【社説②】:EU離脱延期 英国は混乱収拾を急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:EU離脱延期 英国は混乱収拾を急げ
英国が当初、欧州連合(EU)から離脱する期限としてきた3月29日が過ぎた。
だが、英議会下院は離脱の方法を巡って結論を出せず、先行きは混沌(こんとん)としている。
メイ首相はこの日、EUと合意した離脱協定案が議会で三たび否決された後、引き続き「秩序だった離脱」に努力する考えを示した。
しかし、EUは英国に4月12日までに今後の方針を示すよう迫っている。代替案の見通しは立たず、合意のない無秩序離脱の可能性も残っている。
離脱の期限は2年前の3月29日、英政府がEU基本条約に基づき、通知した。英政府、議会とも国際的な約束を果たせなかった責任は大きい。
EU、世界経済にこれ以上の混乱を招かぬよう、早期に事態の打開を図らなければならない。
29日の下院の採決を巡っては議長が過去に2度大差で否決されたのと同じ内容の離脱協定案を採決することを認めなかった。このため、英政府は主要部分のみを切り離して、対象とする奇策に出た。
しかも、メイ氏は可決と引き換えに首相を辞任する考えまで表明していた。
にもかかわらず否決された意味は重い。メイ氏は続投する見込みだが、求心力の衰えは深刻だ。
もともとEU残留派だったメイ氏は2016年6月の国民投票により僅差で離脱が決まった直後、首相に就任した。
一昨年、EUとの交渉本格化を前に政権基盤を固めようと、解散・総選挙に打って出たが、与党・保守党は大敗した。
昨年11月、ようやくまとめた離脱協定案も、アイルランドとの国境管理問題を巡って、与野党から激しい批判を浴びている。
難航は予想されていただけに早い段階から議会の声に耳を傾け、合意形成に努めるべきだったのではないか。同じ協定案を3度も提出するやり方はあまりに強引だ。
議会側も党利党略に走り、国際的な合意や取り決めを軽視してきたと言えよう。保守党は離脱強硬派と穏健派の分裂状態である。
とはいえ、合意なき離脱は何としても避けなければならない。
EUと新たな合意を目指すとなれば、長期延期が現実味を帯びる。その場合は事実上のEU残留状態が続くだろう。
もはや英国に多くの選択肢が残されていないことを知るべきである。政争の具にして、いたずらに結論を先送りするのは無責任だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年03月31日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。