路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《余録・02.03》:人生の価値はその長短ではない…

2025-02-03 02:07:40 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

《余録・02.03》:人生の価値はその長短ではない…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・02.03》:人生の価値はその長短ではない…

 人生の価値はその長短ではない。とはいえ若い家族を亡くすと強い喪失感に襲われる。生きた証しを残してやりたいと願うケースも少なくない

 ▲京都市北区の印刷業、吉村伸(よしむら・しん)さん、由理(ゆり)さん夫妻は昨年1月、長男和馬(かずま)さんを失った。筋力が徐々に衰える筋ジストロフィーで、29年の生涯だった

遺影の吉村和馬さんはほほ笑んでいる=京都市北区の吉村さん宅で2025年1月19日午後5時

 ▲病気に気付いたのは5歳の時である。周りに比べ脚の重そうな様子を見た幼稚園の先生から、検査を勧められた。根本的な治療法のない難病だ。本人が寝入ると毎夜、夫妻で泣いた。由理さんは思った。「うちはもう、一生笑えないんやろな」

 ▲せめて動ける間、外に出よう。家族は幼い妹真綾(まあや)さんと一緒に、4人でウオーキングを始めた。和馬さんはボーイスカウトに参加し、電動車椅子サッカーで活躍する。学校や病院の関係者、ボランティアの人たちの励ましを受け、家族に笑顔が戻った

 ▲和馬さんは高校時代に歌を作詞作曲している。タイトルは「TAKARAMONO」。<病気と知ってショックだったよ。でも今では僕の大切な宝物。病気は早く治ってほしいけど、筋ジスは僕のトロフィーなんだ>。難病になったからこそ知った愛や良心がある。歌の最後は、周りへの「ありがとう」のリフレインだ

 ▲両親が仲間たちと作るバンドがCD「たからもの」(非売品)を制作中で、近く完成する。うち1曲は「TAKARAMONO」だ。「不自由でも、周りに感謝しながら生き抜いた和馬を忘れないでほしい」。家族の願いが込められている。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2025年02月03日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:診療支援へ国産AI開発に着手、病名候補を提示…数年以内の実用化目指す

2025-01-11 05:00:20 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

【政府】:診療支援へ国産AI開発に着手、病名候補を提示…数年以内の実用化目指す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:診療支援へ国産AI開発に着手、病名候補を提示…数年以内の実用化目指す

 政府が、医師の診療を支援する医療用の国産生成AI(人工知能)を開発することがわかった。問診結果を基に病名の候補を医師に伝えるなどして医療の質を向上させる狙いがあり、数年以内の実用化を目指す。医療分野での生成AIを巡っては、不正確な情報による誤診のリスクなどが指摘されており、開発チームは対策の研究にも取り組む。

首相官邸
首相官邸

 自治医科大の永井良三学長(循環器内科)をトップとするチームには、国立情報学研究所や情報・システム研究機構、東京大、神戸大、九州大など約40の研究機関・民間企業が参加し、昨年9月に着手した。

 基盤技術となる大規模言語モデル(LLM)に、国内の提供元から利用許諾を得た日本語の医学論文などのテキスト数百億文字を読み込ませる。個人情報を匿名化したコンピューター断層撮影装置(CT)などの画像約5億2000万枚も追加し、今春にもシステムを完成させる。

 医療機関では、問診結果から可能性のある病名を示すなどし、医師の診断を支援する。レントゲンなどの画像診断で、がんの疑いなどの重要な所見があれば医師に注意を促す機能を加え、見落としによる医療事故を防ぐことも想定している。

 さらに、▽電子カルテの記入補助▽報告書や紹介状の下書き▽感染症の「発生届」などの文案作成――を担い、事務負担を軽減する。患者にとっては、医師と向き合う時間の増加が期待される。

 医療分野では、海外の大手IT企業が生成AIの開発を進めているが、海外製は学習データの偏りから日本の実態が反映されにくく、個人情報が国外に流出する恐れも指摘されている。また、生成AIは事実に基づかない情報を回答する「ハルシネーション(幻覚)」などの技術的な課題があり、チームは発生の仕組みや防止対策も研究する。

 開発費は総額約220億円。2023年度の内閣府の補正予算に計上され、公募と審査を経て昨年夏にチームが固まった。生成AIの性能の指標で、学習した規模を示す「パラメーター」の数は1720億程度となり、医療用としては世界最大規模となる見込みだ。技術の流出などを防ぐため、国内のデータセンターを使う。

 実用化では、電子カルテのメーカーがシステムに生成AIを組み込むケースなどを想定しており、参入を促す。

 ◆ 大規模言語モデル(LLM) =生成AIの基盤となる技術。膨大な文字データを学習して次に来る単語の確率を予測し、文章の作成や要約、質問への回答といった処理をする。LLMは、英語のLarge Language Modelの略。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【政策・内閣府・医師の診療を支援する医療用の国産生成AI(人工知能)を開発】  2025年01月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・12.23】:臓器移植の体制 助かる命救う基盤の強化を

2024-12-23 16:00:50 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

【社説①・12.23:臓器移植の体制 助かる命救う基盤の強化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.23】:臓器移植の体制 助かる命救う基盤の強化を 

 現代の医療では臓器移植でしか救えない命がある。国民の理解が広がり、臓器提供数は増える傾向だが、現場を担う体制の不備が指摘されて久しい。

 厚生労働省が、脳死や心停止後の移植臓器のあっせんを一手に担ってきた「日本臓器移植ネットワーク」の業務を分割し、あっせん機関を複数化することを決めた。

 移植ネットの業務が多忙化し、臓器提供の善意を生かし切れていない面は否めない。国際的にみても、日本は移植を受けられずに亡くなる人が依然として多い。

 国と移植ネット、医療機関が一段と連携を深め、「命のバトン」をつなぐ基盤を強めてもらいたい。

 今回の体制見直しの端緒は、移植ネットの深刻な人員不足である。コーディネーターと呼ばれる職員は、臓器提供者(ドナー)の家族への説明や提供を受ける患者の選定、臓器の輸送手段の確保などを担う。だが、提供数の増加に伴い長時間労働が常態化しており、定員の半分程度しか充足できていない。

 厚労省の改革案によると、移植ネットのコーディネーターは移植を受ける患者の選定や臓器の搬送手段の確保に専念し、ドナー家族への対応は、地域ごとに新設する法人や、提供施設にいる院内コーディネーターが受け持つとする。

 ドナー本人の意思や家族の承諾理由を、医療者から独立した立場で確認するコーディネーターは、移植医療を円滑に進める上で要というべき存在だ。

 臓器移植法や脳死判定のルールを熟知し、限られた時間の中で葛藤する家族に寄り添いながら、説明を尽くせる専門人材の育成に国はいっそう力を入れる必要があろう。

 移植件数のさらなる増加を目指す上では、医療機関の体制充実も欠かせない。

 厚労省の調査では、2023年の脳死者からの臓器提供を巡り、受け入れ側の体制が整わずに延べ509人もの移植手術が見送られた。

 具体的には「他の移植(手術)に対応している」「人員がそろわない」「集中治療室が満床」などが理由という。

 こうしたケースを減らすため、改革案では、患者が移植を受ける登録病院を現在の1カ所から2カ所に増やせるようにする。助かるはずの命を救う機会が失われることは、手を尽くして防ぎたい。

 脳死判定を担う病院の技術の向上も求められる。

 厚労省は、脳死判定の実績が豊富な全国17の「拠点病院」が、他の病院に専門医らを派遣して支援する制度を設けている。

 京都では、京都第二赤十字病院が拠点病院となり、普段からノウハウの共有や症例研究を行っている。取り組みを広げて、地域格差の解消を目指してほしい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月23日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・12.06》:再生医療の規制 患者守る運用が不可欠だ

2024-12-09 02:03:40 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

《社説②・12.06》:再生医療の規制 患者守る運用が不可欠だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.06》:再生医療の規制 患者守る運用が不可欠だ

 細胞などを使って病気や事故で失われた機能を取り戻す再生医療への期待は大きい。だが、健康被害などでひとたび信頼を失えば、普及が滞りかねない。

 がん予防をうたった再生医療で、2人が重大な感染症にかかったとして、厚生労働省が10月、クリニックの治療提供を一時止めさせる緊急命令を出した。 

再生医療の審査体制のチェックを強化することなどを盛り込んだ改正法が可決、成立した参院本会議=国会内で2024年6月7日、平田明浩撮影

 細胞などを使って病気や事故で失われた機能を取り戻す再生医療への期待は大きい。だが、健康被害などでひとたび信頼を失えば、普及が滞りかねない。

 
再生医療安全性確保法に基づく再生医療実施の仕組み=厚生労働省のホームページより

 がん予防をうたった再生医療で、2人が重大な感染症にかかったとして、厚生労働省が10月、クリニックの治療提供を一時止めさせる緊急命令を出した。

 医療機関は事前に計画を作成し、安全性と実施の妥当性について大学や医療機関が設置する有識者委員会の審査を受け、厚労省に届け出る。トラブルがあれば国に報告する。

 法施行後に届け出があった計画は約6000件に上る。研究は約100件で、残りは患者が治療費を全額負担する自由診療だ。届け出制のため、効果の検証が十分とはいえない。

 審査する委員会のチェックが甘いケースも明らかになっている。安全性の根拠が不十分だったり、専門以外の医師が治療を担当していたりする計画が多数存在することが、国立がん研究センターなどの調査で分かった。

 先の通常国会では、ずさんな審査がされていないか、委員会の事務局などに国が立ち入り検査できるよう法改正された。

 クリニックによる広告のあり方も問題になっている。

 「厚労省の承認を受けた」など、あたかも国の「お墨付き」を得ているかのような文言や、効果を過大に期待させる内容のものが確認されている。いずれも医療法に反する恐れがあり、日本再生医療学会は患者に誇大広告への注意を促す声明を出した。

 安全意識の乏しい治療や法律を軽視した情報発信が広がれば、社会の信頼を損なうことになる。国には、患者が不利益を被らないよう規制を厳格に運用することが求められる。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月06日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・10.21》:国内初の異種移植へ 議論尽くし命救う一歩に

2024-10-24 02:04:30 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

《社説②・10.21》:国内初の異種移植へ 議論尽くし命救う一歩に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・10.21》:国内初の異種移植へ 議論尽くし命救う一歩に

 日本で初めてブタの組織をヒトに移植する臨床研究の計画が明らかになった。難病患者にとり光明となる医療だが、倫理上の問題も考慮する必要がある。

東京慈恵医大などが計画する異種移植の流れ

 東京慈恵会医科大などが、腎臓が成長せず尿を作れない「ポッター症候群」の胎児を対象に実施する。体が小さいまま生まれてくることが多いため人工透析などの治療を受けられず、重症の場合は生き続けることが難しい。

 計画によると、生まれる4週間前の胎児に、ブタの胎児から取り出した、腎臓になる組織を注射器を使って移植する。生まれるときには腎臓に成長しており、生後は尿が作れるようになる。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/10/21/20241021ddm005070162000p/9.webp?2" type="image/webp" />2024年2月に日本で初めて誕生した、遺伝子が改変され異種移植用の臓器を持った子ブタ=ポル・メド・テック社提供</picture>
2024年2月に日本で初めて誕生した、遺伝子が改変され異種移植用の臓器を持った子ブタ=ポル・メド・テック社提供

 2~4週間後に透析が可能な体重になれば、ブタの腎臓は取り除かれる。透析を受けられるまでの「つなぎ」という位置づけだ。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月21日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・10.22】:臓器移植の断念 ドナーの善意を生かしたい

2024-10-23 05:01:45 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

【社説①・10.22】:臓器移植の断念 ドナーの善意を生かしたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・10.22】:臓器移植の断念 ドナーの善意を生かしたい

 脳死の人が臓器を提供したのに、病院側の事情で移植手術が見送られてしまうケースが多い。

 提供者の善意が生かされないばかりか、移植を待つ患者に酷というほかない。国は対策を急ぐべきだ。

 東大、京大、東北大の各大学病院で、人手不足や集中治療室(ICU)が満床といった体制の不備を理由に、臓器の受け入れ辞退が相次いでいることが読売新聞の報道で判明した。

 これを受けて厚生労働省が全国的な実態を初めて調査した。その結果、昨年1年間にこの三つの大学病院を含む計25の病院で、臓器の受け入れ体制が整っていないとして、移植手術を見送っていたことがわかった。

 これにより、移植手術を受けられなかった患者は計約500人に上っていたという。

 体制の不備が原因で、移植が見送られることが常態化しているのは問題だ。ドナーやその家族の善意が軽視されてはならない。移植にかかわる課題を洗い出し、改善を図る必要がある。

 韓国には臓器移植専用のICUを持つ病院があるが、日本にそうした施設はない。日本の医師から移植技術を教わった韓国人の医師は多いが、今や脳死の臓器移植は日本より盛んに行われている。

 そうした体制を日本ですぐに整えるのは難しいとしても、移植を手がける病院間で協力することはできるはずだ。

 移植を待つ患者の情報を複数の病院が共有し、ドナーが見つかった場合、空いている手術室を提供し合ったり、医療人材を相互に派遣したりして、補い合う仕組みをつくってはどうか。

 政府はこれまで、ドナーを少しでも増やすことに傾注するあまり、移植の体制整備にまで手が回っていなかったのではないか。今後は、医療体制の拡充を後押しすることも欠かせない。

 国内の脳死ドナーは昨年、132人で過去最多だった。一方で、現在、移植を待つ患者は1万6000人を超えている。移植の機会を何年も待っている人や、待機中に亡くなる患者も多い。

 国内で臓器移植を受けることが難しいため、海外に渡航する人は後を絶たない。患者の弱みにつけ込んで、海外での移植を無許可であっせんしたとして、業者が摘発される事件も起きた。

 そうした事態を防ぐためにも、提供された貴重な臓器を十分に活用できるよう、国も医療機関も知恵を絞ってもらいたい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:子どもの難病 海外の薬を手に入りやすく

2023-05-11 05:00:35 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

【社説①】:子どもの難病 海外の薬を手に入りやすく

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:子どもの難病 海外の薬を手に入りやすく

 欧米で使われている薬が日本ですぐ使えずに、患者が命を落とすような状況は見過ごせない。国は、早急に問題を解決する必要がある。

 海外の薬が日本で使えるまでに時間がかかる事態は「ドラッグラグ」と呼ばれ、問題になっている。患者が少ない、難病の子どもの病気で特に深刻だといわれる。

 とりわけ小児がんは近年、遺伝子解析の技術が進歩して新薬が続々と登場している欧米と、日本との格差が顕著になっている。

 欧米で2015年に承認された神経芽腫の新薬「ユニツキシン」の場合、日本での承認は6年後の21年にずれ込んだ。

 薬の承認には治験による有効性や安全性の確認が必要だが、ユニツキシンでは、製薬会社が複数の国で行った国際共同治験の参加国に日本は選ばれなかった。

 このため日本では、やむなく医師が独自に治験を行った。人手や資金が不足する中で結果を出すのに時間がかかり、20年まで申請できなかった。その間に亡くなった患者もいる。残念でならない。こうした例は珍しくない。

 なぜ日本が治験の参加国に選ばれないのか、背景を探る必要がある。多数の病院に患者が分散していて被験者を集めにくいうえ、外国語のできるスタッフが少ないことも要因だと指摘されている。

 国は、医学界や製薬業界と連携し、打開策を検討してほしい。

 そもそも子どもの薬の開発は、製薬会社にとって手を出しにくい分野だ。患者数が少なく、大人用と用法用量に違いがあるなど特有の配慮が必要で、コストに見合う利益が見込めないためだ。それは世界共通の悩みだった。

 にもかかわらず欧米で新薬が続出しているのは、制度を改革したことが理由だ。日本でも制度を整えることが解決のカギになる。

 欧米では、企業が大人の薬の治験を行う場合、併せて子どもの治験も実施することを義務づけている。加えて、企業の利益になる制度も設けているのが特徴だ。

 米国では、患者が少ない子どもの薬を手がけた企業には、別の薬の承認を目指す際、優先的に審査を受けられる権利が与えられ、期間を短縮できる。こうした制度もあり、17年以降、小児がんの新薬34種類が開発された。

 厚生労働省は、研究班を設けて子どもの薬に関する海外の制度を調べ、日本で導入する場合の課題などを分析しているという。どのような仕組みが効果的か見極め、実現につなげてもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年05月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【土記】:ヒトゲノム完全解読=青野由利

2022-05-07 02:05:20 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

【土記】:ヒトゲノム完全解読=青野由利

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【土記】:ヒトゲノム完全解読=青野由利 

 <do-ki>

 その人は小柄で目立たず、控えめに座っていた。

 1999年12月、英ロンドンで開かれた記者会見「ヒト染色体22番の全塩基配列解読」。招かれていたのはノーベル化学賞を2回受賞した生化学者、フレデリック・サンガーさんだ。

 

2003年にヒトゲノムの解読が完了し、記念のCD-ROMを受け取る当時の小泉純一郎首相=首相官邸で、宮本明登撮影

2003年にヒトゲノムの解読が完了し、記念のCD-ROMを受け取る当時の小泉純一郎首相=首相官邸で、宮本明登撮影

 90年に始まった国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」のゴールは30億に上るヒトのDNAの遺伝暗号文字の並び、すなわち塩基配列をすべて書き下すことだった。

 この配列決定法を70年代に開発したのがサンガーさんだ。、残り755文字(全文975文字)

 ※:この記事は有料記事です。ご登録から1カ月間は99円!!。いますぐ登録して続きをお読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【土記】  2022年05月07日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:広がる遺伝情報の利用 差別生まぬルールが必要

2022-04-26 02:04:40 | 【先端医療・臓器移植・ゲノム医療・難病・IPS細胞の活用・再生医療・抗癌治療他】

《社説②》:広がる遺伝情報の利用 差別生まぬルールが必要

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:広がる遺伝情報の利用 差別生まぬルールが必要

 がんや難病の患者の遺伝情報を使い、一人一人の体質や病状に応じた診断、治療を提供する「ゲノム医療」が広がっている。

 遺伝情報は、医療の高度化に欠かせない。病気の原因となる遺伝子が分かれば、新たな治療法の開発につながる。遺伝子の特徴から個々の患者に効果のある薬を見つけることも可能だ。

 がん治療では、遺伝情報を調べる検査が保険適用になった。さらに、国は2019年から、がんや難病の患者約10万人分の遺伝情報を網羅的に調べる「全ゲノム解析等実行計画」を進めている。

 しかし、課題も多い。病気の診断や治療以外の目的で使われると、患者や家族が差別される恐れがあるからだ。

 日本医学会と日本医師会は今月、差別を防ぐルール作りを求める声明を発表した。がんなどの患者団体も同様の要望を出した。

 これまでも、がん患者の家族が「がん家系」などの偏見から結婚に反対されることがあった。生命保険の加入審査項目に遺伝にかかわる記載があり、金融庁が約款からの削除を求めたこともあった。

 「究極の個人情報」である遺伝情報が広く使われるようになれば、患者が就職や結婚などで深刻な差別を受けかねない。

 問題は、患者本人だけにとどまらない。遺伝性の病気と分かると、血縁関係にある家族のリスクが高いことも判明し、差別の連鎖につながる恐れがある。 

 遺伝情報の取り扱いには慎重を期さなければならない。欧米や中国、韓国、豪州などは、遺伝情報による差別を禁止し、医療以外での利用を規制する法律を定めているが、日本にはない。

 昨年、議員立法を目指す動きがあったものの、研究やビジネスにブレーキをかけかねないと懸念する声があり、法案提出は見送られた。保険業界に求められていた自主ルール作りも進んでいない。

 日本医学会などは「国民が安心してゲノム医療を受けるためには社会環境の整備が必要だ」と訴えている。

 ゲノム医療を推進するのであれば、国はまず患者や家族の不安払拭(ふっしょく)に努めなければならない。差別を生まないルールを作ることが不可欠だ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年04月25日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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