はカルトのターゲットになり、法外な値段の印鑑や壺を買ってしまったりする。

 アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した「割れ窓理論」というものがある。割れた窓を放置しておくと、誰も地域の環境に注意を払っていないというサインになり、犯罪が増加する。ニューヨークでは、この理論に基づき、徹底的に地下鉄の落書きを消した結果、凶悪犯罪が激減した。

 オウム真理教や統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のようなカルトが暴走する背景にも、いかがわしいものを許容・軽視する社会の空気があると思う。日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日といったキー局が朝の情報番組で垂れ流す星座占いがある。

 各局のウェブサイトで目についたものを適当に拾ってみた。みずがめ座「段取り不足が今日のネック。なんとかなる」、おうし座「行動範囲を広げるとチャンスも同時に拡大。理想のタイプの人にも出会えます」、おひつじ座「問題解決のヒントをGET 困ったら友達に相談しよう ミントティーを飲む」……。

 占いなんて迷信だなどと、子供じみたことを言いたいのではない。理性や合理により、神や仏、人知を超えたものを裁断することの愚かさを知るのが大人でもある。しかし12分の1の国民にミントティーを薦めるのは、そういう次元の話ではない。これは人間の尊厳に対する侮蔑である。公共の電波をつかってこんなものを垂れ流して恥を知らないのか。

 「嫌なら見なければいい」「娯楽なんだから目くじらを立てるな」「法的に問題があるわけではない」──。こうした訳知りふうの意見こそが、割れた窓の亀裂を広げるのだ。

  

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【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮

2022-12-03 08:35:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮 

 ★11月29日午後4時半ごろ、東京・八王子市の東京都立大学南大沢キャンパスで、同大教授で社会学者・宮台真司が男に刃物で切り付けられ、男は現在も逃走している。報道を総合すると男は20代から30代で、身長180センチくらい、髪は短く、がっちりとした体格で、黒っぽいジャンパーに黒いズボン姿。大学構内で宮台を待ち伏せしていた可能性が高いが宮台は「面識がない」という男に後ろから頭を殴られ、その後、刃物で首などを複数回切られた模様だ。

 ★宮台とビデオニュースで番組を長年続けているビデオジャーナリスト・神保哲生のツイッターによれば「宮台さんの件で病院に来ています。命に別条がないことは病院で確認していますが、方々を切られているので処置に時間がかかっています」「宮台さんは先程、手術が無事終わり、今ご家族が面会しています。たくさん縫わなければならず4時間の大変な手術だったようですが、今は意識もありご家族とは普通に会話をされています」と命に別条はないものの夕暮れの大学構内、刃物で切り付けながら逃走した犯人を警視庁は殺人未遂容疑で行方を追っている。

 ★事件が怨恨(えんこん)なのか言論封殺なのか動機は分からないが、アカデミズムに対しての凶行は言論を暴力で封じるという意味では7月の元首相・安倍晋三襲撃以来のテロリズムといえる。言論界やメディアで宮台と関わりのある人たちの心配する声もさることながら、犯人が逃走していることが不安を駆り立てる。事件の背景は不明でも自由に発言が出来なくなることのマイナスは社会を萎縮させ、結果的に暴力が発言を封じることにほかならず、言論弾圧は政治的背景ばかりで起こるわけではないものの、それが政治的に利用される場合も、わが国100年の言論封殺の幾多の事件の歴史が証明している。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年12月01日  08:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

2022-11-17 07:02:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

 ウクライナ東部からロシアが侵攻を始めて9カ月以上となる。この状況を伝える報道に問題はないか? それを考えるシンポジウムが11月1日にあり私も参加した。会場からも質問が次々に出る活発なやりとりに主催団体からも「やって良かった」との言葉が聞かれた。

 しかし数日後、その主催団体のメンバーの一人が私を名指しして「ウクライナ関係でいいかげんなことを吹聴した」と中傷する内容を周囲に送っていた。シンポジウムで私が語ったのは根拠が明確でない国際報道の問題点であって、知りもしないウクライナの状況についてではない。

 悪質な流言だが、そのメンバーは通信社で国際報道に従事していた元記者ということだ。それに私は驚かない。国際報道には、そうした根拠不明な内容を報じるケースが散見されるというのがシンポジウムでの私の発言の趣旨だった。例えばウクライナ発の情報であればゼレンスキー大統領のSNS上の発言以外は、現地の報道や欧米の報道に依拠することが多い。それをあたかも自社が確認した内容のように報じる点に危険がある。それゆえ、情報源の明示が重要になるということを指摘したものだ。さきの米中間選挙でも「トランプ派善戦」といった報道の混乱が見られるが、確認していない現地報道に依拠する粗さに原因を見る。

<picture>普天間基地(C)日刊ゲンダイ</picture>

      普天間基地(C)日刊ゲンダイ

 しかし国内報道でも、沖縄をめぐる報道にはなぜかそうした粗さが見られる。例えば普天間基地の辺野古移設。安倍元首相は何度も「辺野古移設が唯一の選択肢」と繰り返し、それをメディアは報じ続けた。それは菅政権、岸田政権でも踏襲された。私は岸田首相が国会の演説でそれに言及した時に、その言説をファクトチェックした。そして、他の選択肢が日米防衛関係者から既に提案されている事実を紹介し、「誤り」と判定した。その後、岸田首相は「唯一の選択肢という方針」に表現を変えている。それは小欄で紹介したが、「方針」は正しい。事実は変更できないが、方針は変更が可能だ。

 小欄は今回で終わる。第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。最後も沖縄で終わりたい。鳩山由紀夫氏が首相として普天間の県外移設に言及して沖縄入りした日に、私は自民党幹部と那覇市内で会っていた。幹部は私に、「自民党の若手が沖縄に米軍基地があることを当然視するような発言をしているのを見ると腹が立つことはある」と語った。この話はいろいろなところで書いているが、常に匿名にしてきた。実は、その幹部とは、西銘恒三郎前沖縄北方担当大臣だ。沖縄での記者時代、よく飲み歌い、そして語り合った。沖縄国際大学の野添文彬准教授が著書「沖縄県知事」(新潮選書)で「日本の中での地位向上を目指しつつも、沖縄の伝統や歴史を重視し、その利益追求のためには日米両政府とも対峙する」と評した沖縄の保守政治は、西銘氏の父の順治氏が示したものだ。西銘氏にはぜひ、真の沖縄の保守政治家として党を離れて沖縄のことを考えて欲しい。その願いを込めて、最後の回としたい。 (おわり)

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月16日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

2022-11-17 07:02:40 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

 今年8月、元NHK記者が死亡した。その葬儀に贈られた花を参列者は複雑な思いで見た。送り主が森喜朗元首相だったからだ。

 私は2021年に、「指南書問題」という記事を書いた。その詳細は「NHK記者がNHKを取材した」(電子書籍)で確認していただきたいが、問題発言で政権崩壊の危機にあった当時の森首相に危機を切り抜けるための指南書を記者が書いていたというものだ。当時は誰かは不明とされたが、私の取材でそれがNHKの当時の首相官邸の記者だったことがわかった。

<picture>健全な公共放送になる日は来るのだろうか…(C)日刊ゲンダイ</picture>

 健全な公共放送になる日は来るのだろうか…(C)日刊ゲンダイ

 葬儀は指南書を書いたとされる元記者のものだった。実は当時から指南書を書いたのはNHKの記者だとの指摘はあった。しかしNHKは当時の海老沢勝二会長がそれを否定。私の記事に対しても、NHKは当時の会長答弁を繰り返した。私は記事で、NHKにその検証を求めた。それがNHKの再生に不可欠だと考えたからだ。しかし当事者の死で、その機会は失われた。

 本来、報道機関とは何か問題が起きれば事実を解明すべき存在だ。では、NHKは自らに不都合な問題が起きた時、それに向き合ってきただろうか? 私にはその印象はない。どちらかというと、世間が忘れるのを待つというのがその印象だ。そのひとつがこの指南書問題であり、もうひとつが小欄で何度も取り上げている佐戸未和さんの過労死の問題だ。小欄も残すところ2回となった今回、やはりこの問題を取り上げないわけにはいかない。

 その未和さんの勤務先だった東京都庁の記者クラブでキャップとして勤務していた記者も過労死している。NHKはその際、「再び労災認定を受けたことは痛恨の極みであり、大変重く受け止めています」とのコメントを出しているが、そもそもNHKは未和さんの過労死を教訓にしていない。そう断言できるのは、未和さんの過労死について調査報告書さえ存在しないからだ。その結果、この問題を小欄で取り上げている私にNHKの現役の職員から「あれは持病によるもので過労死ではない。遺族がうるさいのでNHKが過労死にしてあげた」などとする指摘が届いている。もちろん、これは事実ではない。過労死と認定した労働基準監督署は未和さんの健康診断のデータも確認した上で判断を下している。また、NHKが未和さんの情報を積極的に労基署に提出したという事実もない。

 実はNHKには在職中に職員が死亡するケースが少なくない。2017年までの10年間で、91人が在職中に死亡している。多い年で12人、少ない年でも6人が死亡している。それらの中で労基署が調査したら過労死と認定されるケースはあるのではないか? 未和さんの過労死についての調査報告書がない事実が、そうした疑念を抱かせる。

 未和さんのご遺族の要望は、調査報告書の作成と健全な公共放送の運営だ。これは冒頭の指南書問題にも通じる。世間が忘れるのを待つという姿勢を変えない限り、NHKが健全な公共放送になる日は来ない。NHKは現在、改革を声高に叫んでいる。しかし自らに厳しい目を向けない限り、その体質は変わらないだろう。 

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月09日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

2022-11-17 07:02:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

  10月11日に報じられたCNNのバイデン米大統領の独占インタビュー。「プーチン氏が何を考えているのかはわからないが、彼は(ロシア軍は)ウクライナから撤退できる。そして恐らく彼は権力の座にとどまれる。『ウクライナ侵攻の目的を達した。ロシア軍が撤退する時期だ』と宣言して」と語った。

<picture>2018年に行われた米朝首脳会談(C)ロイター</picture>

  2018年に行われた米朝首脳会談(C)ロイター

 バイデン氏の発言をフォローしている私には、それは大きな変化と感じられる。これまでのバイデン氏の発言はプーチン氏の失脚を目指していたと考えられるからだ。「Go get him(やっちまえ)」と語った一般教書演説や、「彼はそのポストに残れない」といった発言とは明らかに異なる。プーチン氏の失脚を狙わずに、ウクライナからのロシア軍の撤退を目指す方向に舵を切ったということだろう。ある意味で現実的な選択とも言える。G7のオンライン会議の直後のインタビューだけに、独仏首脳とのやりとりの中でバイデン氏が方向を修正したということだろう。

 私は「国際ジャーナリスト」と紹介されることが多い。NHKの社会部で事件記者として過ごした私が、そう紹介されるきっかけはトランプ前米大統領だ。トランプ氏の言動をアメリカでフォローしていた私が最初にテレビへの出演を求められたのはトランプ氏が(北)朝鮮に対して「炎と怒りで対応する」と語った直後だった。(北)朝鮮の「専門家」が「米朝対決」とあおる中で、番組で私は、トランプ氏は金正恩氏に親近感を持っており、米朝会談もあり得ると予想した。まだ米朝会談の噂さえない2017年の8月のことだった。

 また、最初の米朝会談を前にトランプ氏が金正恩氏を屈服させると力説する「専門家」を前に、「トランプ氏が朝鮮半島情勢や東アジアの安全保障に関する明確な方針を語った事実はない」と話し、それ故に会談で成果は望めないと指摘した。「専門家」から、「あなたはトランプ大統領を見誤っています」と言われたが、さて、その「専門家」はその言動をどう総括しているのか。しかし、ここでそれを書きたいわけではない。

 結果的に私が言った通りになっている状況は、別にヤマをはったわけでも「逆張り」をしたわけでもない。単純に首脳の言動を追って判断しただけのことだ。トランプ氏、バイデン氏の公式な発言は確認することができる。それをフォローし、整理することで、米首脳の考えを一定程度、分析することが可能だ。

 実はこれは、アメリカの大学で同僚だった元CIAの情報分析官が語ったことにヒントを得ている。その同僚によると、CIAの仕事の9割は首脳の発言の分析だったという。その発言とは、傍受するなどの非公式なものではなく、誰でも確認できる公式のものだという。

 残念ながら、新聞、放送の記者は、公式発言をフォローするという取り組みに消極的だ。誰も知らない極秘情報の入手に努める傾向が強いということもあるが、成果主義で地味で根気のいる作業が敬遠される部分もある。当然、私はこの地味な作業を今後も続けていく。

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・10.26】:テレ朝・玉川徹氏の“電通発言”は放送メディア研究の対象として極めて興味深い

2022-11-17 07:02:20 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・10.26】:テレ朝・玉川徹氏の“電通発言”は放送メディア研究の対象として極めて興味深い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・10.26】:テレ朝・玉川徹氏の“電通発言”は放送メディア研究の対象として極めて興味深い

 10月19日のテレビ朝日の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」。玉川徹氏は「謹慎の10日間、私は事実確認の大切さ、テレビで発言することの責任の重さを考え続けました」と語り、取材した内容を伝える形で番組に出演すると自身の今後について説明した。

<picture>テレビ朝日社員の玉川徹氏(C)日刊ゲンダイ</picture>

  テレビ朝日社員の玉川徹氏(C)日刊ゲンダイ

 これで玉川氏が国葬をめぐって誤った発言をしたとして騒ぎとなった問題は区切りをつけた形となった。この問題では、「謹慎では甘い」と降板を求める側と、その必要はないと主張する側とで二分する騒ぎとなった。顕著だったのは、前者は国葬に賛成する人たち、後者は国葬に反対する人たちという二項対立が貫徹されたことだ。

 例えば、国葬に反対する人でも玉川氏の発言に批判的な人がいてもいいし、その逆があってもいいと思うが、そうした状況は目立たなかった。

 私にとっては、そうした是非論はともかく、玉川氏の発言自体はメディア研究として極めて興味深いものだ。問題になった玉川氏の発言は短いものではないが焦点になったのは、「僕は演出側の人間ですからね、テレビのディレクターをやってきましたから。それはそういうふうに作りますよ、当然ながら。政治的意図がにおわないように、それは制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」だろう。

 最後の「電通」の部分を除けば、国葬が強い政治的意図を、その意図を隠した形で演出されるという演出家としての認識を語ったものと読める。その認識に同感する人は多いだろうし、反発する人も冷静に受け止められる内容かと思う。

 ただ、放送メディアには、活字メディアとは異なる性質がある。それは発言者の声音だったり表情だったりといった放送の持つ特質だ。要は、「話し方」だ。特にテレビはそれによって極めて強い印象操作が可能となる。

 仮に玉川氏が穏やかな「話し方」でテレビディレクターとしての視点から国葬への認識を語っていたら、その後の状況は変わっていたようにも思う。それでも反発する人はいるだろうが、少なくとも内容は正確に伝わった気もする。加えて言えば、仮に「話し方」が穏やかであれば、「電通が入っています」といった、確認さえしていない内容を断定的に語る愚を犯すことはなかったようにも思う。

 ■コメンテーターは誕生当初から「話し方」が重視されていた

 実は、コメンテーターというのは、その誕生の当初から「話し方」が重視されていたという逸話がある。戦後にNHKがニュース解説を始める時のエピソードとして、GHQ=占領軍総司令部でNHKの指導・検閲にあたったフランク馬場氏が書き残したもので、それによると、人選に事実上の決定権を持っていたGHQは、新聞記者やNHKアナウンサーの音声をGHQで働いていたアメリカ人女性に聴いてもらって意見を求めたという。もちろん、彼女たちは日本語を理解しない。では、彼女らは何を判断したのか。それは「話し方」だった。

 玉川氏の人気が勢いのあるその「話し方」にあることも間違いなく、そういう意味では今回の騒動は必然だったのかもしれない。

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年10月26日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・10.19】:ひろゆき氏の沖縄に関する発言をファクトチェックする 同氏は認識や意見を語ることが多いが

2022-11-17 07:02:10 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・10.19】:ひろゆき氏の沖縄に関する発言をファクトチェックする 同氏は認識や意見を語ることが多いが

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・10.19】:ひろゆき氏の沖縄に関する発言をファクトチェックする 同氏は認識や意見を語ることが多いが

 実業家のひろゆき氏の沖縄に関する発信に批判が出ている。発信の真意はわからないが、これらをファクトチェックできないかとの依頼があったので試みてみたい。

<picture>ひろゆき氏(C)日刊ゲンダイ</picture>

     ひろゆき氏(C)日刊ゲンダイ

 報道によると、ひろゆき氏は抗議の市民が解散した後の米軍キャンプ・シュワブゲート前に行き、座り込みが3011日に達したことを示す掲示板を前に「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」などと投稿したという。これ自体はひろゆき氏が実際に確認した内容であり、事実だろう。批判は、それについてのひろゆき氏が書いた「0日にした方がよくない」に向かっているようだが、それは認識の問題だ。認識はファクトチェックの対象とはならない。座り込みは24時間続けなければ座り込みとは言えないとは私は思わない。しかし、それも個人の認識でしかなく、ファクトの問題ではない。

 もうひとつ、「普天間の周りってもともと何もなかった」と発言し、その後「普天間住民の90%以上の人は基地が出来てから移住してきた人」と修正した。その根拠は、「1945年当時の人口が9千人で、現在の人口は9万人」だとした。

 当然、現在、普天間基地周辺に住んでいる人の中には基地ができた後に住み始めた人はいるだろう。しかし、増えた人口の全てが外から来たとまで断言できるのか? そう考える根拠は示されていない。ちなみに、同じ1945年の日本の人口は7000万人余。現在は約1億2000万人余だが、その差の5000万人が日本の外から来たのか? そうではないだろう。よって、ファクトチェックの判定は誤りとなる可能性が高い。

 ■安倍元首相もひろゆき氏のような認識を共有していた

 もっとも、ひろゆき氏の発言は総じてファクトチェックには向かないという印象がある。それは、彼が事実ではなく、認識、意見を語るケースが多いからだ。意見はファクトチェックできない。それをファクトチェックの限界と評する人もいるが、それは仕方ない。

 また、沖縄に米軍基地が集中する状況を当然視する本土の人は多く、ひろゆき氏に特有な話ではない。だから、殊更大きく取り上げる必要はないとも思う。

 ひろゆき氏のような認識を共有していた有力政治家が安倍晋三元首相だったとも言える。私の手元には、その安倍氏が尊敬してやまない祖父の岸信介元首相の日米外交交渉での発言が記録された米政府の公式文書がある。1957年のもので、米公文書館に残されていた。

 そこで岸元首相は米国務長官に対して、米施政権下にあった沖縄であっても「日本人9000万人の問題である」とした上で、「もし(沖縄の)土地が軍事目的で求められるとなると、代わりに使える土地を見つけるのが困難となる」と懸念を示している。アメリカ側も、その懸念を理解すると応じざるを得なかったことが記録に残されている。

 残念ながら安倍氏はそうした岸元首相の姿を学ぶことなく亡くなってしまった。まして、ひろゆき氏にそれを学んでほしいなどと思うことは意味がないだろう。

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年10月19日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・10.12】:フジ「めざまし8」MTG途中、北朝鮮がミサイル発射 専門家らの発言から抱いた一つの懸念

2022-11-05 06:21:20 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・10.12】:フジ「めざまし8」MTG途中、北朝鮮がミサイル発射 専門家らの発言から抱いた一つの懸念

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・10.12】:フジ「めざまし8」MTG途中、北朝鮮がミサイル発射 専門家らの発言から抱いた一つの懸念

 NHKを辞めて、行ったアメリカから帰ってきて毎日放送でコメンテーターを始めたのは2017年10月。つまり、コメンテーターなる立場になって5年が経ったわけだ。その最初の10月4日はフジテレビの「めざまし8」。前日に送られてきた内容では、メインは岸田首相の所信表明演説だった。

 「経済再生の優先」を表明したとされる内容はチェックしていたが、特に目立った内容も感じられない演説だった。例えば電気料金の高騰への対応から「前例のない思い切った対策」を講じると述べていたが、具体例がないため、「思い切った」という言葉が伝わってこない。それくらいのことも理解できないのかと驚いた。

 所信表明演説は各省庁と調整して原稿は作られる。それにどれだけ首相の色を出すかが問われるわけだが、災害対策や外交安全保障については恐らく省庁の挙げてきた内容のままだろう。具体性に乏しい内容だった。妙に具体的だったのは、「公正取引委員会等の執行体制の強化」という点だ。企業間の競争を活発化させるために公的な介入を強化するという……「これが新しい資本主義か?」とも思ってみた。

 そうしたことを考えながら迎えた当日の打ち合わせで異変が起きた。(北)朝鮮が弾道ミサイルを発射。そして番組内容は一気に変わる。これは情報番組の強みでもあるのだろうが、番組は(北)朝鮮一色となった。

<picture>金正恩書記長(C)ロイター</picture>

        金正恩書記長(C)ロイター

 専門家やフジテレビの解説委員が加わって話が進む。専門家の発言は、(北)朝鮮に対して厳しい姿勢をとるよう日本政府に求める内容だ。

 そうした話を聞きながら、やはり一つの懸念を感じずにはいられなかった。金正恩政権の判断の中で、どれだけ日本が意識されているのか、だ。

 小欄でこれまで何度か触れているが、私は過去に2度、訪朝している。その都度、(北)朝鮮に強硬な姿勢で臨むべきとする人々から批判されるが、やはり行かねばわからないことがある。その一つに、対日政策担当者の位置づけの変化がある。

(北)朝鮮にとって日本は重視すべき国だった。それは対日政策担当者の政府内での一定の発言力から推測できた。金日成、金正日政権時は特にそうだったのだろう。それ故に金丸訪朝も、小泉訪朝も実現した。単なる敵対国家なら、そうはならない。また、エリート外交官を養成する平壌外国語大学には日本語学科があり、そこで日本語や日本の政治を学んで政府に入った人間が対日政策担当者となっていた。

 ところが、私の2度の訪朝で、彼らの位置づけが低くなっていることを知った。驚いたことに、平壌外国語大学で日本語学科が廃止になっていた。

 ■いたずらに強硬論を振りかざしてきた結果だが…

 米朝首脳会談に慌てた安倍元首相はそれまでの交渉に応じない姿勢を変えて、「無条件での日朝首脳会談」を言い出し、岸田首相もそれを踏襲している。しかし、それをお膳立てする役割の(北)朝鮮側の人間の地位が下がっている状況への考察はない。いたずらに強硬論を振りかざしてきた結果だが、そこに変化は見られない。

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立岩陽一郎
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【ファクトチェック・ニッポン!・10.05】:国葬当日はフジ「めざまし8」に出演 語ったことは従来の繰り返し、プロセスの重要性だ

2022-11-05 06:21:10 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・10.05】:国葬当日はフジ「めざまし8」に出演 語ったことは従来の繰り返し、プロセスの重要性だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・10.05】:国葬当日はフジ「めざまし8」に出演 語ったことは従来の繰り返し、プロセスの重要性だ

  9月26日の昼前、国葬の前日にフジテレビ系の「めざまし8」の担当者から電話が入った。翌日の番組に出演してほしいとの話だった。私は木曜日の出演なので緊急出演ということになる。

<picture>安倍元首相の国葬(C)JMPA</picture>

        安倍元首相の国葬(C)JMPA

 当日の火曜日は、三浦瑠麗さんが総合解説、元栄太一郎さんがコメンテーターということで、世間的には安倍元首相に近いと見られている識者だ。あえて詮索はしなかったが、元首相に批判的な私を出すことで番組のバランスを考えたのだろう。趣旨を理解して急きょ、上京となった。

 ただ当日、私が番組で語ったことは、小欄で書いていることの繰り返しだった。それは、プロセスの重要さだ。日刊ゲンダイの読者は納得しないだろうが、私は安倍氏の国葬だから反対という考えではない。安倍氏を批判する人は国葬を認めないし、反対に安倍氏を支持する人は賛成する。

 私が首相としての安倍氏に対して高く評価していないことは小論でも書いてきた。岸田首相は国葬で、安倍氏によって「我が国の安全は一層保てるようになった」「歴史は(政権の)長さよりも、達成した事績によって記憶する」と述べたが、私は同意しない。それでも、同意する人がいることも事実だ。だから、プロセスが大事になる。

 そもそも民主主義とは、得られる結果を評価する言葉ではなく、プロセスの重要性を指す言葉だ。決定への人々の参加、それが民主主義だ。それをするのが国会だ。選挙で選ばれた代表が、有権者の負託に応えて決定に参加する。

 自公が過半数だから国会決議の結果は同じだと言う人はいる。繰り返すが、民主主義とは結果ではなく、プロセスだ。良い政治といった抽象論を語っているわけではない。もちろん、憲法に違反するような議決は認められない。あくまで憲法の枠内で、国会の決議をもって物事を進めるべきだ。

 国葬を支持する人で法的に問題ないと主張する人は多い。しかしそもそも、国葬に関する明確な法律があるわけではない。それは、国葬を是とするための理屈にしか思えない。

 今回は弔問外交が話題となった。それは岸田政権にとっては苦肉の策だろう。平たく言えば「硬いこと言うな、外交の役に立っている」ということか。同時に、G7の首脳が一人として来なかったこともニュースで取り上げられている。それは安倍元首相との関係で語られるケースが多いが、私は正直、違和感を覚える。外交はそこまでナイーブではない。G7首脳が来日するか、しないかの判断は、安倍氏への思いではなく、あくまで日本に来る意味があるか、ないかだろう。この時期に他の何かを差し置いて日本に首脳が行く意味があるのか? それだけだ。ハリス米副大統領が訪日の後に朝鮮半島の非武装地帯に向かったという事実が、それを物語っている。外交経験の浅い副大統領に東アジアを知ってもらう意味があるとの判断だろう。

「のど元過ぎれば」ではなく、国会で検証と国葬のための規則作りをするべきだ。併せて、国葬の遠因となった旧統一教会についても国会で検証する。当然のことだ。

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【ファクトチェック・ニッポン!・09.28】:米バイデン大統領の国連演説から読み解く 露プーチン大統領への痛烈メッセージ

2022-10-05 06:28:40 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・09.28】:米バイデン大統領の国連演説から読み解く 露プーチン大統領への痛烈メッセージ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・09.28】:米バイデン大統領の国連演説から読み解く 露プーチン大統領への痛烈メッセージ

 プーチン露大統領の「新たに予備役30万人動員令へ」が大きく報じられている。ウクライナ軍が被占領地の一部を奪還するなど攻勢を強めているとの報道と相まって、ロシアの強硬な姿勢に警戒するという論調だ。30万人は自衛隊の総員数をはるかに上回る規模だけに、懸念は当然かもしれない。

<picture>国連で演説するバイデン米大統領(C)ロイター</picture>

  国連で演説するバイデン米大統領(C)ロイター

 報道ではアメリカが強く反発したということになっている。プーチン氏の演説の後に行われたバイデン米大統領の演説も紹介され、ロシアとの対決姿勢を強める米側の姿勢と米ロ対決が更に激化するとの観測が紹介されている。恐らく、激化する状況は間違いない。しかし、少なくともアメリカ側の姿勢は報道とは違うようだ。

 小欄ではウクライナ情勢をバイデン氏の発言を通じて見てきた。今回もそれを踏襲する。注目したいのはロシアとの対決姿勢を強める姿勢とされた9月21日の国連演説だ。翻訳は筆者による。

 まず、「国連安保理の常任理事国が隣国に侵攻し、主権国家を地球上から消そうとしている。ロシアは恥ずかしげもなく国連憲章の核となる精神を踏みにじった」とロシアを批判。そして「今、再び、ロシアは戦闘に参加させる兵士を招集している」と語っている。しかし、その日のプーチン氏の発表にある「30万人招集」について触れたのはこの部分だけだ。また冒頭の言葉も、国連演説の導入としての形式的な意味合いともとれる。この後もロシアの批判を展開しウクライナに対してこれまでに250億ドルにのぼる軍事的及び人道的な支援を実施してきたと述べた。しかし、特にこれまでと大きく変わるところはなく、むしろ、抽象的な発言に終始した演説との印象が強い。

 ■A4で11枚のうち冒頭の2枚だけ

 否、注目すべきはその演説の長さかもしれない。演説の字おこしをA4判で印刷して出すと全部で11枚になった。そのうちロシアについて語ったのは冒頭の2枚ほどでしかない。実際には演説の多くは気候変動対策などに費やされている。

 大統領の演説は本人の意向を踏まえて補佐官らがアイデアを出し、専属のスピーチライターが文字化。それを大統領が承認して演説となる。もちろん、国務長官ら関係閣僚には説明がなされる。それ故、演説そのものが強いメッセージを持つ。この場合はどうだろうか? 私はこの少ない言葉こそがプーチン氏とその側近へのメッセージなのだと感じた。

 この後に行われたグテーレス事務総長との会談時に記者に「彼(プーチン氏)の決定についてコメントはないか」と問われても、「Nope(ない)」と一言で切り捨てている。つまり、アメリカはロシア軍の苦境も、それによる増員も織り込み済みだということだろう。更に言えば、新たに投入されるロシア兵も厳しい状況に置かれるということを示唆しているともいえる。

 プーチン氏及び側近からは、こうしたバイデン氏の対応はどう見えるのだろうか? 推測だが、反発されるより脅威に感じるのではないか。そこに、無視することによって逆に「敵」に圧力をかけるというバイデン政権の戦略を見ることも可能だろう。

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