路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説②】:頼政権と中国 火種としない知恵絞れ

2024-05-20 07:23:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説②】:頼政権と中国 火種としない知恵絞れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:頼政権と中国 火種としない知恵絞れ

 台湾で与党・民進党の頼清徳(らいせいとく)氏が総統として率いる新政権が20日にスタートする。1月の総統選で中国は頼氏を台湾独立派と敵視して「戦争か平和の選択」になると主張。軍事演習も行って「圧力」をかけたが、中国が当選を望んだ野党・国民党候補などを破り、頼氏が当選した。

 1996年に総統直接選挙が実現して以降、同一政党が初めて3期連続で政権を担うことになる。その民意は、統一も独立も求めない蔡英文(さいえいぶん)政権の「現状維持」の継続による東アジアの平和・安定にあるといえる。中台双方が台湾海峡を地域の火種とせぬよう知恵を絞ることが肝要だ。
 船出する頼政権の不安要因の一つが頼総統の「独立志向」だ。行政院長(首相)時代に立法院(国会)での答弁で「私は台湾独立のための堅実な仕事人」と発言し、物議をかもしたが、総統候補になってからは独立色を抑え、蔡路線の継承を訴えてきた。
 頼氏は政権発足に先立って4月に記者会見を開き、蔡政権で行政院秘書長を務めた卓栄泰(たくえいたい)氏を新内閣の行政院長に任命すると発表した。蔡路線の継承を示唆する人事は、各種世論調査で「現状維持」支持が約7割を占める台湾の人たちに安心感を与えたといえる。
 一方、中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は中台統一を歴史の必然とし「武力行使の放棄は決して約束しない」と強調している。だが、軍事的威圧を強めれば、安定を求める台湾の民意を中国から離反させることは総統選結果からも明らかだ。
 中台双方に何よりも求めたいのは、2016年の蔡政権の発足時から中国が拒否している政治レベルの対話再開への努力である。
 日米など民主主義の価値を共有する関係国も、台湾との結束を強め、中台の政治対話再開の動きを後押ししたい。日本は台湾との正式な外交関係はないが、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出など経済的な結びつきは深い。
 頼政権には直面する台湾東部沖地震の対策のほか、賃金格差や住宅価格高騰など内政の課題も山積している。悩ましいのは、立法委員選挙で民進党51対国民党52で敗れ、国民党に議長ポストを握られた「ねじれ議会」となることだ。
 頼氏は台南市長時代から野党との対決も辞さない姿勢で知られてきたが、野党との調整を含め柔軟な議会運営に努める必要がある。
 
 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月17日  08:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《社説②》:習・プーチン会談 中国は停戦へ関与強化を

2024-05-20 02:04:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

《社説②》:習・プーチン会談 中国は停戦へ関与強化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:習・プーチン会談 中国は停戦へ関与強化を

 世界の安定を語るのであれば、その実現に向けて具体的に行動しなければならない。

 ロシアのプーチン大統領が通算5期目の初外遊として中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。

共同声明に署名した後、握手を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=北京の人民大会堂で16日、新華社AP

 強調されたのは両国の結束だ。習氏は「中露関係の発展は世界の平和と安定、繁栄に資する」と述べ、プーチン氏も「協力を拡大し、より公正で合理的な国際秩序を構築したい」と表明した。

 会談後に発表された共同声明は、合同軍事演習の規模拡大や貿易・投資の促進、金融や人工知能(AI)、宇宙といった分野での連携強化などを打ち出した。

 両国を結びつけるのは、米国への対抗姿勢だ。中国は米主導による包囲網形成を警戒し、ウクライナに侵攻したロシアは制裁を科されている。中露主導のBRICSや上海協力機構を通じ、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国を取り込む思惑も一致する。

 ウクライナ戦争で中露関係は様変わりした。2023年の貿易総額は前年比26・3%増の2401億ドル(約37兆円)と過去最高を更新した。中国はロシアから原油や天然ガスを大量に購入することで間接的に戦費を支える一方、電子部品をはじめ軍事転用可能な物資をロシアに輸出している。

 戦争の長期化でロシアにとって中国は頼らざるを得ない存在となっている。習氏は「ウクライナ危機の政治的解決が正しい方向」と説明する。中国は現在の力関係を生かしてロシアに影響力を行使できるはずだ。

 米欧はウクライナ支援を継続しているが、侵攻開始から2年以上が過ぎ、各国の世論には「支援疲れ」も出ている。

 来月にはウクライナが提唱する和平案について話し合う首脳級の国際会議がスイスで開催される。ロシアは招待されておらず、中国も距離を置いている。

 だが、他国の領土を踏みにじる国際法違反から目を背け、関係の緊密化を図るだけでは国際社会の信頼は得られまい。

 習氏は「欧州の平和と安定が早期に回復することを期待し、建設的な役割を果たしたい」と語った。そうであるならば、ロシアに対して軍の撤退と停戦の働きかけを強めるべきだ。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月19日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・05.10】:中国秘密法改正 不透明な運用が心配だ

2024-05-10 05:05:55 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説①・05.10】:中国秘密法改正 不透明な運用が心配だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・05.10】:中国秘密法改正 不透明な運用が心配だ

 中国で国家機密の管理を徹底するために改正した国家秘密保護法が、今月から施行された。

 共産党による指導を強化し、海外への流出防止を徹底することが柱だ。昨年7月に施行された改正反スパイ法と合わせて、監視を強化する狙いがある。
 だが条文の内容はあいまいさが目立ち、何が国家秘密に当たるのかが判然としない。法制度の不透明な運用がいっそう懸念される。
 習近平国家主席は国家安全を重視し、外国人や外国と関わる中国人への統制を強めている。国民の愛国心を高める法律も制定した。「習1強」下で統制の強化に向けた法整備は加速する一方だ。
 中国では昨年3月にアステラス製薬の日本人男性社員が反スパイ法違反容疑で拘束された。日本の大学に在籍する中国人教授らの拘束も相次いでいる。
 拘束理由など明らかになっていないことばかりだ。中国は恣意(しい)性が疑われないように対応することが求められている。それには情報開示の徹底が不可欠だ。
 国家秘密保護法は1988年に制定され、今回の改正で何が国家機密に当たるのかを担当部門が単独で決定することが可能になった。共産党指導部の意向を反映しやすくしたのだろう。
 日本企業の駐在員らの間で警戒感が広がっているのは当然だ。中国は海外からの投資の呼び込みに力を入れているが、逆行した対応だと言うほかない。
 改革開放政策では、海外からの技術の導入があったからこそ経済発展をなし遂げたことを忘れてはならない。
 3月には神戸学院大の胡士雲教授が昨夏に中国に一時帰国した後に消息不明になり、先月には亜細亜大の范雲濤教授が昨年2月に中国に一時帰国した後、消息を絶ったことが、それぞれ判明した。
 北海道教育大札幌校の袁克勤元教授は2019年に一時帰国してスパイ容疑で拘束され、その後起訴されている。
 中国当局が、日本在住の中国人研究者を標的にしている可能性がある。これでは日中間の人的往来が阻害され、教育や文化などでの交流は停滞せざるを得ない。
 日本政府は早期解放に全力を尽くしてもらいたい。だが岸田文雄首相と習氏による首脳会談は昨年11月の開催以降、予定がない。
 今月下旬には19年末以来の日中韓首脳会談の開催が調整されている。日本はこうした場も利用して働きかけを強める必要がある。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.02】:中国で消息不明 統制強化で人権を侵すな

2024-05-04 06:05:35 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説・05.02】:中国で消息不明 統制強化で人権を侵すな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.02】:中国で消息不明 統制強化で人権を侵すな 

 国家の安全を強化する必要があっても、人権をないがしろにしてはならない。中国の習近平政権が進める統制強化に怖さを感じる。

 日本に住む中国人研究者が一時帰国中の中国で失踪する事案が相次いでいる。

 中国籍の亜細亜大教授が昨年2月に帰国して以降、消息不明になっていることが最近明らかになった。

 これについて中国外務省は記者会見で「状況を把握していない」としているが、消息を絶つ前に中国当局者の接触を受けており、拘束された可能性がある。

 今年3月には、神戸学院大の教授が昨年夏に帰国してから消息がつかめないことが明らかになった。不可解な点が多く、心配な状況だ。

 中国当局は2019年に、北海道教育大の教授だった中国人をスパイ容疑で拘束し、後に起訴している。

 国家安全を重視する習政権は「スパイ」の摘発を強化している。日中双方の情報を持ち、幅広い人脈を持つ日本在住の中国人研究者を標的にしていると指摘される。

 日本人を含む外国人の摘発も少なくない。昨年3月、アステラス製薬の日本人社員がスパイの疑いで拘束され、同年10月に逮捕された。14年の反スパイ法施行後、少なくとも17人の日本人が拘束されているのは看過できない。

 中国は23年に反スパイ法を改正し、取り締まりを強化した。当局が「国家の安全と利益」に関する情報の提供、収集の疑いがあると判断すれば摘発できるようになった。

 亜細亜大教授の失踪について、林芳正官房長官は記者会見で「人権に関わり得る事案であるため、関心を持って注視している」と述べた。

 日本在住者の身辺を危うくする問題である。日本政府は中国に対し、速やかに事実関係を調査して報告するよう求めなければならない。

 アステラス製薬の事案を受け、当時の垂(たるみ)秀夫駐中国大使は拘束された社員への領事面会に臨み、後任の金杉憲治大使も面会した。

 大使による面会は異例だ。早期解放を求める日本政府の姿勢を中国側に強く示す行動と言える。評価したい。

 日中関係は重要だが、人権侵害に関することで中国政府に遠慮する必要はない。問題があれば、毅然(きぜん)として適切な対処を要求すべきだ。

 スパイ摘発を目的とした法の不透明な運用や拘束は、中国の利益にならない。

 最近は中国問題を専門とする日本の研究者や友好団体の関係者も、不当な拘束を恐れて訪中を控えている。日中交流への影響は大きい。

 外国企業では中国への社員派遣や投資をためらうだけでなく、現地から撤退する動きも出ている。中国経済には軽視できない打撃だろう。

 日本政府はこうしたマイナス面を中国に説き、拘束された人の早期解放と反スパイ法の見直しを訴えるべきだ。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・05.01】:台湾と能登

2024-05-01 07:01:50 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【天風録・05.01】:台湾と能登

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・05.01】:台湾と能登

  豆乳に酢を入れ、ほろほろになったスープは朝一番の口に優しい。夜市では香辛料の利いた焼き肉まんを頬張った。台湾への旅行中、現地ガイドから13食全ての外食は茶飯事と聞いた

 ▲胃を満たし熟睡していた翌日夜明け前、横揺れで飛び起きた。台湾東部沖地震の余震は、100キロ以上離れた台北市の宿泊先にも及んだ。頭をよぎったのは4月初旬の本震の映像である

 ▲ビル損壊や崖崩れは怖いが、避難所は日本と違った。発生から1日もたたないうちにテントが整備され、日常の外食文化をほうふつとさせる温かい食事も。温水シャワーやクリーニングの衛生面だけではない。無料WiFiと、かゆいところにも手が届く

 ▲日頃から行政とボランティア団体が連絡を取り合うらしい。必要な物資や被災者のニーズに沿い、事前に役割分担する。過去の台風や地震の教訓を生かす仕組みだ。災害大国のこちらはと、ため息をつきたくもなった

 ▲きょう能登半島地震の発生から4カ月。行政が当初制限したボランティアは増えつつある。なりわいの再開や、復興まちづくりで東日本大震災や熊本地震の被災者が手を貸す。日本らしい助け合い文化を見せる番でありたい。

 元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2024年05月01日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【論説・05.01】:米国務長官訪中 危機管理は大国の責務

2024-05-01 04:01:50 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【論説・05.01】:米国務長官訪中 危機管理は大国の責務

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【論説・05.01】:米国務長官訪中 危機管理は大国の責務 

 ブリンケン米国務長官が訪中し、習近平国家主席や王毅外相らと会談した。米中両国の対立は構造的で、利害対立も深刻だ。こうした状況では、誤解から衝突などが起きる懸念がある。双方が接触を密にすることは危機管理のために重要な意味があった。

北京の人民大会堂で握手を交わすブリンケン米国務長官(左)と中国の習近平国家主席=4月26日(AP=共同)
北京の人民大会堂で握手を交わすブリンケン米国務長官(左)と中国の習近平国家主席=4月26日(AP=共同)

 ただ、すれ違いの感が強い会談であったことは否めない。ブリンケン氏は台湾海峡の安定の重要性を強調。中国は台湾問題を「越えてはならないレッドラインだ」と改めて強調し、台湾への武器支援の停止を要求した。さらに「中国の発展の権利を奪うな」と主張、半導体など先端技術での対中規制の撤回も求めた。

 ブリンケン氏は帰国前の記者会見で、中国はロシアの武器製造に必要な物資の「最大の供給源」になっており、ロシアの軍事産業を支えていると指摘。「深刻な懸念」を伝達したと明らかにした。中国側から前向きな返答は得られなかったもようで依然溝は深い。

 その一方で、衝突回避のための意思疎通など、危機管理の重要性で一致できたことは評価したい。

 「対話のための対話」との声もあるが、米側は「対話こそ重要で、両国間で外相同士が往来すること自体が成果だ」と指摘する。中国側も同様だろう。

 中国の偵察気球が米本土に飛来しブリンケン氏の訪中が延期された昨年2月ごろに比べ、米中関係は「まったく違う状況」(米政府高官)にまで好転している。今年4月には電話での首脳会談に続き、イエレン米財務長官が訪中し経済交流面で地固めに臨んだ。両国国防相のテレビ会談も行われた。

 こうした積み重ねが誤解による衝突を防ぎ、信頼関係の構築につながることを期待したい。危機管理は、世界で1、2位を占める軍事大国の責務だ。

 中国にとって米国は最大のライバルであり、米国主導の国際秩序に不満が強い。だが軍内の腐敗の深刻化や不動産不況による経済の悪化など国内事情もあり、当面は関係改善を望んでいる。

 米国は11月に大統領選挙を控える。中国側には、民主党から共和党に政権が移っても、米中関係が迷走しないよう、対話の制度的枠組みを今のうちに構築しておきたいという狙いもあっただろう。バイデン政権側も対話継続の仕組みを求める思惑は同じはずだ。

 米中関係では、日本の存在が重要度を増している。今回の米中対話に先立ち、岸田文雄首相が訪米。日米は軍事大国化する中国を念頭に在日米軍の体制を強化し、即応性を持たせる抑止力強化に大きく踏み出した。

 米国が防衛負担の一端を同盟国に預けようとする潮流に合わせ、日本は他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有準備を進める。

 しかし、米国が描く東アジア安全保障の枠組みに一層深く組み込まれつつある日本に対し、中国は「危険な道を暴走している」(国営通信新華社)と危機感をあらわにしている。

 地理的に中国と直接向き合う日本には、中国側の懸念をより正確に把握した上で、米国とは違うアプローチを編み出す知恵と努力が必要になる。現時点で日本と中国の対話の仕組みは脆(ぜい)弱(じゃく)であり、民間交流なども活用した対話メカニズムを充実させるべきだ。

  元稿:山陰中央新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【論説】  2024年05月01日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を

2024-04-06 05:01:45 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説①】:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を

 台湾をまた大きな地震が襲った。日本は、被災体験を共有する隣人として、官民挙げて、できる限りの支援をしたい。

 台湾東部の花蓮沖を震源とする地震が3日に発生し、最大震度6強を観測した。複数の死者が出たほか、1000人以上が負傷している。日本の気象庁は、地震の規模をマグニチュード(M)7・7と推定している。

 台湾は地震の多発地帯で、M7前後の地震が過去にも起きている。今回の地震は、2400人以上が死亡した1999年の台湾大地震以来、最大規模だという。

 最も揺れが強かった花蓮では、建物の倒壊や落石が相次ぎ、道路が寸断された。大勢の人が山間部のホテルなどに取り残され、連絡が取れない人も多数いるという。被害の広がりが心配される。

 大きな余震にも警戒が必要だ。当局は、被災者の一刻も早い救助に力を尽くしてもらいたい。

 台湾では1階部分を駐車場などにする建物も多く、かねて耐震性への懸念が指摘されてきた。台湾大地震後に耐震基準が強化されたが、東部は西部と比べて都市整備が遅れ、古い建物が目立つ。

 そうした事情が重なり、被害を大きくした可能性がある。今後改めて検証を進め、災害に強い街づくりに生かしてほしい。

 台湾に集積する半導体メーカーの工場も被災し、稼働を一時停止するなどの影響が出た。

 ハイテク機器に使われる最先端半導体の生産は、世界の9割を台湾に依存している。供給網が1か所に集中するリスクが、改めて浮き彫りになったと言えよう。

 これまで台湾からは、日本が困難に見舞われた際、いち早く支援の手が差しのべられてきた。

 東日本大震災では世界最大規模となる200億円以上の義援金が寄せられた。元日の能登半島地震でも25億円が早々に集まった。コロナ禍では、日本へ200万枚のマスクが贈られたこともある。

 台湾大地震の際、日本から政府の援助隊やボランティアらが現地入りし、阪神大震災の経験を生かして救助や仮設住宅の提供に奔走した。こうした支援を台湾の人は記憶してくれているのだろう。

 今回の地震を受け、岸田首相は「隣人である台湾の困難に際し、日本は必要な支援を行う用意がある」と表明した。必要があれば、すぐに申し出てほしい。

 互いの恩返しは日台関係の深さの象徴だ。政府は今後の復興も含め、迅速に支援に動けるよう、万全の態勢を整える必要がある。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:中国の全人代 「党政分離」に立ち返れ

2024-03-08 07:55:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説②】:中国の全人代 「党政分離」に立ち返れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:中国の全人代 「党政分離」に立ち返れ 

 中国共産党トップの習近平(しゅうきんぺい)総書記(国家主席)への一層の権力集中を印象づける全国人民代表大会(全人代=国会に相当)となった。1993年から続いてきた閉幕後の首相の内外記者会見が今年からなくなることが象徴的だ。
 
 昨年就任した李強(りきょう)首相は党内序列ナンバー2だが、習氏の地方勤務時代からの部下であり、首相の権限が縮小された可能性がある。
 
 1年に1度行われる全人代は最高の国家権力機関。閉幕後に恒例として行われてきた会見は、国務院(政府)を率いる首相が国内外に政見を発信する機会だった。それを取りやめるのは、たとえ中国憲法に「党が国家を指導する」と規定されているとはいっても、行きすぎた党主導ではないか。
 
 こうした傾向は、かつてのリーダー、鄧小平(とうしょうへい)が提唱して実践した「党政分離」に逆行するものといえる。党と政府の職責を分離し、行政部門は国務院に委ね、党は政治に徹する仕組みである。大きな被害をもたらした毛沢東(もうたくとう)による文化大革命(1966~76年)の背景に、党と政府が一体化して毛に権力が集中したことがあるとの反省に立ち、文革後に鄧が進めた政治改革の柱の一つだったが、形骸化がうかがわれる。
 
 全人代でも、李首相は政府活動報告の中で「この1年の成果の根本は、習近平総書記のかじ取りにある」と賛美一辺倒だった。習氏が党主導を強め、政府のトップたる李首相が党に擦り寄って党と政府の一体化がさらに進んだ感のある今回の全人代は、毛時代のような独裁体制に回帰する重大な転機ともなりかねない。
 
 全人代では、約1兆6700億元(約34兆8千億円)の国防予算も発表された。日本の2024年度防衛予算案の4倍を超える規模だ。国防費の伸びは前年比7%超と、今年の経済成長率目標「5%程度」を大きく超える。
 
 台湾問題に関し、李首相は政府活動報告で「『台湾独立』分離活動と外部の干渉に断固反対する」と強調した。中国は1月の台湾総統選で勝利した民進党政権を「独立派」と見なして警戒し、揺さぶりを続けている。経済不振にあっても、手厚い国防予算を確保して軍拡路線を続ける姿勢には、民進党政権に圧力をかける狙いも透けて見える。威迫的な姿勢で、台湾海峡の緊張をいたずらに高める振る舞いは厳に慎むべきだ。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月07日  06:41:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:総統選後の台湾 中国の圧力は逆効果だ

2024-02-28 07:19:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説②】:総統選後の台湾 中国の圧力は逆効果だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:総統選後の台湾 中国の圧力は逆効果だ

 1月の台湾総統選で、頼清徳(らいせいとく)副総統が当選し、中国とは距離を置く与党・民進党政権が継続することを受け、中国は台湾と外交関係を有する南太平洋の島国に断交圧力をかけている。中国は間接支援してきた野党・国民党の候補が敗れた総統選の結果について「民進党は(台湾)島内の主流の民意を代表できない」と不満を隠さないが、台湾人が民主的な選挙を通じて示した民意を尊重すべきだ。 

頼 清徳
賴 清德
Lai Ching-te

中華民国副総統として公開された公式写真(2020年)
 
台湾総統選での勝利を喜ぶ頼清徳氏(中央)=13日、台北で(AP)

台湾総統選での勝利を喜ぶ頼清徳氏(中央)=13日、台北で(AP)

 総統選では、頼副総統が、対中融和路線をとる国民党の侯友宜(こうゆうぎ)新北市長らを破り、初当選した。
 
 中国の南太平洋での外交攻勢は露骨だった。ナウルは頼氏の当選2日後の1月15日に台湾との断交を発表し、24日に中国と国交を樹立。ナウルはオーストラリアを目指す難民対策のため、同国の援助で造った収容施設運営の赤字支援を中国に求めたという。また台湾との外交関係を堅持してきたツバルも同月下旬の総選挙で親台湾派の首相が落選。議会には中国と国交を結ぼうとする動きがある。
 
 蔡英文(さいえいぶん)政権の2期8年間で、中国の圧力を受けた10カ国が台湾と断交し、今も国交を維持する国は12カ国に激減。中国は台湾の「外交空間」をさらに狭める戦略を継続する構えだ。だが、選挙介入や外交攻勢は、自分は中国人ではなく台湾人と考える「台湾人意識」が主流となった台湾人の中国への反感や不信を募らせるだけだ。
 
 総統選直後を狙い撃ちしたような中国とナウルの国交樹立について、国民党さえも「2300万人の感情を傷つけた。台中対話の助けにならない」と、中国批判の声明を出したのが証左といえる。
 
 2月中旬にドイツで行われた米中外相会談でも、王毅(おうき)外相が、台湾独立を支援しないよう米側にくぎを刺すなど神経を尖(とが)らせるが、台湾への圧力は逆効果でしかないことを中国は自覚すべきだ。
 
 台湾の国会に当たる立法院で民進党は少数与党であり、新総統は「ねじれ議会」で難しい政権運営を迫られる。だが、地金の「独立志向」を出すのは得策でない。
 
 同党の陳水扁(ちんすいへん)元総統は就任時に独立を求める動きはしないと公約したが、少数与党の政権運営に苦しみ、ナショナリズムに訴えるため前言を翻して2期目に挑んだ。結果、再選はされたが、結局は中台関係の緊張を招き、米国の信頼も失って孤立した。頼氏は、これを教訓とすべきだろう。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月28日  07:19:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:中国を仮想敵に 対話の機運に水を差す

2024-02-20 07:20:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説②】:中国を仮想敵に 対話の機運に水を差す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:中国を仮想敵に 対話の機運に水を差す

 米軍と自衛隊が2月上旬、「台湾有事」を想定した最高レベルの指揮所演習で、中国を初めて仮想敵国と明示したことが共同通信の報道で明らかになった。

 米中の軍当局は交流を再開させたばかりだ。中国を仮想敵とする演習は対話の機運に水を差しかねないと懸念する。
 
 指揮所演習では実際の地図なども使用し、アジア地域を管轄する米インド太平洋軍と自衛隊が作戦内容を調整。台湾有事にどう関与するかを確認したとみられる。
 
 これに対し、在日中国大使館は中国を仮想敵とした演習に「中国の統一を妨害する者があれば、必ず重い代償を払う」と即座に反発し、日米の動きをけん制した。
 
 中国を巡っては、米国の外交・安全保障専門家らの間で「2027年危機」という臆測が依然消えていない。
 
 共産党の軍隊である人民解放軍が創設100周年を迎えるこの年、習近平(しゅうきんぺい)総書記(国家主席)が4期目を目指すためにも、武力による台湾統一に踏み切るのではないかとの見方だ。中国の軍備増強により現実味を増している。
 
 習氏は昨年11月、バイデン米大統領との首脳会談で、27年の軍事行動を否定し、台湾の平和統一を重ねて強調。両首脳は米中の偶発的な衝突を避けるため、軍・国防当局間の対話再開で合意した。
 
 習氏は武力行使を放棄していないものの、経済成長が急減速する中、武力統一が招く最悪の結果を十分に理解しているはずだ。
 
 実際、米中高官は1月上旬「防衛政策調整対話」を約2年半ぶりに開催。オースティン国防長官と董軍(とうぐん)国防相とのトップ会談開催を模索するなど対話基調にある。
 
 中国が統一を目指す台湾総統選では、中国が「独立派」と敵視する民進党の頼清徳(らいせいとく)氏が勝利した。中国の戦闘機・艦船は台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を越えて進入を繰り返すだろう。
 
 しかし、南シナ海の上空で頻発していた中国軍機による米軍用機への異常接近は報告されなくなった。対話継続の環境を整えるため習政権が米軍への挑発行為を抑制していることがうかがえる。
 
 アジア太平洋地域での軍事衝突を抑止するため、日米が平時から協力態勢を確認することは必要だとしても、対話の機運を阻害するような振る舞いは、それが演習であっても慎むべきであろう。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月19日  07:25:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:コロナ後の中国 懸念される社会の萎縮

2024-02-15 07:56:40 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説②】:コロナ後の中国 懸念される社会の萎縮

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:コロナ後の中国 懸念される社会の萎縮 

 高い経済成長を続けてきた中国が「コロナ後」、明らかに元気がない。経済がふるわない背景には規制強化に端を発する不動産バブルの崩壊があるが、3年にわたった強権的な「ゼロコロナ政策」の下で、厳格な統制を続けたことが若者を中心に社会を萎縮させ、活力をそいでいるように映る。
 
 中国国家統計局が、先月発表した2023年の国内総生産(GDP)成長率は実質で前年比5・2%増だった。中国政府が掲げた、低めというべき当初目標の「5%前後」をどうにか達成した。
 
 厳格な行動制限を伴う「ゼロコロナ政策」の終了によって消費は一定程度、回復。統計局担当者は「中国経済は好転し、就職や物価も安定している」と、楽観的な見方を示したが、中国経済は高速鉄道建設などのインフラ投資に支えられているのが実情だ。
 
 コロナ前から成長の柱だった不動産開発の投資額は前年比9・6%減で、2年連続でマイナス。デフレ懸念もくすぶり、先行きには悲観的な見方が広がっている。
 
 中国社会に目を向けると「ゼロコロナ」の間の政府の強権的かつ画一的な統制が社会を萎縮させ、「事なかれ主義」がまん延したようにも見える。中国メディアは競争に背を向けた「寝そべり族」や、なるべく消費しない「不買族」と言われる若者の増加に警鐘を鳴らしている。特に「家を買わない、結婚しない、子供を持たない」という人生観を持つ「寝そべり族」の増加は少子高齢化を加速させ、将来の国力にも大きなダメージを与えかねない。
 
 統計局は昨年7月分から取りやめていた若者の失業率の発表を再開し、同12月の16~24歳の失業率は14・9%だった。同6月は過去最悪の21・3%。大学生を含めない集計法に変更したため失業率は改善したかに見えるが、若者、特に大学生が中国という巨大なパイの縮小に苦しんでいる実態が逆に浮き彫りになったともいえる。
 
 中国政府は22年末、若者らの抗議運動で「ゼロコロナ」撤廃に追い込まれたが、「人々の命と健康を守り、決定的な勝利を収めた」と自画自賛。その後も新たな反スパイ法や愛国主義教育法制定など共産党支配の徹底を図っている。
 
 規制強化を嫌い海外に移住するIT企業経営者などの富裕層も増えている。締め付け一辺倒を見直す時期ではないか。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月15日  07:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【視点】:暗雲漂う中国経済 統制強化に不安と嫌気 中国総局・新貝憲弘

2024-02-11 07:25:20 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【視点】:暗雲漂う中国経済 統制強化に不安と嫌気 中国総局・新貝憲弘

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【視点】:暗雲漂う中国経済 統制強化に不安と嫌気 中国総局・新貝憲弘

 中国経済に暗雲が漂っている。上海の株式市場は昨年後半からの下落傾向が止まらず、中国政府の景気対策は「見かけだけで中身がない」(政府系シンクタンク研究者)と見透かされて効果はいまひとつ。しかも「市場や企業にとって、政策のないことが最良の政策の時もある」「政府の権限縮小こそが経済の活力」(経済メディア)とまで皮肉られる始末だ。

 原因として不動産危機や地方財政難などが挙げられるが、根本には習近平(しゅうきんぺい)政権の政策に対する「信頼の欠如」(独立系シンクタンク)がある。統制強化が経済にも及び、民間企業は改革開放路線が終わるのではと疑心暗鬼に陥り、外資も嫌気がさしている。
 
 その一例が習政権が今年の経済方針の一つに挙げた「中国経済光明論」。前向きな話題を積極的に取り上げて景気浮揚のムードを喚起しようという「経済宣伝と世論の誘導」で、昨年の輸出入実績では自動車輸出が日本を抜いて世界一となったことや東南アジアとの貿易拡大を官製メディアがアピールした。メディアを管理する中央宣伝部の意向を受けたものとみられるが、米ドルベースで総額が減少した点や欧米との貿易縮小には触れなかった。
 
 都合の悪いデータの公表を控える傾向も目立つ。国家統計局は、昨年7月分から16~24歳の若者失業率の公表を取りやめた。大学新卒者の就職難で若者の失業率が社会問題になったことが背景にあったといわれ、昨年12月分から学生分のデータを除いて公表を再開した。この結果、数値は改善したが実態は分かりにくくなった。
 
 さらに「反スパイ法」が外資の中国ビジネス環境に影を落とす。担当部門の国家安全部は「発展と安全は両輪」と強調するが、国家の利益に反する行為を行ったとして日本人を含めた外国人を拘束しており、外国企業の腰が引けているのは言うまでもない。
 
 これでは「中国市場を選ぶことはリスクではなくチャンスだ」(李強(りきょう)首相)と呼びかけても誰も信じないだろう。中国の大手IT企業に勤める友人は「中国経済を動かしているのは中央宣伝部と国家統計局、国家安全部の3部門だと言われている」と憂える。
 
 経済誌「財新週刊」も社説で、今求められるのは「教条(主義)から脱却して現実と向き合うことだ」と中国経済光明論をやゆした。ただ、習氏の権力が強すぎて誰も異論を唱えられない雰囲気があり「当面は統制強化の流れは変わらない」(友人)と諦めの声が漏れる。
 
 先の社説は、社会全体が混乱した文化大革命(1966~76年)に触れ「国民経済は崩壊の危機に瀕(ひん)しても政府は『状況は良い』『ますます良くなる』と唱え、先進国だけでなく周辺国からも取り残された」と指摘した。毛沢東(もうたくとう)に誰も逆らえなかった当時と同じ歴史を繰り返すのだろうか。(中国総局)
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【視点】  2024年02月07日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中国政府】:春節大移動「過去最多」を演出、新たな指標導入で「中国衰退論」払拭する狙いか

2024-02-06 07:20:30 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【中国政府】:春節大移動「過去最多」を演出、新たな指標導入で「中国衰退論」払拭する狙いか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中国政府】:春節大移動「過去最多」を演出、新たな指標導入で「中国衰退論」払拭する狙いか

 今週末に始まる中国の春節(旧正月、今年は10日)に伴う連休を控え、帰省や旅行による移動がピークを迎えている。景気低迷を背景に節約志向が広がり、割高な航空機や列車の利用は減少する見通しだ。中国政府は、従来とは異なる算出方法で「過去最多」の大移動をアピールしている。(上海 田村美穂、瀋陽 出水翔太朗)

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5日、帰省客らで埋め尽くされた上海市の上海虹橋駅=田村美穂撮影

 5日午後、上海市の上海虹橋駅は、大型のスーツケースや手土産を持った乗客らでごった返していた。安徽省に帰省するという、同市の広告会社員、張倩さん(23)は「おいしい物を食べてゆっくりと過ごしたい」と笑顔だった。 

 春節連休を含む前後40日間は「春運」と呼ばれる。連休を利用して多くの人が帰省したり、国内外の観光旅行に出かけたりする。中国政府の予測では、今年は「過去最多」となる延べ90億人が移動するという。

 中国政府は例年、この期間の移動者数について、鉄道や飛行機といった公共交通機関を使う旅客数の予測を公表してきた。しかし、今年の数字は、マイカーでの帰省者らの数も加えた「社会全体の地域をまたぐ人の移動量」という新たな指標を導入した結果だ。

 従来の方法では、延べ18億人で前年予想(約21億人)から14%減る見通しだ。景気低迷から移動を控える人が増えているのが実態だ。

 コロナ禍で落ち込んだ海外旅行への需要が十分回復していないことも響いている。中国の民間航空会社の国際線利用者数は、2023年12月時点でコロナ禍前の19年同期比で、6割程度にとどまっている。手軽な国内旅行が人気だという。

 航空券代の高さから日本行きを断念した上海市の高臻さん(26)は「経済の先行きが分からず、貯金しなければという思いもある」とため息をつく。

 移動者数の多さを誇示する中国政府には、経済の悪化に伴う「中国衰退論」を 払拭ふっしょく する狙いもありそうだ。第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは旅客数の算出方法の変更について「不透明で、数字には懐疑的だ。『過去最多』とすることで中国経済の前途は明るいとアピールしたいのだろう」と話す。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 国際 【アジア・中国】  2024年02月06日  07:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金融】:中国の株安止まらず、市場安定化策また不発…トランプ氏発言にも警戒感

2024-02-06 06:55:30 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【金融】:中国の株安止まらず、市場安定化策また不発…トランプ氏発言にも警戒感

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金融】:中国の株安止まらず、市場安定化策また不発…トランプ氏発言にも警戒感

 【北京=山下福太郎】中国市場の株価下落が加速している。5日の上海総合指数は、前日に金融当局が発表した市場安定化策への失望売りが広がった。今年秋の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選すれば、米中対立が一段と激化するとの懸念も相場の重しとなる。

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株価の下落傾向が続く香港証券取引所(1月30日、香港で)=山下福太郎撮影

 中国証券監督管理委員会(証監会)は4日、株式市場の安定化策を決めた。相場操縦や悪質な空売り、インサイダー取引を取り締まるほか、新規上場を厳しく管理することなどが柱だ。投資家の声に耳を傾け、対応することも心がけるという。

 直前の2日には、深センや上海の本土市場で一時、株価が急落する「パニック売り」(株式アナリスト)が広がった。金融当局は沈静化を狙ったとみられるが、1月下旬に米メディアが報じた株式を買い支える2兆元(約40兆円)規模の市場安定化基金への言及はなかった。

 5日の上海総合指数は、前週末に比べて一時、3%超下げた。終値は1%安の2702・18で、6日間連続の下落だった。指数は、3400に迫った直近の高値である昨年5月から2割、低下した。不動産市況や雇用の悪化による景気減速に加え、過度な規制を嫌気した外国人投資家の「中国売り」が広がっている。

 米ブルームバーグ通信は1月下旬、中国本土と香港の証券取引所に上場している株式の時価総額はピークから約6・3兆ドル(約930兆円)減ったと報じた。金融当局は昨夏以降、本土株の空売りを禁じる株価対策などを発動した。ただ、いずれも「口先介入」や「窓口指導」にとどまり、株価を下支えする効果は十分ではない。

 さらに足元では、トランプ氏の発言が売りを加速させている。4日(米国時間)に放送された米テレビのインタビューで、大統領に就任すれば60%の対中関税を検討しているとの米紙報道を認め、「(税率は)もしかしたらそれ以上かもしれない」と述べた。

 トランプ政権時に、米国は3700億ドル相当の中国製品に対し、最大で25%の関税を課している。この関税率が60%を超えれば、輸出は減少し、中国経済に与える打撃は深刻になる。

 日系エコノミストは「中国株には当面、買い材料が乏しい。中国政府が国内外の投資家の信頼を取り戻す抜本的な政策を打ち出すしかない」と指摘している。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 経済 【金融・株式、中国市場の株価下落が加速】  2024年02月06日  06:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

2024-02-05 06:45:50 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)による人民解放軍たたきが目立ちます。表向きは軍内の腐敗一掃とされますが、国防相やロケット軍司令官が解任されるなど粛清といえるほど苛烈です。

 胡錦濤前総書記、江沢民元総書記の時代には軍は聖域とされ、共産党トップの総書記といえども昇格人事で軍高官に気を使っていたことを考えれば、隔世の感があります。習氏の軍粛清の裏側にはどんな事情があるのでしょうか。

 ◆狙いは軍権の完全掌握

 1月上旬、中国共産党で汚職摘発を担う中央規律検査委員会の総会が開かれ、習氏は8日の開幕演説で「情勢は依然厳しく複雑だ」と反腐敗の徹底を訴えました。
 
 その最大のターゲットが、装備品調達に関する軍の汚職であることは明らかです。かつて装備発展部長を務めた李尚福国防相や、核ミサイルを扱うロケット軍司令官らが昨年、解任されました。解任理由は明らかにされていないものの、閉会コミュニケは「やいばを内側に向け、集団に害を及ぼす者を一掃する」と強調しました。
 
 一方、党中央は軍を政治的に引き締めるキャンペーンを展開。昨夏以降、習氏は戦区視察や会議などで、党による「絶対的指導」の堅持を軍に求めています。
 
 習氏が「反腐敗」を掲げて政敵を排除し、権力基盤を固めてきたのは事実です。とはいえ、今回の軍粛清については、党すなわち習氏に対する軍の忠誠を徹底させることに重点があるようです。
 
 中国政治に詳しい日中関係筋は「習氏が目標とするのは党が指導する強国建設。それには軍権の完全な掌握が不可欠で党と自身への一層の権力集中を図ろうとしているのではないか」とみています。
 
 歴史を振り返れば、毛沢東の独裁で混乱した中国を立て直すため改革開放路線を進めたのが鄧小平です。鄧は「選挙で選ばれない中国共産党の正統性は、経済成長で全ての国民を豊かにすることだ」との考えに基づき、独裁につながる個人崇拝を廃し、集団指導体制の政治を進めてきました。
 
 鄧が選んだ江、胡両氏も鄧路線を継承したといえます。

 ◆党指導による強国建設

 習氏も党総書記に就いた2012年「党創立から100周年(21年)までに(庶民がまずまずの生活を送れる)『小康社会』を実現する」と公約。鄧路線を歩むかに見えるスタートを切りました。
 
 その後の経済発展には目覚ましいものがありましたが、20年に李克強首相が「中国では6億人が月収千元(約2万円)前後の生活だ」と「小康」に程遠い現状を認めるような“爆弾発言”をします。習氏は翌年「貧困撲滅宣言」を出し「小康」を既に達成したと強弁しましたが、経済発展による統治の「正統性」が揺らぐ事態だったとも言えます。
 
 しかし、習氏には元来、経済発展に統治の正統性の根源を求めるような考えはなかったのではないでしょうか。22年の党総書記3期目以降に顕在化した「共産党指導下での強国建設」こそが、そもそも中国トップになった時から習氏の念頭にあった統治思想であり、リーダーとしての地歩を固めるにつれ鮮明になった鄧路線との決別は、いわば権力集中による強権統治という「地金」が出てきた結果とみることもできるでしょう。
 習氏の強権統治志向を下支えするのがナショナリズムです。米バイデン政権のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は習氏1期目の16年の「米外交問題評議会」リポートで、早くも「経済が失速すれば、習政権は国内情勢の不安定さからナショナリズムに訴えるのでないか」と指摘しています。
 
 最近の台湾や南シナ海を巡る国際社会との対立が示すようにキャンベル氏は習氏の統治思想の本質を見抜いていたように感じます。習氏が既に1期目にしてぶち上げていた政治スローガンが、ナショナリズム色の強い「中華民族の偉大な復興」であることとも符丁が合います。

 ◆旧ソ連崩壊「他山の石」

 党の絶対的指導確立のために軍権の完全掌握にこだわる習氏は、旧ソ連の崩壊を「他山の石」とした節があります。香港メディアによると習氏は12年、党内会議で旧ソ連崩壊の理由について「ソ連共産党内の一部の人は党を救おうとしたが、専制の道具(軍)が手中になかったから、それができなかった」と指摘したといいます。
 
 毛沢東が「政権は銃口から生まれる」と言った通り、軍を党の最後の砦(とりで)とみる「毛流」の統治論を習氏が信奉している証左ともいえそうです。ただ、鄧路線と決別し「専制の道具」を手に習氏が進む道が、個人崇拝が社会を大混乱させた毛独裁時代への逆戻りとならないか、強く懸念されます。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月04日  07:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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