《社説②・12.06》:再生医療の規制 患者守る運用が不可欠だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.06》:再生医療の規制 患者守る運用が不可欠だ
細胞などを使って病気や事故で失われた機能を取り戻す再生医療への期待は大きい。だが、健康被害などでひとたび信頼を失えば、普及が滞りかねない。
がん予防をうたった再生医療で、2人が重大な感染症にかかったとして、厚生労働省が10月、クリニックの治療提供を一時止めさせる緊急命令を出した。
細胞などを使って病気や事故で失われた機能を取り戻す再生医療への期待は大きい。だが、健康被害などでひとたび信頼を失えば、普及が滞りかねない。
がん予防をうたった再生医療で、2人が重大な感染症にかかったとして、厚生労働省が10月、クリニックの治療提供を一時止めさせる緊急命令を出した。
医療機関は事前に計画を作成し、安全性と実施の妥当性について大学や医療機関が設置する有識者委員会の審査を受け、厚労省に届け出る。トラブルがあれば国に報告する。
法施行後に届け出があった計画は約6000件に上る。研究は約100件で、残りは患者が治療費を全額負担する自由診療だ。届け出制のため、効果の検証が十分とはいえない。
審査する委員会のチェックが甘いケースも明らかになっている。安全性の根拠が不十分だったり、専門以外の医師が治療を担当していたりする計画が多数存在することが、国立がん研究センターなどの調査で分かった。
先の通常国会では、ずさんな審査がされていないか、委員会の事務局などに国が立ち入り検査できるよう法改正された。
クリニックによる広告のあり方も問題になっている。
「厚労省の承認を受けた」など、あたかも国の「お墨付き」を得ているかのような文言や、効果を過大に期待させる内容のものが確認されている。いずれも医療法に反する恐れがあり、日本再生医療学会は患者に誇大広告への注意を促す声明を出した。
安全意識の乏しい治療や法律を軽視した情報発信が広がれば、社会の信頼を損なうことになる。国には、患者が不利益を被らないよう規制を厳格に運用することが求められる。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月06日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。