「晴れ上がった青空、朝の斜めの太陽光線、白雪をつけた雄大なアイガーをバックに、グルントの駅は今日の山行にいかにもふさわしい駅だった。
ここから登山電車でクライネ・シャイデックへ。そこで電車を乗り換え、アイガーの岩板をくり抜いたトンネルを通ってユングフラウ・ヨッホへ向かう。
車窓の景色は申し分ない。電車は信じられないほど高度をかせぎ登っていくので、グルントの駅は見る間に遠く低くなり谷間の奥へ消え去ってしまった。
この登山電車はアイガーの山すそを走っている。窓近くに迫ってくるアイガーの北壁を見た時、今回の遠征ではこの北壁は計画の中に入っていないが、さすがにジーンと胸がしめつけられ、一度は登ってみたいと思う気持ちをおさえることができなかった。
クライネ・シャイデックから乗り換えた電車はアイガーの中を走り、アイガーワンドで一服した。アイガーワンドの駅はトンネルに窓があり、乗客は下車して、この窓からアイガー北壁の斜面をのぞくことができる。ユングフラウヨッホに着いた。
岩盤をくり抜いたヨッホの駅は、やはりトンネルの中だった。何か工事中らしく、削岩機の音がトンネルの内に響き、カンテラのような電球の並んでいる坑内に、不気味な圧迫感を覚え、本能的に光を求めて改札口を出る。出たところはさしずめの駅ビルとでもいおうか、やはり岩をくり抜いて建てられたホテルになっている。正面にはベランダがあり、先刻私たちといっしょに登山電車でやって来た人たちが数人すでにここに出て、口々に感嘆の声を上げていた。
ベランダからの景色は、素晴らしかった。暗い穴の中から出てきた私たちにとって、その光線の強さが目にしみた。すばらしかった。目前は紺碧の空と純白で広大な世界に見えた。これがスイスだ。そしてこの景色の中にすべてのスイス・アルプスがあるようにさえ感じた。
しばらく、その景観に目をうばわれていたが、早速この白銀の世界へ飛び出したくなる。」
20歳の頃読んだ今井通子さんの『私の北壁』、2007年10月の旅の前には時間がなく、やっと読み返しました。ここに書かれているユングフラウ鉄道に乗ってアイガーのお腹を走り抜けたこと、今となっては遠い日の夢のようです。ワクパスがないと海外にいくことはもうできなさそうだし何が起こるのかわからなくてこわいので、何十万という💰をポンと用意できるとしても(できませんが)、スイスを訪れることはないでしょう。人口股関節への置き換え手術の予定もわかりません。無理しましたが条件が整う間に夢をかなえたこと、かえすがえすも大正解だったと思います。
2007年10月24日(水)アイガーヴァント駅
2007年10月10月24日(水)ユングフラウヨッホ駅
旅の思い出写真_ユングフラウヨッホ駅
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/aedef9b2770bd8b6eef56e4af2996a02
旅の思い出写真_ユングフラウ鉄道
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旅の思い出写真_グリンデルワルドとユングフラウ鉄道
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