慶応義塾大学通信教育補助教材『三色旗』第658号-2003年1月1日発行より
「島田晴雄-経済学部教授
現在、日本経済は低迷を続けている。
小泉政権は不良債権処理と特殊法人の改廃に注力している。また、報道機関は、小泉構造改革の内容として、専らその二つを強調している。
確かに、不良債権処理と特殊法人の改廃を強力に推進しなければ、日本経済の将来には展望は開けない。しかし、これらの政策は短期的には痛みを伴い、デフレを助長する恐れもある。従って、これらの政策だけでは日本経済の回復は望めない。
実は、小泉政権は、もうひとつの重要な構造改革政策を推進している。それは、「需要創出型の構造改革」である。これは「明るい構造改革」と言えるかもしれない。
これは、人々が求めているサービスを、規制改革によって民間企業が提供しやすくするものであり、それによって、消費が増え、雇用が増え、投資も刺激されるという好環境を導き出そうというものである。
今日の日本経済では、20世紀型の産業・企業はほとんどが過剰生産・過剰設備に陥っており、不良債務に悩んでいる。衣料品・食料・自動車・パソコン、さらに住宅も大幅な過剰生産の状態にある。
ところが、生活者が安心して楽しく便利な生活を送るためのサービスは著しく不足している。例えば、高齢者に対するケアサービス、子育てを支援するサービス、健康作りのための情報やサービス、社会人教育のサービス、住宅の売却・賃貸やメンテナンス・管理のサービスなどがそれに該当する。これらのサービスの多くは、補助金を受け、保護された社会福祉法人・医療法人・学校法人等が独占的に提供しており、これまで民間企業の参入が難しく、人々のウォンツに応えるサービスを提供しにくい分野であった。
小泉政権は経済活性化戦略の柱としてこれらの分野の規制改革を進めており、民間企業が活躍できる場を広げようとしている。この政策を一段と強化することが必要である。それによって人々の潜在需要が顕在化する。それが消費になり、雇用になり、所得を増やす好環境を生む。すなわち、需要を創出する構造改革である。そして、需要創出型の構造改革を強力に進める中で、不良債権処理と特殊法人の改廃を進めるというバランスの良い構造改革政策によって、日本経済は本格的な回復を現実化することができる。」
「島田晴雄-経済学部教授
現在、日本経済は低迷を続けている。
小泉政権は不良債権処理と特殊法人の改廃に注力している。また、報道機関は、小泉構造改革の内容として、専らその二つを強調している。
確かに、不良債権処理と特殊法人の改廃を強力に推進しなければ、日本経済の将来には展望は開けない。しかし、これらの政策は短期的には痛みを伴い、デフレを助長する恐れもある。従って、これらの政策だけでは日本経済の回復は望めない。
実は、小泉政権は、もうひとつの重要な構造改革政策を推進している。それは、「需要創出型の構造改革」である。これは「明るい構造改革」と言えるかもしれない。
これは、人々が求めているサービスを、規制改革によって民間企業が提供しやすくするものであり、それによって、消費が増え、雇用が増え、投資も刺激されるという好環境を導き出そうというものである。
今日の日本経済では、20世紀型の産業・企業はほとんどが過剰生産・過剰設備に陥っており、不良債務に悩んでいる。衣料品・食料・自動車・パソコン、さらに住宅も大幅な過剰生産の状態にある。
ところが、生活者が安心して楽しく便利な生活を送るためのサービスは著しく不足している。例えば、高齢者に対するケアサービス、子育てを支援するサービス、健康作りのための情報やサービス、社会人教育のサービス、住宅の売却・賃貸やメンテナンス・管理のサービスなどがそれに該当する。これらのサービスの多くは、補助金を受け、保護された社会福祉法人・医療法人・学校法人等が独占的に提供しており、これまで民間企業の参入が難しく、人々のウォンツに応えるサービスを提供しにくい分野であった。
小泉政権は経済活性化戦略の柱としてこれらの分野の規制改革を進めており、民間企業が活躍できる場を広げようとしている。この政策を一段と強化することが必要である。それによって人々の潜在需要が顕在化する。それが消費になり、雇用になり、所得を増やす好環境を生む。すなわち、需要を創出する構造改革である。そして、需要創出型の構造改革を強力に進める中で、不良債権処理と特殊法人の改廃を進めるというバランスの良い構造改革政策によって、日本経済は本格的な回復を現実化することができる。」