路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・02.02》:森友文書で国敗訴 真相解明へ直ちに開示を

2025-02-08 07:16:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・02.02》:森友文書で国敗訴 真相解明へ直ちに開示を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・02.02》:森友文書で国敗訴 真相解明へ直ちに開示を

 かたくなに情報公開を拒み続けてきた理不尽な姿勢を、厳しく批判する司法判断だ。

赤木俊夫さんの写真を手に取材に応じる妻雅子さん=大阪市北区で2025年1月30日午後2時43分、高良駿輔撮影

 学校法人森友学園に国有地が破格の安値で売却され、決裁文書が改ざんされた問題で、関連文書を不開示とした財務省の決定を取り消す判決を大阪高裁が出した。

 訴えていたのは、改ざんに加担させられて自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さんの妻雅子さんだ。改ざん問題を捜査していた検察に財務省が提出した文書の開示を求めていた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/02/02/20250202k0000m010014000p/9.webp?1" type="image/webp" /></picture>

 財務省は捜査への影響を理由に、文書の存否すら明らかにしなかった。1審判決も追認した。

 高裁は、改ざんを主導した佐川宣寿元理財局長らが不起訴となり、既に捜査は終結していると指摘した。別事件の捜査にも影響するとの主張についても「支障を及ぼす恐れはない」と退け、国の対応は違法だと結論づけた。

   

 当然の判断である。国は高裁判決を受け入れ、保有する文書を直ちに開示しなければならない。

 財務省をはじめ国の徹底した隠蔽(いんぺい)は目に余る。

 文書について、情報公開に関する総務省の審査会が「存否を答えても捜査に支障はない」と不開示決定の取り消しを答申したが、財務省は従わなかった。

 赤木さんが改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」に関しても、存在すら長く認めなかった。最終的に開示されたものの、職員名などは黒塗りにされていた。

 雅子さんは真相を究明しようと、国を相手に損害賠償訴訟も起こした。しかし、国は請求を丸のみして裁判を終わらせ、幕引きを図った。

 なぜ国有地が格安で売却されたのか、どうして決裁文書は改ざんされたのか。謎は残ったままだ。

 森友問題は、第2次安倍晋三政権を揺るがしたスキャンダルだ。

 学園が開設予定の小学校の名誉校長は一時、安倍氏の妻昭恵氏だった。安倍氏が国会で「私や妻が関係していたら、首相も国会議員も辞める」と答弁した後に、改ざんが始まった。

 雅子さんは今回の判決後、「何のための改ざんだったのか知りたい」と改めて訴えた。その願いに応え、全容を明らかにするのは国の責務である。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月02日  02:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・01.31】:雅子さんが訴訟に初めて勝った!大阪高裁が森友文書「不開示」判決を取り消し、法廷の拍手鳴りやまず

2025-02-08 07:16:00 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・01.31】::雅子さんが訴訟に初めて勝った!大阪高裁が森友文書「不開示」判決を取り消し、法廷の拍手鳴りやまず

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・01.31】:雅子さんが訴訟に初めて勝った!大阪高裁が森友文書「不開示」判決を取り消し、法廷の拍手鳴りやまず

 連戦連敗だった赤木雅子さん。ついに勝利判決をつかんだ。

 森友学園への国有地巨額値引きなどを巡る財務省の公文書改ざん事件で命を絶った赤木俊夫さん。その妻、雅子さんは真相解明を求め2つの裁判を起こした。ひとつは国(財務省)と佐川宣寿元理財局長を相手に賠償を求める裁判。もうひとつは財務省が、事件を捜査した大阪地検特捜部に任意提出した公文書の開示をめざす裁判だ。

 しかし損害賠償訴訟では、国が認諾という異例の手段で何の説明もしないまま一方的に裁判を終わらせた。佐川氏相手の裁判は続いているが1審も2審も敗訴。佐川氏本人の法廷での尋問も認められなかった。裁判で真実を明らかにしたいという雅子さんの期待は裏切られた。

 もうひとつの情報開示を巡る訴訟で、雅子さんが開示を求めている文書は、俊夫さんが死に追い込まれる背景となった土地取引や公文書改ざんの経緯が記されているとみられる。しかし財務省は文書があるともないとも認めないまま不開示を決定。裁判でも1審は、財務省の不開示決定を認めた。ここでも敗訴したことで雅子さんはすっかり弱気になっていた。

 そして迎えたきのう(30日)午後2時、大阪高裁の控訴審判決。冒頭、裁判長の言葉が法廷に響いた。

 「主文、原判決を取り消す」

 雅子さんが敗訴した1審判決を取り消した。さらに判決は財務省の不開示決定も取り消し、訴訟費用は1審、2審ともに国の負担とすると命じた。

 雅子さんにとって、7年前に俊夫さんが命を絶ち、5年前に裁判を起こしてから3連敗の後、逆転で初めての勝訴。それも国の主張をすべて覆す完全勝訴だ。

 ■「上告はとにかくしないでほしい」

 法廷で隣に座る生越照幸弁護士がさっと手を伸ばして握手を交わし、「よかったね」と告げた。思わずハンカチで目頭を押さえる雅子さん。傍聴席から拍手が沸き起こった。普通は裁判長が静粛を求めるが、この時はまったく静止しなかった。法廷の拍手は鳴りやまず、傍聴席の人たちが雅子さんを取り囲んで喜びを分かち合った。

 判決後、裁判所前で取材に応じた雅子さんは、

 「生越先生が手を握ってくれて、苦労が報われた気がしました。ただ、これからいろんなことがあるので喜んでばかりもいられません。上告はとにかくしないでほしいです」

 弁護団は記者会見で「1審判決は裁判官が財務省にだまされた判決だ。今回が当然の判決」と評価。また判決文が全部で10ページと、国を敗訴とする判決にしては分量が少ないことについて、「国の主張を覆すにはこれで十分ということで、判決文の薄さ自体が国の主張のおかしさを物語る」と指摘。力を込めて訴えた。

 「国は上告すべきではないし、世論の力でも後押ししてほしい」

相澤冬樹
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 ■相澤冬樹 ジャーナリスト・元NHK記者

1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。

 ■関連記事

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・連載「森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記」】  2025年01月31日  11:16:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【速報】:森友文書の開示求めた控訴審の判決 大阪高裁が「開示」命じる 赤木さん妻の訴え認める

2025-02-08 07:15:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【速報】:森友文書の開示求めた控訴審の判決 大阪高裁が「開示」命じる 赤木さん妻の訴え認める

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【速報】:森友文書の開示求めた控訴審の判決 大阪高裁が「開示」命じる 赤木さん妻の訴え認める 

赤木俊夫さん

 元稿:讀賣テレビ 主要ニュース 社会 【裁判・大阪高裁・森友学園をめぐる公文書の改ざん問題】  2025年01月30日  14:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・10.19】:懲りない財務省…審査会の答申を無視して情報不開示の前代未聞

2025-02-08 07:15:40 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・10.19】:懲りない財務省…審査会の答申を無視して情報不開示の前代未聞

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・10.19】:懲りない財務省…審査会の答申を無視して情報不開示の前代未聞

 森友学園との土地取引を巡る財務省の公文書改ざん事件で命を絶った赤木俊夫さん。妻の雅子さんは真相解明のため財務省にあるはずの資料の開示を求めたが、財務省は資料があるかないかも回答せず拒否。国の情報公開・個人情報保護審査会は決定を取り消すよう答申を出したが、財務省は答申を無視して再び不開示を決めた。

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      判決は来年1月(弁護団の記者会見=撮影・相澤冬樹)

 行政不服審査法は、審査会の答申と異なる結論を官庁が出す場合、なぜ答申に従わないのか説明するよう定めている。だが今回の財務省の裁決は理由を一切示していない“違法”な裁決だ。これでは答申という制度自体、何の意味もないことになってしまう。これは5月31日発行の日刊ゲンダイが報じた通りだ。

 この不開示を巡って赤木雅子さんは開示を求める裁判を起こし、1審では国の決定を認める判決が出て、現在、控訴審で審理が行われている。

 そもそも審査会の答申と異なる決定を官庁が出したケースは過去に24件、全体のわずか0.16%しかない。では、答申に従わなかった24件はどういうケースだったのだろう? 弁護団はすべての答申と、それに従わなかった官庁の裁決書を情報公開手続きで請求した。

その結果、以下のことがわかった。

 1、24件のうち7件は文書の保存期間が切れて残っていなかった。
 2、5件は、審査会の答申が不開示を妥当としたのに官庁が自主的に開示に転じたものだった。
 3、7件は、答申に全面的に従ってはいないが、開示の範囲を広げたか、最終的には答申に沿った決定となった。
 4、3件は、答申に従わなかったが、その後裁判で負けて開示に転じた。

 ■弁護団「1審判決の誤りは正されねばならない」

 そうすると、審査会の答申にまったく従わなかったケースは残りの2件しかない。しかもこの2件は、対象となる文書が存在することは認めた上で開示しなかったものだった。ということは、今回のように文書があるかないかも認めないまま答申に従わなかったケースは、前代未聞の不当なものだったということが明らかになったのだ。

 弁護団はこの調査結果を書面にして裁判所に提出。裁判の判決で不開示決定が覆ったケースがあったことを踏まえ、今後の情報公開請求への重大な悪影響を防ぐためにも1審判決の誤りは正されねばならず、裁判所の責任は極めて重大だと指摘している。

 これを受けて18日、大阪高裁で控訴審の法廷が開かれた。国側は今回の原告側の指摘に何ら反論することなく、裁判は結審。判決は来年1月30日と決まった。

 大阪高裁は、過去に例のない「審査会の答申無視」の財務省の決定を追認するのか、それとも1審判決を覆し、決定の取り消しを命じるのだろうか?

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【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・12.20】:佐川宣寿氏への訴えは2審も棄却…赤木雅子さんの心境はZARDのヒット曲「負けないで」そのもの

2025-02-08 07:15:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・12.20】:佐川宣寿氏への訴えは2審も棄却…赤木雅子さんの心境はZARDのヒット曲「負けないで」そのもの

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・12.20】:佐川宣寿氏への訴えは2審も棄却…赤木雅子さんの心境はZARDのヒット曲「負けないで」そのもの

 この裁判、勝てっこない。原告の赤木雅子さん(52)にとって、それは織り込み済みのことだった。相手の土俵で相撲を取っても勝てない。裁判の流れから、そのことはわかっていた。法廷で黒野功久裁判長が「本件控訴を棄却する」と言い渡した時は、さすがに心がざわついたけど、表情は変わらなかった。

 被告は、財務省の元理財局長で、最後は国税庁長官になった佐川宣寿氏。森友学園との国有地取引を巡る公文書改ざんで「方向性を決定付けた」と、財務省の調査報告書で指摘されている。しかし、この事件で改ざんを強要され死に追い込まれた近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(享年54)のことについて、妻の雅子さんに謝罪や説明をしていない。

 これについて黒野裁判長は、「改ざんを指示したと評価されてもやむを得ないものといえる」と指摘した。さらに「道義的責任に基づき、あるいは一人の人間として、誠意を尽くした説明及び謝罪をすることがあってしかるべき」とまで指弾した。まさにその通り! ところが「法的には責任がない」と結論付けた。そんな理屈、世の中で通用する? もちろん、するわけない。満杯の傍聴席から抗議の声が上がった。

 「なんでやねん」

 「人が亡くなってるんやぞ」

 「恥を知れ!」

 普通なら制止されるところだが、裁判長はヤジがないかのように淡々と理由を読み続けた。制止するのがためらわれたのだろう。

 それより、相手の佐川氏。ついに一度も法廷に姿を見せなかった。それどころか、判決の法廷には代理人の弁護士の姿もなく、被告席はからっぽだった。

 ■改ざんのいきさつを説明してほしかった

 雅子さんは、亡き夫を死に追い詰めた公文書改ざんについて、「方向性を決定付けた」と指摘された佐川氏に、いきさつを説明してほしかった。ただ、それだけだ。

 だから、実は先月初め、弁護士を通し佐川氏に和解を申し入れる手紙を送っていた。佐川氏が俊夫さんの墓前か自宅の祭壇の前で手を合わせ、いきさつを話してくれたら、すぐに裁判をやめる。賠償金はいらない、と。

 でも、答えはなかった。「和解に応じない」という返事すら来なかった。スルーされた。国会の証人喚問でも証言を“差し控えた”佐川氏は、今も“だんまり”を決め込んだままだ。

 佐川氏は、1審に続き控訴審でも勝った。国にかばってもらった、ように見える。でも、実は逆なんじゃないか? 雅子さんは判決後、報道各社の取材に語った。

 「佐川さんは国に守られたようでいて、実はまた捨てられたんだと思います。役所を辞めても、組織のために本当のことをしゃべらないんでしょうけれど、しゃべらない限り、つらい毎日が続くはずです。話す場所を奪われ、闇に葬られて、一番気の毒なのは佐川さんなのかもしれません」

 最後に、今の心境を歌に例えた。

 「『負けないで』ですね」

 ZARDの30年前のヒット曲。ボーカルの坂井泉水は歌った。

 「負けないで もう少し
  最後まで 走り抜けて
  どんなに 離れてても
  心は そばにいるわ
  追いかけて 遥かな夢を」

 雅子さんも夢を追い続けるのだろう。真実がわかるその日まで。 

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・連載「森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記」】  2023年12月20日  13:40:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

2025-02-03 08:00:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

 12月1日、浜松市で開かれた集会。無罪が確定したものの、いまだ現実の世界に戻り切れない袴田巌さん(88)が、この日は「こういう勝利の日が最後に来たというのが喜ばしい。事実がやっと実った」と力強くあいさつ。その後、会場の全員で黙とうをささげた。

 元裁判官の木谷明さんが亡くなった。86歳。木谷さんといえば、在任中に30件以上の無罪判決を出し、そのすべてを覆ることなく、確定させたことで知られる。

 いま思えば、9月26日、無罪判決にこぎつけた袴田事件に全霊をささげ、燃え尽きられたような気がしてならない。その日、私が静岡朝日テレビの特番に出ていると知って局を訪ねてくださって、その場でインタビュー。袴田事件の1審で無罪を主張、傷心の中、裁判所を去った司法修習同期生の故・熊本典道判事の思い出。そしてこの日の判決で明らかになった検察の証拠捏造(ねつぞう)とそれを指弾できない裁判官たちの勇気のなさ。

 さらに冤罪(えんざい)事件が多発する中、取り返しのつかない死刑制度を廃止すべきとする木谷さんに、国民の8割が死刑存続を支持しているわが国の現状を問うと、「廃止している欧州の国々も当然、反対が多かったの。それをじっくり説いて廃止にもっていく。これこそが、国のリーダーと司法の役割では」と、いつもの静かで柔らかい声が返ってきた。

 20年にもなる取材で、まさかこれが最後のインタビューになるとは…悔しくて、残念でならない。

 最後の著書となった「違法捜査と冤罪〔第2版〕」のあとがきには、証拠を捏造してまで人を死刑に追い込もうとする検察を「自浄作用のない国家機関」と指弾する一方で、この著書が「違法捜査の絶滅。さらには裁判所の優柔不断な態度の絶滅に少しでも役立つことを祈念する」とある。

 最後の著書となった「違法捜査と冤罪〔第2版〕」のあとがきには、証拠を捏造してまで人を死刑に追い込もうとする検察を「自浄作用のない国家機関」と指弾する一方で、この著書が「違法捜査の絶滅。さらには裁判所の優柔不断な態度の絶滅に少しでも役立つことを祈念する」とある。

 あとがきが書かれた日付は死のわずか40日前。いまは遺言となってしまったこの思いを重く、静かに胸に刻み込んでおきたい。

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2024年12月10日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

2025-01-31 02:01:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決 

 「障害者は健常者と同じようには働けない」との固定観念を取り払う画期的な司法判断だ。

大阪高裁判決後、記者会見に臨む、亡くなった井出安優香さんの父努さん(中央)=大阪市北区で2025年1月20日、井手千夏撮影

 聴覚障害があり、2018年に交通事故で亡くなった井出安優香(あゆか)さん(当時11歳)の「逸失利益」について、健常者と同額とする判決を大阪高裁が出した。

 逸失利益は、将来得られたはずの収入のことで、損害賠償額を決める際の重要な要素となる。未成年者は全労働者の平均賃金から算定される。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/31/20250131ddm005070108000p/9.webp?1" type="image/webp" />1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影</picture>
1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影

 しかし、障害がある場合は、労働能力に制約があるとして減額する判断が示されてきた。1審判決も平均賃金の85%とするのが妥当だと認定していた。

 高裁は、井出さんはコミュニケーション能力が高く、将来働く際の支障は少ないと認めた。その上で重視したのが、近年のデジタル技術の進歩と法整備の進展だ。

 人工知能(AI)の活用で補聴器の性能は向上した。音声を文字に変換するアプリが普及し、意思疎通の手段も多様になった。

 障害者差別解消法では、障害者が困る状況を改善するための「合理的配慮」が、行政や民間事業者に義務づけられている。障害者雇用促進法は、働きやすい環境づくりを事業者に求める。

 必要な措置が講じられた職場で、デジタル技術を活用して周囲と意思疎通し、仕事に励む聴覚障害者は少なくない。

 井出さんが就職する頃には、こうした状況になっていることが、事故当時から予想できたと高裁は指摘した。

 社会の変化や未来の可能性を見据え、障害の有無による格差を正した判決と言える。

 23年の厚生労働省の調査では、雇用されている障害者は約110万人で、5年間で25万人あまり増加した。

 一方で国の相談窓口には「事業者から差別的な対応をされた」「配慮を求めたが対応してもらえない」などの声が寄せられている。

 障害者が生活する上で困難があるのは、社会の側に障壁が存在するからだ。高裁の判断は、そうした考え方に基づくものである。

 障害の有無に関わらず権利が保障される社会をつくるため、「壁」を取り除く努力を不断に進めていかなければならない。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月31日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

2025-01-24 07:05:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

 射撃訓練で難聴になった陸上自衛官が国に賠償を求めた裁判の口頭弁論が1月中旬、札幌地裁で始まった。原告の男性自衛官は名前と顔を隠さずに地元報道の取材に応じ、「法律を知らずに声を上げられない隊員がたくさんいる」「国は安全配慮義務を果たして欲しい」と訴えている。被告の国は請求の棄却を求めて争う考え。

 ■訓練で難聴に ― 組織の安全配慮義務違反追及

 昨年7月に国を訴える裁判を起こしたのは、陸上自衛隊北部方面総監部(札幌市中央区)に勤務する中村俊太郎・1等陸尉(50)。1993年に入隊した中村さんは、長年にわたる射撃訓練で難聴を発症。21年には公務災害の認定に到ったが、自衛隊からは充分な配慮を受ける機会がなく、適切な健康診断も受診できなかったという。

 訴状によると、入隊直後の機関銃訓練では号令外の動作に足蹴りをしてくる指導者がおり、耳栓が外れてもつけ直すことができなかった。翌年から参加した84ミリ無反動砲の訓練では射撃時の爆風で耳栓が飛ばされることもしばしばだったが、下半身にも衝撃波でズボンが裂けるほどの痛みがあり、耳栓を気にする余裕がなかったという。そもそも隊から支給される耳栓は粗悪品が多く、自費で市販品を手配せざるを得ない状況。現在も手離せない補聴器の購入費53万円はのちに国から支給して貰うことができたが、当初は隊員が自腹で用意するのが当たり前と思っていたという。

 現場で難聴を防止する取り組みが不充分だったのみならず、必要な検査を受ける機会も乏しかった。耳鳴りなどを訴える隊員に医療受診や公務災害申請を促すような配慮はなく、被害防止のマニュアルも不在。騒音業務に伴って必要と定められている「特別な健康診断」も適切に行なわれていなかった。

 中村さんがこうした状況に疑問を覚え、組織内外の友人・知人らに相談を寄せ始めたのが23年6月ごろ。実情を知った人たちは「安全配慮義務違反では」「国民に真実を知らせるべき」「自衛隊がそんなことでは国民が困る」などと驚き、組織内の同僚や後輩たちからも「訴えないと自衛隊が変われない」などの声が上がったという。中村さん自身も「問題に気がついているのに何もしないのは『責任の不履行』ではないか」と考えるに到り、今回の提訴に踏み切った。

 今まさに難聴に悩んでいる自衛官は中村さんが把握できるだけで50人ほどおり、しかしながら公務災害の認定に到ったのはそのうち4人しかいないという。提訴の目的は、こうした被害の周知と再発防止をはかることにある。

 「防衛省や陸幕は、現場の隊員の多くが法律に詳しくないのをよいことに安全配慮義務を果たしていません。なぜ特別健康診断を実施しないのか。なぜ予防教育に力を入れないのか。なぜ充分な装備品を用意しないのか。国はこれらの背景をあきらかにした上で、被害の実態を調査して国民に説明すべきです」

 ハラスメント被害を受けた自衛官の家族や退職後の元隊員が実名を明かして組織を訴えたケースはこれまでにもあるが、現職の自衛官自身が顔と名前を晒して裁判を起こすのは珍しい。当初半年間ほど非公開の弁論準備手続きで進められた裁判は年が明けた1月14日午前、札幌地方裁判所(小野瀬昭裁判長)で最初の口頭弁論を迎えた。被告の国は指摘される安全配慮義務違反などを否定、難聴の原因は本人の安全管理・健康管理の過失にあると主張し、訴えの棄却を求めている。

 「難聴の隊員たちも見た目は健康なので、問題があかるみに出にくい」と、原告の中村さん。次回弁論は2月20日午後、札幌地裁で開かれる。

 なお札幌ではハラスメント通報を理由に不利益な取り扱いを受けたという現職自衛官の裁判も始まっており(既報)、2月26日にはこれの3回目の口頭弁論が設けられることになっている。(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【裁判・射撃訓練で難聴になった陸上自衛官が国に賠償を求めた裁判の口頭弁論】  2025年01月21日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

2025-01-14 16:00:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.14:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

 司法の公正と人権を損なっている制度の欠陥は明らかである。速やかに改めるべきだ。

 刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを、法務省が今春にも法制審議会に諮問するという。

 近年相次いだ再審無罪判決は、刑事司法と再審制度に放置できない問題があることをあらためて浮き彫りにした。

 捜査機関が証拠をほぼ独占し、開示手続きの定めがないことや、再審開始決定が出ても検察の不服申し立てにより、やり直し裁判まで極めて長期に及ぶことなどである。

 確定判決の誤りを正すことを妨げ、えん罪救済を遠のかせる重大な問題にほかならない。

 静岡県一家4人殺害事件で死刑判決を受けた袴田巌さんは2014年に再審開始決定が出たにもかかわらず、検察の抗告で再審までに9年を要し、昨年10月の再審無罪の確定までに58年を費やした。

 1986年の福井市中3女子生徒殺害事件は、検察の証拠開示で有罪立証の誤りが発覚し、再審開始が決まった。

 高まる批判の世論に押されて再検討する姿勢を見せたといえよう。

 一方で、えん罪問題に取り組んできた弁護士や当事者、家族などからは法務省の動きへの疑念の声が上がっている。

 超党派の国会議員でつくる「再審法改正を早期に実現する議員連盟」による法案提出との関係からだ。

 議員連盟は昨年3月に設立され、昨年11月の総選挙を経て現在は過半数を超える361人の与野党議員が参加している。

 法務省の方針転換には議連から法改正の主導権を奪う狙いがあるのではないか。

 そう指摘されているのは、これまでかたくなに後ろ向きの対応だったからだ。

 1980年代に免田、財田川、松山、島田の4事件で死刑判決を受けた人たちが相次いで再審無罪となって以来、法改正の機運が度々高まった。しかし、法務省が主導した協議は中途半端な形で放置されたままになっている。

 2022年には刑事司法の在り方を検討する協議会を設けたものの、初の会合は設置から1年以上が経過してからで、計3回しか開かれていない。

 その同省が委員の人選も含めて主導する審議会が、証拠開示の制度化や検察官による不服申し立ての制限などに正面から切り込めるのか。骨抜きにならないか。法務省は十分に情報を公開し、説明責任を果たさねばならない。

 この審議会は法改正の必要性から議論するため、先送りや結論をまとめるまでに時間を要する懸念も拭えない。

 えん罪の防止は喫緊の課題である。議員立法と並行して議論を加速させ、法の不備を正す必要がある。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月14日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.12】:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を

2025-01-14 16:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.12:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.12】:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を 

 日本の刑罰のかたちが今年、大きな転換を迎える。

 懲役と禁錮刑を廃止し、「拘禁刑」とする刑法改正が6月1日から施行される。

 明治時代からの懲役刑では刑務作業は罰であり、働くことは苦痛として科された。今回から創設される拘禁刑は、自由の制限にとどまり、刑務作業はあくまで受刑者が立ち直る「改善更生」の手段の一つである。

 収容者を呼び捨てにせず「さん」付けで呼ぶことや、刑務官を「先生」と呼ばせないなど、法務省は拘禁刑導入に先立ち、秩序維持を重視して人権意識が希薄だった組織風土の改善に乗り出している。

 受刑者が自分のことを語り、刑務官と対等に向き合う一般改善指導も導入された。人間関係を築き直すことこそ、社会復帰の一歩になるだろう。

 それには刑務官が、これまでの規律や管理の仕事を脱し、社会復帰への支援者であるとの意識改革を進めることは不可欠だ。さらに広く社会全体が、応報的な罪と罰についての固定観念を見つめ直し、罪を犯した人の立ち直りに心を寄せる必要があろう。

 改正法による刑務作業と改善指導の位置付けを巡っては、条文の解釈次第で人権侵害につながり、かえって重罰化になる危うさがあると刑法学者らが懸念している。

 刑務所長らの権限で、嫌がる人に懲罰を科すような運用をすれば、懲役と実態として変わらない。本人の主体性や意欲を重視し、刑務官との関わりの中に人間関係の温かさを感じられる処遇への転換こそが問われている。

 刑務作業は、働くことのやりがいに気付く体験を基本とすべきだ。就労につながる技能習得になるよう、今まで以上に工夫してほしい。

 矯正施設の実態に照らすと、制度上の課題は山積している。受刑者の高齢化率は上がり、認知症の受刑者も増えている。医療や福祉との連係は一層充実させる必要がある。立ち直りと更生を目的とする以上、認知症の人を拘禁し続けるのか、改めて議論する時期ではないか。

 懲役が廃止されるが、無期刑は存続する。併せて仮保釈の制度設計も検討すべきだろう。

 2021年に京都で開かれた「第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)」で採択された京都宣言では、再犯防止施策の充実も盛り込まれた。

 立ち直りの支援を「保護司」として、ボランティアが担う日本独特の制度についても、大津市の殺人事件を踏まえ、見直しの議論が進んでいる。

 日本の再犯率は47%と高止まりしている。元受刑者の立ち直りを阻む社会の壁を少しでもなくすよう、さまざまな職種や団体、市民社会が継続的に関わっていくことが求められる。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月12日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.10】:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠

2025-01-10 16:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.10:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.10】:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠 

 なぜ無実の死刑囚を生み、58年もの歳月を奪ってしまったのか。その重大性への反省を欠き、二度と同じ過ちを繰り返さないという真摯(しんし)な姿勢が感じられない。

 1966年の静岡県一家4人殺害事件で、再審無罪が確定した袴田巌さんに対する捜査や裁判手続きの検証結果を、最高検と静岡県警がそれぞれ公表した。

 静岡地裁が昨年9月の再審判決で「非人道的」と指弾した取り調べについて、最高検は「検察官が犯人であると決め付けたかのような発言をしながら自白を求めた」と認め、県警は深夜まで長時間に及ぶ取り調べが「不適正だった」とした。

 しかし、判決で認定された捜査機関による「証拠の捏造(ねつぞう)」については反発し、自己弁護に終始している。

 事件の約1年2カ月後にみそタンクから見つかり、犯行着衣とされた5点の衣類の捏造に関し、最高検は「現実的にあり得ない」と強く反論した。だが、具体的な根拠は示しておらず、感想に等しい。まったく説得力がない。

 最高検は、公判資料などにとどまり、当時の検察官らに新たな聞き取りもしていない。責任の所在も明確ではなく、何を検証したというのか。

 県警は、当時の捜査員らから聴取したが、捏造の具体的な事実や証言を得ることができなかったと結論付けている。

 再審手続きの長期化についても、踏み込み不足が目立つ。袴田さんは、最初に再審請求を申し立ててから開始決定まで42年を費やした。

 最高検は第1次、第2次の請求審の対応に問題はないとし、2014年の再審開始決定を不服とした抗告も必要だったとして、「不当に長期化したとは認められない」という。長期化の要因には、裁判所が積極的に審理する方策が十分でなかったことを挙げた。

 居直りと責任転嫁ではないか。

 罵声を浴びせる、自白を強要するといった取り調べはいまも相次ぎ、問題化している。

 取り調べ中の録音・録画が十分な抑止にもつながっておらず、旧態依然の状態が残っていることを、捜査機関は直視しなくてはならない。

 判決から3カ月の検証結果はおざなりで、内部調査では限界があることが浮き彫りとなった。第三者の視点を加えた本気の検証に取り組まねば、地に落ちた国民の信頼は取り戻せまい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月10日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

2025-01-08 05:00:40 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

 再審無罪の確定まで何十年もかかるような現行の法制度に、不備があることは明らかだ。裁判の長期化をいかに防ぐか、国は早急に議論を進めなければならない。 

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪を受けて、最高検と静岡県警が昨年末、捜査や公判の問題点をまとめた検証報告書を公表した。

 最高検の報告書は、当時の検察官の取り調べについて「袴田さんを犯人と決めつけたような発言で自白を求めた」と認定した。県警も、取り調べが連日12時間に及び、トイレにも行かせなかった点などを「不適正だった」とした。

 容疑者に自白を強要する取り調べは、過去のものではない。最近も、相手の人格をおとしめるような取調官の暴言が次々と明らかになっている。捜査を巡る長年の課題が解消されないことを、当局は重く受け止めねばならない。

 現在は一部に限られている取り調べの録音・録画(可視化)を拡充し、容疑者の弁護人も映像をチェックできるようにすべきだ。事件の参考人らに対する任意の事情聴取にも、積極的に可視化を取り入れていくことが欠かせない。

 再審の長期化を防ぐためには、検察側が保管している証拠を弁護側に開示するよう義務づける必要がある。袴田さんの再審では、無罪に結びつく重要な証拠が開示されるまで約30年かかった。

 証拠開示に消極的な検察の姿勢は、何度も問題になっている。

 福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件を巡り、殺人罪で服役した元被告の再審開始が昨年決まった。この事件でも、検察が重要な証拠を開示するまで約20年かかっている。

 どちらの事件も、証拠が早期に開示されていれば、再審の期間は短くて済んだはずだ。

 検察官は「公益の代表者」である。重要なのは事件の真相解明であって、容疑者をただ有罪にすればいいわけではない。そのことを改めて肝に銘じてほしい。

 裁判所の責任も重い。袴田さんの再審無罪を言い渡した裁判長は「長い時間がかかり、裁判所として申し訳ない」と謝罪した。

 再審の進め方に明確なルールはなく、基本的に裁判官に任されている。判断が難しい再審は、裁判官が積極的な訴訟指揮を行わず、審理が進まないケースもある。

 袴田さんは逮捕から無罪確定まで58年を要した。教訓を今後の刑事司法に生かすことが大切だ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下

2025-01-08 00:09:20 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下 

 トランプ次期米大統領が有罪評決を受けた不倫口止めに絡む事件でニューヨーク州地裁は6日、10日の量刑言い渡しを延期するよう求めたトランプ氏の要請を却下した。

トランプ前大統領(2019年5月撮影)トランプ前大統領(2019年5月撮影)

 トランプ氏は、次期大統領にも大統領としての免責特権が適用されるとして州地裁での評決無効を要求し、控訴のための時間が必要だと主張。地裁は予定通り10日に量刑が判断されても被告の権利を「妨げるものではない」と説明した。

 トランプ氏が起訴された4つの事件のうち、議会襲撃などは起訴が取り下げられたが、不倫口止めではトランプ氏の有罪評決が維持されている。量刑言い渡しが20日の大統領就任までに間に合わない場合、2029年の任期終了後に大幅にずれ込む可能性があった。

 州地裁の陪審は昨年5月、トランプ氏が16年大統領選の直前、06年に不倫関係にあったと訴える女性に口止め料を支払い、不正に会計処理をしたと認定した。大統領選への影響も考慮し、量刑言い渡しは再三延期されてきた。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・国際・米国・トランプ次期大統領】  2024年01月07日 09:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」

2025-01-05 05:03:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」 

 見出しは、昨年12月16日付本紙、シンガー・ソングライターのさだまさしさんの「月曜コラム」からの転用である。

 さださんは、一般道を194キロで走行して衝突事故を起こし、相手を死亡させた事故の大分地裁判決を論じ、当初は「過失運転致死罪」として起訴され、後に「危険運転致死罪」に訴因変更された経緯や判決が同罪としては短い部類の懲役刑だったニュースに、スタッフがついたため息の言葉を見出しとしたものだ。

時速194キロの乗用車による死亡事故を巡る判決が言い渡された大分地裁の法廷=昨年11月28日(代表撮影)

 弁護側の「真っ直ぐの道路を走ることが出来(でき)たのだから自動車を『制御』出来ていて、危険運転ではない」との主張に対して「制御出来ないから事故を起こしたのだろうに」というさださんの疑義は、まさに国民的常識にかなうものである。

 社会秩序を維持するための規範である法律だが、同様の齟齬(そご)は方々に散見される。

 例えば「ストーカー規制法」は「つきまとい行為」に電子メールやSNSが想定されていなかったとして、悲惨な事件の発生ごとに法改正を重ねている。時代の変遷に追いつけず、人を守るための条文が訴えや捜査をしばり、改正を繰り返す姿は情けなくさえ映る。

 国の基本となる最高法規の憲法も同様だ。福岡高裁は同性婚を認めない民法などの規定について「違憲」とした。法の下の平等を定めた憲法14条や幸福追求権を保障した13条に違反するとの判断だが、一方で婚姻の自由を定めた憲法24条1項で、婚姻は「両性の合意のみに基いて成立」すると規定している。

 国語辞典を引けば「両性」は「男性と女性。雄性と雌性」と出てくる。同性の2人との解釈は日本語にない。適用対象が広い一般法より対象が特定される特別法が優先されるのは法の常識であり、この場合、24条が優先される。福岡高裁の判決は、24条を違憲としたに等しい。憲法の自己矛盾である。

 憲法の制定時に同性による婚姻は想定外だったとするなら、事情はストーカー規制法と同じだ。時代への適合を言うのであれば、改憲を唱えればいい。

 《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》とある憲法の前文が誤りであることも明らかだ。憲法で議論すべき点はたくさんある。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察

2025-01-03 06:18:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察 

 北海道・砂川市のハンターが自治体の要請でヒグマを駆除したにもかかわらず猟銃所持許可を取り消されたとして地元公安委員会を訴えている裁判で12月中旬、新たにハンターの代理人に加わった三重県の弁護士が当時の駆除現場を訪れ、付近の地形や発砲時の状況などを確認した。札幌高等裁判所の控訴審で一審原告側の逆転敗訴が言い渡された結果が報じられて以来、新たに2人の弁護士が代理人に名乗りを挙げており、長く続く裁判は上告審に到って「弁護団事件」となる動きだ。

             ◆   ◆   ◆

 12月12日午前に砂川市郊外の宮城の沢地区を訪ねたのは、自らも狩猟免許を持ち当地の猟友会で活動しているという津市の伊藤正朗弁護士(三重弁護士会)。報道を通じて砂川の事件の二審判決を知り、11月に入ってから代理人参加を申し出た。ヒグマを駆除したライフルの銃弾が「跳弾」して周辺の建物や立会人などを傷つける可能性があったと認定した高裁判決について「有害鳥獣駆除の現場に全国的に影響を及ぼす」と、その余波を危惧しており、実際すでに「発砲が難しくなった」との声を聴いているという。砂川の現場では駆除時の「バックストップ」となった高さ8メートルの崖の形やクマとの位置関係などを確認し、「充分に発砲できる状況」と判断した。

 「この状況で『跳弾』の可能性を言われると、かなりの部分で撃てなくなってしまう。北海道に限らず、クマを撃てるハンターは多くありません。そういう中で、撃てる人が安全と判断し、実際に安土(バックストップ)のある状況で撃った行為に『建物に当たるおそれが』と言われると、本当に有害鳥獣駆除ができなくなってしまいます」

 裁判を起こした猟友会砂川支部長の池上治男さん(75)はこの日の視察に立ち会い、改めて「裁判は私一人だけの問題ではない」と訴えた。

 「私に限らず、今ハンターがやっていることに対して『駄目だ』という判決。これを放っておくわけにはいかないし、このまま確定したら現場に立ち会う警察官だって困るだろうと思います」

 現場近くに住む男性(86)によると、裁判で問題とされている駆除行為があった後も近所では複数回、クマが目撃されているといい、「早く鉄砲を撃てるようにしてもらわないと住民が困る」と不安を吐露する。

 提訴時から池上さんの代理人を務めている中村憲昭弁護士(札幌弁護士会)は、先の控訴審判決を「公安委が正しいという前提でそれを補強する証拠のみを集め、そうではない証拠を無視した判決」と批判、求めている上告審については「事実審ではない点でかなり厳しい闘いになるが、あの高裁判決を確定させるべきではない」と語り、厳しい状況下で参戦した伊藤弁護士の思いを受けて士気を高めているところだ。裁判では両弁護士に加え、行政法に通じた首都圏の弁護士も代理人に参加を表明しているといい、上告人側代理人は現時点で3人の弁護団となっている。

 池上さん側は12月20日までに最高裁へ上告理由書を提出する予定。

 *2021年12月の札幌地裁・一審判決と本年10月の札幌高裁・二審判決は、ともに裁判所の公式サイト内で公開中。
・【地裁判決
・【高裁判決

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【事件・疑惑・裁判・自治体の要請でヒグマを駆除した猟友会のハンターが公安当局に銃を取り上げられた事件】  2024年12月17日  05:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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