路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【小社会・12.28】:餅つきの日に

2024-12-28 05:05:40 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【小社会・12.28】:餅つきの日に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.28】:餅つきの日に

 きょうは餅つきを予定しているご家庭もあるだろう。「八」は末広がりで縁起がいいとされ、28日に正月の鏡餅や雑煮の餅を作る風習が全国にある。いまは出来合いを買う方が大半かもしれないが。

 〈餅を搗(つ)く夫婦の阿吽(あうん)佳(よ)かりけり〉高野孝子。ついた後は家族総出で丸めていく。一家の一年の平和を実感し、迎える新年にも願いがこもる作業である。

 民俗学者の新谷尚紀さんによると、江戸末期には庶民が広く雑煮で正月三が日を祝うようになった。「屠蘇(とそ)はともかく、雑煮だけはなんとしても準備するのが正月の迎え方の基本だった」という(著書「日本の『行事』と『食』のしきたり」)。

 昔は餅はもちろん白米もぜいたくな食べ物で、正月など限られた日にしか口にできなかった。もち米を含めコメは特別な存在で、いただく感謝の念も、飽食の現代人よりはるかに強かったに違いない。

 ことしはコメも餅も高騰した。都会を中心に店頭からコメが消える「令和の米騒動」もあった。国内のコメ消費量は減り続けているが、近年これほどコメの大切さを再認識させられた年はあったろうか。

 「外人学者は、日本人の米作りは、農業ではなく、園芸だなどという」。食物史研究者の大塚滋さんがかつて著書で紹介していた。それだけ手間暇をかけて育てられるというわけだ。ぺったん、ぺったん。この年末の餅にはコメや農家の皆さんへの思いもこもるだろう。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2024年12月28日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・12.26】:酪農家の苦境 国は危機感持ち対応を

2024-12-27 04:05:30 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説①・12.26】:酪農家の苦境 国は危機感持ち対応を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.26】:酪農家の苦境 国は危機感持ち対応を 

 生乳を指定団体に出荷する全国の酪農家戸数が10月で前年同月比5.7%減の9960戸となり、統計を取り始めた2005年以降、初めて1万戸を割った。全国の酪農団体などでつくる中央酪農会議が集計した。
 
 5年間で4分の1近くが減った形だ。道内は4.4%減の4338戸だった。
 
 22年以降乳価は引き上げられたものの、円安などの影響による飼料価格や光熱費の高止まりで所得が減少している。
 状況の改善が見通せず、赤字経営でなくても見切りをつける酪農家が少なくないという。
 戸数減が緩やかな北海道の役割は一層大きくなりそうだが、調査では道内に多い大規模経営ほど苦境にあるのが心配だ。
 酪農家に支払われる加工乳の補給金単価が来年度も引き上げられることになった。だがコスト増の実態に見合った水準ではないとの声は根強い。
 政府は危機感を持ち、抜本的な対策を講じる必要がある。
 中央酪農会議のアンケートによると、経営状況が赤字と答えた酪農家の割合は6割近くに達した。飼料価格高騰のほか、副収入となる子牛の市場価格が飼料高による需要減で低迷し、収入減に拍車を掛けている。
 政府は飼料価格の高騰分を穴埋めする特例措置や特別制度などの対策を取ってきたが、戸数減を止められなかった。制度の大胆な見直しが不可欠だ。
 国が推進してきた規模拡大とコロナ禍での生産調整に翻弄(ほんろう)され、借金がかさんでいる生産者は多い。離農したくてもできないとの切実な声もある。
 運送業や酪農ヘルパーなどを含めた生乳生産のインフラは、一度壊れたら再生は難しい。
 政府には生産コストを適正に価格に転嫁できる仕組みづくりを急ぐことが求められる。
 栄養素が多く、輸入が8割を占める濃厚飼料の国産化をさらに進める契機としたい。
 濃厚飼料の原料となる子実コーン(子実トウモロコシ)は、耕作放棄地の活用などで国内生産の余地が大きいとされる。
 道内では輪作に取り入れる動きもある。コスト削減や安定的な需要確保に向けた支援策を検討すべきではないか。
 
 政府は今後10年間の政策の方向性を示す「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の改定作業を進めている。
 
 家族経営の酪農家も地域を支える大切な存在だ。経営規模や地域の実情に合った支援のあり方を模索してもらいたい。酪農家の労働負担軽減をさらに後押しすることも欠かせない。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月26日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【金口木舌・12.27】:土に生きる

2024-12-27 04:00:40 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【金口木舌・12.27】:土に生きる

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.27】:土に生きる 

 年を追うごとに夏は苛酷さを増す。趣味のベランダ園芸で何年も育てた鉢が高温にやられる一方、ブーゲンビリアやハナキリン、ガジュマルなど地のものの強さは別格だ

 ▼鉢いじりの季節を迎え、土に生きる植物の一生を思う冬。本島中部では中城村の「中城島にんじん」の旬入り宣言があり、山芋スーブも相次いだ。サトウキビはあちこちで収穫を待って花穂を揺らす

 ▼島ニンジンも山芋も夏の高温、少雨・大雨などの異常気象にさらされ減産や株重量の減少が起きている。土の中で悪運を乗り切ってくれた植物に、生産者のたゆまぬ努力に感謝する

 ▼中城村の在来種を継ぐ黄色い島ニンジン。土の匂いとさわやかな甘みはチムシンジにも、食卓の普段使いにも。翻って趣味を突き詰めた男たちの山芋スーブ。審査会に並ぶ土まみれの岩塊のごとき大量の山芋。誰がどう皮をむく

 ▼山芋スーブは「おじーのロマン、おばーの不満」という名言を知った。多くは女たちが調理することから。硬い皮はみんなで一緒にむきましょう。「花よりも花を育てる土であれ」との格言もあるようで、いろいろあった年の瀬に土を思う。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年12月27日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《水説・12.18》:酪農家が泣いている=赤間清広

2024-12-18 02:01:10 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

《水説・12.18》:酪農家が泣いている=赤間清広

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《水説・12.18》:酪農家が泣いている=赤間清広

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 埼玉県西部に位置する小鹿野町。吉田牧場は地域の人々に愛されてきた家族経営の酪農家だ。

 乳牛や肉牛など100頭以上を飼育。そこから採れる新鮮な牛乳は周辺自治体の学校給食を長年、支えてきた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/12/18/20241218ddm002070087000p/9.webp?2" type="image/webp" />全国には地域の人々に長年愛されてきた「ご当地牛乳」がある=東京・有楽町で2024年12月2日、赤間清広撮影</picture>
全国には地域の人々に長年愛されてきた「ご当地牛乳」がある=東京・有楽町で2024年12月2日、赤間清広撮影

 ただ、牧場の維持は年々、厳しくなっているという。世界的な資源価格の高騰で餌代や燃料費がかさみ続けているためだ。

 牧場経営は酪農家だけではできない。牛乳を運ぶ運搬車のドライバーや、病気の牛を診察してくれる獣医――。

 経営をあきらめれば、こうした人々の生活まで揺るがしかねない。

 ■この記事は、有料記事です。残り718文字(全文961文字)

 ■続きは、会員登録後、お読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【水説】  2024年12月18日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・11.06】:令和の米騒動 コメ不足は歴代自民党農相と農水族の大罪

2024-11-13 07:40:00 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【政界地獄耳・11.06】:令和の米騒動 コメ不足は歴代自民党農相と農水族の大罪

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・11.06】:令和の米騒動 コメ不足は歴代自民党農相と農水族の大罪 

 ★農相経験者の首相・石破茂は先の総選挙で就任したばかりの農相・小里泰弘を落選させた。空席の農相のポストには元農相・江藤拓が再任の見通しという。国民生活が苦しくコメ不足、コメの値上がりが深刻影響をもたらしているにもかかわらず農相空席だ。有効な手だてなく市場価格高騰甘んじるなど政府無能ぶりを露呈させている。ただ農相が決まってもこの役所は国民食糧事情にさして興味はない。業界団体貿易摩擦にならぬように見張るだけだ。だから農相が誰になろうと国民生活関係はない。

品切れの棚に貼られていた「米購入制限のお知らせ」  品切れの棚に貼られていた「米購入制限のお知らせ」

 ★その原因農水省減反政策などに求めるのは簡単だ。減反廃止すれば、食料自給率60%以上に上がる。減反実施は続くものの、コメ消費確実に増えている。もう一方で農水省消費者見通し極めて甘かったことも拍車をかけた。興味がないから当然だが物価高騰外食産業から生鮮品まで高騰し、当然消費税追い打ちをかける。家庭台所火の車だ。街の定食屋は若者に腹いっぱい食べさせようと、ご飯のお代わり無料をうたうが、それではやっていけない。インバウンドで海外からの観光客のコメの消費も大きい。令和米騒動腹いっぱいコメ食えないレベルだ。農業県でも総選挙でコメ不足の解決を訴えた候補者はあまりいない。だがコメは我が国の食料の根幹で、皇室とコメの関係も切っても切り離せない。ところが政府JAコメコメ農家追い込んできた。歴代自民党農相農水族大罪だ。

 ★国民民主党は「手取りを増やす」と言い、年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しを党代表・玉木雄一郎は「恒久的な措置としてやっていきたい」と言う。自民党議員は「恒久的と言い出したら財務省は警戒する。それなら生鮮品などの消費税時限的に下げた方がいい。消費税減税を言い出したら玉木プランはつぶれる」。国民コメ腹いっぱい食べられる日は来るか。(K)※敬称略

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません4。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2024年11月06日  07:39:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・07.14】:高温障害多発/影響は農業にとどまらず

2024-07-16 06:01:45 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説・07.14】:高温障害多発/影響は農業にとどまらず

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・07.14】:高温障害多発/影響は農業にとどまらず 

 全国各地で農作物の高温障害が相次いでいる。兵庫県内でも近年、水稲をはじめ丹波黒大豆、ブドウやナシなど影響は広範囲に及ぶ。今夏は、観測史上最も高い平均気温を記録した昨夏に匹敵する猛暑が予想されており、警戒が必要だ。

 農業生産は、気候変動の影響を受けやすい。温暖化は地球規模で進み、高温障害が一過性でないのは明白だ。農家だけで打てる手は限られ、国や都道府県、生産者団体が連携して対応を急がねばならない。

 昨夏の高温障害について農林水産省がまとめたレポートによると、水稲は大半の地域で1等米比率が低下した。リンゴやブドウ、ナシなどの果物をはじめ、花、乳用牛など、幅広い農産物で品質・収量低下、病・虫害に見舞われた。 

 効果のあった対策で、直ちに取り組めるのは遮光資材の活用やかん水管理などだ。各地で積極的に採り入れる必要がある。

 水稲では高温耐性品種の導入・転換も挙がった。主食用米の作付面積に占める耐性品種の割合は14・7%に上り、2019年から4・8ポイント増えた。

 ブランド米の産地では、品種置き換えへの抵抗感も少なくないだろう。しかし全国有数の米どころの新潟県では、暑さに弱いコシヒカリの1等米比率が5%にまで落ち込んでいる。

 気候変動への耐性とともに品質を高める研究も進んでおり、品質や収量の低下が避けられないなら新品種に置き換えるとともに、改めて産地全体でブランドをアピールしてほしい。

 地域を代表する農産物が高温障害で打撃を受けると、その影響は農業にとどまらず、文化や景観、観光などにも及ぶ。

 山形県では今年、サクランボが歴史的な凶作となる見通しで、JA山形中央会は、スプリンクラーなどの暑さ対策の設備導入や、高温に強い品種開発などへの支援を県に緊急要請した。

 兵庫県も山田錦や丹波黒、イチジク、タマネギなど、地域に根差した多くのブランド産物を擁する。丹波黒では暑さに強い新品種の普及に向けた取り組みが始まった。品種改良は一朝一夕には進められないだけに、さらなる高温化を念頭に、備えを固めたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年07月14日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・05.17】:日本人を「米食民族」と呼ぶことがあるが、むしろ「米食悲願民…

2024-05-20 07:21:30 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【筆洗・05.17】:日本人を「米食民族」と呼ぶことがあるが、むしろ「米食悲願民…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・05.17】:日本人を「米食民族」と呼ぶことがあるが、むしろ「米食悲願民…

 日本人を「米食民族」と呼ぶことがあるが、むしろ「米食悲願民族」と呼ぶのが正しい。稲作文化に詳しい渡部(わたべ)忠世さんが著書で語っていた。長い歴史で皆が常に米を食べられる時代は最近に限られる。民は長く、もっと食べたいと渇望してきたという

 ▼なるほど米は年貢であり、武士への給料であり、権力の基盤であったが、農家でも白米は特別な日のごちそうだったと聞く。一回でも多く食べたいと願う私たちの祖先は可能な限り田を開いた。山の斜面の棚田は、日本人の米への執着の象徴らしい

 ▼奥能登・輪島の日本海沿いの棚田「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」で田植えが始まった。地震で亀裂が入るなどしたが、1004枚のうち被災を免れたり修復したりした約120枚で植える

日本海を背に白米千枚田で田植えをする田のオーナーや白米千枚田愛耕会のメンバー=石川県輪島市で2024年5月11日午前11時32分、阿部弘賢撮影 © 毎日新聞 提供

 ▼作業をする地元有志団体の代表は田植え開始の式でマイクを握ると、途中で言葉を詰まらせた。寛永期に用水が開かれたという千枚田。今年も何とか伝統をつなぎ、思いがこみ上げたか

 ▼千枚田に限らず奥能登の田の被害は大きいが、今年は無理でも来年はと修復に励む農家がいる。米への執着が絶えぬ人の存在に希望を見出(みいだ)したくなる

 ▼渡部さんの本によると昔、海を望む佐渡の棚田を守る老人は「田植えの日は酒や餅などを供え、田を開いた知る限りの先祖の名を空と海に向かって叫ぶ」と語ったという。奥能登のご先祖様たちも見てくれているだろうか。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2024年05月17日  07:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季・05.04】:畑にある「文化財」

2024-05-05 05:05:40 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【卓上四季・05.04】:畑にある「文化財」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.04】:畑にある「文化財」

 まさかりかぼちゃ、ラワンブキ、キャベツの「札幌大球(たいきゅう)」、タマネギの「札幌黄(き)」、ハッカの「あかまる」、八列トウモロコシ、函館赤カブ。道内各地に長く根づいてきた代表的な伝統作物だ。これらの情報を掲載する「在来品種データベース」のオンライン公開が始まった
 ▼北海道から沖縄まで44都道府県の280種を国立研究開発法人「農研機構」のサイトで紹介する。産地や呼び名、食べ方、流通状況をくわしく解説し、現地で栽培する様子などの写真も添えた。各地の作物を見るうち、知らない土地を旅する気分になる
 ▼在来品種は地域の気候や風土に合わせて人々が改良し、守り育ててきた野菜や雑穀だ。地域の食文化やくらしと深く結びつき、遺伝資源としての価値も高い
 ▼地域の宝なのに、姿を消しつつある品種が少なくない。生産者の高齢化に加え、高収量の新しい品種に押される。まさかりかぼちゃも例外ではない。皮が硬くて長期保存できるため重宝されたが、高度成長期から栽培する農家が減り、風前のともしびに
 ▼道内を含めて全国で現地調査し、今回のデータベースの情報を集めた山形大の江頭(えがしら)宏昌教授は言う。「在来品種は生きた文化財。地域の歴史や文化を伝えるメディアと言えます」
 ▼国内には2千種以上あるとされる。関心を持つ。育てる。味わってみる。できることから始め、先人が残してくれた宝を守りたい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2024年05月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

2024-02-12 05:01:45 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

 農林水産物・食品の輸出を安定的に伸ばすには販路を多角化する必要がある。海外のニーズにあった産品づくりに取り組み、輸出拡大に向けた戦略を再び強化したい。 

 2023年の農林水産物・食品の輸出額が、前年比2・9%増の1兆4547億円と、11年続けて過去最高を更新した。多くの国や地域で、コロナ禍からの経済活動の正常化が進んだほか、円安による割安感も追い風になった。

 ただ、伸び率は22年の14・2%増から大幅に鈍化した。中国が、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を受け、昨夏以降、日本からの水産物の輸入を全面的に停止したことが響いている。

 輸出額の大きいホタテが落ち込んだほか、中国の景気低迷で日本酒やウイスキーも減った。特定の国や地域に依存することのリスクを浮き彫りにした形だ。

 一方、中国向けの農林水産物・食品の輸出は、全体で前年より14・6%減少したものの、なお最大の輸出先である。科学的な根拠に基づかない水産物の禁輸措置を早期に解除するよう、政府は粘り強く働きかけねばならない。

 23年の輸出は、香港や米国、韓国、豪州など、中国以外では順調に増えている国・地域が多い。

 海外で和食ブームが続いているほか、訪日観光を機に和食ファンになる外国人も多いという。日本産品を海外に売り込む余地は大きいはずだ。官民が一体となって、多様な国・地域で販売拡大を図ることが大切となる。

 それには、現地の需要に応じた産品を作ることが重要だ。

 23年の輸出で、緑茶は33・3%増えた。粉末の抹茶にすることで栄養を余すところなく取り込める健康食品として認知され、健康志向が高まっている欧米で人気が出たという。ニーズを開拓した成功事例だと言えよう。

 「和牛」として知られる牛肉も、外食需要が持ち直した香港や台湾などで、輸出が大幅に伸びた。

 各地の需要を調べ、効果的な販売促進活動を展開してほしい。

 そのほか、中国はホタテなど日本の水産物を加工して、第三国に輸出する役割も果たしていたため禁輸措置の影響が広がった。

 そのため、政府は、中国で行われていた米国向けのホタテの殻むき作業を、ベトナムなどに移す事業への支援を始めた。

 政府は、農林水産物・食品の輸出のためのサプライチェーン(供給網)についても再点検し、リスクの分散に努めてもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:コメ現物市場 価格形成透明化に期待

2023-08-22 05:03:55 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説①】:コメ現物市場 価格形成透明化に期待

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:コメ現物市場 価格形成透明化に期待

 道内企業などが出資するコメの現物取引市場が来月開設される。

 多くが相対取引で決まるコメの価格形成を透明化しようと、農林水産省主導で制度設計した。
 卸売りとの相対取引ではJAグループが各農協を通じて生産者に仮払いする「概算金」が指標となる。生産動向などで算定されコメ自体の持つ価値が分かりづらい。
 新市場は流通量が少ない減農薬の特別栽培米などの取引から始める見通しだ。環境を重視した生産者の努力が評価対象となる。
 売り手としてホクレンが参加を検討している。一方で全国のJA関連団体や大手コメ卸は対応が未定で、様子見の状態という。
 市場がコメの価格をリードするには十分な取引量が課題となる。生産者、消費者双方が納得できる新たな仕組みに育ってほしい。
 新市場の運営会社には公益財団法人の流通経済研究所(東京)や生鮮食品卸道内大手いずみホールディングス(札幌)が出資する。
 オンライン上で取引を行う方式で数量、生産地などの情報を公表し売り手側が希望する価格などを示す。卸売業者など買い手側の競りのほか希望注文も可能という。
 買い手が求める品質と生産者の生育情報をきめ細かくマッチングさせる機能が求められる。
 減農薬などの取り組みが価格にどう反映されるか、消費者に情報公開される運営も期待したい。
 初年度は2万トン、2027年度に12万トンの取扱量を目指す。全国のコメ販売数量の数%に過ぎず、あくまで相対取引の補完的役割だが、取引が活発になれば米価全体に影響を与える可能性がある。
 農水省によるとこれと別に同様の市場創設の動きもあるという。
 現物市場ができるきっかけは、21年に農水省が大阪堂島商品取引所のコメ先物取引の本上場を「取引参加の生産者などの数が少ない」として認めなかったことだ。
 同じ年にはコロナ禍の大幅需要減で全国的に概算金が減額され、生産者、消費者の双方から価格形成の仕組みに不信感が高まった。
 かつては公設の全国米穀取引・価格形成センターが自主流通米時代から指標価格を形成していたが、食糧法改正による流通自由化で取引量が減り11年に解散した。
 市場売買には生産者の一部に「投機対象となり価格が乱高下するのでは」との不安もあろう。
 だが減農薬などの付加価値が正しく評価されれば、経営安定だけでなく、消費者のコメ離れを食い止める効果も期待される。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年08月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説①】:穀物合意停止 露は安全な輸送の責務果たせ

2023-07-20 05:00:45 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説①】:穀物合意停止 露は安全な輸送の責務果たせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:穀物合意停止 露は安全な輸送の責務果たせ

 食料供給を「人質」にとって制裁解除を求めるロシアの戦術は、断じて許されない。 

 穀物大国のウクライナが戦火の中でも農産物輸出を続けることは、世界の食料危機を回避するために不可欠だ。

 ロシアとウクライナが1年前に国連とトルコの仲介で取り交わしたウクライナ産穀物の海上輸送の安全に関する合意について、ロシアが履行停止を通告した。

 昨年の合意前は、ロシアによる黒海封鎖や、ウクライナ南部の積み出し港への攻撃により、貨物船が出航できず、穀物が倉庫に滞留していた。

 再び同様の事態に陥れば、中東やアフリカなどへの輸出が滞り、世界的に穀物価格が高騰する事態が懸念される。

 ロシアは、自国産の穀物と肥料の輸出拡大が合意に含まれていながら実現していないと主張し、こうした要求が満たされることが、合意復帰の条件だとしている。身勝手な理屈だというほかない。

 欧米の海運会社や保険会社が、ロシアを出航する貨物の引き受けに難色を示し、輸出が停滞している側面がある。その原因は、ロシアが自ら招いた信用低下や決済を巡るリスクだ。

 さらに、ロシアはイランなどの友好国に農産物を積極的に輸出し、小麦の輸出量はむしろ増加しているとも指摘されている。

 欧米の対露制裁は、農業や食料分野を標的にしておらず、制裁によって輸出が妨げられているというロシア側の主張はあたらない。欧米の金融制裁を解除させたいのが本音ではないか。

 穀物合意の有効期間は120日だったが、その後ロシアの主張によって60日に短縮された。期限が近付くたびに、ロシアが要求を突きつけ、揺さぶりをかけてきた。こうした事態を防ぐには、恒久的な合意を結び直す必要がある。

 ロシアが合意に復帰するまでの間も、ウクライナ産穀物の輸出を継続することが重要だ。

 国連とトルコは、ロシアに復帰を働きかけながら、黒海での安全な輸送を保証する仕組みを確保してもらいたい。

 ロシアは、食料やエネルギーの高騰に苦しむ途上国や新興国に対し、自らの侵略行為がその原因を作っていることを 糊塗こと し、米欧側に責任をなすりつける宣伝戦を展開している。

 ロシアの卑劣な戦術に対抗するうえでも、米欧日はウクライナの穀物輸出を支援し、食料価格の安定に努めなければならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年07月19日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:今年も実を結ぶ

2023-06-11 07:00:40 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【天風録】:今年も実を結ぶ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:今年も実を結ぶ

  近所のスーパーに並ぶ梅の色がにぎやかになってきた。青梅から熟れて黄色くなったものへ、だんだんと主役が変わっていく。梅干しや梅酒を仕込むガラス瓶やホワイトリカーが一緒に置かれるのも、この時季ならではだろう

 ▲広島市安佐南区の八木地区は戦前、梅の産地だった。広島藩の地誌、芸藩通志は「近方たぐひなし」と記す。八木梅林と呼ばれて花見でもにぎわった。だが太田川の大水で失われ、駅や小学校の名称に名残をとどめる

 ▲それでも辺りを歩けば畑や庭に梅が植えられているのが分かる。「いにしえへの郷愁があったのかもしれない」。この地に生まれ育ったNHKアナウンサーの杉浦圭子さんが以前、本紙セレクトのコラムにつづっていた

 ▲広島土砂災害に見舞われたのは9年前。直後に全国から駆けつけたボランティアが泥をさらってくれたおかげで、梅の木も永らえた。ことしも多くの実を結んだと、感謝を伝えたくなる

 ▲梅干しなどを仕込む作業を「梅仕事」と呼ぶ。八木でも始まった頃だろうか。食卓に出来合いがあふれる今、先人の知恵が詰まった梅仕事は静かな広がりを見せる。漬け上がりを楽しみに、じめじめの季節を乗り切りたい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2023年06月10日  07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

2023-06-09 05:00:50 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:農政の基本方針 食の安全保障は厳しさを増す

 食料を輸入に頼る日本にとって、食料の安全保障は極めて重要な課題である。時代の変化に即して基本政策を見直し、食料の安定的な確保につなげていく必要がある。 

 農林水産省は農政の基本方針となる「食料・農業・農村基本法」の改正に向け、有識者会議の中間とりまとめを公表した。平時から食料安保の体制を整備すると掲げたのが特徴だ。来年の通常国会に改正法案を提出するという。

 1999年制定の現行法は、日本の経済力で必要な食料はいくらでも輸入できると考えてか、食料安保の問題意識が乏しかった。

 だが、近年は気候変動に伴う干ばつで不作が頻発するようになった。日本の購買力も低下した。そこに、コロナ禍とロシアのウクライナ侵略が追い打ちをかけた。

 食料の調達を巡る情勢は転換期にあると言える。平時から食料安保を重視するのは当然だろう。

 現行法は、農政の中心に「食料」自給率の向上を掲げてきた。

 しかし日本は、食料だけでなく、農業に欠かせない肥料の原料である尿素やリン酸などの大半を輸入で賄っている。ウクライナ危機で肥料が不足し、食料自給率には影響がないものの、一部の農業生産に支障が出る事態となった。

 法改正後は、肥料にも目標を設ける方向だ。下水を処理した汚泥には、肥料の原料が含まれているという。それを活用し、国産化を広げることが有効となろう。

 また、肥料の多くは、中国など特定の国への依存度が高い。調達先の多様化も図ってほしい。

 中間とりまとめは、農業の担い手確保の重要性も強調した。農家は高齢化しており、現在の年齢構成から推計すると、農業を主な仕事とする人は2022年の約120万人から、20年後に30万人程度まで減る可能性があるという。

 ITやロボットの活用で省力化を進めることが不可欠だ。国や研究機関、IT企業などが一体となり、技術革新を加速させたい。

 稼げる農業にして、働き手にとって魅力ある産業とすることも大切だ。そのためには農産物の付加価値を高めるとともに、国が輸出を支援していかねばならない。

 中間とりまとめは、紛争や凶作など有事への対処も課題とした。国が農家に穀物の増産を指示したり、売り渡しを求めたりすることを想定し、法整備を検討する。

 ただ、私権の制限につながりかねないため、丁寧に論議すべきだ。不利益を受ける人の救済策も含めて協議してもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張】:ウクライナ穀物 露は合意を踏みにじるな

2023-05-09 05:01:25 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【主張】:ウクライナ穀物 露は合意を踏みにじるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:ウクライナ穀物 露は合意を踏みにじるな 

 世界では深刻な食料不足が続いている。農業大国ウクライナが穀物を輸出できないような理不尽があってはならない。

 ウクライナ侵略を続けるロシアが、ウクライナ産穀物の輸出に関する18日までの国際合意を延長しない構えを見せている。ロシアは身勝手な主張をやめ、無条件で延長に応じるべきだ。

 ウクライナはもともと世界有数の穀物輸出国だ。小麦などの大半を黒海経由で輸出していた。ロシアが昨年2月の侵攻後に海上封鎖をし、輸出できなくなった。

 この状況を打開するために昨年7月、ロシアとウクライナ、国連、トルコの間で輸出再開の合意が結ばれた。イスタンブールの「合同調整センター」が航路の安全を確保し、ウクライナの港に出入りする船舶の検査を行う。

 この合意は昨年11月と今年3月に延長され、ウクライナは2700万トン以上を黒海経由で輸出することができた。

 しかし、ここにきてロシアは、米欧日の対露経済制裁でロシアの穀物輸出に支障が出ているとし、「然(しか)るべき措置」が講じられなければ合意を延長しないという。

 牽強(けんきょう)付会にほかならない。

 ロシアの穀物輸出は何ら対露制裁の対象となっていない。ロシアは金融や機械分野などの制裁が穀物の生産や輸出に影響しているというが、ウクライナの穀物とは全く関係のない話だ。

 そもそも制裁の原因はロシアの侵略行為であり、まず露軍を撤退させるのが筋である。責任を転嫁し、ウクライナの穀物を人質にとるようなまねは許されない。

 ウクライナは侵攻後、ポーランドなど東欧諸国への陸路の輸出を増やした。このルートは「連帯の回廊」と呼ばれてきた。 

 だが、このルートも試練に直面している。東欧諸国では輸出港まで穀物を運ぶトラックや鉄道貨車が不足し、ウクライナ産が滞留してしまった。ウクライナ産が国内市場に流入して価格が下落し、各国の農家を圧迫した。

 欧州連合(EU)は訴えを受け、東欧5カ国にウクライナ産を流入させず、第三国への通過だけを認める緊急措置を決めた。5カ国の農家に補償金も払うが、これらは暫定的な措置にすぎない。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム  【主張】  2023年05月07日 05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:酪農の苦境 生産基盤を守る支援が急務だ

2023-04-07 05:00:20 | 【食糧自給率・農業・JA・農協・農家・化学肥料・米の作柄・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説②】:酪農の苦境 生産基盤を守る支援が急務だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:酪農の苦境 生産基盤を守る支援が急務だ

 国内の酪農家が、飼料の値上がりや需要の低迷で苦境に陥っている。政府は、効果的な対策を講じてもらいたい。 

 酪農業が苦しむ最大の要因は、ロシアのウクライナ侵略などで穀物の需給が 逼迫ひっぱく し、飼料価格が高騰したことだ。

 日本は、乳牛用の餌に使うための、トウモロコシや麦などを混ぜた配合飼料の多くを、輸入に頼っている。その価格は昨年12月に2年前の約1・5倍になった。

 牛乳の需要は、新型コロナウイルスの流行で外食向けなどが落ち込み、今も戻りきっていない。コストが上がっても、十分に価格転嫁できない状況だという。

 もともと酪農は、高齢化や後継者不足が深刻だった。新たにコスト増と需要減の「二重苦」がのしかかれば、生産基盤が損なわれかねない。支援が急務である。

 酪農の関連団体が3月に行った調査によると、回答した酪農家の8割超が赤字経営だった。経営の厳しさから離農する人も増えており、酪農家の戸数は今年2月時点で前年同月より約7%減った。

 牛乳の原料となる生乳からは、バターやチーズも作られる。栄養が豊富で、料理や菓子などの材料として欠かせない。豊かな食生活を維持するためにも、国内の供給体制を守ることが重要だ。

 政府は3月末に決めた物価高対策で、配合飼料の購入費の一部を 補填ほてん する制度を拡充した。価格の高騰は長引く恐れがあり、政府は支援の強化を検討してほしい。

 輸入飼料への依存度を下げることも大切だ。配合飼料と比べ、乾草や稲わらなどの飼料は国内での自給率が高い。そうした飼料の増産と活用を進める必要がある。

 酪農を巡る政府の施策は、ちぐはぐな印象が拭えない。

 生乳の生産量は1996年度をピークに減少基調となり、2014年に「バター不足」が社会問題になった。これを受け、農林水産省は生産の大規模化に補助金を出し、増産を後押ししてきた。

 ようやく生産が増加傾向に転じたところに、コロナ禍が起き、今度は生乳が余剰となっている。

 農水省は3月から、生乳の生産量を抑制するため、乳量が少ない乳牛を早期にリタイアさせた場合に、1頭あたり15万円を交付する制度を新設した。

 需給の改善が狙いだが、需要が回復した時に再び増産することが難しくなるとの懸念もある。

 農水省は、生乳の長期的な需給予測を精査するなどし、酪農の基盤強化策を練り直すべきだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年04月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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