アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

階級格差と保育園

2017年05月17日 | 生活
うちの子たちが通っていた保育園は私立認可保育園で、私立といっても市を通して申込み、保育料も市立と同じ。

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「同じ」というのは、所得の高い人は高く、低い人は低く、生活保護世帯なら無料といった具合で、要するに経済状況に関わらず同じ保育園に通える仕組み。いわゆる「地域の」公立小と同様、たいへん幅広い人と交流ができる(交流しなくてはならない)ところだというふうに思っていた。

しかし、幅広いのは確かだけれども、「地域の」という限定は実は強力なもので、案外狭い「階層」の人に限られていたと思うほうが正しいかもしれない、ということを今朝、

「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」(ブレディみかこ)
という本を読みながら改めて思った。

この本の著者は、イギリスに住む日本人で、最初は無料の託児所でボランティアとして働いていたがその間に保育資格を取って別の保育園に就職。そこがつぶれてまた元の託児所に戻るというユニークな経緯を辿った人。

その、つぶれた保育園というのは、イギリスの「ミドルクラス」の人が利用する園ということだが、二歳児をフルタイムで預けて一か月14万円くらいというのだから、それなりに高収入の層が利用しているところだ。そこに「チャヴ」の保育士がいたところが問題の発端だった。

「チャヴ」というのは耳慣れないが、公営住宅地にたむろっているガラの悪い若者くらいの意味で、好んでフード付きのパーカーやジャージを身に着けている(^^;; ということで日本語でいえば「ヤンキー」みたいな?

しかし、それこそうちの保育園に冗談でなくそういう格好の、都営住宅に住んでいる家族はけっこういたけど問題なくいっしょに行事に参加し保護者会で委員をし、別にどうということもない。英国の「チャヴ」というのはもっと暗い語感で、ドラッグ、犯罪、強盗などと結び付けられるイメージのものらしい。

送迎に来る親たちはこの保育士が話しかけてきても無視、子どもが怪我をすると(遊んでるだけでしょっちゅう小さな怪我は発生するものだが)この保育士のせいにするといった具合であからさまな差別をしていた。結局は濡れ衣を着せられて逮捕(判決は無罪)、保育園自体も風評被害でつぶれたのだが。

同僚の目から見て、この「チャヴ」の保育士に何も問題はなく、むしろ誰かが怪我をして泣いたりしたらすっとんでいって手当をしてなぐさめ、報告書の記入もする(←これ面倒)人だったのが、その熱心さ、あたたかさが「いつも子どもがけがする場面にあの人あり」みたいな悪い噂の元ともなったとのことである。

日本語でも、話をしてしばらくすればその人となりだけでなく、出自とか、教養とか、そういったものがなんとなく知れるということはあるだろうけど、英国での話し方というのはそんなマイルドな差ではなく、はっきりと階級を表すものであって、発音から語彙からがらりと違うらしい。(「マイ・フェア・レディー」なんていう映画もあったね)

昔は、強盗や殺傷事件があったら近くの黒人が逮捕される、なんて時代があったそうだが、
今は、怪我をした幼児がいたらとりあえず近くの「チャヴ」を逮捕!?

おもしろいことに、明らかに人種の違う筆者が保育士をしていることについてはみんな優しくて、それは「外国人を差別するのはPC(ポリティカル・コレクトネス)に反するが、チャヴは差別しても自国民なのでレイシズムではない」ということなのだとか。

…それが「ミドルクラス」御用達保育園であったことで…

一方、無料託児所は、社会の底辺の人たちが利用している。底辺というのは誰かというと、自国民だけど代々貧困という人と、移民の二種類いる。

ともかく、保育園と託児所では、同じ月齢の子どもの発達状況(心身とも)がもう別物で、極端に暴力的であるとかなんらかの問題を抱えた子の率もまったく違うのだけど、そんな中で、「底辺といっても二種類いる」というところがミソ。

現在の状況は苦しくても、上昇志向のある移民の人は、(自分たちからみれば)恵まれた状況に元からありながら、働く意欲や努力を見せない(ようにみえる)貧困層がものすごく軽蔑すべき存在に見えるものらしい。それで、見習い保育士として英国の貧困層の子が入ろうとしたときに「安心して通わせられない」と大反対が起こるのだけど(以下略。ここはイイ話につながる)

まぁあまりにも中身が濃すぎて要約できないけど、クラクラするくらいの階級(階層)格差が地域の塗り分けによって維持され強化されている様子がよくわかる。たとえば公立の小学校といっても地域の違いで実態は天と地。それなら上昇を目指す人はその「いい」公立小に行けばいいのかっていうと、それはその近くに住むのにお金がかかるという…

日本も、「格差」がさらに広がって、移民も入ってきたころに、国民の不安をなだめるべく政権党がどかんと底辺切り捨ての政策を打ち出すとちょうどこんな感じになるのかもしれない(怖)

うちが通った保育園なんて、極端な上も下もおらず小市民に限定された「均一な」場だったといってもいいくらい。都営住宅といっても、ややこしい手続きを間違いなくこなせる「きちんと」暮らす人しか入れないのだし、裕福といっても、難関「お受験」するようなクラスであればこんな田舎(の新興住宅地)には住まない。「いろんな人がいるからたいへん」といっても全体からみればぬるま湯レベルの平和だったんだよねぇ。

ぬるま湯だけど外国人は「少し」いたし、日本語だって話し方で育ちが「ある程度」わかるだろうし、階層により住む地域が分かれているってことは「多少」あるし、経済格差はもちろん親の関心による教育格差は今でも「かなり大きい」よね。でもそのそれぞれを、いちいちすごく極端にくっきりはっきりしていくとこの本の状況になるかも!! と、リアルホラーな本でした。また半分くらいしか読み終わってないけど。

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コメント (2)
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