《社説①・10.23》:衆院選2024 子ども・若者政策 希望持てる未来
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・10.23》:衆院選2024 子ども・若者政策 希望持てる未来
子育てや教育は社会の将来を築く土台となる。子どもや若者が希望を持って暮らせる環境を整えることは政治の責務だ。
にもかかわらず、衆院選では「政治とカネ」や物価高の問題に隠れ、議論がかすみがちだ。自民党の石破茂首相や立憲民主党の野田佳彦代表は、公示後の第一声で全く触れなかった。
子どもや若者を取り巻く環境は厳しさを増している。
10~20代の自殺率は上昇傾向にあり、児童虐待やいじめ、不登校の件数は過去最多を更新している。経済的にも子どもの9人に1人が貧困状態にあり、ひとり親家庭では貧困率が5割近くに達する。
こうした状況に対応するため、岸田文雄政権下でこども家庭庁が発足し、こども基本法と、施策を総合的に進める大綱が制定された。全ての子が等しく健やかに成長できる社会を目指すとしている。
昨年末には、子育て世帯への給付など総額3・6兆円の少子化対策がまとまった。だが、これでは大綱が掲げる目標の一部にしか応えていない。
次に打ち出す施策として、各党がこぞって公約に盛り込んだのが「教育の無償化」だ。高校や大学の授業料、小中学校の給食費、塾代など多岐にわたる。多くの人が恩恵を受けるため、有権者にアピールしやすい。
家計への支援と、子どもの権利保障の観点から、教育にかかる負担の軽減は進めるべきだ。しかし、必要な予算規模や財源が十分に示されているとは言い難い。
貧困や虐待など困難な状況にある若年層に寄り添う支援も、急ぐ必要がある。格差是正や孤独・孤立の防止は喫緊の課題だ。
ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当の拡充、家族の介護などを担うヤングケアラーへの支援、家庭と学校以外の居場所作りなどの政策を競い合ってほしい。
過去4回の衆院選では、20代の投票率はいずれも40%を切り、年代別で最低だった。若い世代に政治への関心を持ってもらう上でも、子ども政策の議論を深めることが重要だ。
若者が閉塞(へいそく)感を抱いたままでは将来の展望は開けない。誰も取り残されることのない社会の実現に向け、各党は道筋を示すべきだ。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月23日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。