路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・01.21》:ファクトチェックの廃止 偽情報の拡散を懸念する

2025-01-25 02:03:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

《社説①・01.21》:ファクトチェックの廃止 偽情報の拡散を懸念する

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.21》:ファクトチェックの廃止 偽情報の拡散を懸念する

 偽情報の拡散を助長するだけではないか。情報インフラを担うプラットフォーム企業としての責任を自覚する必要がある。

 米メタがフェイスブックやインスタグラムなどSNS(ネット交流サービス)で、偽情報を特定するファクトチェック機能を廃止すると発表した。 

メタの本社=米西部カリフォルニア州メンローパークで2023年11月18日、大久保渉撮影

 トランプ氏が初当選した2016年の米大統領選で、偽情報の拡散が問題化したことを機に導入された措置だ。ファクトチェック団体や報道機関の検証に基づき、事実でない投稿には「誤り」「一部誤り」などと表示する。

 こうした取り組みを「不当な検閲」と批判してきたトランプ氏が大統領に再選されると、メタのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は迎合的な行動を取るようになった。私邸を訪ねたり、陣営に100万ドル(約1億5000万円)を寄付したりしている。

 ザッカーバーグ氏は今回、ファクトチェック機能が「政治的に偏り過ぎた」として「表現の自由の原点に立ち返る」と述べた。

 表現の自由が重要なことは言うまでもない。だからといって偽情報を野放しにすれば、人々の判断を誤らせ、社会の分断を深めることになる。

 今のところ対象は米国のみだが、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は声明で「世界で実施されれば多くの場所で実害が出る」と警告している。

 メタは代わりに、利用者が相互に投稿をチェックし合う機能を導入する方針だ。だが、専門家の関与は保証されず、客観的な視点で真偽を見極められるかは疑問だ。

 メタは今回、他人を傷つけるような不適切な投稿への規制も見直し、削除などの措置を取る際の基準を緩和する。性的少数者や移民などに対する攻撃的な言葉が拡散されやすくなる恐れがある。

 ネット空間の健全性を維持するため、自由と規制のバランスを取る試行錯誤が続けられてきた。メタの方針転換はその努力を無にしかねない。再考すべきだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月21日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・01.14】:メタ真偽検証廃止表明 偽情報抑制に逆行する

2025-01-14 04:00:55 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【社説・01.14】:メタ真偽検証廃止表明 偽情報抑制に逆行する

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.14】:メタ真偽検証廃止表明 偽情報抑制に逆行する 

 交流サイト(SNS)のフェイスブック(FB)などを運営する米メタが、SNSの投稿内容を第三者がファクトチェック(真偽検証)する仕組みを米国内で廃止すると発表した。「表現の自由」を名目に投稿の規制を緩和した格好だが、社会の分断につながる偽情報拡散を抑制する動きに逆行するものだ。

 偽情報の放置は民主主義をも揺るがす事態を招く。「SNS時代」にあって、ネット上のファクトチェックの重要性はますます高まっている。廃止方針は撤回すべきだ。

 廃止の対象はFB、インスタグラム、スレッズの3種類である。メタのファクトチェックは独立した機関に依頼して投稿の正確性を審査し、「虚偽」や「改変」などと評価している。規定に違反しているとメタが判断すれば、投稿を削除などする。現在100カ国以上、60以上の言語に広がる。現時点で日本での取り組みに変更はないという。

 メタのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「トランプ次期大統領と協力し、米国企業に検閲を強要しようとする各国政府に対抗する」と述べた。トランプ氏はSNSの投稿管理に「不当な検閲」と訴えてきた。メタの新方針は20日の米大統領就任を前に氏の批判に呼応した形で、分断を助長する懸念が強い新政権にすり寄るものだ。

 メタの新方針に、世界の検証機関でつくる国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は、ザッカーバーグ氏に「メタが世界中でプログラムを停止すると決定すれば、多くの場所で現実世界に危害が及ぶことはほぼ確実だ」と警鐘メッセージを送った。

 2016年の米大統領選では「ローマ法王がトランプ氏支持を表明」「クリントン氏が『イスラム国』(IS)に武器売却」などの偽情報があふれ、選挙への影響も指摘された。偽情報を信じて襲撃事件も実際に起きた。それらも背景に欧米では、政治家の発言やネット上の投稿の真偽を検証するファクトチェックが進む。旧フェイスブック(現メタ)がファクトチェックを導入したのは16年のことだ。

 メタによると、毎日、投稿の1%未満に当たる何百万のコンテンツを削除していたという。その1~2割が規定違反ではない誤った削除の可能性があり、新方針はより多くの発言を認めるためだと説明する。だが誤削除の是正のために偽情報を野放しにしてしまうことになれば、導入前の混乱に逆戻りしかねない。

 日本では24年7月の東京都知事選、10月の衆院選、11月の兵庫県知事選で、SNSやネット上の発信が影響を与えたと分析されている。

 ネット上の偽情報や誹謗(ひぼう)中傷によって人の命が失われる事態が後を絶たない。より良い社会を形成・維持し、人の命を守るためにも、SNS利用が拡大する中、健全なネット言論環境を守る営みを止めてはならない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月14日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・01.10】:メタ 事実検証廃止 健全性確保に逆行する

2025-01-10 04:02:00 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【社説・01.10】:メタ 事実検証廃止 健全性確保に逆行する

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.10】:メタ 事実検証廃止 健全性確保に逆行する

 米IT大手メタが、運営するフェイスブックやインスタグラムなどでの第三者機関によるファクトチェックを、米国内で廃止すると発表した。

 世界中で利用者30億人を超える巨大プラットフォーマーが投稿管理を緩和することで、偽情報やヘイト発言の拡散が懸念される。

 メタがファクトチェックを導入したのは2016年。米大統領選の際にSNSで偽情報が拡散し、氾濫したことの危機感からだ。

 投稿された文章や写真、動画などについて第三者が真偽や正確性を分析し、「虚偽」「改変」などと評価されれば、表示を減らしたり、ラベルを付けたりして警告してきた。

 次期大統領のドナルド・トランプ氏のフェイスブックやインスタグラムを一時停止した時期もあったが、投稿管理について保守派から「リベラル寄りだ」との批判も出ていた。

 今回、マーク・ザッカーバーグCEOは検閲が行き過ぎたと説明し、政治的に偏り過ぎていたと語った。

 しかし、虚偽が疑われる情報の根拠を探し出し、その真偽を問う「ファクトチェック」と、国家や公権力が意に沿わぬ内容や不適当だと判断したものをはじく「検閲」は違うものだ。

 二つを同一視し、専門家らによるチェック体制を自ら廃止することは、ネット言論空間の健全化を後退させる。今月、大統領に就任するトランプ氏への「すり寄り」と捉えられても仕方がない。

             ■    ■

 大統領選の討論会では、不法移民が犬や猫などペットを食べているとのトランプ氏の発言が爆発的に拡散。差別や誹謗(ひぼう)中傷が広がり、多くの人を傷つけた。

 日本では、能登半島地震の際に助けを求める虚偽の投稿などがあり、救助活動に支障を来した。

 メタは今後、投稿管理について交流サイトの利用者同士でチェックし、虚偽の疑いや補足が必要な場合は利用者が書き込むシステムを取り入れるという。

 だがそれぞれが投稿を読んだ後に修正するには時間がかかるし、そのほとんどは匿名で、どこの誰かも分からない。チェック機能に期待はできないだろう。

 メタは世界のファクトチェック機関の有力な資金提供者でもある。今後、支援がなくなれば機関の運営に支障が出る恐れもあり、事態は深刻だ。

              ■    ■

 ネット上には「沖縄ヘイト」とも言うべき露骨な沖縄差別や沖縄叩(たた)きがあふれている。辺野古新基地建設に抗議する人が「日当をもらっている」との偽情報のほか、特に選挙になるとデマやフェイクが氾濫する。

 新聞もファクトチェックの取り組みを続けるが、拡散のスピードは速い。だからこそ、ファクトチェックの役割は大きい。適正な投稿管理は、健全なプラットフォーム運営に不可欠だ。

 今夏には、他人を傷つけるなどの有害情報を規制する、情報流通プラットフォーム対処法が施行される。正確な情報の入手は、民主主義の基盤である。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月10日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…①

2024-12-31 07:15:20 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…①デマを指摘する「ファクトチェック団体」の欠陥

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…①デマを指摘する「ファクトチェック団体」の欠陥

 SNSなどで拡散されるデマや誤情報を検証する「ファクトチェック」を行っている団体がある。フリー記者の渡辺一樹さんは「日本ファクトチェックセンター(JFC)という団体が配信している記事には問題がある。専門家もJFCの記事に危機感をあらわにしており、専門機関としての適性が問われている」という――。

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兵庫県議会の百条委員会で証人尋問に応じ、宣誓する斎藤元彦知事=2024年12月25日午後、神戸市内[代表撮影]© PRESIDENT Online

 ◆SNSが大きな影響を持った兵庫県知事選

 斎藤元彦知事が再選した兵庫県知事選は、SNSや動画サイトが民主主義に与える影響を、改めて浮き彫りにする結果となった。

 民間調査会社ネットコミュニケーション研究所の調査によると、この選挙では斎藤氏を応援した立花孝志氏が「デマを流すマスメディアvs真実を伝えるネット」という対立構図を描き、その発信がYouTubeやXなどで拡散したことが、投票結果に大きな影響を与えたという。

 同社の分析によると、立花氏関連チャンネルの動画は1500万回近くも再生され、インフルエンサーや切り抜きチャンネルなどが立花氏の発信を大きく取り上げていた。

 ここで問題だったのは、そうして発信・拡散された内容の中に、自殺した元県民局長のプライバシーに関わる情報や、確たる証拠もなく斎藤知事のパワハラを全否定するといった「真偽不明」の情報が含まれていたことだ。 

 ◆情報の拡散源となった有力プラットフォーム

 ネットコミュニケーション研究所の調査によると、立花氏や支援者たちの発信する情報が拡散したのは、YouTubeやXなどのプラットフォームを通じてだ。そのプラットフォーム上で、どのユーザーにどんな情報を届けるかについては、「アルゴリズム」が大きな役割を果たす。アルゴリズムの中身は非公開で、その仕組みはプラットフォーム側が自在に変更できるものだ。

 クイーンズランド工科大学のティモシー・グラハムとマーク・アンドレイェヴィッチの研究によると、イーロン・マスク氏のXでの投稿は、彼がトランプ大統領支持を表明したタイミングで起きたXのアルゴリズム変更により、表示回数が138%増加していた。マスク氏はXのオーナーで、アルゴリズムの中身を決定できる立場にある。

 当然の帰結として、プラットフォーム側は、アルゴリズムを作り出した責任からは逃れられない運命にある。国際的にみると、YouTubeやXは誤情報や偽情報を垂れ流すプラットフォームだとして強く非難されている。

 「ソーシャルメディアには誤情報が溢れている。特にXには多い」という指摘や、「イーロン・マスクとXは米国選挙の誤情報の震源地」といった分析は後を絶たない。米国のIT企業であるMozillaの大規模な調査においてもYouTubeは誤情報への対応が甘いと追及されており、米国のジャーナリズム教育機関であるポインターメディア研究所からは「特に英語でない言語の誤情報には対応が甘い」と批判されている

 ◆「日本ファクトチェックセンター」の不可解な記事

 プラットフォーム上に真偽不明の情報がはびこる状況では、それが事実かを調査する「ファクトチェック」の取り組みが貴重だ。

 ファクトチェックとは、一言でいうと「世間で事実であるかのように言われていることが、本当に事実かどうかを確かめること」だ。国際ファクトチェック団体のIFCNは、加盟団体に「中立性」「公平性」「情報源をできるかぎり明らかにする」「資金調達と組織の透明性」「ファクトチェック手法の公開と一貫性」「ミスがあった場合に誠実に訂正する」ことなどを求めている

 日本にもIFCN加盟団体が3つあり、なかでも最も頻繁に記事配信をしているのが「日本ファクトチェックセンター(JFC)」だ。運営委員長は京都大学教授で憲法学者の曽我部真裕氏が務めており、編集長は朝日新聞記者、バズフィード編集長やGoogle News Labティーチングフェローなどを歴任し、業界のオピニオンリーダーとしてテレビにも多数出演している古田大輔氏だ。

 こうしたファクトチェック団体の存在は、大いに歓迎すべきだ。しかし、今回の兵庫県知事選について、JFCが出した記事は、国際的なファクトチェック記事や、IFCNの倫理基準と照らし合わせてみれば、疑問を感じざるを得ない点がいくつもあった。

 ◆「パワハラの定義にあてはまる行動」としているが…

 それでは、JFCが配信した兵庫県知事選に関する記事の問題点を具体的に見ていこう。

 まず、斎藤知事のパワハラ問題を扱ったこの記事では、次のような結論を出している。

 兵庫県議会の不信任決議で失職した斎藤前知事はパワハラはしていないといった言説が拡散したが、根拠不明。県職員へのアンケートでは実際に目撃などで知っている人が140件、間接的に聞いて知っているという回答も含めると回答の4割を超える。本人も「厳しい叱責」「机を叩いた」ことなどを認めており、「必要な指導だと思っていた」と述べているが、パワハラの定義にあてはまる行動だ。

 県職員のアンケートや百条委員会の証言などで告発された以上、「パワハラはしていない」と決めつける言説が根拠不明だというところまでは妥当だろう。しかし、斎藤氏の行為が「パワハラの定義にあてはまる行動」だったという点については疑問が残る。

 ◆パワハラ問題については、まだ結論が出ていない

 JFCの記事は、パワハラの定義について厚生労働省の「パワーハラスメントの定義について」という資料をもとに次のように論じている。

 「精神的な攻撃」として「大勢の前で叱責する」「ものを机に叩きつけるなど威圧的な態度をとる」などをあげている。

 しかし、資料の該当箇所を読むと、資料には「これらの行為が全てパワーハラスメントに当たることを示すものではない」と注釈がついている。厚労省にも確認取材をしたがやはり「机を叩けば、それだけで自動的にパワハラになるわけではない」という。

 また、斎藤氏が自ら認めた「机を叩いた」行為とは、本人による百条委員会での再現によると、机を平手で二回ポンポンと叩いた程度だ。これは、斎藤氏の言い分に過ぎないが、「本人が認めた範囲」で即パワハラ判定ができるかどうかというと、議論の余地があるだろう。 

 もちろん、きちんとした議論の結果、やはり「パワハラだった」という結論が出る可能性は十分にある。しかし、地元紙の神戸新聞が2024年11月15日に配信した記事では「百条委や第三者委の調査が続いており、結論は出ていない」としている。また、12月25日に行われた県議会の百条委員会においても、斎藤知事のパワハラ問題については最終的な結論は出ておらず、来年2月の定例県議会で証言などを取りまとめた報告を行うとしている。

 「文書問題に関する第三者調査委員会」についても、報告書の提出目標を来年3月上旬としておりまだ結論は出ていない状況にある。

 ◆政治家の発言に対して“裏とり”ができていない

 また、こちらの記事では「兵庫県知事選挙に立候補している稲村和美氏について、『当選すると外国人の地方参政権が成立する』『外国人参政権推進派』という言説が拡散したが、誤り。稲村氏は外国人参政権を公約にしておらず、この言説を否定している」と結論付けている。

 しかし、そもそも記事が示した投稿の表現は「(地方参政権が成立する)かもしれない」となっている。もともと「かもしれない」だったのを、断定的な「成立」という言葉にすりかえて評価するのは、果たして適切なのだろうか。

 また、稲村氏の発言について、まったく裏とりをせずに信用している点も気になる。筆者は政治団体「みどりの未来」が、稲村氏が共同代表だった時期に、外国人参政権を推進する政策を打ち出していたと思われる資料を、「緑の党」と同じドメイン名(greens.gr.jp)の下で公開されているサイトで発見した。筆者は12月4日、電話や公式サイトの問い合わせフォーム経由で稲村氏の事務所に事実確認の質問を送ったが、2週間経っても返信はない。

 こうしたJFCの記事は、「証拠を多角的に検証する」という、IFCNの倫理規定が求めている基準を満たしていないのではないか。

 ◆ファクトチェックの専門家も記事を疑問視

 これら2本の記事について、専門家はどう捉えるだろうか。国内ファクトチェック団体の草分け「FIJ」の設立メンバーで、『ファクトチェックとは何か』(岩波書店)の共著者でもある楊井人文弁護士は、検証手法に重大な問題があると指摘する。

 「斎藤知事の行為を『パワハラの定義に当てはまる行為だ』と断言した記事には、大きな問題がある。どんな行為があったかどうかの事実認定や、それが定義に当てはまるかどうかは、専門家でも意見が分かれることのある難しい問題だ。それなのにJFCは独自判断で、斎藤知事の行為を事実認定して、それが『パワハラの定義に当てはまる行為だ』と断言した。専門家に取材をした様子もない。いつからJFCはパワハラ認定機関になったのか」 

 もう一つの記事についても、楊井氏は次のように話す。

 「稲村さんが『外国人参政権推進派』ではないとしたファクトチェックにも問題がある。『公約に書いていない=推進する可能性がない』と結論づけるのは短絡的すぎる。私自身もXで指摘したが、少し調べれば見つかる情報に言及はせず、それを本人に問い合わせた形跡もない。確認不足だろう」

 楊井氏は「ファクトチェックはそもそも『報道』の一手法だ。国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)も、これは『ジャーナリズムの実践だ』と明確に示している」と指摘。「そうであれば、最低限やるべき取材調査は尽くして、スキのない記事、読者にとって納得感のある記事を書かなければいけない。JFCがこのレベルの記事を作り続ければ、『ファクトチェック』という手法そのものの信頼まで損なわれかねない」と危機感をあらわにした。

 ◆「SNS対伝統的メディア」という図式を煽っている

 JFCが配信した記事で問題があるのはファクトチェック記事だけではない。

 筆者がさらに根深い問題があると考えているのは、兵庫県知事選が終わった直後、JFCは「SNSや動画」の影響力が新聞やテレビを上回ったというテーマの記事(前編後編)である。

 この記事は、NHKの出口調査で、投票する際に最も参考にした情報として、「SNSや動画サイト」が30%となり、テレビ(24%)や新聞(24%)を上回っていたことを受けて書かれた記事だ。出口調査の結果を見る限り、テレビや新聞の選挙報道が、有権者の期待に十分応えられる内容でなかったということは言えるだろう。

 だが、それを「解説する」はずのJFC記事を読むと、そこには筆者の意見や主観が強く反映されており、実質的にはオピニオン記事と言うべき内容だった。

 具体的に記事を見ていこう。前編の見出しは「斎藤氏再選の裏にSNSや動画 投票の参考情報で新聞・テレビ上回る」となっており、この解説は最初から「SNS 対 新聞テレビ」という構図で書かれていることがわかる。続けて見ていくと、「今回の選挙では『ソーシャルメディア』か『新聞やテレビ=伝統的メディア』かという分断が発生していました。」という記述がある。自然にできた分断のように書いているが、これは立花氏の主張そのものだ。

 記事後編でも、冒頭に生成AIで作ったという「テレビと新聞が燃える画像」と「マスメディアが情報の権威だった時代の終焉」という文字が目に付く。これを見れば、多くの人が「マスメディアの終わり」というような印象を持つのではないか。イメージ画像による印象操作をするのは、ファクトチェック団体の取るべき手法とは言い難い。

 燃えている新聞とテレビの画像には、“マスメディアが「情報の権威」だった時代の終焉”という見出しが付いている。生成AIにこのような画像を作らせた意図はどこにあるのだろうか。

 ◆プラットフォームの問題点をほとんど指摘していない

 また、冒頭でも指摘したように、FacebookやXなどの有力プラットフォームはフェイスニュースの拡散源となっているが、JFCはこれらの問題点にほとんど触れていない。

 JFCは2024年11月までに「ファクトチェック記事」以外に解説記事22本、ファクトチェック講座記事20本、メディアリテラシー講座記事5本を出していた。すべてをチェックしたが、そのうちプラットフォームの責任論が語られていたのは1本だけで、その記事はPoynterの記事を和訳したものだった。

 たとえば、さきほどの解説記事では、YouTubeなどのプラットフォームについて「自分では選べない情報洪水の中で、アルゴリズムが適切に情報を取捨選択してくれる」などと利便性を強調する一方で、運営者の責任を語っていない。

 解説記事の前編では「情報洪水の中でアルゴリズムが情報を取捨選択(便利)」「プラットフォームが便利だからこそ人・情報が集まる」と、1つの図で「便利」という言葉が2回も使われている。

 YouTubeやTikTokなどの動画配信サイトが、アルゴリズムによって情報を取捨選択しユーザーに届けていることを説明した図。「便利」というワードが二度も登場する。

 ◆収入源のほとんどがプラットフォームからの助成金

 JFCがこうした主張記事を出すことには、大きな問題があると筆者は考えている。なぜなら、JFCが公開している「JFCへの支援と会計」によると、運営費の99%はGoogleなどのプラットフォーム企業が出しているからだ。内訳は、Googleから7367万円、LINEヤフーから500万円、Metaから400万円となっており、Googleからの助成金は8割以上を占めている。

 古田編集長自身も2020年から2022年までGoogle News Labのティーチングフェローを務めていた。そして、YouTubeはGoogleの動画プラットフォームである。

 つまり、JFCや古田氏は、この問題について「第三者」というより、当事者に極めて近い立場なのである。資金源についての情報はJFCのサイト上を探せば見つかるが、記事中にはそうした注意書きがまったくない。解説記事を読んだ人が、いちいちJFCの収支報告を調べるとは考えにくい。

 JFCは自らのガイドラインでも「非党派性」や「透明性」を打ち出している。JFCの監査委員長である東京大学大学院教授の宍戸常寿氏に対するインタビュー記事によると、JFCは2022年にGoogleから150万ドル(2億1700万円)の運営資金を得て、ネット関連事業者でつくる一般社団法人・日本セーファーインターネット協会(SIA)の一部門として立ち上げられた組織だ。

 しかし、後述するがJFCに問い合わせたところ、編集部をチェックするという運営委員会は完全非公開であり、2024年8月に公開されたさきほどのインタビュー記事によると、監査委員会は発足後からその時点まで、過去一度も開催されたことがなかったという。このような状況では、「非党派性」や「透明性」という言葉も疑わざるを得ない。

 ◆Googleとの関係性は本当に中立なのか

 JFCの「解説」記事では、マスメディアを批判する一方で、誤情報拡散に対するYouTubeやGoogleの責任は一切語られていない。Googleとマスメディアの間には競合関係があり、OECDの報告によるとGoogleなどのプラットフォーム側が圧倒的に優位な立ち位置にいる。

 つまり、JFCはGoogleから多額の資金をもらって、Googleが利害関係者である誤情報の問題について、中立を装って、YouTubeやSNSの影響力拡大やマスメディアの凋落を強調するオピニオン記事を書いているように見える。

 これは、ジャーナリズムの倫理にも反するのではないか?

 たとえば、海外の有名ファクトチェックメディア「Politifact」はMeta社から資金提供を受けているが、Facebook投稿の検証過程でMeta社のシステムを使っただけでも、毎回次のような断り書きを入れている。

 このFacebook投稿は、ニュースフィード上の偽ニュースや誤情報に対抗するMetaの取り組みの一環として要確認とされた。(Facebook、Instagram、Threadを所有するMeta社とPolitifactの関係性についてはこちらをご覧ください)

 先のJFCの記事で筆者が論評している対象は、テレビ局といい、インフルエンサーといい、Googleと利害関係がある人たちばかりだ。そして、GoogleとJFCとの関係性を念頭に置いて記事を読んでいくと、メディアを批判する一方で、YouTubeの番組やインフルエンサーには「甘い」姿勢が見えてくる。

 ◆デマを拡散する人物を説明なしで紹介

 たとえば、YouTubeなどのプラットフォーム上で活躍するインフルエンサーについては、解説記事の後編に次のような一文がある。

 2024年のアメリカ大統領選は「ポッドキャスト選挙」とも呼ばれました。コメディアンの「The Joe Rogan Experience」などの有力ポッドキャストが大きな影響を与えたからです。

 ここで紹介されているポッドキャストの配信者であるジョー・ローガン氏は、YouTubeのチャンネルに1870万人の登録者がいるほどの人気コメディアンだが、同時にCNNBBCNewYork TimesAP通信NewsweekAFP通信など、数多くのメディアからファクトチェックの対象とされている要注意人物でもある。

 JFCの記事は、ローガン氏を紹介する際、こうした注意点に一切触れていない。数多くのメディアから発言の信憑性を疑われている人物の番組を「有力ポッドキャスト」とだけ説明するのは、ファクトチェック団体として不適正だと言わざるを得ない。

 こうした「解説」記事やファクトチェック記事は、IFCNの倫理憲章和訳)や、JFCのガイドライン指針と照らしても問題があると思われる。

 IFCN倫理憲章の「非党派性と公正性」には、「私たちは、ファクトチェックの対象とする問題について、特定の政策的立場に立ったり擁護したりすることはしません」とある。また、「資金源と組織の透明性」の項目では、「他の組織から資金を受け入れても、資金拠出者がファクトチェックの調査で達した結論に対して全く影響を与えないことを確約します」とうたっている。

 Googleからの資金提供を前提にすると、これらの記事内容には、「非党派性と公正性」「資金源と組織の透明性」に課題があると言わざる得ないだろう。

 ◆国際団体もGoogleから資金提供を受けているが…

 JFCのガイドラインには「当センターにおいてファクトチェック記事の作成に従事する者は、正確性と透明性の問題を除き、当センターがファクトチェックを行う可能性のある政策課題について、合理的な一般市民が当センターの活動を偏ったものと見なす恐れがあるかたちで、自らの見解を提言又は公表してはならない。」と書いてある(14条)。

 プラットフォーム規制が、日本でも話し合われている「政策課題」であることは間違いない。そして、もちろんGoogleやYouTube、LINEヤフー、Metaはその最大の対象だ。繰り返しになるがJFCの資金源は99%がそのプラットフォーム3社からである。

 実は、ファクトチェックの国際団体IFCN自身も、Googleから1300万ドル以上の資金提供を受けている。しかし、メンバーの多くはGoogleなどの巨大プラットフォームを公然と「フレネミー(フレンドであり、同時にエネミーでもある)」と呼んでいる。資金提供を受けていても、その下請けや代弁者となり下がらないために、意識して距離を保とうとしているのだ。

 彼らはYouTubeの批判もしている。2022年にはYouTubeのCEO(当時)宛てに公開質問状を出している。80以上のファクトチェック団体が署名したこの質問状の冒頭には、次のような強烈な言葉が綴られている。

 「YouTubeは、悪意のある人たちがそのプラットフォームを武器として使い、他者を操り、搾取し、組織化し、収益を上げることを許容してしまっている」

 ◆JFCから回答が来たが…

 Googleからの資金が、編集方針に影響を与えているのではないか。その疑念について、筆者は12月4日にJFCに質問を送った。JFCからは12月19日に「当センターはファクトチェックガイドライン第2条に基づき、非党派的かつ公平公正なファクトチェックを実施しており、プラットフォームとの関係もこうした原則に基づいております」という返信があった。

 筆者が送った質問内容とJFCからの回答全文は、別途掲載するが、筆者がガイドラインの条文まで挙げて具体的な質問をしているのにもかかわらず、JFC事務局は「ご参考までに下記もご覧下さい」として、そのガイドラインのリンクを送ってきた。

 また、筆者は「アルゴリズムについて『便利』という言葉を2回も使った図」を例に挙げ、こうした説明をする意図を質問した。事務局は、その質問には直接回答せず、「参考までに」としたうえで、このような返答があった。

 SNS、アルゴリズム、エコーチェンバーなどの問題につきましては、ご連絡いただいた記事の他にも下記の講座理論編でも取り上げさせていただき、多くの方にご視聴いただいております。

 ■フェイクニュースとアルゴリズム YouTubeやTikTokが便利で危険な理由【JFCファクトチェック講座 理論編3】

 これには驚かされた。この記事は質問状で「チェックした」と伝えたものに含まれているうえ、そこには筆者が質問したのと実質的に同じ図が使われているからだ。「なぜこんな図を使ったのか」という質問に対して、「図そのもの」の確認を求められるとは思わなかった。

 ◆「透明性」は担保されているのか

 また、返信には「なお、運営委員会は、委員間で自由闊達な意見交換を行い、適切な意思決定を図る場としております。その性質上、詳細な日時や議事録等は非公開とさせていただいております」とも書かれていたが、この点にも違和感を覚えた。

 開催日時すらも非公開なのだとすれば、運営委員会が実際に開催されているのかどうかも、外部からはわからない。これでは「完全な秘密会議」と言わざるをえない。JFCは「ファクトチェック」という、本来なら極めて高い倫理性と真摯(しんし)な姿勢が求められる活動を行うはずの組織だが、これでいいのだろうか。自ら掲げる「透明性」の大義はどこへ行ったのか。

 こうしたJFCの姿勢をIFCNの姿勢と比べながら、なぜファクトチェック団体が、プラットフォームと適切な距離を保つべきなのかについて、さらに論じてみよう。

 IFCNは「YouTubeへの公開質問状から2年経つが状況は良くなっていない」という趣旨の続報記事も出している。そのなかでも、下記の指摘は重要だ。

 巨大テック企業のアルゴリズムは、ファクトチェッカーによる検証記事よりも、虚偽情報の作り手によるコンテンツの方を優先して表示しがちだ。

 ファクトチェッカーには巨大テックカンパニーからの資金が必要だ。しかし、そもそも資金がいる理由の一つは、テックカンパニーが問題をどんどん深刻にしてしまっているからだ。

 実際、Googleを運営するAlphabet社が公表した2023年度第4四半期の会計資料によると、Googleは3000億ドル以上を売り上げ、その純利益は738億ドルに及んでいる。それに比べれば、IFCNへの寄付(1300万ドル)は微々たるものだ。

 ---------- 渡辺 一樹(わたなべ・かずき) 記者/編集者 1976年生まれ。奈良県出身。早稲田大学法学部卒。信濃毎日新聞記者、月刊誌などを経てネットメディアへ。弁護士ドットコムニュース副編集長、BuzzFeed記者、ハフポストニュース統括マネジャーなどを経てフリーに。テクノロジーや社会問題全般について幅広く執筆している。 ----------

 元稿:プレジデント社 主要出版物 PRESIDENT Online 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・県知事選挙におけるSNSなどで拡散されるデマや誤情報が拡散された事象】  2024年12月30日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…②

2024-12-31 07:15:10 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…②デマを指摘する「ファクトチェック団体」の欠陥

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県】:斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…②デマを指摘する「ファクトチェック団体」の欠陥

 SNSなどで拡散されるデマや誤情報を検証する「ファクトチェック」を行っている団体がある。フリー記者の渡辺一樹さんは「日本ファクトチェックセンター(JFC)という団体が配信している記事には問題がある。専門家もJFCの記事に危機感をあらわにしており、専門機関としての適性が問われている」という――。

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兵庫県議会の百条委員会で証人尋問に応じ、宣誓する斎藤元彦知事=2024年12月25日午後、神戸市内[代表撮影]© PRESIDENT Online 

 ◆ファクトチェック団体としての適性があるのか

 そもそも、誤情報・偽情報が減れば、ユーザーだけでなくプラットフォーム自身にも得だ。誤情報・偽情報が多すぎるプラットフォームは、最終的にユーザーにも見放される。海外のファクトチェック団体が多額の寄付をもらっても遠慮しないのは、この事実を十分に理解しているからだろう。

 ただ、Googleがファクトチェック団体にカネを出しても問題ないと言えるのは、ファクトチェック団体側が自主・独立を保ち、スポンサーへの過剰な配慮をしない場合のみだ。

 仮に、Google側がファクトチェック団体を意のままに操ったり、逆にファクトチェック団体側が過剰におもねったりするようなことがあれば、全ての前提が崩れてしまう。

 ◆独自資金での運営はほぼ不可能

 読者の中には、そもそもGoogleからカネを受け取らなければ良いのに、と考える人もいるだろう。しかし、ファクトチェックの専門団体は、世界的に見ても非常に厳しい財政状況にある。

 2023年のIFCNの報告書によると、国際的なファクトチェック団体はどこも人手不足だ。常勤スタッフの数は1〜5人の組織が最多で、続いて6〜10人と小規模になっている。それよりも深刻なのが活動資金で、80%以上の団体が「最大の問題は資金不足だ」と訴えている。IFCN所属団体の資金源のうち最大のものは、Metaが設立した基金からの寄付だという。

 JFCは年間100本以上のニュースを公開し、Yahooなどの大手サイトへも配信している。しかし、2023〜24年の報告書などによると、1354万円の人件費をかけて、ニュース配信の収入はわずか79万円だった。営利目的のメディアとして成立しないのは一目瞭然だろう。

 日本にはIFCN加盟のファクトチェック団体が3つだけで、JFCのほか「InFact」と「リトマス」しかないのは、そういった資金面での厳しさの表れでもあるだろう。

 ◆誤情報が蔓延しているからこそ、冷静な検証が必要

 ここまでGoogleやXなどのプラットフォームや、JFCのファクトチェック団体としての問題を論じてきたが、偽・誤情報をめぐる事態がここまで深刻なら、いっそ国家やプラットフォームが直接介入して取り締まればいいと考える人もいるかもしれない。

 しかし、そうしたアプローチは非常に危険だと筆者は考えている。国家はもちろん、国家に準ずるような権力を持つ超巨大プラットフォームに軽々しく「お墨付き」を与えれば、民主主義を維持していくうえで不可欠な、表現の自由の侵害になりかねないからだ。

 国家やプラットフォームなどの強大な権力から独立した形で活動するファクトチェック団体が必要とされている理由は、まさにそこにある。

 価値のある情報と誤情報が混然となったインターネットは、民主主義に対する大きな脅威となっている。そんな状況になってしまった今だからこそ、JFCをはじめとするファクトチェック団体には、冷静な検証活動を続けていってほしい。 

 ◆JFCへの質問と回答全文

 1.プラットフォームをめぐる解説の偏りについて

 ――兵庫県知事選の解説記事において、アルゴリズムについて「便利」という言葉を2回も使ったを提示する一方で、YouTubeやX.comなどのプラットフォームの責任についてほとんど触れていない理由をお聞かせください。

 ――同様の事例について、IFCNに所属する海外のファクトチェック団体の多くがプラットフォームを厳しく批判している中で、貴センターがプラットフォームに対して批判的な視点を持たない理由をお聞かせください。

 ――JFCは12月4日時点で、解説記事22本ファクトチェック講座記事20本メディアリテラシー講座記事5本を出されていました。これらすべてをチェックしましたが、そのうちプラットフォームの責任論を正面から語っていたのは1本だけで、その記事はPoynterの記事を和訳したものでした。「便利」な側面を強調する一方で、プラットフォームの責任論を真正面から語らない理由をお聞かせください。

 2.資金提供元との関係について

 ――JFCファクトチェックガイドライン第7条、第12条、第14条との関連について、下記見解を伺いたいと思います。

 ――Googleからの多額の資金提供(2億円以上)は、プラットフォーム問題に対するJFC編集部の論調に影響を与えていませんでしょうか。お考えをお聞かせください。

 ――古田編集長がGoogle News Labのティーチングフェローだった経歴は、記事の論調に影響を与えていませんでしょうか。お考えをお聞かせください。

 ――IFCNに所属する多くのファクトチェック団体が、プラットフォームを「フレネミー(友でもあり敵でもある存在)」と位置付け、距離を取る姿勢を見せている中、貴センターはそうした姿勢がないように見受けられます。この点についてお考えをお聞かせください。

 3.運営委員会によるガバナンスについて

 ――JFC設置規定によれば、運営委員会は「JFCが定めるファクトチェックガイドラインに則って編集部が検証を実施しているかを評価」し、「編集長の解任を理事会に勧告する権限も持っている」とされています。兵庫県知事選関連の記事について、運営委員会はどのような評価をされましたでしょうか。

 ――特に下記の点について、運営委員会での議論の有無と、その内容をお知らせください。

 * プラットフォームの責任論をほとんど語らない編集方針について

 * Googleからの多額の資金提供と記事の論調との関係について

 ――運営委員会は、これまでにJFC編集部に対して、どのような形で意見を述べたり、改善を求めたりしてきましたでしょうか。

 ・JFCからの回答

 お問い合わせいただきありがとうございます。以下、回答いたします。

 当センターはファクトチェックガイドライン第2条に基づき、非党派的かつ公平公正なファクトチェックを実施しており、プラットフォームとの関係もこうした原則に基づいております。なお、ご参考までに下記もご覧下さい。

 ■ご質問1および2について

 JFCでは「JFCファクトチェック指針」および「ファクトチェックガイドライン」に従い運用しています。

 検証対象の選定方法についても解説しておりますのでご確認ください。

JFCファクトチェック指針

 ■https://www.factcheckcenter.jp/guidelines/

ファクトチェックガイドライン

 ■https://drive.google.com/file/d/1H9TCU01zuNh8sHpYL81FJ8_pOUd1WsoH/view?ref=factcheckcenter.jp

検証対象をどう選ぶか

 ■https://www.factcheckcenter.jp/guidelines/

 SNS、アルゴリズム、エコーチェンバーなどの問題につきましては、ご連絡いただいた記事の他にも下記の講座理論編でも取り上げさせていただき、多くの方にご視聴いただいております。

 フェイクニュースとアルゴリズム YouTubeやTikTokが便利で危険な理由【JFCファクトチェック講座 理論編3】

 ■https://www.youtube.com/watch?v=eS2XCaHYH24

 ■https://www.factcheckcenter.jp/course/others/jfc-factcheck-course-theory3/

 なお、運営委員会は、委員間で自由闊達な意見交換を行い、適切な意思決定を図る場としております。

 その性質上、詳細な日時や議事録等は非公開とさせていただいております。事業に関する具体的な方針等につきましては、お知らせ等必要な形で適宜公開しておりますのでそちらをご確認ください。

 ---------- 渡辺 一樹(わたなべ・かずき) 記者/編集者 1976年生まれ。奈良県出身。早稲田大学法学部卒。信濃毎日新聞記者、月刊誌などを経てネットメディアへ。弁護士ドットコムニュース副編集長、BuzzFeed記者、ハフポストニュース統括マネジャーなどを経てフリーに。テクノロジーや社会問題全般について幅広く執筆している。 ----------

 元稿:プレジデント社 主要出版物 PRESIDENT Online 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・県知事選挙におけるSNSなどで拡散されるデマや誤情報が拡散された事象】  2024年12月30日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

2024-05-20 07:23:20 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森・05.18】:権力に厳しく、人に優しく

 東京新聞が16日に掲載した社説「報道の自由度 権力監視の決意新たに」に対し、読者から激励の声をいただきました。うれしい限りです。

 
 社説の内容は、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した2024年の報道自由度ランキング=地図は自由度の一覧=で、日本が180カ国・地域中の70位になったことを受け「報道の自由度の順位が低いことは謙虚に受け止めつつ、報道・言論機関として権力監視の役割を誠実に果たし、権力の圧力には屈しないとの決意を新たにしたい」というものです。
 
 これに対し、読者から「全くその通り。今後も歴史の検証に堪える記事を期待する」「日本でも報道の自由が脅かされている。報道の自由を守るためにしっかり主張しているので応援したい」との意見や要望をいただきました。
 
 報道の自由度は旧民主党政権当時の10年、11位に上昇した後、下落していますが、私たちは順位にかかわらず、報道の自由が失われていると感じたことはありません。
 
 権力側の動きは常に監視、警戒する必要があるものの、本紙の論説委員は欧米メディアが問題視する記者クラブに頼っていませんし、報道への圧力が強まったとされる第2次安倍晋三政権以降も自由に主張してきたからです。
 むしろ旧民主党政権は発足当初、次官らの記者会見を禁止するなど政府の情報発信を統制しましたので、報道の自由度が11位と高かったことに違和感を覚えます。
 
 読者からは「新聞は世論を代弁して、しっかり発言してほしい。政府や米国だけでなく、野党や中国、ロシアに対しても堂々と意見を言ってほしい」との声も届きます。
 
 私たちは社説を書くに当たり「権力に厳しく、人に優しく」という心構えで臨んでいます。日ごろの自民党政権に対する厳しい論調は、たとえ政権が代わろうが、相手が外国政府であろうが、変わることはありません。 (と)
 
 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】  2024年05月18日  07:12:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

2024-01-05 07:15:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」】:望月衣塑子さんや彼女をリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 『政府に芸能や音楽業界をしっかり監督し、指導するような監督官庁がないことでセクハラが横行しているとの指摘もある』(望月衣塑子・東京新聞社会部記者)

<picture>望月衣塑子氏</picture>

              望月衣塑子氏

               ◇  ◇  ◇

 これは12月27日の官房長官記者会見で、望月氏が質問としてあげた彼女の意見。性加害をしたという噂のある芸人の(某週刊誌にスクープされた)、名前を出してこういった。

 望月さんは、リベラルや左派サイドの、目立つインフルエンサーでもある。あたしは彼女とはリベラルの仲間だと思っているし、彼女はリベラル寄りのニュースを広く拡散してくれる人。だからこそ、もうはっきりという。

 望月さん、なんでもかんでも国を責めるのが正義で、そしてそれがリベラルのカッコいい姿だと思ってません? この世の性加害をなくしたいという気持ちはわかる。しかし、性というデリケートなことに、国の監視や管理を求めてはいけない。

 この世のほとんどの性は自然に営まれる。銃の乱射事件が起こった時に、国に銃の規制を求めるのとは違う。

 性は自由なもの。自由であるべき性に対し国の干渉を許してしまえば、あたしたちの内心の自由も侵されることになる。性に完璧や潔癖を求めることは、差別にもつながってしまうだろう。

 望月さんや望月さんをリベラルの旗印として仰ぐ仲間よ、間違った方向へ突き進んでない?

 人に優しく、寛容なリベラルであったら、推定無罪を貫くべきだ。罪が確定できるまで、国会で個人の名をあげつらって糾弾するのは違う。

 芸能や音楽業界の国の監督とは、治安維持法の特高警察のようなものか? リベラルが、窮屈な世の中を望むのか?

 国の関与で早急に性犯罪のゼロを目指すことは、我々の大切なものを壊す危険につながる。リベラルこそ死守すべき、個人の自由だ。

 それは、性被害をなくすための努力を放棄することではない。確定した罪に対し相応な罰があり、被害者も救済できる、それがあたしの望む世だ。でもって、性の自由もね!

室井佑月
著者のコラム一覧
 ■室井佑月 作家

 1970年、青森県生まれ。銀座ホステス、モデル、レースクイーンなどを経て97年に作家デビュー。TBS系「ひるおび!」木曜レギュラーほか各局の情報番組に出演中。著書に「ママの神様」(講談社)、「ラブ ファイアー」(集英社文庫)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」」】  2024年01月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を

2023-04-11 07:40:00 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・04.04】:政治の表現をあいまいにし、本質論遠ざける言い換えの点検を 

 ★どこぞのこたつ記事は2日、TBS系「サンデーモーニング」で前法大総長・田中優子防衛費を「軍事費」と表現したことがニュースだという。ちなみにこたつ記事とは取材する直接取材せず、テレビやラジオ、ネットで知ったことをそのまま書くことで、こたつに入りながらでも書けることからその名がついたという。話を戻すと世界の軍事費ランキングに米・中・露・印などと並んで日本もランクインしているが、その時に我が国の予算は防衛費だと表記を変えるメディアはいない。ここ数年、メディアは自ら適正適切言葉を使わず、和らげる表現意図的に使ってきた。それでいて使い分けてもいる。

 ★今や犯罪抑止のために不可欠な防犯カメラ。しかし、運用当初は監視カメラとメディアも表記していた。いつの間にか印象が180度変わる表現が当たり前になった。しかし、その役割はいまだ監視が目的に変わりはない。同番組では先月26日にもキャスターがどの番組でも使いたがる「卒業」は使わず「降板」報告をした。これもこたつ記事になったが言葉適切使い方だ。売春を援助交際やパパ活と言い換えたとしても、本質は変わらないことを承知で、新しい言葉やぼんやりとさせる言葉で和らげようとするやり方は社会には存在するだろう。だが、それに引きずられるメディアの表記はいかがなものか。

 ★本来、メディアはこの言い換えに長年腐心してきた。言葉狩りにならぬように、しかしながら差別を助長しないように注意を払い、表現の自由を守ろうとしてきた。だが昨今の言い換えは正確性に欠け、あいまいに拍車をかけるだけのものや、事の本質を避けようとするために言い換えられる場合もある。そしてそれらが政治の表現をあいまいにし、本質論を遠ざけた温床になってはいまいか。点検を急ぐべきだ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2023年04月04日  07:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

2023-02-04 06:20:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・12.17】:昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ

 共同通信の記事によると、防衛省は人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したとのこと。複数の政府関係者への取材で判明したという。

<picture>AIで国民心理をコントロール(防衛省)/(C)日刊ゲンダイ</picture>

 AIで国民心理をコントロール(防衛省)/(C)日刊ゲンダイ

 インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭するのが目的だという。

 こうした報道に対し、防衛省は「全くの事実誤認であり、防衛省として、国内世論を特定の方向に誘導することを目的とした取り組みを行うことはありえない」と否定したが、そりゃそうだよね。

 「これから国民の洗脳工作を行います」などと言うわけがない。防衛省は「情報戦対応」も含めた体制整備を実施するとも述べていたので、これまでやってきた世論工作に積極的にAIの技術を活用するということだろう。

 例によってネトウヨ「論壇人」の類いが、この先、小遣いをもらえるとでも思っているのか、「共同通信による世論誘導だ」などと騒いでいたが、バカのふりをしているのか本物のバカなのか。

 わが国において世論工作が続けられているのは公然の事実である。元官房長官の野中広務は、官房機密費を使って政治評論家やジャーナリストにカネを配っていたことを証言している。

 「インフルエンサー」に世論誘導させるのもお馴染みの手口。これを露骨な形でやり始めたのが小泉純一郎政権だった。2005年のいわゆる郵政選挙の際、自民党と内閣府が広告会社につくらせた企画書には竹中平蔵と著名人を対談させることにより世論を誘導する戦略が描かれている。

 そして実際、竹中とタレントのテリー伊藤による政府広報「郵政民営化ってそうだったんだ通信」が新聞折り込みチラシとして全国に撒かれた。

 防衛予算の大幅増額のためにユーチューバーらに「厳しい安全保障環境」について説明させる計画の件では、防衛相(当時)の岸信夫が「インフルエンサーと呼ばれる方々に、まず理解をしていただけるような説明を行うことは重要だ」と述べ、計画の存在を事実上認めている。

 プロパガンダによりバカを洗脳し動員する悪質な連中が権力を握った結果が今の日本の惨状である。 

 

◆本コラム待望の書籍化!重版決定!kindle版も発売中です。
それでもバカとは戦え」(日刊現代・講談社 1430円)

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年12月24日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年12月17日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

2023-02-04 06:20:40 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・11.19】:デマ、陰謀論…整合性のない「虚偽情報」にだまされるな

 作家・ジャーナリストを名乗る門田隆将という人物がいる。現実と妄想の区別がつかないので、自分の願望に沿うデマを垂れ流し、整合性がなくなれば陰謀論に逃げ込む。

 森友学園の決裁文書改ざん問題を苦に自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんを巡る記事で名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之議員、杉尾秀哉議員が産経新聞社と門田に計880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は計220万円の支払いを命じた。

<picture>東京地裁は、門田隆将氏に支払いを命じる判決(C)日刊ゲンダイ</picture>

 東京地裁は、門田隆将氏に支払いを命じる判決(C)日刊ゲンダイ

 問題の記事には「(両議員は)財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺は翌日だった」とある。両議員が訪れたのは東京の本省で、自殺した職員には面会していない。

 判決は、「当該」との単語が使われ、連続した2文で構成されたこの文章を読めば「読者は、両議員が自殺前日にこの職員を集団的に批判、問責し、自殺の要因になったと理解する」と判断。被告側の「『つるし上げ』の対象は自殺した職員ではないと容易に理解できる」という主張を退けた。

 その後、門田は謝罪するどころか〈唖然…左傾化し正義を捨てた日本の司法〉とツイート。意味不明。そもそも門田は過去に大量のデマを垂れ流してきたいわくつきの人物である。

 今年9月、玉城デニーが沖縄県知事選に出馬した際、門田は〈正体を隠す事なく玉城知事が「誓いましょう!この選挙で玉城知事と共に、日本政府から、アメリカから、沖縄を取り戻す!」と独立宣言〉とツイート。しかし門田が引用した動画は2018年9月に玉城が総決起大会で米軍基地に反対した発言を切り取ったものであり、独立を唱えたものではなかった。

 ネット上に転がっている陰謀論を真に受けたのかは知らないが、米大統領選ではバイデンが不正投票に関わったと決めつけた。

 なお、毎日新聞は事実誤認を拡散させた人物として門田の名前を挙げている。愛知県知事リコール署名不正問題に関しても門田は署名のルールに関するデマを流し、江川紹子から〈「ジャーナリスト」を名乗る者が、簡単に確かめられる事実について、虚偽情報を広げる不幸〉と批判された。安倍晋三は統一教会の天敵だったという荒唐無稽な話も繰り返しているが、デマ屋は表舞台から退場すべきだ。(文中敬称略) 

  

◆本コラム待望の書籍化!重版決定!kindle版も発売中です。
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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年11月19日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

2023-02-04 06:20:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【それでもバカとは戦え・11.12】:公共の電波で垂れ流される星占い…「いかがわしさを軽視する社会」がカルト暴走を許容した

 独立行政法人国民生活センターの資料によると、全国の消費生活センターなどには、占いサイトやアプリに関する相談が年間1000件以上寄せられており、2019年度以降、増加しているとのこと。

<picture>公共の電波で伝えるものでは…</picture>

      公共の電波で伝えるものでは…

 相談事例を見ると〈「必ず宝くじの高額当選に導く」と言われたがいつまで経っても結果が出ない〉〈無料鑑定で三つの「徳」を授けてもらえると言われたが、無料鑑定期間を過ぎても最後の一つを授かることができず、高額なお金を支払ってしまった〉などとばかばかしいものが並んでいたが笑ってはいられない。

 人間は疲れたり追い込まれると判断能力が低下する。こうした人間の一部はカルトのターゲットになり、法外な値段の印鑑や壺を買ってしまったりする。

 アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した「割れ窓理論」というものがある。割れた窓を放置しておくと、誰も地域の環境に注意を払っていないというサインになり、犯罪が増加する。ニューヨークでは、この理論に基づき、徹底的に地下鉄の落書きを消した結果、凶悪犯罪が激減した。

 オウム真理教や統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のようなカルトが暴走する背景にも、いかがわしいものを許容・軽視する社会の空気があると思う。日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日といったキー局が朝の情報番組で垂れ流す星座占いがある。

 各局のウェブサイトで目についたものを適当に拾ってみた。みずがめ座「段取り不足が今日のネック。なんとかなる」、おうし座「行動範囲を広げるとチャンスも同時に拡大。理想のタイプの人にも出会えます」、おひつじ座「問題解決のヒントをGET 困ったら友達に相談しよう ミントティーを飲む」……。

 占いなんて迷信だなどと、子供じみたことを言いたいのではない。理性や合理により、神や仏、人知を超えたものを裁断することの愚かさを知るのが大人でもある。しかし12分の1の国民にミントティーを薦めるのは、そういう次元の話ではない。これは人間の尊厳に対する侮蔑である。公共の電波をつかってこんなものを垂れ流して恥を知らないのか。

 「嫌なら見なければいい」「娯楽なんだから目くじらを立てるな」「法的に問題があるわけではない」──。こうした訳知りふうの意見こそが、割れた窓の亀裂を広げるのだ。

  

◆本コラム待望の書籍化!重版決定!kindle版も発売中です。
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 ■適菜収 作家

 近著に「日本人は豚になる」「ナショナリズムを理解できないバカ」など。著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。詳細は適菜収のメールマガジンへ。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース・連載「それでもバカとは戦え」】  2022年11月12日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮

2022-12-03 08:35:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・12.01】:宮台事件は言論を暴力で封じるテロ 自由に発言できなくなれば社会は萎縮 

 ★11月29日午後4時半ごろ、東京・八王子市の東京都立大学南大沢キャンパスで、同大教授で社会学者・宮台真司が男に刃物で切り付けられ、男は現在も逃走している。報道を総合すると男は20代から30代で、身長180センチくらい、髪は短く、がっちりとした体格で、黒っぽいジャンパーに黒いズボン姿。大学構内で宮台を待ち伏せしていた可能性が高いが宮台は「面識がない」という男に後ろから頭を殴られ、その後、刃物で首などを複数回切られた模様だ。

 ★宮台とビデオニュースで番組を長年続けているビデオジャーナリスト・神保哲生のツイッターによれば「宮台さんの件で病院に来ています。命に別条がないことは病院で確認していますが、方々を切られているので処置に時間がかかっています」「宮台さんは先程、手術が無事終わり、今ご家族が面会しています。たくさん縫わなければならず4時間の大変な手術だったようですが、今は意識もありご家族とは普通に会話をされています」と命に別条はないものの夕暮れの大学構内、刃物で切り付けながら逃走した犯人を警視庁は殺人未遂容疑で行方を追っている。

 ★事件が怨恨(えんこん)なのか言論封殺なのか動機は分からないが、アカデミズムに対しての凶行は言論を暴力で封じるという意味では7月の元首相・安倍晋三襲撃以来のテロリズムといえる。言論界やメディアで宮台と関わりのある人たちの心配する声もさることながら、犯人が逃走していることが不安を駆り立てる。事件の背景は不明でも自由に発言が出来なくなることのマイナスは社会を萎縮させ、結果的に暴力が発言を封じることにほかならず、言論弾圧は政治的背景ばかりで起こるわけではないものの、それが政治的に利用される場合も、わが国100年の言論封殺の幾多の事件の歴史が証明している。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年12月01日  08:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

2022-11-17 07:02:50 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.16】:この連載の第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。だから最終回も沖縄で終わりたい

 ウクライナ東部からロシアが侵攻を始めて9カ月以上となる。この状況を伝える報道に問題はないか? それを考えるシンポジウムが11月1日にあり私も参加した。会場からも質問が次々に出る活発なやりとりに主催団体からも「やって良かった」との言葉が聞かれた。

 しかし数日後、その主催団体のメンバーの一人が私を名指しして「ウクライナ関係でいいかげんなことを吹聴した」と中傷する内容を周囲に送っていた。シンポジウムで私が語ったのは根拠が明確でない国際報道の問題点であって、知りもしないウクライナの状況についてではない。

 悪質な流言だが、そのメンバーは通信社で国際報道に従事していた元記者ということだ。それに私は驚かない。国際報道には、そうした根拠不明な内容を報じるケースが散見されるというのがシンポジウムでの私の発言の趣旨だった。例えばウクライナ発の情報であればゼレンスキー大統領のSNS上の発言以外は、現地の報道や欧米の報道に依拠することが多い。それをあたかも自社が確認した内容のように報じる点に危険がある。それゆえ、情報源の明示が重要になるということを指摘したものだ。さきの米中間選挙でも「トランプ派善戦」といった報道の混乱が見られるが、確認していない現地報道に依拠する粗さに原因を見る。

<picture>普天間基地(C)日刊ゲンダイ</picture>

      普天間基地(C)日刊ゲンダイ

 しかし国内報道でも、沖縄をめぐる報道にはなぜかそうした粗さが見られる。例えば普天間基地の辺野古移設。安倍元首相は何度も「辺野古移設が唯一の選択肢」と繰り返し、それをメディアは報じ続けた。それは菅政権、岸田政権でも踏襲された。私は岸田首相が国会の演説でそれに言及した時に、その言説をファクトチェックした。そして、他の選択肢が日米防衛関係者から既に提案されている事実を紹介し、「誤り」と判定した。その後、岸田首相は「唯一の選択肢という方針」に表現を変えている。それは小欄で紹介したが、「方針」は正しい。事実は変更できないが、方針は変更が可能だ。

 小欄は今回で終わる。第1回は翁長雄志氏の言葉で始まった。最後も沖縄で終わりたい。鳩山由紀夫氏が首相として普天間の県外移設に言及して沖縄入りした日に、私は自民党幹部と那覇市内で会っていた。幹部は私に、「自民党の若手が沖縄に米軍基地があることを当然視するような発言をしているのを見ると腹が立つことはある」と語った。この話はいろいろなところで書いているが、常に匿名にしてきた。実は、その幹部とは、西銘恒三郎前沖縄北方担当大臣だ。沖縄での記者時代、よく飲み歌い、そして語り合った。沖縄国際大学の野添文彬准教授が著書「沖縄県知事」(新潮選書)で「日本の中での地位向上を目指しつつも、沖縄の伝統や歴史を重視し、その利益追求のためには日米両政府とも対峙する」と評した沖縄の保守政治は、西銘氏の父の順治氏が示したものだ。西銘氏にはぜひ、真の沖縄の保守政治家として党を離れて沖縄のことを考えて欲しい。その願いを込めて、最後の回としたい。 (おわり)

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月16日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

2022-11-17 07:02:40 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.09】:NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた

 今年8月、元NHK記者が死亡した。その葬儀に贈られた花を参列者は複雑な思いで見た。送り主が森喜朗元首相だったからだ。

 私は2021年に、「指南書問題」という記事を書いた。その詳細は「NHK記者がNHKを取材した」(電子書籍)で確認していただきたいが、問題発言で政権崩壊の危機にあった当時の森首相に危機を切り抜けるための指南書を記者が書いていたというものだ。当時は誰かは不明とされたが、私の取材でそれがNHKの当時の首相官邸の記者だったことがわかった。

<picture>健全な公共放送になる日は来るのだろうか…(C)日刊ゲンダイ</picture>

 健全な公共放送になる日は来るのだろうか…(C)日刊ゲンダイ

 葬儀は指南書を書いたとされる元記者のものだった。実は当時から指南書を書いたのはNHKの記者だとの指摘はあった。しかしNHKは当時の海老沢勝二会長がそれを否定。私の記事に対しても、NHKは当時の会長答弁を繰り返した。私は記事で、NHKにその検証を求めた。それがNHKの再生に不可欠だと考えたからだ。しかし当事者の死で、その機会は失われた。

 本来、報道機関とは何か問題が起きれば事実を解明すべき存在だ。では、NHKは自らに不都合な問題が起きた時、それに向き合ってきただろうか? 私にはその印象はない。どちらかというと、世間が忘れるのを待つというのがその印象だ。そのひとつがこの指南書問題であり、もうひとつが小欄で何度も取り上げている佐戸未和さんの過労死の問題だ。小欄も残すところ2回となった今回、やはりこの問題を取り上げないわけにはいかない。

 その未和さんの勤務先だった東京都庁の記者クラブでキャップとして勤務していた記者も過労死している。NHKはその際、「再び労災認定を受けたことは痛恨の極みであり、大変重く受け止めています」とのコメントを出しているが、そもそもNHKは未和さんの過労死を教訓にしていない。そう断言できるのは、未和さんの過労死について調査報告書さえ存在しないからだ。その結果、この問題を小欄で取り上げている私にNHKの現役の職員から「あれは持病によるもので過労死ではない。遺族がうるさいのでNHKが過労死にしてあげた」などとする指摘が届いている。もちろん、これは事実ではない。過労死と認定した労働基準監督署は未和さんの健康診断のデータも確認した上で判断を下している。また、NHKが未和さんの情報を積極的に労基署に提出したという事実もない。

 実はNHKには在職中に職員が死亡するケースが少なくない。2017年までの10年間で、91人が在職中に死亡している。多い年で12人、少ない年でも6人が死亡している。それらの中で労基署が調査したら過労死と認定されるケースはあるのではないか? 未和さんの過労死についての調査報告書がない事実が、そうした疑念を抱かせる。

 未和さんのご遺族の要望は、調査報告書の作成と健全な公共放送の運営だ。これは冒頭の指南書問題にも通じる。世間が忘れるのを待つという姿勢を変えない限り、NHKが健全な公共放送になる日は来ない。NHKは現在、改革を声高に叫んでいる。しかし自らに厳しい目を向けない限り、その体質は変わらないだろう。 

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月09日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

2022-11-17 07:02:30 | 【報道=事実に裏打ちされた報道、ファクトチェック(事実検証)・フェイク(偽...

【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ファクトチェック・ニッポン!・11.02】:新聞・放送の記者は公式発言をフォローする取り組みに消極的だが…CIAの仕事の9割は首脳発言の分析

  10月11日に報じられたCNNのバイデン米大統領の独占インタビュー。「プーチン氏が何を考えているのかはわからないが、彼は(ロシア軍は)ウクライナから撤退できる。そして恐らく彼は権力の座にとどまれる。『ウクライナ侵攻の目的を達した。ロシア軍が撤退する時期だ』と宣言して」と語った。

<picture>2018年に行われた米朝首脳会談(C)ロイター</picture>

  2018年に行われた米朝首脳会談(C)ロイター

 バイデン氏の発言をフォローしている私には、それは大きな変化と感じられる。これまでのバイデン氏の発言はプーチン氏の失脚を目指していたと考えられるからだ。「Go get him(やっちまえ)」と語った一般教書演説や、「彼はそのポストに残れない」といった発言とは明らかに異なる。プーチン氏の失脚を狙わずに、ウクライナからのロシア軍の撤退を目指す方向に舵を切ったということだろう。ある意味で現実的な選択とも言える。G7のオンライン会議の直後のインタビューだけに、独仏首脳とのやりとりの中でバイデン氏が方向を修正したということだろう。

 私は「国際ジャーナリスト」と紹介されることが多い。NHKの社会部で事件記者として過ごした私が、そう紹介されるきっかけはトランプ前米大統領だ。トランプ氏の言動をアメリカでフォローしていた私が最初にテレビへの出演を求められたのはトランプ氏が(北)朝鮮に対して「炎と怒りで対応する」と語った直後だった。(北)朝鮮の「専門家」が「米朝対決」とあおる中で、番組で私は、トランプ氏は金正恩氏に親近感を持っており、米朝会談もあり得ると予想した。まだ米朝会談の噂さえない2017年の8月のことだった。

 また、最初の米朝会談を前にトランプ氏が金正恩氏を屈服させると力説する「専門家」を前に、「トランプ氏が朝鮮半島情勢や東アジアの安全保障に関する明確な方針を語った事実はない」と話し、それ故に会談で成果は望めないと指摘した。「専門家」から、「あなたはトランプ大統領を見誤っています」と言われたが、さて、その「専門家」はその言動をどう総括しているのか。しかし、ここでそれを書きたいわけではない。

 結果的に私が言った通りになっている状況は、別にヤマをはったわけでも「逆張り」をしたわけでもない。単純に首脳の言動を追って判断しただけのことだ。トランプ氏、バイデン氏の公式な発言は確認することができる。それをフォローし、整理することで、米首脳の考えを一定程度、分析することが可能だ。

 実はこれは、アメリカの大学で同僚だった元CIAの情報分析官が語ったことにヒントを得ている。その同僚によると、CIAの仕事の9割は首脳の発言の分析だったという。その発言とは、傍受するなどの非公式なものではなく、誰でも確認できる公式のものだという。

 残念ながら、新聞、放送の記者は、公式発言をフォローするという取り組みに消極的だ。誰も知らない極秘情報の入手に努める傾向が強いということもあるが、成果主義で地味で根気のいる作業が敬遠される部分もある。当然、私はこの地味な作業を今後も続けていく。

 ※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。 tateiwa@infact.press

立岩陽一郎
 ■立岩陽一郎 ジャーナリスト

 NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部客員教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」発売中。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ファクトチェック・ニッポン!」】  2022年11月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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