路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《24色のペン・01.09》:我が子に希少難病、家族の挑戦=銭場裕司

2025-01-09 06:00:10 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

《24色のペン・01.09》:我が子に希少難病、家族の挑戦=銭場裕司

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.09》:我が子に希少難病、家族の挑戦=銭場裕司 

 発達の遅れが気になっていた長男にようやく診断名が付いたのは4歳半の時だった。

 判明したのは、国内で診断された人が当時10人にも満たない希少難病。現在の医療では治療方法も確立されていない。

 それから約2年半、家族は新しい挑戦に乗り出し、多くの出会いに恵まれた中で人生の歩みを進めている。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/08/20250108k0000m040076000p/8.webp?1" type="image/webp" />南里たいちさんは3歳半ごろから歩き始めるようになったという。父親の健太さんは確実な成長を感じている=家族提供</picture>
南里たいちさんは3歳半ごろから歩き始めるようになったという。父親の健太さんは確実な成長を感じている=家族提供

 ◆障害のある子どもたちの事業所

 障害のある子どもたちのために、児童発達支援と放課後等デイサービスを手がける事業所「ヒトノワ南大泉教室」(東京都練馬区)を訪れると南里(なんり)健太さん(43)が迎えてくれた。

 ポトキ・ルプスキー症候群。長男である、たいちさん(7)が診断された病名だ。染色体の一部に重複があることで発達の遅れなどが生じるという。この難病が、南里さんが事業所を開設するきっかけになった。

 ◆感じられた発達の遅れ

 たいちさんは2017年、大きな泣き声で元気いっぱいに生まれた。誕生を心待ちにしていた南里さんは「溺愛しました」と語る。

 だが、定期的な健康診断で発達の遅れが気に掛かるようになる。1歳半になっても立つことはできず寝ている状態で、座る姿勢も苦手だった。その後も言葉を発することができない。

 近所の子どもたちが公園で遊ぶ時期を迎えても、たいちさんはベビーカーの中にいた。

 「もう少し様子を見ましょう」「きっと大丈夫」

 医師や知り合いからはそう声をかけられたが、もやもやした思いを抱え続けたという。

 療育施設で歩行などに向けた訓練を始めたものの、慣れない場所のためか、たいちさんは泣き続けた。1時間近くかけて通っても抱いてあやすだけで終わる日も続き、南里さんが車の中で一緒に泣きながら帰ることもあった。

 「本人が来たくて施設に来ているわけじゃないので『たいちゃん、ごめんね』と声をかけました。この時期は本当に苦しかった」

 ◆「いつまで原因不明なんですか」

 3歳になっても発達が遅れている原因は分からないまま「様子見」の状態が続いた。ある時、南里さんは思わず強い口調で医師に尋ねたという。

 「いつまで原因不明なんですか。そんなに分からないものなんですか」。…

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【社説・01.03】:年のはじめに考える 手話で笑顔を広げたい

2025-01-04 07:06:40 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【社説・01.03】:年のはじめに考える 手話で笑顔を広げたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.03】:年のはじめに考える 手話で笑顔を広げたい  

 寒さにも負けず、元気に学ぶ姿があります。私立の聾(ろう)学校「明晴学園」(東京都品川区)の子どもたち。幼稚部、小学部、中学部に計65人が在籍しています。
 
 子どもたちは、耳が聞こえなかったり難聴だったり。会話は手話で行い、読み書きは日本語で、という教育を受けています。
 
 小学3・4年の授業を見学させてもらいました=写真。児童らは先生の手話を理解し、発言も手話で活発に行います。
 挙手した少女が先生に促され、クラスメートの前へ歩み出ました。手を自在に動かし、顔の動きと組み合わせて意見を伝えます。なんと堂々として、自発性に満ちあふれているのだろう。
 手話は言語である-。その事実が、すとんと腹に落ちました。

 ◆学校が「母語」を奪うな

 日本の聾学校ではかつて、手話は禁止されていました。課されていたのは音声を出して話したり、相手の話す内容を口の形から読み取ったりする訓練です。
 言葉を懸命に発しても通じなかったり、心ない人にばかにされたり…。健常者の「話し言葉」に合わせて、無理を強いたことは否めません。
 これに対し、20世紀半ばに米国の言語学者から「手話も言語の一つ」との主張が生まれました。手話が見直され、2010年の国際会議で教育現場への導入にお墨付きが与えられたのです。
 日本でも近年、手話を尊重する「手話言語条例」の制定が自治体に広がっています。ただ、大きく分けて2種類の手話が存在することも知っておきたいのです。
 一つは「日本語対応手話」。日本語の単語を、手の動きに置き換えたものです。日本語の文法や語順に従って表現でき、成人後に聴覚を失った人や健常者も習得しやすい。聴覚障害児の教育現場で広く用いられています。
 もう一つは「日本手話」。手の動きと、目や口など顔の動きを組み合わせます。日本語と文法が異なり健常者には複雑ですが、聴覚障害児が日本語を学ぶ前に自然に習得できます。明晴学園はこちらを採用しています。
 この2種類は語彙(ごい)が一部共通しますが、容易には通じません。
 昨年、憂慮すべき裁判の判決がありました。日本語対応手話で授業が行われ学ぶ権利を侵害されたとして、日本手話を使う小学生ら2人が札幌聾学校(札幌市)を運営する北海道に損害賠償を求めた訴訟。札幌地裁は「日本手話で授業を受ける権利は、憲法で保障されているとは言えない」と請求を棄却しました。
 同校では日本手話に堪能な教師の退職などで日本語対応手話への移行が進み、児童らは教師とのコミュニケーションが困難となって不登校に至りました。
 幼いころから慣れ親しんだ「母語」を奪われ、学びが進むはずがありません。教育の機会均等がないがしろにされています。

 ◆少数派の文化守らねば

 問題の背景には日本手話を使いこなす人材の不足があります。教師や通訳の養成が急務です。
 同時に、日本手話に対する社会の無理解や軽視も指摘せざるを得ません。札幌をはじめ多くの聾学校が日本語対応手話を重視するのは、健常者にもなじみやすく通訳も多いからでしょう。
 多数派の言語を押し付け、負の歴史を繰り返すことがあってはなりません。
 日本手話は数万人とされる使用者の生活や文化、歴史の基盤です。少数派の言語として尊重し、守る発想も必要です。
 立教大学(東京都豊島区)の試みに注目します。必修科目であるドイツ語や中国語などの第2外国語とは別に、自由科目としてポルトガル語やタイ語などと並んで日本手話があるのです。
 ある学生は卒業後に日本手話を学び直して、手話通訳者になりました。別の卒業生は勤務先の郵便局で聴覚障害者に日本手話で対応して「今後もこの局に通いたい」と喜ばれたそうです。
 今年11月には、聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が東京を中心に開かれます。参加選手は70~80カ国・地域の約3千人。東京体育館(渋谷区)などを舞台に、21競技で熱戦が繰り広げられます。
 
 大会エンブレムは手をモチーフとして、指の先から花が開くデザインです。
 
 日本語対応手話でも、日本手話でも、コミュニケーションが交わされ、笑顔の花がたくさん咲きますように…。新年の願いです。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月03日  07:14:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《憂楽帳・12.26》:新天地

2024-12-26 13:13:30 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

《憂楽帳・12.26》:新天地

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《憂楽帳・12.26》:新天地

 美容エステ業界で働く知り合いの女性(29)が、ゆかりのない東京で2年前から暮らしている。年の瀬に近況の連絡をメールでもらい「仕事にも慣れ、楽しく働かせていただいています」と書かれていた。

 女性は「ロキタンスキー症候群」で生まれつき子宮と膣(ちつ)がなく、出産することができない。地元では、子育てする友人を見て心が押しつぶされそうになった。自分の体のうわさが広が…、

 ■この記事は有料記事です。残り272文字(全文453文字)

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【金口木舌・12.18】:声なき声を聴く

2024-12-18 04:00:40 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【金口木舌・12.18】:声なき声を聴く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.18】:声なき声を聴く 

 数年前、精神に障がいのある男性の相談を受けている事業所を訪ねる機会があった。男性は同じ障がいのある女性と結婚を望むが、家族に反対され、途方に暮れていた

 ▼2人で暮らす部屋を借りようにも、家主は契約をしぶっている。「保証人を引き受ける身内もいなくて」と男性は困惑ぎみに話す。相談員も打つ手に苦慮している

 ▼障がいのある人が、社会のあらゆる場面で壁にぶつかる話をよく聞く。ライターの知人は肢体不自由で車いすを利用し日本各地を飛び回るが、段差のある場所では手助けが必要だ。「ごめんなさいを何度繰り返したことか」とつぶやく

 ▼県の共生社会条例が2014年4月に施行され10年が過ぎた。条例は職場や教育、居住など生活のさまざまな場面における差別を禁止している。条例の正式名称が掲げる「障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会」に、この10年でどれだけ近づけただろうか

 ▼差別を解消していくには障がいへの理解、生きづらさへの共感が欠かせない。高齢や疾病でだれもが障がい者となる可能性はある。自分ごとに引きつけて考えてみたい。差別をなくす一歩として。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年12月18日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・12.15》:障害者の大量解雇 就労守る取り組み強化を

2024-12-17 02:03:40 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

《社説②・12.15》:障害者の大量解雇 就労守る取り組み強化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.15》:障害者の大量解雇 就労守る取り組み強化を

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月15日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【福祉事業会社「恵」】:不正問題から見る障害者支援の現実「今ある生活を崩したくないだけ」母親が選んだ沈黙という決断

2024-11-06 13:00:30 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【福祉事業会社「恵」】:不正問題から見る障害者支援の現実「今ある生活を崩したくないだけ」母親が選んだ沈黙という決断

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【福祉事業会社「恵」】:不正問題から見る障害者支援の現実「今ある生活を崩したくないだけ」母親が選んだ沈黙という決断 

 ◆「殴るぞ」職員による虐待事案が発生

 ◆息子の体重が10キロほど減少

 ◆元職員が語る、恵の内部事情

 ◆重度の障害者を優先して受け入れる“経営戦略”

 ◆マックビーヒル就労支援機構のグループホームに密着

9/11
 
 
 

まっくびーレジデンス春日井II 男性棟の勤務時間(テレビ愛知)

 ◆「“認識違い”だから」謝意が感じられない恵の担当者

 元稿:テレビ愛知 愛知のニュース 社会 【事件・疑惑・福祉事業会社「恵」が運営する障害者向けグループホームで、食材費の過大徴収やサービス等報酬の不正請求などが明らかになった事件】  2024年11月06日  13:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・08.03】:障害者ホームの不正 質の確保へ手だて急げ

2024-08-07 07:01:10 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【社説・08.03】:障害者ホームの不正 質の確保へ手だて急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・08.03】:障害者ホームの不正 質の確保へ手だて急げ 

 障害者福祉の制度に乗っかった極めて悪質な不正だ。

 障害者向けグループホームの大手運営会社「恵(めぐみ)」が、入居者から食材費計3億円を過大に徴収していた。さらに自治体に対する障害者福祉サービスの報酬請求で、スタッフの人数や勤務時間などを水増しした実態も発覚した。

 東海や関東、九州、東北の12都県に104カ所あるグループホームのうち、愛知県と名古屋市が県内5カ所の事業所指定を取り消した。ここで認定された不正が組織ぐるみだとして、厚生労働省が恵の事業所指定の更新を認めない「連座制」を適用した。障害者総合支援法に基づく初めての適用で、全グループホームは順次、運営できなくなる。

 許し難いのは経営陣が利益を確保するために、障害者のケアの質を著しく下げたことだ。グループホームは少人数で共同生活をする。払った費用に見合わない粗末な食事で入居者を痩せさせた。これでは経済的な詐取のみならず、身体への虐待といえる。厳しい行政処分は当然である。

 現在、約1800人が暮らす。行き場を失わないよう、国と自治体には、別の運営会社に施設ごと事業譲渡するなど徹底した調整を求めたい。

 いまだ障害者や家族に十分な説明をせず、会見を開かない経営者の責任は重大だ。その上で、福祉の現場で「金もうけ」優先の運営を横行させた要因を、国と自治体は省みなければならない。多額の税金で支える制度への信頼が揺らぎ、大半のまっとうな事業者にとっては迷惑だ。

 恵のグループホームは主に障害が重い人たちを昼間も含めて24時間体制で支える「日中サービス支援型」で、2018年度に創設された。開設の審査は書類が整えば認められ、事業者は福祉の経験や知識を問われない。研修を受ける義務もない。参入基準が緩過ぎるだろう。

 自治体による指導監査は、事前に連絡した上で、書類のチェックが中心だ。今回、恵は虚偽の書類を作ってサービス報酬の不正請求をしていた。実態と照らし合わせた調査が不十分なのは明らかだ。

 制度設計の甘さは、かねて厚労省の有識者会議や、福祉関係者でつくる各市町村の協議会で繰り返し指摘されてきた。再度、問題点を洗い出し、質を確保できる仕組みづくりを急ぐべきだ。

 障害者向けグループホームは約13500カ所で、この10年で倍増した。国が進める障害者の「地域移行」が背景にある。暮らす場を大規模な福祉施設や病院から地域に移す考えだ。国際的な人権意識の高まりを受けて06年度に障害者自立支援法のサービスに位置付け、報酬を手厚くして参入を誘導してきた。

 理念を反映した制度にできているだろうか。短期間にグループホームが急増し、悪質な民間業者の参入を招いた側面がある。恵だけでなく、他にも不正を指摘される事業者は後を絶たない。障害者の高齢化が進む中、暮らす場所の確保は深刻な課題だ。困った人につけ込む隙を与える制度にしてはならない。 

 元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年08月03日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.06】:障害者への差別 合理的配慮を当たり前に

2024-05-10 06:05:10 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【社説・05.06】:障害者への差別 合理的配慮を当たり前に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.06】:障害者への差別 合理的配慮を当たり前に

 障害のある人は日常生活で多くの壁に直面し、不便を強いられる。誰もが尊重され自分らしく生きることができるように、社会から壁を取り除かなくてはならない。

 障害者差別解消法はこうした理念に基づき、2016年に施行された。当事者の求めに応じ壁をなくすため、国や自治体に「合理的配慮」を義務付けている。

 先月の法改正で義務付けが民間事業者に拡大した。企業や店、医療機関、教育機関、NPO、個人事業主など対象は一気に増えた。法改正の内容を早く浸透させたい。

 合理的配慮は国際的な差別禁止の核となる考え方で、日本が批准した障害者権利条約に掲げられている。

 例えば、車いすで買い物中に段差があれば店員が手助けする。耳が不自由な人には筆談でやりとりをする。筆記試験にタブレット端末の使用を認めるなど、ルールを柔軟に変更することも想定される。

 「前例がない」「何かあったら困る」と要請を一律に拒否すれば、配慮義務違反の可能性がある。

 事業者は負担が重過ぎない範囲で対応が求められる。食事の介助サービスのない飲食店が介助に応じるのは困難だろう。混雑する店で買い物の付き添いを求められたら、代わりに欲しい商品を取りに行くなどの工夫をしたい。

 障害のない人と同等の機会を保障する考え方なので、優遇ではない。特別扱いとの批判は当たらない。

 そもそも私たちの社会は、多数派である障害のない人に都合良くつくられている。少数派が不利益を被っていても気付きにくい。当事者の声に耳を傾け、状況を改善するのは当然ではないか。

 合理的配慮を怠れば差別に当たる可能性がある、と認識しておきたい。22年の内閣府の意識調査では「差別に当たる場合があるとは思わない」または「どちらかといえば思わない」と答えた人が合わせて3割を超えた。

 国と自治体は啓発に力を入れなくてはならない。事業所は従業員研修を通して、障害者差別の現状と解消への理解を深めてもらいたい。

 障害のある人が困り事を伝えるのは勇気が要る。車いすの女性が、映画館で今後の入館拒否を告げられたと交流サイト(SNS)に投稿したところ、「優遇されて当たり前の考えは捨てろ」といった反発を受けた。

 合理的配慮には曖昧さがある。障害も千差万別なので、一律に判断しにくい。国は参考例を示し、関係者が建設的な対話を重ねることを求めている。

 一方で曖昧さがあるからこそ、話し合いで共通理解が得られるとも言える。映画館の例では、従業員の教育や設備の改善につながったそうだ。

 分かり合えないこともあるだろう。国や自治体は相談体制を拡充し、壁をなくす取り組みを後押ししてほしい。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月06日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:小田凱人さん

2023-06-13 07:00:20 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【天風録】:小田凱人さん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:小田凱人さん

 「凱人(ときと)」は、凱旋(がいせん)門にちなむ命名と聞く。凱という字の一つの意味は、勝ちどき。車いすテニスの小田凱人選手が、名前の通り、凱旋門のあるパリの全仏オープンで男子シングルスを制し、歓喜の声を上げた

 ▲17歳1カ月での優勝は、四大大会の同種目で史上最年少である。世界ランキングでも、史上最年少で頂点まで上り詰めることになる。最年少記録を総なめにする将棋の藤井聡太七冠といい小田選手といい、このところ伸び盛りの若者たちがまぶしい

 ▲小田選手は元サッカー少年だった。9歳で股関節に骨肉腫を患い、車いす生活に。リハビリ先で初めて競技用の車いすに乗った時の気持ちを覚えているという。「風を感じたんです」。それまで味わえなかった別世界が開けたのだろう

 ▲今では、車いすテニスは「障害がないと、できないスポーツ」と頭を切り替えている。「頑張ることが一つできれば、障害は武器に変わる」とも言う。あの国枝慎吾さんに憧れたように、今度は自分が見つめられる番

 ▲勇ましげな凱の字には、「和らぐ」という意味もある。初夏に南から吹くそよ風は凱風と呼ばれ、万物を養うとされている。病床の少年少女たちに風が吹いている。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2023年06月13日  07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【余禄】:遺伝性の重病や障害の場合…

2023-04-11 02:04:30 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【余禄】:遺伝性の重病や障害の場合…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:遺伝性の重病や障害の場合…

 遺伝性の重病や障害の場合、本人はもちろん兄弟姉妹にも負担がかかる。子どもの頃は、親が病気の子にかかりきりになるため孤独を感じ、成人すれば結婚や妊娠で難しい判断を迫られる

 ▲京都市の吉村真綾(よしむら・まあや)さん(23)の兄、和馬(かずま)さん(28)は筋ジストロフィーだ。診断されたのは5歳の時。そのため真綾さんには、自力で歩く兄の記憶がほとんどない

 ▲この難病は、筋肉の機能に不可欠なたんぱく質の設計遺伝子が変異し、徐々に運動機能が衰える。和馬さんは最初、手動の車椅子に乗り、その後、電動に切り替えた。動きづらくなっても、明るく挑戦する姿勢を忘れない

 ▲講演では「病気に出合って、神様から友だちや仲間をもらいました。早く治ってほしいけど、筋ジスはぼくのトロフィーです」と笑わせ、地元の電動車椅子サッカーチームで得点を重ねている

 ▲真綾さんはその姿を間近で見てきた。中学2年で将来の出産に備え、遺伝子検査を受けるかどうかをたずねられると、こう答えた。「お兄ちゃんは楽しそうに生きてる。そうだった(遺伝した)としても、お兄ちゃんのように育てたらええんやろ」

 ▲和馬さんの試合では、他選手の兄弟姉妹と一緒にポンポンを振って応援した。兄の病気を通して普通ならできない経験もした。「けんかはようしたし、腹の立つことも多かった。でも、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんでいてくれて良かったと思います」。米国ではきょう10日が「きょうだいの日」。日本でも広まりつつある。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2023年04月10日  03:24:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【北海道】:障害者支援施設の職員6人が入所者13人を虐待、羽交い締めや全裸で長時間放置などの行為も

2022-12-07 00:21:30 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【北海道】:障害者支援施設の職員6人が入所者13人を虐待、羽交い締めや全裸で長時間放置などの行為も

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【北海道】:障害者支援施設の職員6人が入所者13人を虐待、羽交い締めや全裸で長時間放置などの行為も 

 北海道西興部(にしおこっぺ)村の障害者支援施設「清流の里」で、男性職員6人が入所者13人を全裸で長時間放置したり、部屋に閉じ込めたりしていたことが6日、道や村への取材で分かった。村は計38件の身体的、心理的虐待行為があったと確認。施設側によると、羽交い締めにしたり、腕を強く引っ張ったり、仁王立ちになって威圧したりする行為もあった。

 菊川博幸施設長は虐待の事実を認めた上で「自ら着衣を脱いだ入所者に着せようとしても(再び)脱いでしまうので、そのままになってしまった」と釈明した。入所者13人は20~70代。6人の職員は30~40代で勤務2~10年目の男性。

 施設を運営する社会福祉法人「にしおこっぺ福祉会」(同村)は4日、入所者家族らへの説明会で同様の内容を伝え謝罪した。懲戒処分を検討するとともに、弁護士ら外部有識者による委員会を設け、再発防止策を検討する。

 道は改善や再発防止を求め、今月中にも同法人を行政指導する方針。

 道や村によると、6月に「施設職員が入所者を虐待しているようだ」との趣旨の通報があった。職員への聞き取りや施設内のカメラ映像などから、5~6月に屋内で入所者を全裸のまま最長約2時間放置するなどの虐待を確認した。施設には現在39人が入所している。

 にしおこっぺ福祉会のホームページによると、同法人は1988年3月に設立された。清流の里の入所定員は40人で職員数は嘱託医を除く33人。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【事件・北海道西興部(にしおこっぺ)村の障害者支援施設「清流の里」で、計38件の身体的、心理的虐待行為があった事案】  2022年12月07日  00:21:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【14色のペン】:感じてほしい学ぶ楽しさ 障害ある子どもたちの学習塾

2022-12-03 06:00:00 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【14色のペン】:感じてほしい学ぶ楽しさ 障害ある子どもたちの学習塾

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【14色のペン】:感じてほしい学ぶ楽しさ 障害ある子どもたちの学習塾 

 障害のある子どもたちに算数や数学を教えている学習塾があります。東京都武蔵野市の遠山真学(しんがく)塾。誕生から約40年。どのような学びの場を提供しているのか知りたくて、塾を訪ねました。【東京社会部・銭場裕司】

 

遠山真学塾の代表を務める小笠直人さん。大人の生徒には社会に関心を持ってもらえるような話題も話せるように準備しているという=東京都武蔵野市で2022年11月22日午後5時48分、銭場裕司撮影

遠山真学塾の代表を務める小笠直人さん。大人の生徒には社会に関心を持ってもらえるような話題も話せるように準備しているという=東京都武蔵野市で2022年11月22日午後5時48分、銭場裕司撮影

 JR武蔵境駅から歩いて5分ほどの場所にある塾を訪れると、小笠(おがさ)直人さん(48)が迎えてくれた。1983年に塾を開いた小笠毅(たけし)さん(82)の次男。3年前から代表を務めている。

 ◆数学者、遠山啓の遺志を継ぎ

 塾の講師にとって大切な能力だろう。小笠さんは朗らかな人柄で話も分かりやすい。大学卒業後はいったん民間企業に就職し、販売の仕事をしたという。そこで「この人生は違う」と思い立ち、父に頭を下げて塾で働くようになった。それから23年。「まだまだ勉強不足だと思いますが、人と出会える仕事で刺激がたくさんあります」

 塾は、父の毅さんが数学者、遠山啓(ひらく)の遺志を継いで開設した。タイルを教材に使って計算の仕組みを理解する「水道方式」を提唱したことで知られる遠山は、晩年に障害のある子どもたちへの教育に力を注いでいた。

 ◆スモールステップを積み重ねて

 現在の生徒は約80人。ダウン症、自閉症、学習障害など障害の内容や学ぶ力はそれぞれ異なり、生徒に合った授業をマンツーマンで実践している。学齢期にあたる生徒は約半分。残り半分は、学齢期を過ぎた後も通い続けている人たちで40代の人もいるそうだ。

 塾の学びの目的は「意義深く発展的な人生にするため」にある。小笠さんが願うのは子どもたちに学ぶ楽しさを実感してもらうことだ。ある青年の学びの歩みを教えてくれた。現在は20代になった青年は、子どものころから通い続け、…、

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【14色のペン】  2022年12月03日  06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【金口木舌】:「平等」と「公平」の違い

2022-09-14 05:03:30 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【金口木舌】:「平等」と「公平」の違い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:「平等」と「公平」の違い

 壁の向こうで野球の試合が行われている。身長の異なる3人がそれを見ようとしているが、壁が高くて見えない。その場合、どんな高さの踏み台を与えるか

 ▼身長の違いに関係なく3人に同じ高さの踏み台を与えるのが「平等」。この場合、高さが足りず試合を見られない人が出る。一方、試合が見られるようにそれぞれの身長に合わせて異なる高さの踏み台を与えるのが「公平」
 ▼誰もが暮らしやすい社会実現には、多様性を包括することにとどまらず、公平性の担保も必要なことを表現したイラストだ。障害者差別解消法のキーワードでもある「合理的配慮」がこの考え方と似ている
 ▼9月は障害者雇用支援月間。県内の障がい者実雇用率は2・86%で全国2位の高さだが、雇用義務のある企業の4割が法定雇用率未達成。任せられる仕事がない、どんな配慮をすればいいのか分からないという声も聞く
 ▼人はそれぞれ特性がある。育児や介護で時間の制約がある人もいる。合理的配慮ができる職場は障がい者だけでなく誰もが働きやすいはずだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2022年09月12日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務

2022-06-04 02:05:40 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

《社説②》:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務

 全盲の女性が4月、奈良県内にある近鉄橿原線の踏切内で、電車にはねられて死亡した。

 警報機、遮断機が備えられていた。警察によると、渡り切ろうとした時に警報が鳴り、女性は来た方向へ戻ろうとした。踏切内での自分の位置を勘違いしていた可能性がある。踏切の前に設置された点字ブロックは摩耗が激しく、一部欠損していた。

 浮き彫りになったのは、健常者を想定した設備では視覚障害者の安全を守れない現実だ。

 線路を横切る踏切は足元が不安定なうえ、乗用車が真横を通るなど危険が大きい。警報がいつ鳴り出すか分からないという不安も加わる。

 こうした理由から、白杖(はくじょう)での単独行動を指導する歩行訓練士は踏切を極力避けて迂回(うかい)するよう勧めている。だが、自宅周囲の環境や目的地によっては利用せざるをえない場合もあるだろう。

 2017年には長野県で70代の男性が、昨年には静岡県で20代男性が、踏切内の事故で死亡している。いずれも視覚障害があり、自分が踏切の中にいると気づいていなかった可能性がある。

 踏切の外側に点字ブロックを設置するだけでなく、踏切内にも連続的な突起があれば、視覚障害者は自分の位置を足の裏で知ることができる。だが、設置された例は少ない。

 踏切道改良促進法は、「開かずの踏切」や交通渋滞の原因になるなど問題のある踏切を国が指定し、鉄道事業者や自治体に改良を求めることができると定めている。バリアフリーの視点が生かされているか、点検する必要がある。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年06月04日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代…

2022-05-09 07:32:35 | 【障害者を取り巻く諸問題・差別・虐待・雇用・バリアフリー・支援の輪】

【筆洗】:中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代…

 中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代の点字新聞の記者。白杖(はくじょう)を使って通勤している。大改修が進む大阪・梅田の地下街の一角で立ち止まり、移された点字ブロックを探す体験をつづった記事を先月、毎日新聞で読んだ

 ▼「落ち着こうと、大きく深呼吸する。つえ先を慎重に右左に動かし、工事で張り替えられた点字ブロックを見つけ、会社にたどり着く」。知らない道を歩く時は緊張するようで、こう続く。「一人で初めて訪れる取材先への道では、足裏に点字ブロックの突起を感じると、ほっとする」

 ▼奈良県内の近鉄の踏切で先日、目の不自由な女性(50)が電車と接触して死亡した。近くで白杖と全盲を示す障害者手帳が見つかり、踏切があることを警告する手前の点字ブロックは一部が欠損していた。経年劣化ではがれた可能性があるという 
 ▼付近の防犯カメラに、踏切を横断中に遮断機が下り始め、立ち止まる姿が写っていたという。踏切と知らずに立ち入ったのだろうか。胸が締めつけられる 
 ▼点字ブロックは岡山の男性が考案し、一九六七年に地元の盲学校近くの交差点に初めて設置された。各地に広がったが、点字ブロック上の駐車、駐輪、立て看板設置などは絶えず、障害者がぶつかることもある
 ▼誕生から半世紀が過ぎた「道標」への理解は十分なのだろうか。まただれかを傷つけてはいけない。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2022年04月29日  06:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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