路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説②・01.19】:国立劇場再整備 国際的な視野で活用法を探れ

2025-01-19 05:00:50 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【社説②・01.19】:国立劇場再整備 国際的な視野で活用法を探れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.19】:国立劇場再整備 国際的な視野で活用法を探れ

 伝統芸能の重要な拠点である劇場の再整備が課題となっている。建物を新しくすると同時に、海外の演者や観客が一度は訪れてみたいと思うような場所にすべきだ。 

 老朽化による建て替えのため、東京・国立劇場が閉場してから1年以上になる。建設費の高騰などで入札が2度不成立となり、事業者は今も決まっていない。

 国は今年度の補正予算で物価高騰分として200億円を追加計上した。昨年末には整備計画も改定し、ホテルの併設を必須としないなど、入札条件を緩和した。

 国立劇場は1966年に開場した。歌舞伎や文楽などの鑑賞の場であるほか、担い手の養成にも力を注いできた。商業的な成功が難しいような作品の上演も試み、文化の維持発展に寄与してきた。

 再整備の遅れを巡っては、関係者が「伝統芸能の発表の場が失われ、衰退しかねない」と危機感を募らせている。国立劇場は、国を代表する文化施設である。十分な予算措置を講じ、充実した内容にすることが欠かせない。

 新しい国立劇場は、約1600席の大劇場と約600席の小劇場を備える、旧劇場と同様の規模になる予定だ。施設のバリアフリー化も進めるという。

 ただ、それだけでは十分とは言えまい。主催公演の有料入場者数は1979年度の約42万人をピークに、閉場前の2022年度には約23万人まで減った。施設を新しくしただけでは、集客の増加が見込めるのか疑問だ。

 コロナ禍が収束し、海外から再び多くの観光客が来日している。日本の伝統芸能を味わってもらうのに加え、時には映像や現代音楽と組み合わせるなど、新しい観客の発掘にも努めるべきだ。

 海外のエンターテイナーも憧れるような舞台を目指してほしい。アジアを始めとする各国の伝統芸の演者らを招き、交流の場とすることも一案だろう。

 改定した整備計画も順調に進まないようなら、建設地を含めて、計画を抜本的に見直すことも検討すべきではないか。

 伝統芸能を守りつつ、国際的に活躍する人気グループのコンサートやミュージカルの上演にも適した多目的の大劇場として整備することも考えられる。

 日本を含め、多くの国では文化や芸能、アニメ、映画などのコンテンツ産業が盛んだ。世界に誇れる劇場を整備し、アジアの文化の中心地となれるような魅力的な舞台づくりを目指してほしい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月19日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《ひと・01.11》:ヤン・トゥーレさん=日本の陶芸の魅力をフランスに紹介

2025-01-11 02:01:10 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《ひと・01.11》:ヤン・トゥーレさん=日本の陶芸の魅力をフランスに紹介

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《ひと・01.11》:ヤン・トゥーレさん=日本の陶芸の魅力をフランスに紹介

 ◆ヤン・トゥーレ(Yann Touret)さん(43)

 2024年11月12日から約1カ月間、日本に滞在し、三重県以西の陶芸家約30人を訪ね歩いた。自分の店舗で作品を扱う陶芸家との再会や新規開拓が目的の「セラミックツアー」は、東日本中心だった23年に続き、今回で2回目だ。各地で作陶に使う土や釉薬(ゆうやく)、技法も異なるなど、日本の陶芸の多様さに改めて驚き、興味は尽きないという。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/11/20250111ddm012070166000p/9.webp?2" type="image/webp" />ヤン・トゥーレさん</picture>
ヤン・トゥーレさん

 フランス北西部ブルターニュ地方で生まれた。無印良品のパリの店舗に就職した後、源氏物語を通じて日本の文化に興味を抱き、08年に旅行で初めて日本を訪れた。滞在した京都の民宿では、提供する料理や和菓子に合わせて多種多様な陶磁器を使いわけており、手作りの素朴さ、繊細さに引かれた。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ひと】  2025年01月11日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香

2025-01-10 06:00:00 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香 

 働くのはお金を稼いで生きるため。でも、その「生」が脅かされているとしたら、働く意味はどこにあるのだろう。過労死防止法の施行から10年を経てもなお、過酷な労働による健康被害や自殺は後を絶たない。

 「今の世の中、働くことがすごく矮小(わいしょう)化されていると思うんです」

 奈良県東吉野村で私設図書館を開く思想家の青木真兵(しんぺい)さん(41)は語る。「労働力を提供し、その対価として賃金をもらう。これは働くことの一部でしかない」と。

 ならば、働くことの本来の意味はどう捉えたらいいのか。青木さんは「数値化できないもの」というキーワードを挙げる。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/09/20250109k0000m040116000p/9.webp?1" type="image/webp" />自宅を開放して私設図書館を運営する青木真兵さん(左)と妻・海青子さん=奈良県東吉野村で2024年11月17日、清水有香撮影</picture>
自宅を開放して私設図書館を運営する青木真兵さん(左)と妻・海青子さん=奈良県東吉野村で2024年11月17日、清水有香撮影

 ◆自宅を開放した「彼岸」の図書館

 奈良市内から車で約1時間半。山のふもとの小さな橋を渡り、杉木立を抜けた川のほとりに平屋の古民家がある。“彼岸の図書館”をうたうそこは、青木さんと妻・海青子(みあこ)さん(39)が2016年から自宅を開放して運営する「ルチャ・リブロ」だ。

 館の名前は、メキシコのプロレス「ルチャリブレ」と、本を意味するスペイン語「リブロ」にちなむ。どちらも青木さんが愛してやまないもの。板張りの居間や和室の棚には、歴史や哲学書、文学を中心とした約3000冊が並ぶ。本に貼られた数々の付箋が、夫婦の蔵書であることを物語る。

 2人は9年前にこの山村に移り住むまで、兵庫県西宮市で暮らしていた。

 青木さんは当時、古代地中海史の研究者として…

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《フィールドの向こうに・01.09》:2025年の「自分史」=田原和宏

2025-01-09 13:04:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《フィールドの向こうに・01.09》:2025年の「自分史」=田原和宏

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《フィールドの向こうに・01.09》:2025年の「自分史」=田原和宏 

 2025年は「昭和100年」、戦後80年、さらに阪神大震災から30年にあたる。節目の年だが、一介のスポーツ記者が論じるには荷が重い。歴史のことは歴史家に聞け。東京・神保町の古書店を巡ると、色川大吉さんの著書「ある昭和史―自分史の試み」(中央公論社)の一節が目に留まった。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/09/20250109k0000m050137000p/9.webp?1" type="image/webp" />色川大吉さんの著書「ある昭和史-自分史の試み」と関連図書=東京都内で2025年1月8日、田原和宏撮影</picture>
色川大吉さんの著書「ある昭和史-自分史の試み」と関連図書=東京都内で2025年1月8日、田原和宏撮影

 「人は誰しも歴史をもっている」

 色川さんは正史よりも、名もなき人々の思いをつなぐ「民衆史」「自分史」の提唱者で知られる。21年に96歳で亡くなった。同時代にあって歴史の流れを見極めるのは難しい。個人の体験や認識がどれほど限られ、偏っているか。悔いや過ちを含めて書くことで、歴史の全体像に近づけると説いた。

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《水説・01.08》:「笑顔」のパワー=赤間清広

2025-01-09 02:01:20 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《水説・01.08》:「笑顔」のパワー=赤間清広

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《水説・01.08》:「笑顔」のパワー=赤間清広

 <sui-setsu>

 笑う門には福来たる。「笑いが絶えない人や家には自然と幸福が訪れる」ということわざだ。

 これは単なる「精神論」ではないらしい。

 

通知表に目を通して笑顔の子供たち。笑顔の効果が徐々に明らかになっている=福岡市早良区で2019年12月、森園道子撮影(画像の一部を加工しています)

通知表に目を通して笑顔の子供たち。笑顔の効果が徐々に明らかになっている=福岡市早良区で2019年12月、森園道子撮影(画像の一部を加工しています)

 「笑顔を意識するだけで、身体的にさまざまなプラス効果が期待できると分かってきたんです」

 教えてくれたのは国際パフォーマンス研究所の佐藤綾子代表だ。日本におけるパフォーマンス学の第一人者である。

 佐藤さんは東京都内の医療機関などと協力し「笑い」のパワーを研究し続けている。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【水説】  2025年01月08日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《あした元気になあれ・01.07》:自分の翼で羽ばたけ=小国綾子

2025-01-08 13:12:20 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《あした元気になあれ・01.07》:自分の翼で羽ばたけ=小国綾子

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《あした元気になあれ・01.07》:自分の翼で羽ばたけ=小国綾子

 「若い頃は『わたしを束ねないで』と詩に書いたけど最近は束ねられたい気持ちになるのよね」。95歳で亡くなった詩人、新川和江さんは約30年前、そんなふうに語ったことがあったそうだ。

 これは新川さんの「お別れの会」(昨年12月8日)で、音楽家の吉岡しげ美さん(75)が明かしてくれたエピソード。吉岡さんは45年間以上、女性詩人の詩に曲をつけ、歌ってきた。「わたしを束ねないで」ももちろん古くからのレパートリーだ。

 「束ねられたい、ってどんな思いだったのかなあ」と首をひねる私に、吉岡さんは「束ねられることも減り、自由になれた60代、ふっと物寂しさを覚えるのも人生だものね」とほほえんだ。

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《ひと・01.07》:池上彰さん=角川武蔵野ミュージアムの館長に就任

2025-01-07 02:03:00 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《ひと・01.07》:池上彰さん=角川武蔵野ミュージアムの館長に就任

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《ひと・01.07》:池上彰さん=角川武蔵野ミュージアムの館長に就任

 図書館であり、美術館であり、博物館でもある異形の文化施設に、自身が魅了されている。「良い意味での『ごちゃまぜ』。あらゆる要素による、新たな融合が生まれるのではないか」と胸を躍らせる。

 長野県出身。NHKで長く社会部記者として働いた後、「週刊こどもニュース」のお父さん役で親しまれた。2005年にNHKを退職してフリーのジャーナリストに。本の執筆に大学教員、テレビ出演と、多忙な日々を送る。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/07/20250107ddm012070130000p/9.webp?2" type="image/webp" /></picture>

               池上彰(いけがみ・あきら)さん(74)

 ニュースをはじめ「物事を分かりやすく伝える」営みの第一人者だが、「説明できないこと、理解しづらいことも実は大切」という。「頭の中がはてなマークでいっぱいになることで、人間は成長するのではないか」

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《そこが聞きたい・01.05》:「読まぬ人6割」の時代に 神奈川近代文学館長 荻野アンナ氏

2025-01-05 02:01:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《そこが聞きたい・01.05》:「読まぬ人6割」の時代に 神奈川近代文学館長 荻野アンナ氏

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《そこが聞きたい・01.05》:「読まぬ人6割」の時代に 神奈川近代文学館長 荻野アンナ氏

 <くらしナビ ライフスタイル>

 ◆作家、本と出合う場を

 横浜市中区の神奈川近代文学館==の館長に2024年4月、仏文学者で作家の荻野アンナさんが就任した。創立40年を迎えた同館の展覧会やイベントには多くの人が来館する一方、読書環境の変化に伴い、新たな取り組みも期待されている。6代目館長の荻野さんに、文学館に求められている役割について聞いた。【聞き手・棚部秀行】

 
<picture></picture>

 ――昨春に新館長に就任して約9カ月がたちました。橋本治、庄野潤三、安部公房ら話題の特別展が続き、多くの来館者がありましたね。

 ■この記事は、有料記事です。残り2029文字(全文2272文字)

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【そこが聞きたい】  2025年01月05日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《発言・01.01》:実演芸術にもっと価値置く国に=尾上墨雪・日本芸能実演家団体協議会理事

2025-01-01 02:08:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《発言・01.01》:実演芸術にもっと価値置く国に=尾上墨雪・日本芸能実演家団体協議会理事

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《発言・01.01》:実演芸術にもっと価値置く国に=尾上墨雪・日本芸能実演家団体協議会理事

 新たな年を迎え、新春公演が始まる。私たち伝統芸能に携わる実演家にとって、国立劇場は年初めの華やかで初々しい心持ちで立つ特別な舞台だった。それが閉場し、1年以上が経過した。

 
<picture>尾上墨雪 日本芸能実演家団体協議会理事</picture>
尾上墨雪 日本芸能実演家団体協議会理事

 国立劇場再整備は先の見えない状況が続いたが、昨年末に国が補正予算を計上したことで、我々もようやく胸をなでおろした。しかし、一部予算が上乗せされただけで安心してはいられない。劇場とは単なる建築物ではなく、公演が行われ、観客が入って初めてその役割を全うするのである。日本の伝統ある芸を継承し、創造と発展を支える場として、再整備中と再開場後も、継続的な予算措置が必要であることは言うまでもない。

 私も一人の舞踊家として、大切な劇場が長期間失われることに対して大変な危機感を持ち、日本の顔である劇場の整備は、国が責任を持って行うべきだと強く訴え続けてきた。この国で実演芸術を豊かに創造し続けることはできるのか。伝統芸能に関わらずとも、多くの方が疑念を抱いたに違いない。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【発言】  2025年01月01日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【小社会・12.27】:布袋さん

2024-12-27 05:05:45 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【小社会・12.27】:布袋さん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.27】:布袋さん

 ぷっくり膨らんだおなかと頬、傍らの大きな袋にもたれかかり、気持ちよさそうに居眠りをしている。その寝顔を見ていると、こちらもなんだか幸せな気分になってきた。

 いろいろと気ぜわしい師走。高知県立美術館で開かれている「生誕200年 河田小龍展」で、ほっと一息つける絵に出合った。掛け軸の「眠り布袋図」。

 おどろおどろしい芝居絵で知られる幕末の絵師、金蔵(絵金)から影響を受けるなど、小龍は時代とともに作風を変えてきた。芝居絵と対照的な七福神の寝姿。つい見入ってしまった。

 もともと小龍は松梁、小梁などと号した。龍を描くのが得意で自信もあったのだろう。明治期に読みが同じ小龍としたという。険しい眼の龍が天上をにらむ掛け軸も会場にあった。名前を変えた理由がよく分かった。

 その龍(辰=たつ)から蛇(巳=み)へ、バトンタッチをする日が迫ってきた。この1年さまざまな出来事があった。元日の能登半島地震に始まり、国内の政治状況の変化、各地の紛争…。昨日の本紙によると国内の平均気温が連年で最高を更新しそうだという。「異常な高温」。気象庁担当者の言葉は重い。来る年も多くの課題に向き合わねばなるまい。

 布袋様の袋には何が入っているのだろう。福の神だけに暮らしに役立つたくさんの知恵が詰まっているのかもしれない。お知恵を拝借? いやいや、居眠りの邪魔をしてはならない。まずは自分たちで―。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2024年12月27日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《金言・12.27》:7から8への67年=小倉孝保

2024-12-27 02:03:10 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《金言・12.27》:7から8への67年=小倉孝保

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《金言・12.27》:7から8への67年=小倉孝保

 <kin-gon>

 人は誰も何らかの才能を持ち、それを目覚めさせるのに年齢はさほど関係ないという。

 英イングランド東部キルハムに住むレイ・エバリーさんは先日、極めて難しいピアノ演奏試験に合格した。88歳での快挙が地元メディアをにぎわせた。

 「これほど注目されたことに驚きました。気候変動や戦争、米国の政治情勢など、他にニュースがあるんですがね」

 挑んだのは英王立音楽検定である。毎年、世界約90カ国で60万人以上が受検している。8段階のグレード(等級)のうち、最難関のグレード8に受かった。音楽大学に入学できるレベルだという。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金言】  2024年12月27日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《余録・12.25》:江戸の下町文化の中心だった東京・深川の生まれ…

2024-12-25 02:07:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《余録・12.25》:江戸の下町文化の中心だった東京・深川の生まれ…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.25》:江戸の下町文化の中心だった東京・深川の生まれ…

  江戸の下町文化の中心だった東京・深川の生まれ。青年期には「故郷、出自などは捨て去りたいと思っていた」。「米問屋に生まれた自分など卑小な江戸の市民文化の端くれ」とみなしていたからだ

 ▲アフリカや欧州を足掛け20年近く彷徨(ほうこう)した末に気持ちが変わった。母の長唄の声や川の匂いなど幼時の記憶に吸い寄せられるように故郷に改めて向かい合いたくなった

文化勲章の授与式を終え、記念撮影に納まる川田順造さん=皇居・宮殿東庭で2021年11月3日午前11時26分(代表撮影)

 ▲90歳で亡くなった文化人類学者の川田順造さん。仏留学で大家、レビストロースに師事し、西アフリカのブルキナファソに暮らすモシ族の研究を延べ9年半も現地で続けた。そんな経験から生まれた考え方が「文化の三角測量」

 
山形県米沢市に造られた戦争資料館での記念写真。前列中央が川田さん、看板は川田さんが筆を執った=米沢市六郷町で2015年8月2日午後3時18分、佐藤良一撮影

 ▲文化を他の2点から測れば覚めた目で立体的に捉えることができる。モシ族の研究をまとめた出世作「無文字社会の歴史」。文化勲章につながった「口頭伝承論」では「むしろ文字を必要としなかった社会」と言い直した

 ▲日本への視線も外国経験を踏まえたものになった。東京大空襲時は千葉に転居していたが、親族が犠牲になった。8月15日には戦没者らが祭られる靖国神社、千鳥ケ淵、東京都慰霊堂でフィールドワークを行い「日本を問い直す」作業を続けた

 ▲「自分の属する文化だけを絶対視して他を断罪したり、偏見からおとしめたりする愚かしさを、これからの地球に生きる私たちは、何としても克服しなければならない」。SNSが隆盛し、自国第一主義が広がる世界。客観的な視座を保つためにも「三角測量」の知恵を引き継ぎたい。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年12月25日  02:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《余録・12.23》:言い得て妙とは、このことか…

2024-12-25 02:03:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《余録・12.23》:言い得て妙とは、このことか…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.23》:言い得て妙とは、このことか…

 言い得て妙とは、このことか。「魂柱」と呼ばれる一本の棒が弦楽器の内部にある。表板と裏板をつなぎ、音色や響きを豊かにする。バイオリンならば直径約6ミリ、長さ約5センチ。どの楽器にも先人の知恵と技が施されている

東日本大震災の被災地と阪神大震災を経験した関西を映像でつないで行われた「サントリー1万人の第九」=仙台市青葉区で2011年12月4日午後5時37分、丸山博撮影

 ▲多数の楽器が登場するのが交響曲だ。コンサート会場には、縁もゆかりもなく、職業や年齢などがばらばらな聴衆が集う。同じタイミングで心を震わせ、ときに嘆息する

 ▲この光景を、音楽書専門の編集者で桜美林大講師の木村元さん(59)は「社会的属性が脱ぎ捨てられる場」と表現する。ライブが、理性を超えた本来の感性を呼び起こすのだろう

 ▲各地でベートーベンの交響曲「第九」が演奏されている。構想から約30年間、難聴などの辛苦を経た末の傑作である。混声合唱が付き、演奏時間は約70分と長い。そんな異形の曲が今年、世界初演から200年を迎え、日本では年末の風物詩に定着した

 ▲曲に込められたメッセージは「自由・平等・博愛」という。ベルリンの壁が崩壊した1989年の12月25日には、東西ドイツの音楽家らによる演奏会が行われた。指揮した巨匠、バーンスタインは第4楽章で歌われる「喜び」という単語を「自由」に変更し、冷戦の終結と一体感を演出した

 ▲あれから35年。国際社会に広がったのは分断だった。歌詞には、こんな言葉もある。「時流が強く切り離したものを 君の不思議な力は再び結び合わせ すべての人々は兄弟となる」。そんな指導者の出現を祈りたくなる年の瀬だ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年12月23日  02:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【国原譜・12.22】:徳島県に伝わる阿波人形浄瑠璃を奈良市で…

2024-12-22 06:03:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【国原譜・12.22】:徳島県に伝わる阿波人形浄瑠璃を奈良市で…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【国原譜・12.22】:徳島県に伝わる阿波人形浄瑠璃を奈良市で… 

 徳島県に伝わる阿波人形浄瑠璃を奈良市で鑑賞する機会があった。演目はお家騒動を題材にした「傾城阿波の鳴門」で、幼い娘を思う母の姿を情緒たっぷりに描いた段。

 太夫(たゆう)の名調子と人形のこまやかな動きに引き込まれ、1時間ほどの上演があっと言う間に感じられた。終わる頃にはすっかり涙腺が緩んでいた。

 人形浄瑠璃は徳島県の伝統芸能で、阿波人形浄瑠璃は国の重要無形民俗文化財に指定されている。芝居を見ているような迫力がどこからと思えば、人形の頭(かしら)が文楽に比べて大きいのだという。

 神社の境内など野外舞台で演じるための工夫で、人形の動きも大きい。地方に息づく日本の感性に触れた気がした。

 年が明けると、奈良県では多彩な伝統行事が続く。五條市大塔町の天神社で1月25日に演じられるのが惣谷狂言で、こちらは県指定の無形民俗文化財。保存会が振り付けなどを工夫しながら受け継いでいる。

 各地の神社で奉納されるおんだ祭もそれぞれ工夫があって面白い。身近な伝統行事を通して地域に息づく感性や祈りに出合いたい。(増)

  元稿:奈良新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【国原譜】  2024年12月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《なるほドリ・12.20》:750年前の元寇って? モンゴル帝国が侵攻 漫画・ゲームでブーム=回答・田崎春菜

2024-12-21 02:00:50 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

《なるほドリ・12.20》:750年前の元寇って? モンゴル帝国が侵攻 漫画・ゲームでブーム=回答・田崎春菜

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《なるほドリ・12.20》:750年前の元寇って? モンゴル帝国が侵攻 漫画・ゲームでブーム=回答・田崎春菜

 なるほドリ 今年は元寇(げんこう)の節目(ふしめ)の年なの?

 記者 ええ、元寇はモンゴル帝国(元(げん))による2度の日本侵攻で、最初の1274年の「文永(ぶんえい)の役(えき)」から今年で750年になりました。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/12/20/20241220ddm003070110000p/9.webp?1" type="image/webp" />当時の高さに復元された「生の松原」地区の元寇防塁=福岡市西区で2024年11月、田崎春菜撮影</picture>
当時の高さに復元された「生の松原」地区の元寇防塁=福岡市西区で2024年11月、田崎春菜撮影

 元軍の襲来(しゅうらい)に備えるため福岡市の海岸沿いに築かれた「元寇防塁(ぼうるい)」をはじめ、戦場となった長崎県壱岐(いき)、対馬(つしま)両市などに戦跡(せんせき)や伝承が残ります。

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【なるほドリ】  2024年12月20日  02:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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