「階級格差と保育園」の話のつづき。この著者がボランティアをした「底辺保育園」は、基本的に、様々な問題を抱えたおうちのお子さんばかりいらっしゃるので…
←生活保護バッシングについては、かの国もこの国も似た感じ
うっかり、「クリスマス・ホリディは楽しかった?」なんていう、ごく軽い世間話のつもりで話をふろうもんなら
「ベネフィット・マネーをマミイが毎月貯金しておかなかったからクリスマスに使うお金がなくって、怒ったダディが家で暴れてマミイが救急車で運ばれた」
なんて突然重い話になってしまったり、まぁそんな家庭環境である。(注: ベネフィットというのは生活保護のこと)
子どもが複数いればそのベネフィットでいちおう暮らしていくことができるのだが、働かなくても暮らしていけるが働くことはできず、生活を何か変えていくことも思いつかないとなると、だいたい生活がよくない方向へ崩れていくものである。アルコール、ドラッグ、DV…
そんな親に育てられて、まぁそんなふうに育っていく子どもが多いのは当然だ。でもその中で、環境が悪かろうが本人の意欲次第でチャンスを掴んでいく、ってことはある。
「底辺保育園」にボランティア保育士がいたのだが、彼女は大学で幼稚園の先生になるために勉強していた。その成績がたいへん優秀なので教育実習先である「底辺保育園」に奨励金がおりているが、彼女はそれを奨学金としてもらわずバイトで働いていて、代わりに筆者などのスタッフたちが無料でチャイルドケアの勉強をするコースに通えていたという…どんだけ偉いんだ!! なんともスーパーな大学生だった。
彼女は幼いころ、この保育園に通っていて、問題児で、相当先生の手を焼かせたというし、綺麗な子だから「早いうちからませちゃって」イロイロあったらしいのだが、そこでふつうならば若いうちに子どもを産んで、底辺保育園の利用者として戻ってきそうなところ、優秀な(ハードな子どもたちが何をやらかしても動じない)保育士として戻ってきたんだからそりゃすごい。
たまにはそんなこともある。人間、捨てたもんじゃない。
この「底辺保育園」には、それぞれいろんな問題を抱えながらもいろんな人が出入りしていてその渦巻くエネルギーからは良いことも悪いこともたくさん起こっていた。通う子どもにも、その保護者にも、有給・無給のスタッフにも。様々な厳しい条件がある中で、心あるスタッフがとにもかくにも全力で幼児教育をしていた(なにしろ「生きる力」が喫緊に必要な子どもたちであるから)。
ところが、筆者が数年間、「ミドルクラス御用達」の保育園に有給で勤めていた間に、大変化があった。変化というのはまずは政治の変化であって、それによって平たくいえば「福祉の切り捨て」があったんだけど…つまりは「底辺保育園」は直撃くらったようなもので、
無料でチャイルドケアの勉強をするコースに通えるなどという牧歌的な話が吹き飛んだのはともかくとして、
そもそも、底辺保育園から利用者の多くが消え去った。
生活保護費もなくなったり減ったりして保育園へくるバス代もなくなり、
極端にお金がないと家でじっとしているしかないわけだか、
そうやって親子で蟄居していてロクなことがあるわけないので、
崩壊寸前の保育園スタッフがなんとか家庭訪問をしてみると、子どもの食料もまともに買えない親子が…
以前は何かへまをして「子どもを(福祉に)取り上げられる」のを恐れていた親たちが、
もうふんばれなくなって子どもを手放すことを考えている。
しばらくすると保育園自体閉鎖に追い込まれ、その施設が何になるかというと…
…フードバンク…
食料を買う生活保護費ももらえなくなった人たちが食料をもらいに集まってくる。
政治の変化で劇的ビフォーアフター。
ビフォーがよかったのかどうかはよくわからない。あまり健全ではない気はする。ワーキングクラスというと語感からいえば下層のようであるが、ベネフィットで生活する人たちはワーキングしてないからアンダークラス。ある時期まではこの層はあまり英国内で意識されていなかったのが、2014年にテレビ番組で大々的に取り上げられたら大騒ぎになった。
「他人の税金で生きているくせに、薄型テレビを持っている」「フードバンクの世話になっているわりにはビールを飲んでいる」「子どもを育てる余裕がない者は子を産むな」などなど。ベネフィットをもらう人とワープアの逆転も問題になった。
そのヘイト的な時流に乗っかって実際に福祉を切り捨てたのがアフター。切り捨てればどうなるか…
餓死者の出る英国。「底辺保育園」からの出世頭も出ない英国。
この本「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」(ブレディみかこ)のあとがきは
「地べたにはポリティクスが転がっている」
と結ばれている。
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「はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編」ダイヤモンド社 ←またろうがイラストを描いた本(^^)
「発達障害グレーゾーン まったり息子の成長日記」ダイヤモンド社
←生活保護バッシングについては、かの国もこの国も似た感じ
うっかり、「クリスマス・ホリディは楽しかった?」なんていう、ごく軽い世間話のつもりで話をふろうもんなら
「ベネフィット・マネーをマミイが毎月貯金しておかなかったからクリスマスに使うお金がなくって、怒ったダディが家で暴れてマミイが救急車で運ばれた」
なんて突然重い話になってしまったり、まぁそんな家庭環境である。(注: ベネフィットというのは生活保護のこと)
子どもが複数いればそのベネフィットでいちおう暮らしていくことができるのだが、働かなくても暮らしていけるが働くことはできず、生活を何か変えていくことも思いつかないとなると、だいたい生活がよくない方向へ崩れていくものである。アルコール、ドラッグ、DV…
そんな親に育てられて、まぁそんなふうに育っていく子どもが多いのは当然だ。でもその中で、環境が悪かろうが本人の意欲次第でチャンスを掴んでいく、ってことはある。
「底辺保育園」にボランティア保育士がいたのだが、彼女は大学で幼稚園の先生になるために勉強していた。その成績がたいへん優秀なので教育実習先である「底辺保育園」に奨励金がおりているが、彼女はそれを奨学金としてもらわずバイトで働いていて、代わりに筆者などのスタッフたちが無料でチャイルドケアの勉強をするコースに通えていたという…どんだけ偉いんだ!! なんともスーパーな大学生だった。
彼女は幼いころ、この保育園に通っていて、問題児で、相当先生の手を焼かせたというし、綺麗な子だから「早いうちからませちゃって」イロイロあったらしいのだが、そこでふつうならば若いうちに子どもを産んで、底辺保育園の利用者として戻ってきそうなところ、優秀な(ハードな子どもたちが何をやらかしても動じない)保育士として戻ってきたんだからそりゃすごい。
たまにはそんなこともある。人間、捨てたもんじゃない。
この「底辺保育園」には、それぞれいろんな問題を抱えながらもいろんな人が出入りしていてその渦巻くエネルギーからは良いことも悪いこともたくさん起こっていた。通う子どもにも、その保護者にも、有給・無給のスタッフにも。様々な厳しい条件がある中で、心あるスタッフがとにもかくにも全力で幼児教育をしていた(なにしろ「生きる力」が喫緊に必要な子どもたちであるから)。
ところが、筆者が数年間、「ミドルクラス御用達」の保育園に有給で勤めていた間に、大変化があった。変化というのはまずは政治の変化であって、それによって平たくいえば「福祉の切り捨て」があったんだけど…つまりは「底辺保育園」は直撃くらったようなもので、
無料でチャイルドケアの勉強をするコースに通えるなどという牧歌的な話が吹き飛んだのはともかくとして、
そもそも、底辺保育園から利用者の多くが消え去った。
生活保護費もなくなったり減ったりして保育園へくるバス代もなくなり、
極端にお金がないと家でじっとしているしかないわけだか、
そうやって親子で蟄居していてロクなことがあるわけないので、
崩壊寸前の保育園スタッフがなんとか家庭訪問をしてみると、子どもの食料もまともに買えない親子が…
以前は何かへまをして「子どもを(福祉に)取り上げられる」のを恐れていた親たちが、
もうふんばれなくなって子どもを手放すことを考えている。
しばらくすると保育園自体閉鎖に追い込まれ、その施設が何になるかというと…
…フードバンク…
食料を買う生活保護費ももらえなくなった人たちが食料をもらいに集まってくる。
政治の変化で劇的ビフォーアフター。
ビフォーがよかったのかどうかはよくわからない。あまり健全ではない気はする。ワーキングクラスというと語感からいえば下層のようであるが、ベネフィットで生活する人たちはワーキングしてないからアンダークラス。ある時期まではこの層はあまり英国内で意識されていなかったのが、2014年にテレビ番組で大々的に取り上げられたら大騒ぎになった。
「他人の税金で生きているくせに、薄型テレビを持っている」「フードバンクの世話になっているわりにはビールを飲んでいる」「子どもを育てる余裕がない者は子を産むな」などなど。ベネフィットをもらう人とワープアの逆転も問題になった。
そのヘイト的な時流に乗っかって実際に福祉を切り捨てたのがアフター。切り捨てればどうなるか…
餓死者の出る英国。「底辺保育園」からの出世頭も出ない英国。
この本「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」(ブレディみかこ)のあとがきは
「地べたにはポリティクスが転がっている」
と結ばれている。
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「はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編」ダイヤモンド社 ←またろうがイラストを描いた本(^^)
「発達障害グレーゾーン まったり息子の成長日記」ダイヤモンド社