路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【政府】:南海トラフ地震の死者29万人、経済被害は270兆円 中央防災会議の被害想定

2025-03-31 11:32:30 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【政府】:南海トラフ地震の死者29万人、経済被害は270兆円 中央防災会議の被害想定

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:南海トラフ地震の死者29万人、経済被害は270兆円 中央防災会議の被害想定 

 南海トラフ巨大地震への対策を検討する政府中央防災会議の有識者会議(主査・福和伸夫名古屋大名誉教授)は31日、被害が最大となるケースで死者約29万8000人、全壊建物約235万棟とする最新の被害想定を公表した。平成26年に策定した対策推進基本計画では死者約33万2000人、全壊建物約250万4000棟としていた。政府は有識者会議の報告を受け、基本計画を改定する。

 報告書は最大級の被害が起きるケースを想定。原因別の死者は建物倒壊が約7万3000人、建物火災が約9000人。津波ではすぐ避難する人を20%と仮定した場合で約21万5000人とした。70%になれば約9万4000人に抑えられるとした。原因別の全壊建物は、地震約127万9000棟▽津波約18万8000棟▽火災約76万7000棟-としている。

 見直しでは以前より地盤や地形のデータが高精度化され、震度分布や津波浸水範囲が拡大。津波浸水深30センチ以上の面積が3割増えた。震度6弱以上または津波高3メートル以上となる市町村は31都府県764市町村に及ぶ。経済被害額は214兆円から増え、最大270兆円と試算した。

 一方、住宅耐震化率が約90%(平成20年比11ポイント増)、海岸堤防の整備率が約65%(26年度比26ポイント増)となるなど対策も進んだ。

 これらを踏まえ、26年の基本計画と比較可能な地震津波を想定した場合、死者は約26万4000人で約20%、全壊建物は208万4000棟で約17%それぞれ削減。10年間に死者8割減、全壊建物5割減とする基本計画での目標には及ばなかった。

 インフラ被害は津波浸水域の拡大などで増加。24年の被害想定と比べ、停電軒数は最大約2950万軒で約1割増、避難者数も最大約1230万人で約3割増だった。

 避難生活中に死亡する災害関連死者数を初めて試算し、最大5万2000人とした。また、南海トラフ想定震源域の東半分と西半分のどちらかで先に大規模地震が起き、もう片側で時間差を空けて地震が起きた場合の「半割れ」被害も初めて想定した。

 元稿:産経新聞社 主要ニュース 社会 【地震・災害・南海トラフ巨大地震への対策を検討する政府中央防災会議の有識者会議(主査・福和伸夫名古屋大名誉教授)は31日、被害が最大となるケースで死者約29万8000人、全壊建物約235万棟とする最新の被害想定を公表した】  2025年03月31日  11:32:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:高知県内死者最大4.6万人 南海トラフ巨大地震、新想定 12年比6%減 早期避難で半減も

2025-03-31 11:07:30 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【政府】:高知県内死者最大4.6万人 南海トラフ巨大地震、新想定 12年比6%減 早期避難で半減も

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:高知県内死者最大4.6万人 南海トラフ巨大地震、新想定 12年比6%減 早期避難で半減も

 南海トラフ巨大地震により、高知県内では最大4万6千人が死亡するとの新たな被害想定を31日、政府の作業部会が発表した。2012年の前回推計は4万9千人で、防災施設整備が進んだにもかかわらず、死者は約6%、3千人の減少にとどまった。地震後すぐ避難する人の割合を20%と設定しており、これが70%に上がると死者は2万3千人に半減するとした。死因の多くを占める津波から早期に避難する重要性があらためて示された。

南海トラフ巨大地震 想定される被害の様相

南海トラフ巨大地震 想定される被害の様相

 新想定の地震規模は、前回と同じマグニチュード(M)9クラスとし、震源域や季節、時間帯など複数のパターンで試算した。全国の死者数は29都府県で最大29万8千人。12年想定の32万3千人から約8%減ったが、14年に政府が掲げた「おおむね8割減」には遠く及ばなかった。

高知県で想定される津波死者数

高知県で想定される津波死者数

 高知県で死者数が最大になるのは、冬の深夜に発生し、震源が四国沖で、陸側の断層が最も激しくずれて(陸側ケース)、風速8メートル、早期避難率20%の場合。津波による死者が3万6千人で全体の8割近くを占めるほか、建物の倒壊により9300人、火災により900人とした。

 同じ条件で早期避難率が70%に上がり、避難の呼びかけが効果的に行われた場合、津波の死者は1万3千人に減少。避難率100%では8700人まで減る。

 津波に巻き込まれるとほぼ全ての人が死亡するとされる「水深1メートル以上」の浸水面積は、前回から1割増の1万5520ヘクタールに広がった。より高精度になった地形データで試算したためで、防潮堤の効果は21年時点のデータを反映した。県沿岸の津波の高さは前回と同じで、黒潮町と土佐清水市の34メートルは全国最大だった。

 県内の負傷者は最大9万9千人で、…

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 元稿:高知新聞社 主要ニュース 社会 【地震・災害・南海トラフ巨大地震への対策を検討する政府中央防災会議の有識者会議(主査・福和伸夫名古屋大名誉教授)は31日、被害が最大となるケースで死者約29万8000人、全壊建物約235万棟とする最新の被害想定を公表した】  2025年03月31日  11:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.19】:災害弱者の支援/命守るため福祉の視点を

2025-03-22 06:00:30 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説①・03.19】:災害弱者の支援/命守るため福祉の視点を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.19】:災害弱者の支援/命守るため福祉の視点を 

 30年前の阪神・淡路大震災は「災害弱者」の存在を浮き彫りにした。高齢者や障害者らがすぐに避難できなかったり、避難所の劣悪な環境下で命を落としたりする例が相次ぎ、関連死は920人を超えた。

 その後の東日本大震災、熊本地震、能登半島地震、各地の台風や豪雨でも災害弱者の避難は課題となった。一人でも多くの命を守るための取り組みを強化せねばならない。

 政府は、災害時における高齢者や障害者への福祉支援の充実に向け、災害対策基本法や災害救助法の改正案を通常国会に提出した。

 現行法は、福祉や介護の専門家による「災害派遣福祉チーム(DWAT)」の活動範囲を避難所に限定している。改正案では範囲を広げ、自宅や車内で避難生活を送る人に対し、健康管理などの「福祉サービス」を充実させる規定を設ける。

 東日本では、在宅や車中泊での避難を余儀なくされた高齢者らへの支援が行き届かず、疲労やストレスなどによる関連死が約3800人を数えた。被災者に占める死亡・行方不明者の割合は、障害者が健常者の約2倍に上ったという。熊本、能登地震でも関連死が建物倒壊などによる直接死を超えた。

 一人一人が抱える困難を把握し、避難や生活再建を支える「災害ケースマネジメント」は仙台市が先駆的に実施し、能登地震などの被災地も取り組んでいる。

 災害対策基本法は、災害弱者の個々の事情を踏まえた「個別避難計画」の作成を自治体の努力義務としている。ただ、支援の担い手不足などから計画作成を終えた自治体はまだ少ない。改正案では、官民連携に向けたボランティア団体の登録制度創設なども盛り込まれた。専門性を持つ組織や企業などの協力も得て、福祉支援の体制強化が急がれる。

 避難所を巡っては食料やトイレ、入浴スペースなどの不備、要介護者や女性、乳幼児への配慮の欠如など、環境改善は遅々として進んでいない。石破茂首相は関連死ゼロを実現するため、人道の観点から最低限の設備を定めた国際基準「スフィア基準」を踏まえるとした。確実な実行を求めたい。

 課題の根本には、災害時の対応を自治体に委ねる災害関連法制の不備がある。被災した職員に過度な負担がかかり、人員やノウハウが乏しい自治体では対応しきれない。複数の市町村が連携して取り組んだり、都道府県が市町村を支援したりする仕組みを導入する必要がある。

 南海トラフ地震など大規模災害に備えるためにも、防災庁の設置と併せ、法制度や国と自治体との役割の在り方を抜本的に見直すべきだ。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月19日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・02.13】:「5カ年計画」最終年に道路陥没事故 国土強靱化は既存施設を後回しか

2025-02-19 07:40:20 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【政界地獄耳・02.13】:「5カ年計画」最終年に道路陥没事故 国土強靱化は既存施設を後回しか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・02.13】:「5カ年計画」最終年に道路陥没事故 国土強靱化は既存施設を後回しか

 ★1月28日、直径約5メートル、深さ約10メートルにわたり道路が突然陥没し、男性1人が運転していた2トントラック1台が落下した八潮市交差点道路陥没事故。政府は翌日の会見で全国の下水道管理者に対して緊急点検を行うよう要請し、国交省が埼玉県に技術的支援を行うと発表した。同県は周辺の12の市と町の約120万人に求めていた下水道の使用自粛の呼びかけについて、12日の正午に解除した。

 ★戦後80年だとか昭和100年とかと節目を喧伝する向きもあるが、高度成長期の下水道などのインフラ再整備は、老朽化と相まり急務となっていた。自民党元幹事長・二階俊博。衆院議員を引退はしたもののその影響力は計り知れない。「晩年の二階の政治家としての基盤を作り支えたのが、5年にわたる幹事長職と日中関係、そして国土強靱化(きょうじんか)計画だ」(自民党幹部)。民主党政権下の11年、東日本大震災があり、同年野党自民党は「強靭な国土の建設」を掲げ「国土強靭化総合調査会」を設置。会長に二階が就いた。その後13年には「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が成立。「国土強靭化」は国策に変わった。16年には「国土強靭化推進本部」に格上げされ本部長は二階。20年には菅内閣発足直後に「国土強靭化5カ年計画」が閣議決定。5年間で事業規模15兆円が投入されてきた。今年は最終年だが、首相・石破茂も「おおむね15兆円程度の事業規模で実施中の5カ年加速化対策を上回る水準」と発言。延長される見通しだ。

 ★本当に国土強靭化は適切な場所に適切な対策で施行されただろうか。防災・減災、復旧・復興が目的だが、新しいインフラ整備に注力しすぎて、既存インフラが後回しになっていまいか。「地域高規格道路」建設よりも既存の道路の地下を優先させるべきではなかったか。東日本の震災以降、防災や復興の名のもとに政治家の案件のインフラ整備が全国で行われただけではないのか。そんなことはないと二階や国交省は言えるか。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年02月13日  07:45:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.17】:阪神大震災30年 記憶を胸に備え充実させたい

2025-01-19 05:00:30 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説②・01.17】:阪神大震災30年 記憶を胸に備え充実させたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.17】:阪神大震災30年 記憶を胸に備え充実させたい

 日本列島は常に大地震の脅威に 晒 さら されている。6434人が犠牲になった惨禍の記憶を風化させることなく、備えを徹底することが重要だ。 

 阪神大震災の発生から30年を迎えた。大都市を襲った震度7の直下型地震は、高層ビルや高速道路を倒壊させ、市街地をがれきと焼け野原に変えた。

 今の高層ビルが立ち並ぶ街並みからは、戦後日本の「安全神話」を根底から揺るがした当時の光景は想像しがたいだろう。

 神戸市長田区では昨年10月、最後に残った約20ヘクタールの再開発事業がようやく終了した。

 ただ、土地売買の交渉が難航する間に商店主らが転出し、商業区画は今も売れ残る。震災2か月後に行政主導で決まった巨大事業は「失われた30年」に重なる経済情勢の変化に対応できず、期待した活気は戻らなかった。

 計画は柔軟性ときめ細かさを欠いていなかったか。大災害で被災した各地で続く復興の街づくりに教訓を残したと言えよう。

 危機管理体制の整備、建物の耐震化など、国や自治体の備えは阪神大震災がベースとなったが、積み残された課題も少なくない。

 劣悪な避難環境下で、被災者が持病の悪化などによって亡くなる災害関連死はその一つだ。

 関連死は阪神大震災で初めて認められ、921人が犠牲者数に含まれている。当時、避難所で被災者が雑魚寝する状態だったのを教訓に、段ボールベッドや簡易トイレなどが普及した。

 ところが昨年の能登半島地震では、避難所で物資の受け入れ体制が整わないなどの理由から、30年前と同じ光景が繰り返された。

 国や自治体は、平時から備蓄や専門の民間人材育成などを進めておくことが欠かせない。

 13日には日向灘を震源とする地震で、南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表された。リスクは高まっていないと判断されたが、警戒を怠ってはならない。

 歳月とともに懸念されるのは記憶の風化だ。備えを「我が事」と考えてもらうためにも、30年前の経験を伝え、継承する取り組みを支えていく必要がある。

 石破首相は2026年度中の「防災庁」創設を掲げている。

 大災害後の指揮はもちろん、事前の防災・減災から災害後の復興に至るまで、切れ目ない対応は国の責務だが、そのために新たな省庁は必要か。組織ありきではなく、まずは施策の充実を図ったうえで議論を深めていくべきだ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月17日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.18》:阪神大震災30年 教訓忘れず命守る社会に

2025-01-18 02:01:50 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

《社説①・01.18》:阪神大震災30年 教訓忘れず命守る社会に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.18》:阪神大震災30年 教訓忘れず命守る社会に

 多くの命と当たり前の暮らしが一瞬で失われた。現代の防災体制の原点となった大地震の教訓を忘れてはならない。

 阪神大震災の発生から30年が過ぎた。神戸市など兵庫県南部で国内初となる震度7を記録し、6434人が亡くなった。

阪神大震災で橋脚部分から横倒しになった阪神高速神戸線=神戸市東灘区深江本町で1995年1月17日、本社ヘリから撮影

 耐震化が不十分だった建物が次々と倒壊し、住宅被害は約64万棟に達した。高速道路や鉄道の高架がなぎ倒され、街が炎に包まれる光景に、人々は言葉を失った。被害総額は約10兆円に上った。

 巨大災害に対して、現代社会がいかに脆弱(ぜいじゃく)か。重い課題を突き付けられた。

 発災当初、被害の深刻さを伝える情報が政府に届かなかった。所管の国土庁をはじめ官僚レベルでは的確な指示を出せず、自衛隊の災害派遣も遅れた。これらの反省を踏まえ、政府の防災体制は抜本的に見直された。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/18/20250118k0000m040020000p/9.webp?1" type="image/webp" />大火災でほとんどの家屋が焼け落ちた神戸市長田区の鷹取商店街周辺=1995年1月17日、本社ヘリから内林克行撮影</picture>
大火災でほとんどの家屋が焼け落ちた神戸市長田区の鷹取商店街周辺=1995年1月17日、本社ヘリから内林克行撮影

 自衛隊の災害派遣は、知事の要請がなくても出動できるよう基準を見直した。救援物資も、要請を待たずに届ける「プッシュ型」支援が実施されるようになった。

 住宅や公共施設の耐震診断や基準の強化が進み、現在、耐震化された住宅は9割近い。

 被災者の生活再建支援の転換点にもなった。自宅が全壊や半壊となった場合の公費支援を可能にする法整備がなされた。それまでは私有財産が損害を受けても被災者個人への現金給付はなかった。

 ただ、いまだに解決されない課題は多い。

 避難所の劣悪な環境は、昨年起きた能登半島地震でも改めて問題になった。被災者が学校の体育館などで雑魚寝を強いられ、プライバシーも守られない。政府は昨年末、環境改善を目指す指針をまとめたが、自治体任せでは実効性は担保できない。

 避難生活のストレスなどが原因となる「災害関連死」も後を絶たない。仮設住宅での孤立化対策も十分とは言えない。何よりも優先されなければならないのは、被災者の命や健康を守る取り組みだ。

 政府は2026年度中の防災庁の発足を目指す。自治体などと連携し、残された課題を解決へ導く組織にすることが求められる。

 ただ、11年の東日本大震災や能登半島地震では、自治体が十分に機能しない事態に直面した。行政に頼るだけでない自助や共助の大切さが再確認された。

 阪神大震災の際には、全国から延べ約140万人のボランティアが集まり、「ボランティア元年」と呼ばれた。防災NPO「レスキューストックヤード」常務理事の浦野愛さん(48)も学生ボランティアの一人だった。その後も各地の被災地支援に取り組む。

 ◆被災者視点を忘れない

 当初は行政との調整に手間取り、被災者のニーズをすくい上げたり問題解決につなげたりするのに苦労した。徐々にノウハウが蓄積され、効果的な活動が可能になってきているという。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/18/20250118k0000m040022000p/9.webp?1" type="image/webp" />阪神大震災の被災者に豚汁を作るボランティアの人たち=神戸市長田区の御蔵小学校横の一番町公園で1995年1月25日、中村琢磨撮影</picture>
阪神大震災の被災者に豚汁を作るボランティアの人たち=神戸市長田区の御蔵小学校横の一番町公園で1995年1月25日、中村琢磨撮影

 能登半島地震では、石川県穴水町で、在宅の被災者も含めた幅広い支援を実施し、行政や関係機関との連携の枠組みを構築した。内閣府が実施する災害時の支援人材の研修などにも協力する。

 30年間大切にしているのが、被災者一人一人の生の声を聞くことだ。表面は元気そうな人も深い悩みを持つ。高齢者や障害者のような弱い立場の人ほど「しんどい」思いを抱え込んでしまう。個々の事情はさまざまだ。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/18/20250118k0000m040021000p/9.webp?1" type="image/webp" />能登半島地震後、避難所で生活する被災者ら。避難所の環境改善が改めて課題として浮かび上がった=石川県輪島市で2024年1月8日、川畑岳志撮影</picture>
能登半島地震後、避難所で生活する被災者ら。避難所の環境改善が改めて課題として浮かび上がった=石川県輪島市で2024年1月8日、川畑岳志撮影

 ボランティアだけで、すべての被災者へきめ細かな支援を届けることは難しい。住民一人一人が日ごろから地域の活動に参加し、顔見知りを増やしておくことが重要になる。暮らしやすい地域づくりにもつながるはずだ。

 阪神大震災で被災し、東日本大震災の復興計画を検討する会議のトップを務めた政治学者の五百旗頭真さんは生前、こう記した。

 「この列島の住人は『連帯と分かち合い』をもって支え合うより外に、大災害を克服することはできないのだ。共助の手を差し伸べ合う以外にない」

 いつどこで災害が起きてもおかしくない。都市部を中心に伝統的な共同体が失われる中、新たな時代に合わせた共助の形を模索し、命を守る社会を構築したい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月18日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【阪神・淡路大震災30年】:「伝え続ける」葛藤から使命感へ 1.17に生まれた30歳の誓い

2025-01-17 05:30:30 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【阪神・淡路大震災30年】:「伝え続ける」葛藤から使命感へ 1.17に生まれた30歳の誓い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【阪神・淡路大震災30年】:「伝え続ける」葛藤から使命感へ 1.17に生まれた30歳の誓い 

 30年前の1月17日に生まれた男性が、阪神大震災の「語り部」として小中学校で出前授業を続けている。「生きたくても生きられなかった人がいる。その人たちのためにも、継承していく使命感がある」。被災体験はないが、その日に生を受けた宿命を背負う。

自身がモデルとなった絵本「ぼくのたんじょうび」を手にする中村翼さん=神戸市中央区で2024年12月20日午後0時2分、関谷徳撮影

 「おぎゃーーーーーー 夕方6時21分、ぼくはようやくうまれたんだ。お父さんもお母さんもたくさんたくさん泣いたんだ。うれしくて、うれしくて」

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/17/20250117k0000m040017000p/9.webp?1" type="image/webp" />阪神大震災の日に生まれた中村翼さん=神戸市中央区で2024年12月20日午後0時5分、関谷徳撮影</picture>
阪神大震災の日に生まれた中村翼さん=神戸市中央区で2024年12月20日午後0時5分、関谷徳撮影

 3歳の頃から誕生日になるとテレビカメラが回っていた。父の転勤で一時は神戸を離れ、15歳で再び戻ってくると、「震災の日に生まれた少年」としてまた取材を受けるようになった。

 「誕生日という祝うべき日が、震災で多くの人が亡くなったんだ」。そんな残酷な現実を突き付けられた。「どうしたらいいのか分からない」。思春期だった当時はそんな葛藤を抱いた。

 答え探しのために、大学では防災学習に熱を入れた。東日本大震災(2011年)の被災地にもボランティアで訪れた。足を踏み入れた瞬間、阪神大震災が起きた時の神戸の街が想像できた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/17/20250117k0000m040018000p/9.webp?1" type="image/webp" />中村翼さんがモデルとなった絵本「ぼくのたんじょうび」=神戸市東灘区で2024年12月13日午前11時59分、関谷徳撮影</picture>
中村翼さんがモデルとなった絵本「ぼくのたんじょうび」=神戸市東灘区で2024年12月13日午前11時59分、関谷徳撮影

 仮設住宅で暮らす人に話を聞く機会があった。地震直後に避難したが、貴重品を取りに自宅に戻って命を失った家族がいた話を聞いた。それが胸に刺さった。

 父は避難直後、破水した母を病院に連れて行くため、車の鍵を取りに戻ろうと自宅マンションの階段を10階まで必死で駆け上ったという。「その行動がいかに危険だったのか。自身の奇跡的な誕生につながった尊さを思い知った」と目を潤ませる。

 30歳を迎えるにあたり、いつしか葛藤は使命感に変わった。命の尊さと助け合いの大切さを、震災を知らない世代に伝えていきたいと思う。「強く大きく羽ばたいてほしい」。「翼」の名の由来を教えてくれた両親に、これからの飛躍を誓う。【関谷徳】

 元稿:毎日新聞社 主要ニュース 社会 【災害・地震・阪神・淡路大震災30年】  2024年01月17日 05:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・01.08】:災害関連死 防止へ 情報共有を急げ

2025-01-10 04:01:40 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説・01.08】:災害関連死 防止へ 情報共有を急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.08】:災害関連死 防止へ 情報共有を急げ

 救えた命だったかもしれない。国は積極的に全国の事例を集めて原因を検証し、早期に抜本的な対策を自治体と共有するべきである。 

 1995年の阪神大震災以降、「災害関連死」に認定された人が全国で計5456人に上ることが、共同通信の集計で分かった。

 地震による建物倒壊や津波に巻き込まれて亡くなる「直接死」とは別に、避難生活を通じて持病や体調の悪化、疲労やストレスなどで亡くなった人たちである。

 真冬に発生した阪神大震災では、避難所でインフルエンザなどの感染症が流行し、921人が関連死で亡くなった。以降、認識されるようになったが、正確な実態はいまだにつかめていない。

 2016年の熊本地震や昨年1月の能登半島地震のように、関連死の人数が直接死を上回ったケースもある。

 能登半島地震では、被災地に高齢者が多く、避難生活が長期化する中で、電気や水道が止まったり、福祉施設や医療機関の機能が低下したりすることが、関連死の要因として指摘されている。

 30年にわたり、災害のたびに避難所の環境などについて課題が指摘されてきたが、抜本的な解決に至っていない。

 関連死は、暴風や豪雨などの災害時にも起きている。防止するための環境整備について、平時から検討を重ね、備えておく必要がある。

              ■    ■

 関連死は、遺族の申請に基づいて審査される。認定されれば最大500万円の弔慰金が支給されるほか、民間の奨学金の対象になるなど、遺族支援の入り口になっている。

 全国では大半の市町村が、それぞれ条例を定めて支給業務を担う。

 一方、県内では、那覇市を除く40市町村が、合理化を目的に市町村でつくる県市町村総合事務組合(那覇市)に業務を実質委託している現状がある。

 関連死の審査は、弁護士や医師らでつくる審査会が行うが、東日本大震災では、地元の市町村以外で審査されると、認定率が低くなる傾向があった。

 県内でも昨年の本島北部豪雨を受けて、条例の制定に向けて検討し始めている自治体がある。

 関連死を見逃さない体制づくりを各自治体が進めてほしい。

              ■    ■

 石破茂首相は、事前防災から復旧・復興までを一貫して担う「防災庁」を設置する方針だ。内閣府の防災部門の人数と予算を増やし、専任の閣僚を置いて災害対応で指揮を執る。避難所の環境についても、1人当たりの面積などを定めた国際基準「スフィア基準」を全国で満たすとしている。

 一方、関連死については実態を網羅的に把握する仕組みもない。どこでどんな理由で発生しているのか。国は都道府県や自治体と連携して実態を把握し、災害への備えや避難所の運営などについて地域格差の解消も目指すべきだ。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月08日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《発言・01.09》:命と生活を守る防災庁に=水鳥真美・前国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関長

2025-01-09 02:03:00 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

《発言・01.09》:命と生活を守る防災庁に=水鳥真美・前国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《発言・01.09》:命と生活を守る防災庁に=水鳥真美・前国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関長

 10年前、国連加盟国が満場一致で採択した「仙台防災枠組」は、その後の地質災害、気象災害の激甚化、コロナ禍の発生を予測していたかのような先駆的内容である。そして、この日本生まれの国際合意の要諦は「これからの防災対策は、災害発生後の対応依存から、平時の災害リスク軽減に重心を移さなければならない」である。

 水鳥真美・前国連事務総長特別代表(防災担当)兼国連防災機関長

 能登半島地震発生から1年。今も続く被災者の苦悩に接する時、災害発生時の迅速、的確な対応、事後の復旧、復興の必要性を実感する。仙台防災枠組は災害発生後の対応の必要性を軽んじるものでは毛頭ない。一方、社会に蔓延(まんえん)する災害リスクを平時に軽減して強靱(きょうじん)性を築かなければ、「災害発生、対応、復旧、復興、再び災害発生」という負の連鎖は続き、奪われる命、財産、生活は肥大化する。防災分野で世…

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【発言】  2025年01月09日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感】:④石破政権唯一の目玉、防災省は次の震災に間に合うか

2025-01-05 07:10:40 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感】:④石破政権唯一の目玉、防災省は次の震災に間に合うか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感】:④石破政権唯一の目玉、防災省は次の震災に間に合うか

 有言不実行の変節首相が自民党総裁選時に掲げた政策のうち、具体的な動きがあるのは「防災庁」ぐらいだろう。

<picture>能登半島地震から1年、悠長過ぎないか?(代表撮影)</picture>

 衆院選直後の24年11月1日に「設置準備室」が発足し、石破と赤沢担当相が看板掛けを行った。12月20日には「防災立国推進閣僚会議」の初会合が開かれ、内閣府防災部局の定…、

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 元稿:日刊ゲンダイDIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「2025年はあらゆる意味で歴史の転換点になる予感」】  2025年01月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤

2025-01-04 06:00:50 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤 

 ■全体の底上げへ議論の加速を

 防災教育は、自分や周りの人の命を守るための土台づくりである。神戸新聞社は、必修化によりその根を広げる重要性を訴えてきた。

 ここ数年、小中学校や高校の教科書で災害に関する記述は増えた。しかし、防災を必修科目とする動きはいまだに見えない。

 教員の世代交代が進み、子どもたちにとって阪神・淡路大震災が「歴史上の出来事」となる中、兵庫の防災教育は転換期を迎えている。

 将来の必修化を見据え、蓄積を生かしながら時代に合わせて発展させねばならない。現場では、新たな試みも始まっている。

                ◇

 神戸市北区の桜の宮中学校は、2年の防災教育に演劇を取り入れた。劇の名は「ジブンゴト」。プロの演出家の指導を受けて生徒が脚本の一部を考え、演じる。社会、国語、総合的な学習の時間を使い、1月の本番に向け練習を重ねている。

 筋書きはこうだ。ある防災イベント。生徒らが研究発表をしようとしたそのとき、大きな地震が発生し、観客と一緒に避難することに-。本番では、見ている人たちに観客役として参加してもらう。生徒には演技力や即興性が求められる。

 普段は防災を教わる側の生徒が、他者に伝える立場になることで、阪神・淡路の教訓を「自分ごと」として捉え、実践してほしい。そんな狙いを込めている。

 正確な知識の習得はもちろん不可欠だ。加えて、これからの防災教育には、児童生徒が楽しむ要素や、「自分もできた」「人の役に立てた」と自己肯定感を持てるような体験が一層求められるのだろう。現場を取材した実感でもある。

                 ◇

 2020年度から順次実施された新学習指導要領では、小、中、高校のさまざまな教科で災害や防災についての記述が従来より増えた。19年度からは、教職課程で自然災害などにおける危機管理を学ぶ「学校安全への対応」が必修となった。

 だが、文部科学省は防災教育の教科化には及び腰だ。自然科学の分野をはじめ、復旧復興の過程や心のケア、ボランティア活動など、扱う領域やテーマが多岐にわたるため、授業時間の確保や指導・評価が難しいという。

 その結果が、教員の頑張りに大きく依存する今の状況だといえる。学校や地域間の取り組みの差をどう埋めるか。全国共通の課題である。

                ◇

 現場の熱意に任せるのではなく、教える側への支援を充実させることが必要だ。複数の教科に散らばっている防災関連の内容を、体系的に教え、効果を高めてもらいたい。教科を超えた教員の連携や、地域との協働が鍵になろう。

 「『阪神・淡路を経験していない自分が地震を語れるのか』と尻込みする若い先生もいる。カリキュラムの提案や助言にとどまらず、教員の心理的なハードルを下げることも大切だ」。兵庫県内の教育関係者が20年に設立した防災教育学会の諏訪清二会長は指摘する。

 諏訪さんは、県立舞子高校に02年に開設された環境防災科の初代科長を務めた。同科からはこれまでに758人が卒業し、研究者や教員、消防士などとして活躍する。

 1期生の前田緑さんは、小学2年で阪神・淡路に遭った。大学職員として働きながら、震災の教訓などを伝える活動を続ける。3児の母でもある。「被災経験がなくても、学びを通して震災を語ることはできる。防災に取り組む次世代を応援し、暮らしに根づかせたい」と話す。

 防災教育の積み重ねが、地域の防災・減災の推進力となり得る。それには必修化による全体の底上げが望ましい。自然災害が多発する時代に入った。議論を加速させたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.09】:水道耐震化 国の責任で万全の備え急げ

2024-11-09 07:00:50 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説・11.09】:水道耐震化 国の責任で万全の備え急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.09】:水道耐震化 国の責任で万全の備え急げ

 災害列島の日本なのに、重要な社会インフラである上下水道の地震対応が進んでいない。国土交通省の緊急点検で明らかになった。

 避難所や災害拠点病院、市町村役場、警察署、消防署など万一の際に住民の命を守る建物のうち、接続する水道管路と下水道管路、ポンプ場が全て耐震化されている所は、わずか15%だった。

 地震はいつ、どこで起きるか分からず、対策が急がれる。上下水道を運営する自治体の務めだとはいえ、財政難に苦しむ市町村だけで耐震化を迅速に進めるのは難しいだろう。国の積極的な関与が求められる。

 国交省の緊急点検は、元日に発生し、広い範囲で長く断水した能登半島地震を受けて実施された。災害時に拠点となる全国の重要な建物約25千カ所のうち、上下水道が耐震化されていたのは3600余りとお寒い状況だった。

 特に中国5県は遅れが目立つ。耐震化率の最も高い鳥取でも9%しかなく、島根8%、広島2%、山口1%と続く。岡山は05%と全都道府県でワースト2位だった。

 地震が起きる切迫感が乏しいためだろうか。ただ、中国地方にも大きな影響を及ぼす南海トラフ巨大地震は30年以内の発生確率が70~80%とみられている。

 万一の際、病院が断水すれば、治療に支障を来しかねない。患者の命に関わる。避難所だと、手洗いや食事、トイレなどで不便を強いられ、感染症のリスクも高まる。

 地震や豪雨の発生は止められない。だからこそ、被害をできるだけ減らす努力を尽くさなければならない。災害拠点施設が機能しなければ、救える命も助からない。

 「多額の事業費が必要な上下水道施設の耐震化に対する補助拡充を」。そんな国への要望を中核市の市長会が今月1日まとめた。現状の国の支援制度は、条件が付く上、補助額は事業費の25~50%程度で、市町村の負担も大きい。さらなる支援を求める地方の切実な声を、国はどう受け止めてきたのか。

 対応の必要性は以前から国も認めてはいる。2018年の西日本豪雨などを受け、国土強靱化(きょうじんか)の緊急対策の一環として、上水道管路の耐震化促進を掲げている。

 老朽化した水道管を、丈夫で接続部が外れにくい構造の管に交換するなど、対応は待ったなしといえよう。備えを怠れば、社会インフラが機能不全に陥る恐れがある。

 政府は今年8月、水道施設の耐震化など災害対策強化に重点を置いた水循環基本計画を閣議決定した。本年度から5年間で「災害に強く、持続可能な上下水道の機能を確保する」と記している。

 ところが、結局は自治体任せという考えが国の姿勢からは透けて見える。国の補助を当てにする前に、水道料金を引き上げるよう市町村に促しているからだ。

 今まで通りのやり方では遅々として進まない。備えを万全にするため、災害時の拠点施設は国の責任で耐震化する方針を打ち出すべきだ。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月09日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・10.24】:2024衆院選・防災対策 生煮えの議論、物足りない

2024-10-27 07:00:25 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説・10.24】:2024衆院選・防災対策 生煮えの議論、物足りない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.24】:2024衆院選・防災対策 生煮えの議論、物足りない 

 豪雨や地震などが頻発する日本で防災の取り組みをどう強化するか。今回の衆院選の重要な争点の一つだろう。

 能登半島は元日に大地震に襲われ、その後に豪雨被害にも見舞われた。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大災害への不安も高まっている。

 国や自治体に対応力の向上を求める声は強い。各党は具体的な防災対策を示し、論戦を尽くしてもらいたい。

 衆院選の公約として自民、公明両党は石破茂首相肝いりの「防災庁」設置の準備を掲げている。内閣府防災担当の体制や機能を強化し、とかく評判が悪い避難所の環境改善などもうたう。野党の立憲民主党も「危機管理・防災局」を、れいわ新選組も「防災省」設置を訴えている。

 一方、日本維新の会、共産党、国民民主党などは防災庁設置には触れず、組織よりもむしろ国と自治体の連携強化を優先する。ただ、防災庁設置の是非はあるものの、初動対応の強化や避難所の環境改善などが必要との認識自体に大きな違いは感じられない。

 防災行政は現在、内閣官房とともに内閣府が各官庁間の調整役を担う。要員は150人前後で他省庁からの出向者も多く、専門職が育ちにくい悩みがあるという。

 過去の災害では、縦割り行政の弊害で現場は混乱した。全国知事会や関西広域連合が防災組織一元化や機能強化を求めてきたのはそのためだ。ただ、独自色をアピールしにくいのか、各党が防災対策の具体的な道筋を深掘りする流れにはなっていない。

 防災庁一つとっても議論が生煮えなのは物足りない。石破首相は米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)のような組織を想定しているとみられる。だが、日本で主に自衛隊が担う、災害時の実動部隊は米国では軍ではなく、パートタイムの州兵が担う。

 常設する防災庁の実務部隊に自衛隊を充てれば、本来業務である国防に支障が出るだろう。逆に新たな人員で実務部隊を確保しようとすれば、大幅な予算増が避けられない。組織の強化は不可欠としても、こうした議論もそこそこに、国民に新たな負担増を求めることにはならないのだろうか。

 災害対応は、平時の啓発活動から災害発生時の避難、救急・救援活動、復旧、復興と多岐にわたる。上下水道の復旧は国土交通省などが、田畑の復旧は農林水産省が担う方がやはり円滑に進むのではないか。コントロールタワーは必要だが、民間を含めた役割分担に目詰まりを起こさない運用こそが欠かせない。

 過去を振り返れば、既に機能の維持が難しい集落に多額の予算が投入された例もあるという。自治体の復興計画がコンサルタント会社任せで似たようなものばかりという指摘も目立つ。被災地の部品工場一つが停止しただけでサプライチェーン(供給網)全体が止まったケースもあった。

 公約をただ並べるだけでなく、過去の失敗を今後の防災対策につなげる具体的な道筋が必要だ。それを各党が示す論戦にすべきだろう。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月24日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:大地震対策 能登の教訓をどう生かすか

2024-03-04 05:01:45 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説①】:大地震対策 能登の教訓をどう生かすか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:大地震対策 能登の教訓をどう生かすか

 大規模地震の予測や対策に、万全を期すことは困難だろう。それでも被害を最小限に抑えるためには、何が必要なのか。能登半島地震の教訓を生かし、防災計画を整えたい。

 能登半島地震で甚大な被害が出た石川県輪島市などの北陸地方はこれまで、大規模地震の発生確率は低いとされてきた。政府の地震対策も、首都直下地震や南海トラフ地震に重点を置いていた。

 今回の事態は、大地震の発生を正確に予測することがいかに難しいかを改めて示した。地震大国の日本では、いつ、どこでも大地震が起こりうることを前提に備えを強化することが重要だ。

 災害対策基本法は、国に「防災基本計画」、自治体に「地域防災計画」の作成をそれぞれ義務づけ、大地震などが発生した場合は実情を踏まえてその都度見直すよう求めている。

 石川県もほぼ毎年、地域防災計画を修正していたが、その前提となる被害想定は1997年度に策定したままで、県は2025年度に更新する予定だったという。

 現想定は、「能登半島北方沖の地震」の被害を「ごく局所的で、災害度は低い」と見積もっていた。輪島市の非常食の備蓄量は、これを基にしており、今回の地震では発生初日に底をついた。

 発生が元日だったため、帰省者ら市内に滞在する人が普段より多かったことも影響した。

 他の自治体も、現在の被害想定が、地震予測に関する最新の知見や、高齢化や過疎化など地域社会の変化を的確に反映しているかどうか、点検する必要がある。

 東京都は、首都直下地震の想定を数年おきに改定している。国は、被害想定の策定を自治体任せにせず、見直しを10年ごとに行うなどの目安を示すべきだ。

 地域防災計画については、能登半島地震を教訓に、見直しの動きが各地で広がっている。

 青森県は、能登の被災地で大量の災害ごみの処理が課題となっていることを踏まえ、県内で災害ごみを処理する場合、国と県、市町村が連携を強める必要性を計画に新たに盛り込んだ。

 福島県は、能登で道路寸断による集落の孤立が相次いだため、県内で孤立の恐れがある地区の備蓄食料を増やす方針だ。

 外部の支援が入るまで、1週間から10日間、住民が持ちこたえるには、食料などを事前にどの程度準備する必要があるのか。各自治体が具体的に算定し、計画に盛り込むことが不可欠だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:3・11から12年 リアルな感覚で防災を

2023-03-12 06:59:40 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説①】:3・11から12年 リアルな感覚で防災を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:3・11から12年 リアルな感覚で防災を 

 専用のゴーグルを着用した子どもたちから驚きの声が上がりました。教室前の見慣れた廊下が、みるみる白煙に包まれたからです。視界はさえぎられ、歩くことができません。
 しゃがむと煙が薄くなることに気付いた子が姿勢を低くして、前に進みます=写真(上)。
 
 「3・11」を前に、東京都三鷹市立高山小学校で五年生の百八十人ほどが参加した防災訓練のひとこまです。ゴーグルには板宮朋基神奈川歯科大教授(画像処理学)が開発した拡張現実(AR)のアプリが使われています。ゴーグル越しの風景に、充満した煙の映像が重なり、火災に直面したような体験ができるのです。
 
 高山小では毎月、避難訓練をします。全員が避難し、無事を確認するまで当初は五分近くかかりますが、訓練を重ねると三分半に短縮できるそうです。吉村達之校長はさらにAR訓練を四年前から始めた理由を「よりリアルな感覚をもってほしいから」と語ります。
 
 いずれ来るとされる南海トラフ地震や首都直下地震に向け、われわれに求められるのは、まさにこの点です。現実に起こり得ると考え、平時から、いかに想像力を働かせ、備えられるか。東日本大震災や阪神大震災では津波や建物倒壊のほか、各地で火災が発生しました。火災の犠牲者の多くは煙を吸い込んだことによる中毒や窒息死です。煙は炎より速い秒速三〜五メートルで上昇し室内に充満します。

 ◆走って逃げられない

 AR訓練を終えた子どもたちは「周りが何も見えなかった」「口をふさぐためのハンカチを常備するべきだ」などの感想を口々に。煙からは走って逃げられないことを実感として学んだようです。
 
 浸水訓練もありました。校庭にタブレット端末をかざすと、自分たちの胸まで水につかった映像が見られます。わが身に迫る漂流物の現実感に悲鳴も上がりました。
 
 さて、ここからが本番です。会議室に場所を移した子どもたちに先生は問いました。登下校時や外出時、就寝時に地震が来たら、どんな行動をとるべきですか。「怖さ」を体感した子どもたちの目はいつにもまして真剣です。
 
 話し合いの輪に「みたかSCサポートネット」のメンバーが加わり、助言していました。東日本大震災時、三鷹でも震度5弱の揺れがありました。師橋千晴代表理事によると、ちょうど保護者会の日で、児童を先に帰していました。親は皆、心配でならなかったと言います。その体験からサポートネットを立ち上げ、地域や学校で防災訓練や防災教室のコーディネーター役を担っています。
 
 小学校低学年なら、いかに自分の命を守るか、高学年や中学生になると、地域の担い手としての自覚を持ち、「共助」の視点を育めるよう、支えるそうです。防災・減災は地域や社会全体で取り組んでこそ、より真価を発揮します。
 
 高山小の訓練に協力した一般社団法人、拡張現実防災普及(ARB、東京)は板宮教授の弟、晶大さんが立ち上げました。これまでに学校や施設、地域など三百カ所でARなどを使った煙や消火、浸水、地震体験を実施しています。
 
 NTTの子会社などは、さらに現実性を高められないかと、人の分身(アバター)がネット上の仮想空間(メタバース)で災害を疑似体験し、いざという時の対応を学べる取り組みを始めます。
 
 東日本大震災の発生から今日で十二年。あの日は、最近街中でめっきり減った公衆電話=写真(下)=に長蛇の列ができました。携帯や一般の固定電話には通信制限がかかったり、停電もあったからです。公衆電話は通信制限の対象外ですし、停電時にも使えます。
 

 ◆見直される公衆電話

 時の流れは速いものですね。考えてみると高山小の子どもたちは東日本大震災時、生まれていません。各種の調査によると、公衆電話を一度でも使ったことがある小学生は十人中一人か二人にとどまります。皆さんのお子さんやお孫さんは公衆電話の使い方を知っていますか。ちなみにNTTのホームページからは、バーチャルで公衆電話のかけ方が学べますし、わが街のどこに公衆電話があるかを調べることも可能です。
 (高山小の訓練の様子をこちらから見ることができます)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年03月11日  07:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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