路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説・06.17】:G7と核なき世界 広島で立てた誓い、どこへ

2024-06-17 07:01:55 | 【「核体制の見直し」・核兵器禁止条約・核兵器のない世界・被ばく・広島、長崎

【社説・06.17】:G7と核なき世界 広島で立てた誓い、どこへ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・06.17】:G7と核なき世界 広島で立てた誓い、どこへ 

 イタリアで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳声明を採択して閉幕した。「核兵器のない世界」への取り組みがどう話し合われ、首脳声明にいかに反映されるのか。昨年の開催地である被爆地広島の関心は強かったはずだ。

 残念ながら、後段の「軍縮・不拡散」の項目で触れただけだった。前文で言及し、ウクライナに続く重要項目に選んだ広島サミットとの落差は大きい。岸田文雄首相が主導してまとめた初の核軍縮文書「広島ビジョン」については「想起する」の表現にとどまる。後退の印象が拭えない。

 もとより、一朝一夕に核廃絶が実現する国際情勢ではない。だが1年前、核保有国の米英仏を含む首脳は原爆資料館を訪れ、原爆慰霊碑に献花し、被爆者と面会した。核兵器の非人道性と核軍縮の重要性を国際社会に示す意義を感じたからこそ広島に集ったはずだ。核なき世界を目指す誓いはどこへ行ったのか。

 広島ビジョンは核抑止論を肯定したため、被爆者の反発を招いた。広島、長崎両市長はサミット後の平和宣言で核抑止論からの脱却を為政者に求めた。核兵器が使用されない唯一の保障は廃絶しかないと再確認を迫ったのである。

 ところが今回の首脳声明も「全てのものにとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」という広島ビジョンの文言を引用して、核抑止の堅持を「再確認」した。被爆地の思いを受け止めた形跡はない。核兵器の減少を逆行させてはならないと「信じる」の表現に至っては、当事者意識が感じられない。

 この1年で核使用の危機はさらに深刻さを増した。ロシアは戦術核兵器の使用を想定した演習を展開している。中国の不透明な核戦力の拡大、北朝鮮のミサイル開発に加え、核開発を進めるイランはウラン濃縮設備を増強した。

 片や米国は5月に臨界前核実験を実施。米国の核の傘の下にいる日本政府は抗議しなかった。米高官は戦術核の配備拡大の可能性に言及している。こうした状況でG7が核なき世界の理念を国際社会に浸透させる役割を果たせるとは思えない。まずはG7の保有国が果たすべき核軍縮の責任を明確にしてもらいたい。

 G7自体の影響力低下も見逃せない。グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国が存在感を増す。民主主義や法の支配といった価値観を重んじるG7と隔たりがある国は少なくない。

 その民主主義が今、G7首脳の足元を揺るがす。欧米では移民・難民問題が社会の分断を深め、自国第一を唱える勢力が伸長している。G7の試練と言っていい。国際協調や多様性への理解を深める役割は重みを増している。

 G7諸国は外交にもっと力を割くべきだ。ロシア、中国などへの圧力を強めるだけでは局面を打開できまい。排除ではなく、いかに巻き込んでいくかが今後の国際秩序を構築していく上で重要だ。核なき世界への道筋にも当てはまろう。日本の果たすべき役割も、そこにある。

 元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年06月17日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:被爆医師の願い

2022-04-21 05:05:30 | 【「核体制の見直し」・核兵器禁止条約・核兵器のない世界・被ばく・広島、長崎

【卓上四季】:被爆医師の願い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:被爆医師の願い

 原爆投下後の広島で異変が起きたのは、惨劇から数年を経てのことだった。毎年夏、深刻な倦怠(けんたい)感や発熱を訴える被爆者が現れた。病人でもないのにぶらぶらしているように見えたことから「ブラブラ病」と呼ばれた

 ▼原爆放射線の影響であることを突き止めたのが、爆心地から2・1キロの路上で被爆した外科医服部達太郎だ。情報統制下で「原爆症」の議論もかなわなかった時代。体の不調に疑問を抱き、自身の血液検査で解明した意義は大きかった

 ▼、残り:368文字 全文:580文字

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 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2022年04月20日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:米国の核政策 緊張高めず軍縮の道を

2022-04-19 05:05:55 | 【「核体制の見直し」・核兵器禁止条約・核兵器のない世界・被ばく・広島、長崎

【社説①】:米国の核政策 緊張高めず軍縮の道を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:米国の核政策 緊張高めず軍縮の道を 

 米国がバイデン政権で初となる「核体制の見直し(NPR)」の概要を公表した。「核の傘」堅持を明記し、核兵器の使用条件を厳しくする政策の採用は見送った。

 NPRは核戦略を巡る米政権の中期的指針だ。バイデン大統領は2020年の大統領選で、核の役割を敵の核攻撃阻止や反撃などに限定すると公約していた。

 しかし、ウクライナに侵攻して核の使用も示唆するロシアや、軍拡を続ける中国、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮などへの懸念が広がる中、同盟国への核攻撃の抑止を理由に公約実行を断念した。

 核の力に頼り、脅威に脅威で対抗するやり方は、相手国にも核戦力増強の口実を与えて、軍拡競争をあおることになろう。

 米国はロシアや中国を巻き込んで、核軍縮を主導する役割こそが求められている。オバマ元大統領が提唱した「核なき世界」の理念を継承するバイデン氏はその先頭に立つべきだ。

 バイデン政権で初となる臨界前核実験が昨年6月と9月に行われたことも明らかになった。トランプ政権下の20年11月以来だ。

 非人道的な核兵器の開発につながる実験を許すことはできない。広島と長崎の被爆者らが怒りと失望を表明したのは当然だ。

 米国は、核拡散防止条約(NPT)が核保有国に核軍縮義務を課すことを忘れてはならない。

 臨界前核実験は核分裂の連鎖反応が続く「臨界」前に核分裂を止め、核爆発させずにデータを取る。核弾頭の小型化など核兵器の近代化のため不可欠とされる。

 こうした「使える核兵器」と称する小型核はロシアも保有している。核使用のハードルを下げる危うさがあり、開発競争が激化する懸念も指摘される。

 実際、プーチン大統領はウクライナ侵攻時、最新兵器保有を強調し、核保有国の立場を誇示した。決して看過できない。

 ウクライナで核の脅威が高まる今だからこそ、これ以上の緊張は避け、停滞する核軍縮を再び始動させなければならない。

 北朝鮮は核実験再開の準備を進める。米国などが北朝鮮に完全な非核化を迫る一方、自らが核開発を続けるのでは説得力を欠くのではないか。

 今年6月には核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、8月にはNPT再検討会議が開かれる。

 核保有国は核廃絶と核軍縮を求める国際世論に真摯(しんし)に耳を傾け、実行に移す必要がある。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年04月19日  05:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説①】:週のはじめに考える 「橋渡し役」と言うならば

2022-04-11 07:10:50 | 【「核体制の見直し」・核兵器禁止条約・核兵器のない世界・被ばく・広島、長崎

【社説①】:週のはじめに考える 「橋渡し役」と言うならば

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:週のはじめに考える 「橋渡し役」と言うならば 

 悲願の「核なき世界」へと、ヒロシマ、ナガサキの被爆者たちが心血を注いだ核兵器禁止条約の発効から一年余。あの門出に垣間見えた希望の光も、この戦禍でまた風前の灯(ともしび)でしょうか。
 
 核保有大国がよもや現実の戦線で「核使用」の恐怖を振りかざすとは。世界を凍らすロシアの蛮行が止まりません。結局、その裏に浮かび出たのは冷戦後、保有国の主導に任せた核軍縮がいかに「幻想」だったか、ということです。互いに角突き合わす抑止力の一角が一国の勝手で崩れたとたん、世界は核危機の崖っぷちです。
 
 その一方、新たな光も見えました。デジタル社会に乗り、一瞬で世界中に拡散する非核反戦の盛り上がりです。国家や政治の枠を超え、ネット上などで戦争の目撃者となった地球市民が声を上げ、その非道を責め立てる。かつてなかった機運でしょう。

◆夏の条約会議で行動を

 絶望と希望が交わる中、それでは誰が非核の歯車を回すか。世界の視線がこの国に注がれます。
 
 唯一の戦争被爆国にして、米国傘下の抑止力に頼るため核禁止条約には参加しない。でも核の国際社会で「橋渡し役」は自任する。その日本政府に問いかけたい。
 
 「橋渡し役」と言うならば、ほぼ絶望の保有国に渡す橋よりも、自国の被爆者に希望をつなぐ橋づくりが使命ではないか、と。それも口先ではなく行動で。
 
 さしずめ六月にウィーンで開かれる条約の第一回締約国会議に、日本政府のオブザーバー参加を提起します。被爆国の気概を示す行動が、デジタル社会でつながる地球市民を勇気づけ、やがては保有国の政治をも動かす「近道」になりうるからです。
 
 今より半世紀前の冷戦さなか。まさにその近道を体現した先達がいました。メキシコの外相も務めた外交官、ガルシア・ロブレス氏(一九一一〜九一年)=写真=です。六二年、米国とソ連が核戦争寸前までいったキューバ危機の後。近隣の中南米全域に湧き上がる非核機運を史上初の非核地帯条約に束ねた功績などで、八二年ノーベル平和賞に輝きました。
 

 この条約の要は、中南米各国のみならず、域外の核保有国にも条約の一員として核兵器の域内全面禁止を確約させたことでした。

 当時まだ開発途上の小国メキシコを支点に、米ソ英仏中の五大国を説得して回るような離れ業がなぜできたか。氏の外交人生を綴(つづ)る『賢者ガルシアロブレス伝』(木下郁夫著、社会評論社)には四〇年代半ば、国際連合の創設に向けた下交渉で、若き外交官が見せた気骨の逸話が出てきます。
 
 安全保障など大国主導の国連憲章案づくりに歯向かい、メキシコ政府の一担当官として米当局に意見書を送ったことです。人類普遍の人権の重さに「大国も小国もないはず」。書簡で国連の公平な仕組みを求めた根拠は、ごく正当な国際法の基本精神でした。堂々たる主張ぶりには早くから、米当局者も一目置いていたようです。
 
 いつの世も大国の身勝手に振り回される小国の悲哀は、小国にしか体感できないものでしょう。小国も等しく持つ主権と人権を、大国の身勝手から守り抜いてこそ真の世界平和は実現できる。いわば「小国ならではの正義」に立った訴えが、五大国をも説得できた橋渡しの極意でした。

◆被爆国の正義に立って

 先達の教えを今、被爆国日本に置き換えるなら、果たすべき役割は明白です。自国で被爆者たちが体感した核兵器の非人道性を広く次代へ語り継ぎ、地上に核廃絶の理想を実現する。「被爆国ならではの正義」に立脚した、過去から未来への橋渡し役です。
 
 けれど、その被爆者たちも今や平均八十代半ば。昨今募る不安は自分たちが一線を去った後、被爆国の正義を次代に継ぐ主役が途絶えかねないことです。途絶えぬよう、その主役を担うのは無論、日本政府でしかありえません。
 
 もはや無用な核抑止力の駆け引きも米国への忖度(そんたく)も論外。政府がここで決断すべきは、被爆者たちの悲願が息づく核禁止条約に参加し核廃絶へとたどる一本道です。
 
 その一歩となる六月の会議で、被爆者たちに同席する日本政府の姿は、この危機に世界が待望する真の橋渡し役の登場を印象づけることでしょう。非核の新たな歯車を回す原動力への期待です。
 
 そして時は今−。この機を逃せば核禁止条約の次の締約国会議は多分二年後、検討会議は四年後か。高齢の被爆者たちには、いよいよ後がなくなります。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年04月10日  14:53:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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