路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【主張②・11.21】:G20首脳会議 保護主義阻む覚悟みえぬ

2024-11-21 05:01:40 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【主張②・11.21】:G20首脳会議 保護主義阻む覚悟みえぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・11.21】:G20首脳会議 保護主義阻む覚悟みえぬ

 ブラジルのリオデジャネイロで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。

 首脳間の関心事は自国第一主義で保護主義色を強めようとするトランプ次期米政権への対応だったが、首脳宣言に「保護主義」という言葉を明記して懸念を表明することはなかった。

 昨年の首脳宣言や、米大統領選前の今年10月にあったG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明で「保護主義に抵抗」などとうたったことと比べれば明らかな後退だ。トランプ氏への刺激を避けた印象は拭えない。

18日、ブラジル・リオデジャネイロで開かれたG20首脳会議(ゲッティ=共同)

 トランプ氏が掲げる関税引き上げは、中国のみならず日欧を含むあらゆる国からの輸入品が対象だ。就任前からG20の腰が引けていては、トランプ氏に今後、独善的措置を取らないよう迫れるとは思えない。G20の存在意義はさらに低下しよう。

 中国の動きにも特段の注意がいる。G20が保護主義への直接的な批判を避けた結果、反保護主義で攻勢をかけた中国の存在感が際立った。習近平国家主席はG20の演説で「単独主義や保護主義に反対すべきだ」と訴えた。G20に先立つペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や2国間会談でも同様の主張を繰り返した。

 G20やAPECには、中国が参加を目指す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の加盟国も多く、そこに働きかける意図もあったのだろう。反保護主義での糾合を促す習氏には、各国と米国の分断を図り、自国に取り込む狙いが透けてみえる。

 だが、習氏には自国こそが自由貿易の旗手だといわんばかりに振る舞う資格はあるまい。中国は、国有企業の優遇や不透明な産業補助金、政治的思惑に基づく他国への経済的威圧などで自由貿易体制を歪(ゆが)めてきた。そこに目をつむったまま習氏に同調するわけにはいかない。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月21日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【産経抄・11.21】:日本の評判下げた〝外交〟 不作法な石破首相

2024-11-21 05:01:30 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【産経抄・11.21】:日本の評判下げた〝外交〟 不作法な石破首相

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・11.21】:日本の評判下げた〝外交〟 不作法な石破首相

 米・ウィリアムズバーグでのサミットに出席した中曽根康弘首相を、軍楽隊が「軍艦マーチ」で出迎えた。1983年のことである。元海軍主計少佐の首相に敬意を払った演奏だが、日本の一部メディアは「不見識だ」と騒いだ。

APEC首脳会議の記念撮影に臨む各国首脳。石破首相は参加しなかった=16日、ペルー・リマ(共同)

 ▼日本側の批判を米側が気にしている―。伝え聞いた中曽根氏は会議後、レーガン大統領に「心配ない。日本では名曲だ」と伝えた。肩を並べて歩くうち記念撮影の場に。中央に立つレーガン氏の横を中曽根氏は動かず、後から来たサッチャー英首相に挟まれ写真に納まっている。

 ▼当時は首相就任から約半年。まだ「顔」ではなく、慣例に倣えば立ち位置は隅の方だ。「あれは愛国心。隅っこでは国民に申し訳ない」とは中曽根氏の回想である。レーガン氏への接近には、記念撮影を見越した計算があったというから恐れ入る。、続きは、

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 元稿:産経新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2024年11月21日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・11.21】:トランプ新政権 イエスマンばかりでは危うい

2024-11-21 05:00:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説①・11.21】:トランプ新政権 イエスマンばかりでは危うい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.21】:トランプ新政権 イエスマンばかりでは危うい

 赤をシンボルカラーとする米共和党が、ホワイトハウスと連邦議会の上下両院を掌握する「トリプル・レッド」の政治状況となった。 

 トランプ次期大統領が思い通りの人事や政策を進めやすい政権基盤を手にした。問題はそれをどう生かすかである。

 共和党は上院(定数100)で多数派を奪還し、下院(定数435)でも過半数を維持した。議会は予算編成や立法の権限を持ち、特に上院は政府高官人事や条約の承認権を握っている。

 トランプ氏は新政権の主要ポストを腹心で固めようとしている。1期目政権では大物政治家や軍人らを要職に配置したが対立し、更迭を繰り返した。今回は適性や経験よりも、忠誠心を重視して人選を進めているのは明らかだ。

 司法長官に指名したマット・ゲーツ氏は、トランプ氏に忠実な保守強硬派として知られ、トランプ氏の起訴に関わった政敵への報復を示唆している。未成年者と性的関係を持った疑惑も抱える。

 厚生長官にはワクチン懐疑主義者のロバート・ケネディ・ジュニア氏を起用するという。

 絶大な権力を得たトランプ氏が暴走した場合、イエスマンばかりの政権で歯止めをかけられるのか。懸念を禁じ得ない。

 共和党内にもこうした人事を疑問視する意見があるため、トランプ氏は、上院の承認手続きを省く「休会任命」も辞さない構えだが、権力の乱用とみなされる強引な手法は慎むべきだ。

 日本や世界にとって特に影響が大きいのが、新政権の外交・安全保障政策である。

 外交の司令塔の国務長官に起用されるマルコ・ルビオ上院議員は議会きっての対中強硬派として知られる。少数民族への人権抑圧などを理由に対中制裁法案作りを主導し、中国政府から入国禁止の制裁を受けている。

 米中2大国の関係が過度に緊張すれば、日本の安保環境の悪化は避けられない。日本は米中双方に自制と関係改善を促すべきだ。

 とはいえ、トランプ氏が「米国第一」「ディール(取引)」重視を改めるとは考えにくい。トランプ政治を前提に、日本の国益を追求することが欠かせない。

 たとえば液化天然ガス(LNG)の米国からの輸入増など、日本のエネルギー安全保障にも資する選択肢の検討や、関係諸国との協力体制の強化などで、同盟国や国際協調の価値を新政権に実感してもらうのも一つの手ではないか。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月21日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・11.21】:G20首脳会議 国際協調 喫緊の課題だ

2024-11-21 04:03:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説②・11.21】:G20首脳会議 国際協調 喫緊の課題だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.21】:G20首脳会議 国際協調 喫緊の課題だ 

 日米欧といった先進国や中ロ、新興国による20カ国・地域首脳会議(G20サミット)がブラジルで開かれた。
 首脳宣言はロシアのウクライナ侵攻を巡って「人的被害や食料、エネルギー安全保障などへの悪影響」を指摘したが、昨年に続いてロシアを名指しした批判は避けた。
 パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関しても、停戦を支持しつつ民間人虐殺を続けるイスラエルを非難しなかった。
 ロシアとイスラエルの蛮行は国際法に反している。世界秩序の安定を重視してきたG20が明確な姿勢を打ち出せないようでは、存在意義が問われよう。
 今回の首脳会議は総じて具体的な成果が乏しかったと言わざるを得ない。米国第一主義を掲げるトランプ前大統領の返り咲きが決まり、世界の分断はいっそう深まりかねない時だ。
 各国は国際協調の維持に向けた取り組みを急ぐ必要がある。
 G20は参加国の国内総生産(GDP)合計が世界の8割以上を占め、影響力の大きい多国間枠組みだ。首脳会議は2008年の金融危機を機に毎年開催し、世界の課題に協力して取り組むことを確認してきた。
 ただ、近年は自国第一主義の台頭や欧米とロシアの対立で足並みの乱れが目立つ。今回、議長国ブラジルは討議を踏まえず初日に首脳宣言を公表した。昨年に続く異例の対応は、ロシアなどの反発で集約できなくなる事態を回避したためだろう。
 深刻なのは、保護主義に反対せず「多角的貿易体制を確保する」との文言にとどまったことだ。反保護主義はG20の原点であり、後退は明らかだ。
 トランプ氏の復権により、保護主義への懸念が世界的に強まっている。それにもかかわらず当たり障りのない合意しか打ち出せないようでは、G20は形骸化するばかりである。
 他方、宣言は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて結束を強調した。協定から再び離脱を唱えているトランプ氏をけん制した形だ。
 世界経済や気候変動への対応は各国の協力が欠かせない。ただ、トランプ氏だけでなく中ロもBRICSや上海協力機構を通じて国際秩序に挑戦し、分断を深める姿勢を見せる。
 こうした時こそ民主主義などの普遍的な価値観を重視する国の幅広い連携が不可欠だ。石破茂首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持」を呼びかけた。言葉だけでなく実行に移すことが求められる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月21日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・11.18】:APEC会議 首脳外交の重責を果たせるか

2024-11-19 05:00:30 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説①・11.18】:APEC会議 首脳外交の重責を果たせるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.18】:APEC会議 首脳外交の重責を果たせるか

 超大国のリーダーたちとの会談を、石破首相はひとまず無難にこなしたと言えるだろう。 

 だが、国際情勢が激変する中、政権基盤の 脆弱 ぜいじゃく な首相が、首脳外交の重責を果たし続けられるかは見通せない。

 首相が、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に出席した。

 首相は現地で、中国の習近平国家主席と初めて会談し、日中双方の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進で一致した。

 首相は、中国軍の活動に深刻な懸念を伝えた。中国で日本人を殺傷する事件が相次いでいることを踏まえ、在留邦人の安全確保を求めたほか、日本産水産物の輸入再開を約束した日中合意を早期に実施するよう要請した。

 これに対し習氏は「日本人を含む外国人の安全を確保する」と述べた。水産物の輸入再開については「きちんと実施していく」ことで合意したという。

 来年、米大統領に返り咲くトランプ氏は、米国の産業を守るため、中国製品に高関税をかけることを表明しており、米中対立が深まる可能性が指摘されている。

 習氏が今回、首相の要請に応じるかのような発言をしたのは、日中については距離を縮めておく必要があると判断したのだろう。

 ただ、そうであるなら、安全確保や輸入再開を具体的な行動で示すことが先決だ。今後の中国側の出方に注目したい。

 一方、首相はAPECのスピーチで、ウクライナを侵略するロシアを批判したほか、中東情勢について全ての当事者に自制を求めた。日本が主体的に平和の回復に取り組むことが重要だ。

 首相はまた、日米韓3か国の首脳会談にも臨んだ。3首脳は、安全保障や経済分野での協力を進めるため、「日米韓調整事務局」を新設することで合意した。

 多国間の協力を軽視しがちなトランプ氏に政権交代後も、日米韓の連携が後戻りしないよう、制度化する狙いがある。

 北朝鮮はロシアに兵士を派遣し、その見返りとして、ロシアはミサイル技術を北朝鮮に提供している模様だ。露朝の軍事協力の拡大は、アジアにおける脅威を一段と高めている。

 中国の覇権的な活動への警戒も怠れない。8月には、軍用機が初めて日本領空を侵犯した。

 アジアの安定には、米国の抑止力が欠かせない。この地域への米国の関与をどう維持していくかは重い課題である。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月18日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・11.17】:トランプ氏への「期待」

2024-11-19 04:00:10 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【金口木舌・11.17】:トランプ氏への「期待」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・11.17】:トランプ氏への「期待」

 「官僚機構を解体し、過剰な規制を撤廃し、無駄な支出を削減し、連邦政府機関を再編する道を切り開くだろう」。トランプ次期米大統領は実業家のイーロン・マスク氏を「政府効率化省」のトップに任命すると発表し、こう声明を出した

 ▼政権移行を進めるトランプ氏だが「不法移民はペットを食べている」などとフェイクを垂れ流し、分断をあおる過激な言動を繰り返してきた。賛同できる点は一つもないが、実はひそかに期待もしている

 ▼民主主義を尊重し、人工妊娠中絶などの権利を擁護する姿勢を明確にしていたハリス氏に賛同できる点は多かった。でも、それだけで沖縄の実情は変わるだろうか

 ▼琉球大名誉教授の我部政明さんが可能性を指摘するように、トランプ氏再登板で米軍基地が「取引材料」となれば、日本政府も慌てよう。何らかの変化があるかもしれない

 ▼賛否両論が渦巻くトランプ次期政権。慣習や固定概念に縛られず、やりたい放題で米国自体を「解体」しそうな勢い。そうでなければ沖縄の現状も変わるまい。トランプ氏に期待するのは皮肉かもしれないが、笑えないところに沖縄の現実がある。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年11月17日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.14】:新たな対米関係 外交戦略の自律性高めよ

2024-11-17 06:03:20 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説・11.14】:新たな対米関係 外交戦略の自律性高めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.14】:新たな対米関係 外交戦略の自律性高めよ 

 中国やロシアが覇権主義的な動きを強めている。世界秩序を守る必要性は増しており、米国のリーダーシップを弱めてはならない。関係国とも連携した日本の外交戦略が問われる。

 米大統領選で、共和党のトランプ前大統領が返り咲きを決めた。「米国第一」を掲げるトランプ氏は1期目の政権下、国際協調路線を転換させ日本などの同盟国に対しても厳しい姿勢を示した。

 日本はその後、民主党バイデン政権と安全保障や経済、人道分野などで相互依存を深めたが、転換を迫られかねない。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)からの脱退もちらつかせている。

 石破茂首相は先週トランプ氏と電話で会談し、日米同盟をより高い次元に引き上げることで一致した。早期の対面会談に向け調整中という。

 首相はトランプ氏と面識がない。関係構築が急務だ。トランプ氏が、政権基盤の弱い首相とどこまで本気で向き合うかは見通せない。

 トランプ氏は米国だけが対日防衛義務を負う日米安保条約は「不公平」と批判してきた。防衛費増額や、在日米軍駐留経費の日本側負担引き上げを過去に求めており、今回もその可能性がある。

 在日米軍は日本のためだけでなく、東アジアにおける米国の安保上、重要な役割を担っている。首相は粘り強く説明しなくてはならない。日米韓による安保の協力関係も深めていきたい。中国や北朝鮮に対する抑止力となる。

 経済安保の体制も重要だ。1期目のトランプ政権が離脱した環太平洋連携協定(TPP)に代わり、バイデン政権が創設したインド太平洋経済枠組み(IPEF)を維持する必要がある。サプライチェーン(供給網)強化に有効だと理解してもらわなければならない。

 トランプ氏が反対している日本製鉄による米鉄鋼大手の買収問題も気がかりだ。

 全ての国に高関税を課す方針は、米国民が割高の輸入品を買わされることになる。日米双方に資する道を根気強く探ってほしい。

 トランプ氏の初当選時、安倍晋三首相は初めて会談した外国首脳となり蜜月関係を築いた。一方で、安倍政権はトランプ氏の求めに応じて高価な戦闘機を大量購入するなど対米配慮が目立った。米国を国際協調路線には引き戻せなかった。

 2期目のトランプ政権で、最大の懸念はロシアが侵攻したウクライナへの支援だ。最大援助国の米国が停止や縮小に踏み切れば世界秩序は危機に立つ。日本は欧州主要国などと連携し、米国への働きかけを強めねばならない。

 従来の日本外交は、米国の世界戦略に合わせる色合いが濃かった。自律性を高め、核軍縮などについても率直にものが言える対米関係をつくるべきだ。トランプ氏の再登板をその契機としたい。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月14日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【外交】:「石破×トランプ会談」実現暗礁で透けるシゲル・パッシング…対米外交の前途にも暗雲

2024-11-16 15:00:30 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【外交】:「石破×トランプ会談」実現暗礁で透けるシゲル・パッシング…対米外交の前途にも暗雲

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【外交】:「石破×トランプ会談」実現暗礁で透けるシゲル・パッシング…対米外交の前途にも暗雲

 せっかくの晴れ舞台に暗雲が垂れ込めている。石破首相は15日(日本時間)、APEC首脳会議に出席するため、ペルーに到着。16日にはバイデン米大統領や中国習近平国家主席との初会談に臨む。ブラジルで開かれるG20首脳会議に出席した後、21日に帰国する予定だ。

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リマでのAPEC首脳会議に出席する石破首相(C)ロイター

 今回の外遊は石破外交の試金石。石破首相は帰りがけに米国へ立ち寄り、返り咲くトランプ前大統領と直接会談しようとしているものの、日程調整は困難を極めている。トランプは次期政権の人事を優先。就任前の各国首脳との面会を断っていると報じられたが、14日にアルゼンチンのミレイ大統領と再選後初めて会談した。トランプとの電話協議で「なるべく早く会談をしようということで一致した」と胸を張った石破首相は、先を越された格好だ。

 そもそも約束を取り付けたはずの電話協議は、たった5分で終了。自民党の小野寺政調会長は、会合を中座したというトランプに「首相が配慮し、早めに戻ってもらった」と説明したが、最新の週刊新潮(11月21日号)は「トランプは“忙しいので”と言って一方的に電話を切ってしまった」と内幕を暴露した関係者のコメントを紹介している。

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トランプ氏とアルゼンチンのミレイ大統領(AFPIの祝賀会)/(C)ロイター

 ◆米通商政策のトップには強硬派が

 いずれにせよ、早期の直接会談の実現は暗礁に乗り上げ、「ドナルド」「シゲル」と呼び合う親密な関係の構築どころか、「シゲル・パッシング」の感すら漂う。こうも相手にされないのでは、対日政策も見通しが暗い。トランプ政権の人事がネックだ。

 「タリフ(関税)・マン」を自称するトランプは、輸入品に10~20%の関税を課す方針を掲げている。保護主義全開の通商政策トップに抜擢される見通しなのが、USTR(米通商代表部)の代表を務めたロバート・ライトハイザー氏。日本に対米貿易黒字の是正を求め、日本製鉄によるUSスチール買収に反対の立場だ。石破政権に関税引き上げをチラつかせ、何らかの「ディール」(取引)を持ちかけてくる可能性がある。

 「トランプ氏はEVの補助金制度を廃止する見通しです。EV化の遅れが指摘される日本の自動車産業にとって勝機ではありますが、米国第一主義のトランプ政権は高関税を課してくるのではないか。日本の基幹産業は自動車の『一本足』。大事な産業を守らんとすればこそ、石破首相は真っ先にトランプ氏に対面するべきでしたが、悲しいかな、さほど相手にされていない印象です」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)

 トランプからどんな踏み絵を迫られるだろうか。手ぶらであろうとなかろうと、石破外交の前途は暗い。 いずれにせよ、早期の直接会談の実現は暗礁に乗り上げ、「ドナルド」「シゲル」と呼び合う親密な関係の構築どころか、「シゲル・パッシング」の感すら漂う。こうも相手にされないのでは、対日政策も見通しが暗い。トランプ政権の人事がネックだ。

 「タリフ(関税)・マン」を自称するトランプは、輸入品に10~20%の関税を課す方針を掲げている。保護主義全開の通商政策トップに抜擢される見通しなのが、USTR(米通商代表部)の代表を務めたロバート・ライトハイザー氏。日本に対米貿易黒字の是正を求め、日本製鉄によるUSスチール買収に反対の立場だ。石破政権に関税引き上げをチラつかせ、何らかの「ディール」(取引)を持ちかけてくる可能性がある。

 「トランプ氏はEVの補助金制度を廃止する見通しです。EV化の遅れが指摘される日本の自動車産業にとって勝機ではありますが、米国第一主義のトランプ政権は高関税を課してくるのではないか。日本の基幹産業は自動車の『一本足』。大事な産業を守らんとすればこそ、石破首相は真っ先にトランプ氏に対面するべきでしたが、悲しいかな、さほど相手にされていない印象です」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)

 トランプからどんな踏み絵を迫られるだろうか。手ぶらであろうとなかろうと、石破外交の前途は暗い。

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 元稿:日刊ゲンダイDIGITAL 主要ニュース マネー 【トピックスニュース・石破政権・外交】  2024年11月16日  15:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・11.16》:米国とイスラエル お墨付きを与え続けるな

2024-11-16 09:31:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

《社説②・11.16》:米国とイスラエル お墨付きを与え続けるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.16》:米国とイスラエル お墨付きを与え続けるな

 表向き厳しい態度を取っているかのように見せつつ、イスラエルの軍事行動に加担し続けている。米国の姿勢は強く非難されなければならない。

 米政府がイスラエルへの武器の供与を続けると表明した。先月、ガザ地区の人道状況を改善する措置を1カ月以内に取らなければ軍事支援を停止する可能性があると警告していたが、一定の改善が図られたと判断したという。

 そもそもバイデン米政権に軍事支援を止めるつもりはなかったとしか受け取れない。大統領選が迫り、後継の候補への支持が離反するのを防ごうとする意図があらわなやり方だった。

 国際NGOのオックスファムをはじめ8団体は、状況はさらに悪化したと報告している。とりわけイスラエル軍の攻撃が集中するガザ北部は、食料や物資の搬入が先月初めからほぼ途絶え、飢餓が深刻化している恐れがある。

 イスラエルのメディアは、ガザ北部で「将軍の計画」が実行されつつあると報じた。退役した元将校らが立てた計画だ。住民に中・南部への退避を命じ、従わない者は戦闘員と見なして殲滅(せんめつ)する。食料支援を断ち、飢えさせることも計画の一部だという。

 北部以外でも攻撃はやまず、避難民が集まる学校や、イスラエル軍が「人道地区」に指定した区域への爆撃も相次ぐ。とめどない殺りくと破壊を止めるため、各国、国際社会は最大限の努力を続けなくてはならない。

 最大の武器供与国である米国が責任に向き合う姿勢は一向に見えない。イスラエルを支持し続ける現政権に増して気がかりなのが、トランプ氏の政権復帰だ。

 次期大統領に就任が決まり、イスラエルの極右閣僚らの言動が激しさを増している。ガザとともに占領下に置くヨルダン川西岸地区の入植地を、領土として併合する動きも表面化した。

 トランプ前政権は、露骨なイスラエル寄りの姿勢を取り、入植地の拡大を支持した。次期政権の人事でも、イスラエルに肩入れする人物を要職に指名している。

 大統領選で「私ならガザの戦争を止められる」と訴えたが、根拠や具体策を示してはいない。イスラエルの強硬姿勢をむしろ後押しする懸念がある。

 日本政府は手をこまぬいていてはならない。米国に追従する姿勢を改め、停戦に向けて、国際社会と連携して何ができるかを真剣に探るべきだ。世論の力を強め、政府に行動を促したい。 

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月15日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・11.15》:米新政権の運営 歯止めなき暴走が心配だ

2024-11-16 09:31:40 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

《社説②・11.15》:米新政権の運営 歯止めなき暴走が心配だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.15》:米新政権の運営 歯止めなき暴走が心配だ

 「忠臣」で脇を固めて独善的な政権運営を強めていきそうだ。

 米国のトランプ次期大統領による政権の主要人事だ。手腕を危ぶむ声をよそに熱烈な支持者を重用するという。第1次政権はトランプ氏をいさめる側近もいたが、現状では見当たらない。

 大統領選と同時の連邦議会選では、共和党が上院を奪還し、下院も多数派を維持した。赤をシンボルカラーとする共和党が大統領職と上下両院を独占する「トリプルレッド」を達成した。

 議会による監視機能すら弱まれば、トランプ氏が掲げる過激な「米国第一主義」の暴走に歯止めが利かなくなる。

 政権人事は「論功行賞」が鮮明だ。政府業務の効率化を担う新組織「政府効率化省」のトップには、実業家のイーロン・マスク氏を起用する。選挙戦ではトランプ陣営を巨額の献金で支えた。

 マスク氏が率いる電気自動車や宇宙関連の企業は政府の規制や予算措置の影響が大きい。利益誘導を招くとの疑念が拭えない。

 米軍を統括する国防長官には、陸軍州兵出身で保守系テレビFOXニュースの司会者ピート・ヘグセス氏を充てる。トランプ氏と相性はいいが、軍や政府要職の経験はない。安全保障政策の力量には疑問の声が上がる。

 外交や安保を取り仕切る閣僚や高官は他にも、自身に近い人物を用いる。米国の内向きな姿勢が強まり、世界情勢の混迷に拍車がかかる恐れがある。

 米国では議会に立法権と予算編成権があり、上院は閣僚や連邦最高裁判事の人事承認権を持つ。上下両院を共和党が握り、トランプ氏が掲げる関税引き上げや不法移民の強制送還、減税といった政策が実現しやすい環境となる。

 インフレの再燃や財政悪化、貿易摩擦の激化といったリスクを伴う。だが、共和党は異論を唱える穏健派が排除され、「トランプ党」の色彩を以前にも増して強めている。絶大な権力基盤を手にする状況ができつつある。

 連邦最高裁はトランプ氏が第1次政権で保守派判事3人を送り込み、保守化が進んだ。7月には、大統領在任中の公的な行為は刑事訴追されない「免責特権」を認める司法判断を示した。トランプ氏が意のままに振る舞うことを容認したとも言える。

 権力が分立し、政権内外でチェックし合う仕組みを放棄すれば、民主主義国とは言えなくなる。政権スタッフや議員の良識に期待するしかない。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月15日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【玉川徹氏】:「全然信用できない」トランプ次期政権入り話題のあの人に「どうも引っかかりがある」

2024-11-14 12:24:30 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【玉川徹氏】:「全然信用できない」トランプ次期政権入り話題のあの人に「どうも引っかかりがある」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【玉川徹氏】:「全然信用できない」トランプ次期政権入り話題のあの人に「どうも引っかかりがある」 

 元テレビ朝日社員の玉川徹氏は14日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜午前8時)に出演し、来年1月に就任するトランプ次期米大統領が、現政府の業務効率化を担うために新設する「政府効率化省」のトップに、実業家のイーロン・マスク氏(53)を起用すると発表したことにコメントした。

玉川徹氏(2019年撮影)玉川徹氏(2019年撮影)

 マスク氏は、大統領選を通じてトランプ氏に約180億円を献金するなど強力に支持した経緯があり、これまでの演説などで、米国家予算(歳出額)約1100兆円の3割に当たる300兆円以上が削減可能だと豪語。13日には自身のX(旧ツイッター)に「税金の最もばかげたランキングを用意する」と挑戦的な言葉も投稿し、政府予算改革に意欲を示している。

 玉川氏は「300兆円も(予算を)切るなんて」とした上で「マスク氏にとっては必要ないお金かもしれないけど、多くの人には必要なものだったりする」と、マスク氏側の一存で切り捨てられる予算が生じる可能性への懸念に言及。「やり方次第なんだけど、どうもマスク氏がやるというところに引っかかりがある。ものすごい献金をしてトランプ氏に気に入られて、この地位に上がって、ということでしょ?」と、巨額献金を通じた2人のつながりに触れた。 

 玉川氏は「日本でも政治とカネの問題があって、(野党から廃止を求める声も強い)企業団体献金は、お金を払った企業にどうしても優遇することをやっちゃうよね、というところがあるからやめようという話になっている時に、本当にマスクさんのところ(の企業)に有利になるような話がいかないのかな」と、「テスラ」や「スペースX」などの経営に関与しているマスク氏の政権入りを念頭に懸念を示した。

 マスク氏について「優秀なビジネスマンだけど、公のところにどれだけの感覚を持っているのか。Xの話を見ていると全然、信用できない」とした上で「お題目はいいけど、実際は『え?』というような結果になりかねないと、僕は思う。マスクさんだけを見ていると…」とも口にした。

 マスク氏は2022年10月に旧ツイッター社を買収した際、最高経営責任者(CEO)らを含む多くの社員を解雇したことで知られる。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・今日は?】  2024年11月14日  12:24:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・11.11】:ドイツの「封印された哀しみ」が噴き出している(2)

2024-11-14 07:05:20 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【HUNTER・11.11】:ドイツの「封印された哀しみ」が噴き出している(2)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・11.11】:ドイツの「封印された哀しみ」が噴き出している(2) 

 政党の本部といえば、首都の中心部にあるのが相場だ。日本の自民党と立憲民主党の本部は千代田区永田町にある。大阪を拠点とする日本維新の会を除けば、ほかの政党も都心に近いところに本部を構えている。

 ところが、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は違った。ベルリンの郊外、東京でいえば中野区か練馬区のはずれのようなところに党本部がある。最初、ネットで調べた時は「何かの間違いではないか」と首をかしげたが、AfDの公式サイトに載っているのもその住所だった。アポなしで訪ねることにした。

 ベルリンの中心部、ブランデンブルク門の近くにあるホテルから地下鉄と近郊電車を乗り継いで30分ほど。最寄り駅のウィッテナウに着いた。駅前で住所を示して尋ねたが、誰も知らない。9月の州議選で大躍進を遂げてドイツ政界を揺るがした、いま話題の政党なのに。

 住所は「アイヒホルスター通り80番地」と分かっている。近所の住民なら知っているだろうと、片言のドイツ語で尋ね回ったが、これまた誰も知らない。さまよい歩いて30分、ようやく「80番地」にたどり着いた。ごく普通の5階建てのビルだ。党本部はその1階にあった。

 インタホンのベルを押す。誰も出てこない。「みんなで昼食にでも行ったのか」と思い、ビルの玄関先でタバコをふかしながら20分ほど待った。党員か支持者とおぼしき若者が来たら、ドアが開いた。どうやら「いきなり訪ねてきた怪しげな男」を監視カメラで見ていたようだ。

 「日本から来ました。元新聞記者です」と自己紹介すると、仕事をしていた職員が何人か奥のオフィスから出てきた。みんな興味津々といった顔つきだ。日本人が訪ねてきたのは初めてだという(帰国してからさらに調べたところ、都心にもう一つ、議員が陣取る本部があることが分かった)。

 「なんでこんな遠いところに党本部を構えてるんですか。地元の人も誰も知らないので、探すのに苦労しました」と、素朴な疑問をぶつけてみた。すると、1人が「警戒する必要があるからです。左翼からの襲撃や破壊活動に備えなければなりません」と答えた。真顔だった。

 「現在の問題は演説や多数決ではなく、鉄と血によってのみ解決される」と豪語したのはビスマルクである。19世紀の鉄血宰相の言葉を持ち出すまでもなく、ドイツの政治は血なまぐさい。20世紀前半には、ヒトラー率いるナチスが突撃隊という準軍事組織を使って政敵を武力でねじ伏せた。

 ナチスは選挙で第1党になって政権を握り、当時のワイマール憲法の非常大権を使って独裁体制を築き、戦争に突き進んでいった。その苦い歴史を繰り返さないために、戦後つくられた西ドイツの基本法(憲法)は、国民に「自由と民主主義を守るために戦うこと」を義務づけた。戦後の西ドイツは「反ナチス」と「戦う民主主義」を掲げて再出発したのである。

 中央政府には「連邦憲法擁護庁」という情報機関があり、憲法秩序に抵触する恐れのある政党や団体を監視して取り締まる権限が与えられている。極右政党のAfDは監視対象になっており、ナチスを称賛する言動をして罰金を科せられた幹部もいる。2013年の結党時から、主要政党もメディアも厳しい目を向けており、身構えざるを得ないのだろう。

 私が「初めてドイツに来ました。フランクフルトから入り、ミュンヘンを回って」と言うと、「第一印象はどうですか」と尋ねられた。「こざっぱりして、システムがしっかりしていて規律正しい社会だと思う(a decent, well-organized and well-disciplined society)」と率直に答えると、失笑が漏れた。「それは昔のこと」と言うのだ。

 鉄道や地下鉄が定刻通りに運行されていたのは昔のこと。今では遅延は日常茶飯事、突然の運休も珍しくない。街頭にはゴミが散らばっている――延々と愚痴が続いた後、1人が「日本では深夜でも女性が独り歩きできると聞いたが、本当か」と聞いてきた。

 新宿の裏社会を描いて秀逸だった馳星周や大沢在昌の小説を読んで得た知識と、ささやかな実体験をもとに「日本のヤクザと中国人マフィアの抗争が激しい時期は治安も良くなかったが、新宿や池袋の主な盛り場を中国人マフィアが抑えてからは落ち着いている。深夜でも若い女性が平気で歩いている」と答えると、顔を見合わせながらうなずいた。

 ドイツ国内の、とりわけ大都市の治安の悪化はかなり深刻なようだ。彼らが脳裏に思い浮かべたのは、2015年の大晦日にドイツ西部ケルンで起きた「集団性暴行事件」だったのではないか。事件が起きたのはケルン中央駅と大聖堂の間にある広場である。ここに集まった1,000人余りの中東アフリカ系の群衆が新年を祝うお祭り騒ぎの中で、多数の女性に性的暴行を加え、強盗をはたらいた。レイプされた女性までいた。

 一夜明けた2016年元日、ケルン警察は「大晦日はおおむね平穏だった」というプレスリリースを出した。主要メディアは何も報じなかった。大規模な市民の抗議デモが起き、被害届が殺到した。ケルンの警察長官が記者会見を開いて、事件の概要を発表したのは1月4日のことである。それでも、公共放送のZDFはその日夜のニュースで「群衆の背景が不明」として、この事件を報じなかった。

 警察発表の翌5日、ヘンリエッテ・レーカー市長は会見で記者に「女性はどうやって身を守ればいいのか」と問われ、「見知らぬ人々には近づかないこと。腕の長さ以上の距離を保つことは、いつだってできるでしょ」と答え、市民の怒りを増幅した。その後、逮捕された容疑者の中には、難民申請中の者が多数いることが確認された。

 警察が事件の発表をためらい、市長がこのような発言をしたのはなぜか。この年、2015年の夏にメルケル首相は「すべての難民を受け入れる」「私たちはやり遂げる」と宣言し、ドイツの難民政策を大転換した。ケルンの市長は当時の政権与党、キリスト教民主同盟(CDU)や緑の党の支援を受ける女性政治家である。「メルケル政権の難民政策を後退させるわけにはいかない」という思いがあった、と見るのが自然だろう。

 前回のコラムで、「ドイツには戦後、トルコ系移民と旧ユーゴスラビアからの難民、中東アフリカ系の難民、ウクライナからの難民と4つの大波があった」と記した。だが、実はドイツにはこの前に、もう一つの「語ることを許されなかった、より大きな移民の波」があった。旧ドイツ東部領土からの移民である。

 第2次大戦後、ドイツは東プロイセンやポンメルンなど広大な領土を失い、ソ連とポーランドに奪われた。土地によっては数百年にわたってドイツ人が住んでいたところもあったが、いっさいお構いなく、ドイツ系の住民は補償もないまま追放された。混住を認めれば、将来、再び紛争の種になる。戦勝国側は「ドイツ人を一掃する」と宣言し、実行したのである。

 ナチス占領下でユダヤ人を東の強制収容所に送り込んだ貨物列車が、今度は追放されたドイツ人を乗せて西へ向かった。荷馬車と徒歩で移動した人々もいた。被追放者の総数は1,200万人とも1,500万人とも言われる。

 移動の途中で、被追放者はポーランド人やユダヤ人、チェコ人らから凄惨な報復を受けた。死者は推定で40万人ないし60万人。戦争によるドイツ本国の破壊と荒廃はすさまじく、旧領土からの移民のことまで手が回らなかったのだろう。その総数も報復による犠牲者の数も、いまだ推計すら定まらない。「旧ドイツ東部領土問題」と呼ばれる。

 戦後のドイツは、多くの国民が飢餓線上をさまよう状況にあった。そこに追放された人々が移り住んだ時、どのような境遇に落ちていくか。彼らは「外国人」として疎外されないよう、自らが被追放者であることを隠し、劣悪な条件の下で生きていくしかなかった。

 公の場で追放の辛苦を語ることもできなかった。戦後、ドイツ人による600万人のユダヤ人虐殺や占領直後のポーランドやウクライナでの蛮行が次々に暴かれ、裁かれていったからだ。「被害者としてのドイツ」を語ることは、「加害者としてのドイツの歴史的な罪を中和することになる」と批判され、沈黙するしかなかった。

 日本のメディアもこの問題を報じたことはほとんどなかったが、ドイツの旅から戻って間もない10月28日の夜、NHKは「映像の世紀 ドイツ さまよえる人々」というドキュメンタリーを流した。ポーランド兵による殺害と暴行、解放されたユダヤ人による報復の数々……。その映像のおぞましさに息をのんだ。

 追放された移民たちが「被追放者連盟」を結成して、公然と語り始めたのは21世紀に入ってからである。その体験と哀しみを語るのに60年余りを要した。そのうえ、主要政党からもメディアからも厳しく批判された。60年たっても、周りは「敵だらけ」だった。

 ドキュメンタリーは、自らも被追放者だった作家ギュンター・グラスの「ドイツの罪や後悔が長く喫緊の課題であったとはいえ、彼らの苦悩について沈黙してはならない。この問題を右翼に任せてはいけない」という言葉を伝え、最後も彼の「歴史は私たちに慰めを与えてはくれない。私たちはその歴史の中を歩き続けるのだ」という言葉で締めくくっている。

 9月のドイツ東部3州での極右政党AfDの躍進は、こうした歴史的な経緯を抜きにして考えることはできない。「統一後も残る東西ドイツの経済格差への不満」という視点だけでは説明できないことが多すぎるのだ。旧西ドイツ地域でも、AfDは着実に支持を広げ続けている。

 東部3州の州議選の結果をよく見ると、チューリンゲン州とザクセン州ではショルツ政権の与党、社会民主党(SPD)が惨敗した。ブランデンブルク州ではメルケル前政権の与党、キリスト教民主同盟(CDU)が第4党に転落した(→グラフ参照)。

 グラフが複雑になるので省略したが、注目されるのはチューリンゲン、ブランデンブルク両州で第3党になった「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」という新しい極左政党である。この政党は、難民政策に関しては「受け入れを制限すべきだ」と訴え、ロシアと戦い続けるウクライナへの武器供与の中止を求めて躍進した。

 移民・難民政策とウクライナ戦争への対応では、極右のAfDと極左のBSWが同じような主張をして票を伸ばした。両党とも若者の支持率が高い点も共通している。つまり、戦後ドイツの政界のメインストリームとも言うべき社会民主党(中道左派)とCDU(中道右派)は、その支持基盤を両側から掘り崩されているのである。来年9月の総選挙でAfDはどこまで支持を伸ばすのか。社会民主党もCDUも戦略を練り直しているところだろう。

 話をAfD党本部でのやり取りに戻す。彼らは、日本の移民・難民政策に強い関心を示した。難民申請をしても条件が極めて厳しく、なかなか難民として認めない日本の制度は「カナダと並んで、お手本(role model)なのです」とまで言う。

 日本で移民と難民の問題を担当しているのは、法務省の外局の出入国在留管理庁である。その所管と名称からして、国際社会の基準から外れている。移民と難民を治安維持の観点から「管理する対象」と捉えているからである。昔ながらの「官尊民卑の感覚」と言える。

 ドイツの場合、連邦移民難民庁は内務社会省の管轄下にあり、移民と難民を「困窮した人たちとどう向き合い、社会にどうやって受け入れていくか」という観点で捉えている。難民の申請受付と認定だけでなく、受け入れ後の語学教育や職業訓練まで総合的にカバーしている。要するに、移民も難民も「われわれと同じ人間」として向き合おうとしており、日本とは根本的に異なる。どちらがまともかは言うまでもない。

 極右政党のAfDは連邦憲法擁護庁の「監視対象」になっていることを意識しており、移民の「排除」を要求してはいない。「受け入れの制限」を求めている。とはいえ、AfDの支持層は、より過激な団体「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者(ペギーダ)」の支持層と重なっており、移民・難民政策をどうするかをめぐっては、党内で激しい議論が続いているようだ。

 AfD党本部での対話は2時間たっても終わらない。そのうち、先方から「党の幹部に会ってみませんか。セットします」と提案された。私は「明日、ベルリンを離れるんです」と言って辞退したが、その日の夜には英語版で100ページ近い党綱領をメールで送ってきてくれた。

 移民・難民問題と並んで、ドイツ政治の重要な課題の一つは「欧州連合(EU)とどう向き合うか」である。帰国してから、AfDの綱領をじっくり読んでみた。綱領には、ドイツ社会の根幹を揺さぶる政策が盛り込まれていた。

長岡 昇:NPO「ブナの森」代表)

長岡 昇(ながおか のぼる)
山形県の地域おこしNPO「ブナの森」代表。市民オンブズマン山形県会議会員。朝日新聞記者として30年余り、主にアジアを取材した。論説委員を務めた後、2009年に早期退職して山形に帰郷、民間人校長として働く。2013年から3年間、山形大学プロジェクト教授。1953年生まれ、山形県朝日町在住。

【追記】
ショルツ連立政権は116日、与党の自由民主党が連立から離脱し、崩壊した。連立の主軸の社会民主党と緑の党が大規模な財政出動による景気刺激策を唱えたのに対し、財政規律を重視する自民党は反対していた。連立の崩壊に伴って、来年月に予定されていた総選挙は前倒しされる見通しだ。

【注】
・「ドイツのための選択肢」(AfD= Alternative für Deutshlandの略称、アーエフデー)
・ナチス(国民社会主義ドイツ労働者党 Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei の略称Nazi の複数形。国家社会主義ドイツ労働者党と訳す専門家もいる)

≪写真&地図≫
◎ベルリン郊外にあるドイツのための選択肢(AfD)の党本部=2024年10月16日、筆者撮影
◎地図 ドイツが第2次大戦後に失った東部領土(英語版ウィキペディアから引用)→こちら
◎グラフ ドイツ東部3州の州議選の得票率(主要3党)=各州の公式サイトのデータを基に作成

≪参考サイト&文献≫
◎調査報道サイト・ハンター「ドイツは『第4の大波』に耐えられるか」→こちら
◎「支持を広げるドイツのための選択肢」(川畑大地、みずほリサーチ&テクノロジーズ、2024年9月24日)→こちら
◎極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の公式サイト(ドイツ語だが、日本語や英語への自動翻訳機能付き)→こちら
◎ウィキペディア「ギュンター・グラス」→こちら
◎ウィキペディア「ケルン大晦日集団性暴行事件」→こちら
◎英語版ウィキペディア「2015-2016 New Year’s Eve sexual assaults in Germany」→こちら
◎ウィキペディア「旧ドイツ東部領土」→こちら
◎ウィキペディア「連邦憲法擁護庁」→こちら
◎ドイツ語版ウィキペディア「Bundesamt für Migration und Flüchtlinge (BAMF) 」(ドイツ語だが、英語や日本語への自動翻訳機能付き)→こちら
◎ウィキペディア「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者(ペギーダ)」→こちら
◎「ドイツ移民法・統合法成立の背景と動向」(ハンス・ゲオルク・マーセン、筑波ロー・ジャーナル2号 2007年12月)→こちら
◎『包摂・共生の政治か、排除の政治か』(宮島喬、佐藤成基編、明石書店)

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・話題・ヨーロッパ・ドイツ】  2024年11月11日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・11.01】:ドイツは「第4の大波」に耐えられるか(1)

2024-11-14 07:05:10 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【HUNTER・11.01】:ドイツは「第4の大波」に耐えられるか(1)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・11.01】:ドイツは「第4の大波」に耐えられるか(1) 

 新聞記者として長くアジアを担当したので、インドやパキスタン、アフガニスタンから東南アジアまで、この地域の国々はかなり頻繁に訪れた。石油をめぐる連載記事の取材で湾岸の産油国を回ったこともある。だが、「担当地域外」ということで、ヨーロッパの国々を取材する機会はほとんどなかった。

 古稀を過ぎて、体力も気力も徐々に衰えてきた。「まだ余力があるうちに取材の空白域に足を運んでみたい」と思い、かねて訪ねてみたかったドイツに10日間の旅に出た。

 10月上旬、空路、フランクフルトからから入り、中央駅近くのホテルにチェックインした。フランクフルトの繁華街は、中央駅の前に「こぎれいな歌舞伎町」をドスンと置いたような風情だ。駅前から延びる街路にはそれぞれ警察官が配置され、角々には中東系とアフリカ系の若者がたむろしていた。

 中央駅から数ブロック奥に入っただけで、あやしいネオンが光り輝き、辻々には街娼が立っている。小さな紙片を広げてコソコソ売買しているのは麻薬だろう。大都市らしい猥雑さだ。夜遅く、散策を終えて駅前のホテルに戻ったが、明け方までパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響き、しばしば眠りを妨げられた。

 翌朝、駅前のカフェに入った。店員の会話に耳を傾けていたら、「タシャクル」という言葉が聞こえてきた。アフガニスタンの共通語ダリ語(ペルシャ語方言)で「ありがとう」の意味だ。「私は日本から来た。あなたたちはアフガンから?」と英語で尋ねると、少し驚いたような表情で「そうです」と答えた。その店員はウズベク人だという。そこで、カウンターにいるもう1人の店員に「あなたはパシュトゥン人か」と問うと、ビンゴだった。

 「なんで分かる」と聞くので、私は「元ジャーナリストで、アフガニスタンには取材で何度も行ったことがある」と答えた。パシュトゥンの若者は、首都カブール北方のパンジシール渓谷の近くで生まれたという。パンジシールと聞いてすぐに思い浮かぶのは、タジク人武装勢力の指導者、マスードである。

 マスードが率いる勢力は1992年に社会主義政権を倒して権力を握ったが、4年後にはパシュトゥン人主体のタリバンに首都を追われた。マスードは拠点のパンジシール渓谷に立てこもってタリバンに抵抗し続けたが、2001年9月、アルカイダのメンバーと見られる男たちに自爆テロで殺害された。

 当時、アフガニスタンを支配していたタリバンとその庇護下にあったアルカイダにとって、親欧米のマスードはアメリカとの戦争を始めるにあたって「障害になる人物」と見られていた。アメリカと手を組み、背後から攻めてくる恐れがあったからだ。

 オサマ・ビン・ラディン率いるアルカイダのメンバーが旅客機を乗っ取り、世界貿易センターと米国防総省に突っ込んだのは、マスード暗殺の2日後、9月11日だった。「アメリカとの聖戦(ジハード)」を始める前に、彼らは「背後の敵」を始末したのである。

 パシュトゥンの若者に「ドイツに来てどのくらいになる?」と尋ねた。「20年以上。タリバン政権になって逃げてきた」という。この感じならアフガン料理の店もあるはず、と思って探したら、すぐ近くにレストラン「カブール」があった。その日の夜、この店で羊肉と細切りニンジン、レーズンの炊き込みご飯「マヒチャ・パラウ」を食べた。懐かしい味がした。

 戦火のアフガニスタンから逃れる人々の流れは、1979年のソ連のアフガン侵攻とその後の内戦、1990年代のタリバン政権成立前後の混乱、そして2001年9・11テロ後のアメリカとの戦争、と絶えることなく続いた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、隣国イランとパキスタンには今なお、合わせて500万人を超えるアフガン難民がいる。

 隣国での苦しい生活から何とか抜け出したいと願うアフガン難民は、より良い暮らしを求めてヨーロッパを目指す。その中で、最も多くのアフガン難民を受け入れてきたのがドイツだ。連邦統計庁のデータによると、国内のアフガン人は2022年時点で42万人を上回る。ドイツでは、帰化した外国人やドイツ生まれで国籍を取得した子どもは統計上、外国人として扱われないので、アフガン系の人口はこれよりかなり多いと見ていい。

 第2次大戦後、ドイツは労働力不足を補うため、トルコやイタリア、スペインなどから大量の移民を受け入れた。彼らは「ガスト・アルバイター(ゲスト労働者)」と呼ばれ、主に鉄鋼業や鉱業、農業部門などで働き、ドイツの戦後復興とその後の経済成長を底支えした。移民・難民のいわば「第1波」で、その数はトルコ人だけで約300万人とされる。

 この移民政策は1973年の石油危機で景気が後退すると打ち切られたが、母国に帰らず、家族を呼び寄せて定住する者が多かった。イタリア人やスペイン人はあまり目立たず、社会に溶け込んでいったが、イスラム教徒のトルコ人は肩を寄せ合い、ドイツの中に「別のもう一つの社会」を形成していった。

 ドイツは「資格社会」である。ほとんどの職業で公的な資格が必要とされ、一定の教育と職業訓練を経て資格を取らなければ、しかるべき職業に就けない。ドイツ語を覚え、ドイツの習慣に合わせるだけでも大変だ。それを乗り越えて、こうした資格を取るのは容易なことではない。多くのトルコ人は低賃金の仕事で糊口をしのぐしかなかった。

 それはドイツ国内でも欧州各国でも広く知られたことだったが、ドイツ国内の「もう一つの社会」の問題にすぎないとして、声高に議論されることはなく、内外のメディアで取り上げられることも極めて少なかった。

 ドイツの憲法である基本法には「政治的迫害を受ける者は庇護権を享有する」という条文がある。ナチス時代の圧政を繰り返さないために設けられた規定だ。これがあるため、「ドイツはずっと、難民に広く門戸を開いてきた」と受けとめられがちだが、必ずしもそうではない。国際的なルールに沿って粛々と難民として受け入れてきた、というのが実情だ。国内のトルコ人問題がトゲのように刺さったままであり、慎重な姿勢を保たざるを得なかったのだろう。

 それでも、「難民鎖国」と批判される日本に比べれば、はるかに多くの移民と難民を受け入れてきた。アフガン難民に限らず、戦火に追われ困窮した人たちはドイツを目指した。1991年以降、旧ユーゴスラビアでの紛争が激しくなると、押し寄せる難民は急増し、翌1992年には40万人を超える難民がドイツに流れ込んだ。移民・難民の「第2の波」である。

 そのピークが過ぎ、落ち着きを取り戻した頃、今度はシリアやイラク、スーダンなど中東アフリカ諸国からものすごい数の難民が押し寄せてきた。欧州連合(EU)には「最初に難民を受け入れた国が責任をもって対処する」というルールがあった。ダブリン規約と呼ばれるもので、特定の国に難民が集中するのを防ぐために定めたものだが、大波に直面したイタリアやギリシャ、オーストリアなどからは「負担に耐えきれない」と悲鳴が上がった。「2015年欧州難民危機」である。

 混乱が深まる中で動いたのがドイツだった。当時のメルケル首相はダブリン規約にこだわることなく、「すべての難民を受け入れる」と宣言した。難民政策を大転換し、門戸を大きく広げたのである。国内から湧き上がった批判を、彼女は「私たちはやり遂げる」「困っている人たちに手を差し伸べたことで謝罪しなければならないというのなら、ドイツは私の国ではない」と一蹴した。その決断は、EUの境界周辺で立ち往生する難民たちを何よりも勇気づけるものだった。2015年から翌年にかけて、ドイツには100万人近くの難民が殺到した(グラフ参照)。

 中東やアフリカから押し寄せた「第3の波」。ドイツは難民支援を担当する職員や関係施設の拡充に追われ、中央政府と州政府の予算も膨らんでいった。そこへ、2022年のロシアによるウクライナ侵攻である。戦争が激しくなるにつれて、ウクライナから「第4の波」が押し寄せた。ドイツが受け入れた難民はポーランドに次いで多く、100万人を上回った。

 トルコからの移住者からウクライナ難民まで、人口約8500万人のドイツは約730万人(全体の8%)の外国人を抱えるに至った。欧州諸国の難民支援は手厚い。とりわけドイツは、難民として認定した人だけでなく、難民申請中の人にも住居を提供し、当面の生活費を支給する。申請した本人だけでなく、子どもや家族向けのドイツ語習得プログラムも充実している。

 当然のことながら、移民と難民を支援する予算は膨らむ一方だ。豊かとはいえ、ドイツ経済にかつての勢いはない。国内では少子高齢化と地方の過疎化が進む。「難民ではなく、私たちのために税金を使え」という声が高まるのは避けられないことだった。

 16年にわたってドイツを率いたメルケル元首相は、名宰相として今でも海外では高く評価されているが、ここ数年、国内では風向きが変わってきた。「いくら何でも、ここまで難民を受け入れる必要があったのか」「プーチンとツーカーの仲と言われていたのに、ロシアのウクライナ侵攻を止められなかったではないか」といった厳しい批判にさらされている。

 こうした流れの中で、今年9月にドイツで行われたチューリンゲンの州議会選挙では、反EUと反移民を唱える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第1党に躍り出た。ザクセン州とブランデンブルク州でも躍進し、第2党になった。反ナチスを国是としてきたドイツで極右勢力がこれほど伸びたのは戦後初めてであり、衝撃的な結果だった。

 多くのメディアは「東西ドイツの統一後も旧東ドイツ地域は経済的に立ち遅れたままだ。経済格差への不満が噴き出した」と分析したが、その底流に「難民政策への不満」があったことは間違いないだろう。旧東ドイツ地域以外でも確実に支持者を増やしているからだ。

 「移民と難民の第4波」が打ち寄せるドイツで、何が起きているのか。ドイツは大波に耐えられるのか。ベルリンにある極右政党AfDの本部を訪れ、彼らの声に耳を傾けてみた。次のコラムで、ドイツ政治の底流を探ってみたい。

 (長岡 昇:NPO「ブナの森」代表)

長岡 昇(ながおか のぼる)
山形県の地域おこしNPO「ブナの森」代表。市民オンブズマン山形県会議会員。朝日新聞記者として30年余り、主にアジアを取材した。論説委員を務めた後、2009年に早期退職して山形に帰郷、民間人校長として働く。2013年から3年間、山形大学プロジェクト教授。1953年生まれ、山形県朝日町在住。

≪写真&グラフ≫
◎難民キャンプの子どもたち(著作権フリーの写真サイトPexelsから)→こちら
◎フランクフルト中央駅の近くにあるアフガン料理店「カブール」→ミュンヘナー通りとモーゼル通りの交差点近く=2024年10月10日、筆者撮影
◎ドイツへの難民申請者数の推移→ドイツ連邦移民難民庁のデータを基に作成

≪参考サイト&文献≫
◎調査報道サイト・ハンター「アフガニスタンの苦悩と誇り」→こちら
◎英語版ウィキペディア「Afghans in Germany」→こちら
◎「ドイツの『難民』問題とアフガン人の位置」(嶋田晴行、立命館国際研究2019年2月)→こちら
◎「ドイツ在住トルコ系移民の社会的統合に向けて」(石川真作、立命館言語文化研究29巻1号)→こちら
◎「ドイツの移民政策—-統合と選別」(前田直子、獨協大学大学院外国語学研究科)→こちら
◎「ドイツはなぜ難民を受け入れるのか」(難民支援協会、2016年8月26日)→こちら
◎ドイツ語版ウィキペディア「Bundesamt für Migration und Flüchtlinge」→こちら
◎『移民・難民・外国人労働者と多文化共生―日本とドイツ/歴史と現状―』→増谷英樹編、有志舎

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・話題・ヨーロッパ・ドイツ】  2024年11月01日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・11.13】:米国の保護主義 「トランプ関税策」を憂慮する

2024-11-13 05:00:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【社説①・11.13】:米国の保護主義 「トランプ関税策」を憂慮する

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.13】:米国の保護主義 「トランプ関税策」を憂慮する

 トランプ次期米大統領が、「米国第一」を掲げて保護主義的な政策を進めれば、世界経済に深刻な打撃を与えよう。 

 何が米国の利益になるかを熟慮し、独善的な関税策を自制するよう期待する。

 トランプ氏が大統領選で公約したのが、海外からの輸入品に高い関税を課し、自国内の産業を守る政策だ。全ての輸入品に一律10~20%、中国に対しては一律60%の関税を課すという。

 米国が一方的に関税を課せば、中国や欧州などが報復し、貿易戦争の再燃は避けられなくなる。

 国際通貨基金(IMF)の試算では、次期米政権の政策や関税の応酬による貿易量の縮小などによって、世界全体の国内総生産(GDP)は、2026年までに1・3%減少する見通しだという。

 世界経済は、モノやサービスの自由な貿易を推進することで発展してきた。世界最大の経済大国である米国は、自由貿易を支える中心だったはずだ。

 グローバル化が進んで製造業が空洞化し、労働者の反発が強まっている事情はあろう。米経済は全体として際立った強さを示すが、低所得者層は物価高に苦しむ。

 だが、保護主義的な政策は十分な雇用を生み出さないどころか、かえってインフレを再燃させる。これではトランプ氏の支持者を落胆させるだけではないか。何が国益になるのか、現実的な視点に立ち、政策を進めていくべきだ。

 日本経済にとっては、自動車産業への影響が心配だ。米国は年約150万台を輸出する最大の輸出先で、高関税が課されれば価格競争力が著しく低下しかねない。

 2国間のディール(取引)を重視するトランプ氏は、関税をてこに、米国内での生産拡大などを迫ってくると想定される。

 日本から米国への直接投資残高は23年末時点で、約7800億ドル(約120兆円)に上り、国別では5年連続でトップだ。日本の自動車産業も、米国での現地生産で多くの雇用を創出している。

 日本政府はこうした貢献を粘り強く訴えていくことが重要だ。

 トランプ氏が、多国間の枠組みを軽視する姿勢も懸念される。1期目に環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、バイデン政権が推進したインド太平洋経済枠組み(IPEF)にも否定的だ。

 米国が最も警戒する相手は中国であろう。日本は欧州などと連携し、不公正な貿易慣行の是正を迫るには、多国間の枠組みこそが有効だと訴えていってほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月13日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政局】:禁じ手で第2次石破政権スタート 自民党最後の政権になるのか、が焦点だろう

2024-11-12 00:16:00 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・サミット(G20、G7)】

【政局】:禁じ手で第2次石破政権スタート 自民党最後の政権になるのか、が焦点だろう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:禁じ手で第2次石破政権スタート 自民党最後の政権になるのか、が焦点だろう

 与党過半数割れの審判を受けながら、もう何でもありの「取り込み」で、首相指名を受ける石破首相。

 30人弱の野党に足元を見られ、政治改革「やってるふり」の芝居を続け、この内政外交の危機を乗り切れるのか。

<picture>混迷の時代に必要なのは、刹那の手取りではないはずだ(C)日刊ゲンダイ</picture>

     混迷の時代に必要なのは、刹那の手取りではないはずだ(C)日刊ゲンダイ

               ◇  ◇  ◇

 先の衆院選の結果を受けて、11日、特別国会が開かれる。衆参本会議で石破首相が首相指名され、第2次石破政権がスタートするが、「惨め」で「悲壮」な船出である。

 石破は総選挙で惨敗したのに、政権にしがみつく理由として、またまた「国民を守る」などと言っていたが、なぜ、「信」がない政権に国民を守れるのか。権力を手放したくないだけではないか。その「卑しさ」と、「惨め」な少数与党の「悲壮感」、それらが混在しているのである。

 石破は9日、公明党の斉藤鉄夫新代表と会談。年内にも政治資金規正法の再改正案を出す方向を固めた。「政治改革、やってるふり」である。斉藤代表は石破に「けじめをつけて欲しい」と迫ったらしいが、ちゃんちゃらおかしい。ザル法と言われた今夏の法改正に賛成したのが公明だし、総選挙では自民党も公認できなかった裏金議員をイケシャーシャーと推薦した。それなのに、選挙で負けた途端、正義漢ぶる。

 もちろん、自民党も同様で、石破は政権維持のために裏金議員を会派入りさせ、過半数確保に死に物狂いだ。「反省してます」とか言いながら、ダブルスタンダードなのである。

 挙げ句にそれでも数が足りないから、国民民主の政策をほとんど丸のみ、首相指名では「野田佳彦と書かないで」と“裏工作”だ。

 ◆今度の規正法改正も「やってるふり」が関の山

 本来、下野すべき政権がヘンテコな大義を持ち出し、無理に無理を重ねてしがみつく。しがみついたところで、脆弱な政権基盤が変わるわけではない。イキがる野党に振り回され、右往左往で漂流する。それが第2次石破政権だ。しかも、そうした近未来が国民にも見えている。ますます、「惨め」で「悲壮」な政権だ。

 政治評論家の野上忠興氏はこう言った。

 「新たな再改正案には政治資金を監視する第三者機関の設置や政策活動費の廃止などが盛り込まれるのでしょうが、1年で2回の法改正なんて、聞いたことがありません。いかに政治とカネにいい加減だったかの裏返しで、選挙結果を受けて、殊勝な態度を取ったところで、どうせ抜け道があるのだろう、と国民は冷ややかに見ています。実際、企業・団体献金を本気で廃止したら、自民党は干上がってしまう。できっこないから適当なところでお茶を濁す。それが自民党の政治改革の歴史なのです。今回はその限界が国民にも見えた。だから、選挙で鉄槌が下された。公明党も本気で党を立て直すのであれば、自民と袂を分かって、政治とカネのケジメを要求するべきです。中途半端な対応では“またか”と見透かされ、党はもたなくなりますよ」

 石破自民は今後、立憲、維新、国民に協力を呼びかけ、これを端緒に与野党の合意形成を目指す算段だろう。

 だとしたら、最低限の前提として、裏金議員たちの政倫審弁明はもちろん、安倍派5人衆の証人喚問などは不可欠だ。「謙虚になります」などと言うなら、それをやってからにして欲しい。

 ◆「年収103万円の壁」が破談になれば万事休す

 石破が抱える難題は政治資金規正法改正だけではない。年収103万円の壁を巡ってスッタモンダしている国民民主との交渉も一筋縄ではいかないだろう。国民民主が求めるように所得税の課税対象を年収178万円まで引き上げれば、約8兆円もの財源不足が生じる。年金や医療などの公的保険に負担が生じる「106万円」や「130万円」の壁もある。玉木代表はこれらについても「抜本改革が必要」と言っている。合わせ技で解決するには大掛かりな議論が必要だ。

「減税はみんな喜びますが、問題は財源です。税金はマンション管理費みたいなもので、安ければ負担は減るけれども管理・サービスも劣化し、マンションの資産価値を落としてしまう。副作用があるのです。玉木・国民民主は財源問題に踏み込んでいない分、無責任な人気取りに見えます。国債発行で賄えば将来世代にツケを先送りだし、防衛費を削るのも相手がトランプ・米国だけに難しい。結局、余裕がある人から苦しい人へお金を回すべきで、資産課税や法人税を増税するしかないと思います。それが石破首相にできるのかどうかが問われています」(経済評論家・斎藤満氏)

 石破は総裁選でも金融所得課税の強化を訴えていたが、今は引っ込めている。岸田前首相も当初は勇ましかったが、すぐに撤回せざるを得なくなった。金持ちや大企業に頼っている自民党にしてみれば、資産課税や法人税増税は一種のタブーなのである。

 とはいえ、国民民主も来年夏には参院選を控えているので、安易な妥協はできない。中途半端な額で折り合えば、「やっぱり、自民の補完勢力か」と支持者に見限られてしまう。

 両者が破談すれば、自民党は予算案を通せない。哀れ、石破は64日間の短命で終わった羽田内閣と同じ運命ということになる。

 ◆予算委員会で新大臣が火ダルマになる可能性

 「立憲民主党だって侮れませんよ。国民民主にばかり注目が集まれば、参院選を前に埋没してしまう危機感がある。予算委員長ポストを取ったので、全面的な対決姿勢に出るとみています。それでなくても、石破内閣の閣僚は付け焼き刃で決めたから、ロクな身体検査をしていない。三原じゅん子こども政策相ら初入閣が13人もいる。答弁が不安なところに持ってきて、総選挙では2人の大臣が議席を失い、早くも閣僚交代です。予算委員長は答弁者を指名する権限があるので政府委員に代弁させるのではなく、大臣自身の発言を求める機会が増えると思う。新人大臣の立ち往生、醜聞発覚など、時限爆弾ばかりです」(政界事情通)

 国会が紛糾すればガラス細工のような政策連合など吹っ飛んでしまう。首相のクビを差し出し、予算案だけ通してもらって総辞職。これまた羽田内閣のパターンとなる。

 ◆トランプに本気で対峙できればかすかな活路も


トランプ米国にも搔き回される(C)ロイター

 こうなると、石破政権が自民党最後の政権になる可能性だってあるのではないか。石破が退陣しても「次の候補」が見当たらないからだ。公明党もお先真っ暗だから、「自民と無理心中」の流れになっていく。

 「石破政権が行き詰まれば、参院選を前に党内からも石破降ろしの動きが出てくる。これも今後の波乱要因です。でも、自民には“これ”といった次のカードがない。分裂しても活路はないので、党ぐるみで沈んでいく。そんな展開ではないでしょうか。自公が下野すれば、毎回、連立がクルクル変わる不安定な政権にならざるを得ない。トランプ米国にいいように引っ掻き回されてしまうかもしれませんね」(野上忠興氏=前出)

 内政も外交も八方塞がり、そんな見立てが多いのだが、斎藤満氏は「逆にそこにしか活路はない」と、こう言った。

 「トランプ政権が安全保障上の負担増などを求めてきたときに、石破さんがどれだけ踏ん張れるか。交換条件として地位協定の見直しなどを実現させれば、世論も“オッ”となるかもしれない。トランプ大統領はペコペコする人間には畳みかけてくる。逆に強い政治家を評価する。角栄の弟子である石破さんが腹をくくれば活路を見いだせるかもしれません」

 とはいえ、これまでも変節を繰り返し、国民の期待を裏切り続けてきたのが石破だ。支持基盤がないから、党内のアチコチに振り回される。今後も安易な妥協、ゴマカシで、その場しのぎの政治を続ければ、あっという間に行き詰まる。その瞬間、自民党政権も終わりを迎える。

 すでに世界の政治が混迷、混乱の時代に突入しているが、日本も“仲間入り”ということだ。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・政局・石破政権】  2024年11月11日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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