【社説②・03.28】:IOC新会長 思い切った五輪改革を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.28】:IOC新会長 思い切った五輪改革を
国際オリンピック委員会(IOC)の次期会長に、元競泳選手で五輪金メダリストのカースティ・コベントリー氏(ジンバブエ)が選ばれた。131年のIOCの歴史では初の女性会長で、欧米以外からのトップ選出も初めてだ。
五輪は、行き過ぎた商業主義やドーピング問題など課題が山積している。41歳の新会長は、閉鎖的な組織の改革とIOCへの信頼回復を実現できるかが問われる。
2期12年務めたバッハ会長(71)の後継を決める会長選は、史上最多の7人が立候補した。選出はもつれるとの予想を覆し、コベントリー氏が1回目の投票で過半数の49票を獲得した。
バッハ氏の支援に加え、ジェンダー平等を進めるIOCで、委員の女性比率が4割強に増えたことも後押ししたとみられる。
「世界の分断、隔たりを埋めたい」との抱負通り、あらゆる差別に反対し、スポーツにおける女性の地位向上をうたう五輪憲章の実現に力を発揮してほしい。
一方で、名誉会長として影響力を残すバッハ氏の「かいらい」にならないかといった懸念もある。
バッハ氏は、在任中に五輪の在り方を大きく変えた。開催地選定は、買収疑惑が相次いだIOC委員による投票から、執行部を中心とした協議に変更した。選考過程は不透明になった。新型コロナウイルス下の東京大会の強行など独善的な運営も目立った。
30代でIOC理事に就き、母国でスポーツ大臣を務めるコベントリー氏だが、指導力は未知数だ。公約も現路線の継承が目立ち、新味に乏しいと評される。
6月の会長就任後は、来年2月のミラノ・コルティナ冬季五輪でのロシアの参加問題をはじめ、多くの難題が待ち構える。
IOCは昨夏のパリ五輪で、史上初めて出場枠の男女同数を実現させた。ただ、28年にロサンゼルス五輪を開く米国では、トランプ大統領がトランスジェンダー選手の女子競技参加を禁じる大統領令に署名した。
参加ルールの整備についてコベントリー氏は「もう少し主導的な役割を果たしたい」と作業部会の設置の考えを示している。手腕を注視したい。
酷暑や雪不足を招いている地球温暖化への対処も求められる。特に真夏の開催は巨額の放映権料を払う米テレビ局の意向とされる。
5大会に出場し、メダル7個を獲得した「五輪の申し子」として、競技者ファーストの徹底へ踏み出す新機軸を望む。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月28日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。