《特派員の目・12.18》:実はトランプ氏支持が多い? ロシア人の本音=山衛守剛(モスクワ)
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《特派員の目・12.18》:実はトランプ氏支持が多い? ロシア人の本音=山衛守剛(モスクワ)
ある日曜の午後、モスクワ中心部のレーニン図書館前で、男性3人組のバンドが米人気ロックバンド「ニルバーナ」のヒット曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をカバーしていた。人だかりができ、がなり立てるようなボーカルの歌声に熱狂していた。若い男性は言った。「最高だ」
米露関係は冷戦後最悪ともいわれ、2022年2月にロシアがウクライナで「特別軍事作戦」を始めて以降、悪化の一途をたどっている。
ただ、ロシアでは並行輸入されたコカ・コーラは相変わらず売れているし、ナイキの靴をはいた人もよく見かける。マクドナルド撤退後に露資本で開業した後継店「フクースナ・イ・トーチカ」は雰囲気も味もマックそのもので、いつもにぎわっている。「米国」は日常に溶け込み、ロシア人に聞いても米国のことを悪く言う人はあまりいない感がある。
加えて、ウクライナ支援に消極的なトランプ米次期大統領が1月に就任することから、ロシアでは米露関係の改善を望む声が強まっているようだ。政府系調査機関「世論基金」が24年11月26日に公表した世論調査の結果によると、トランプ氏の大統領就任後の米露関係について「改善する」と回答した人は38%で最も多く、「悪化する」は4%だった。
街角で話を聞いても、トランプ氏を支持する人が多い。トランプ氏の北大西洋条約機構(NATO)に対して脱退も辞さない姿勢を評価するなど、「米露はうまくいくと思う」「全ていい方向に向かう」などと期待感を示した。
一方、露外交アナリスト、ドミトリー・トレーニン氏は「我々は米国との関係修復を望んでいたが、もう希望は持っていない」と話し、米露関係は以前とは全く異なり、互いに妥協できない状況にあると主張する。トランプ氏の周囲に反露的な人物もいると指摘し、予測不能な言動で米露関係が悪化する可能性にも言及。「ロシアの友人ではない」と言う。
トレーニン氏が楽観していない背景には、トランプ氏が1期目の政権で親露的な態度を示しつつ経済制裁を強めるなどし、掲げていた対露関係改善が不振に終わった経緯がある。2期目のかじ取りはどうなるのか。露国営テレビは事あるごとにトランプ氏の動向を伝え、関心の高さをうかがわせている。