さてラヴェルのソナチネの話の続きですが、三楽章は突然の激しさ、そして速さですね。ややこしさという意味では一、二楽章のほうがむしろ上かもしれないですけど、現実問題、よく練習しておかないと弾けない楽章ではあります。
←えっまだ続くの。って、まだまだ続くんです。
そのへんにからんで(?)artomr先生コメントは、三楽章の「前置き」だけでものすごい長さになっていて、しかも前提として読んでほしい本まで指定されているもので(笑) そこ後回しにします。なにせ本はぽちったけどまだ読んでないので。
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1-39小節 (第一主題部〜第二主題部導入)
まず1-11小節においては10小節が頂点ですが、この無窮動的な作品においては9小節でのタメのルバートは不要だと思います。無窮動的な運動性は、あまり強調されることがないかもしれませんが、ラヴェル特有の「荒々しさ」や「辛辣さ」に繋がると思います。ラヴェルは例えばドビュッシーに比べて、現代音楽のクラスターのような唐突な不協和音や(現代音楽というよりも、バロックのアチャカトゥーラから影響を受けたのかもしれませんが)、いきなりの転調(ピアノ協奏曲の2楽章の嬰ト短調の和音がでるとこ)などの衝撃的な効果を好んで用います。
レクチャーの時にもお話しましたが、ラヴェルは学校の成績も良くなく、実は劣等生だったそうです。当時所属していた芸術家グループは「アパッシュ協会(La Société des Apaches)」で、かなり前衛的な芸術家グループだったようです。サティを祭り上げ、当時のアカデミズムであったパリ音楽院に反旗を翻すような、ラヴェルの攻撃的な側面は、「構築的で美しい古典主義者ラヴェル」という一般的なラヴェルのイメージからはなかなか想像しにくいですが、確実にこのソナチネの三楽章にもあります。鮮烈で激しい音楽ということですね。
本当は新しいテーマが現れる37小節から新しい構造が始まるので、この1-39小節という私の分け方自体が奇妙なのです。しかし、ラヴェル自身が36小節に”sans ralentir(ラレンタンドなしに)”、そして37小節に”même mouvt(同じテンポで)”という指示を書いています。構造が変わるのにも関わらずです。そして39小節に”rit.---“、40小節に"plus lent(遅く)”という表示がようやく出てきます。
これは構造に対応していない独創的なテンポ変化の指示です。だからこそ、この1-39の区間では、それ以外のテンポ変化を控えた方が私はいいと考えます。
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いや~「9小節でのタメのルバートは不要だと思います。」って、私も不要だと思うよ!! ルバートなんてしてたっけと思って録音(Web練習会の)を聞いてみると…あのね、これはルバートじゃなくて、もつれてるだけですよ先生。
確かにこの楽章、39小節でrit.来るまでは緩みなく突っ走る曲なんですね。37~39小節と、40~42小節は似ているんだけど、この間にそういう境目(テンポの塗り分け)が来るのがおもしろい。
この最初の二ページを、鮮やかに弾き切れるとカッコイイネ
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40-42小節 (第二主題部)
この3小節間は、「ようやく新しいセクションにいることに気づいたかのように」はっきり減速して弾きます。そして42小節が”rall.---“の表記があり、最も遅くなるので、これを十分にかけてください。
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テンポを操ることによってラヴェルさんは区域の標識を立てているようですね。
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43-63小節 (第二主題部〜コデッタ)
テンポが元に戻ります。この”a tempo”の指示は最初の”Animé”なのか、40小節の”plus lent”なのか、楽譜を見てもわからないのですが、私は最初の”Animé”になんとなく近いテンポにするのが良いと思います。このセクションは幾つかの方法で拍子が不規則になる興味深いコデッタ(小結尾部)です。まず5/4拍子と4/4拍子の交替が2回あります。おそらく最初の5/4拍子は2+3/4拍子です。そして次の4/4拍子も2+2/4拍子だと思います。この細分化した拍の頭に軽いアクセントをつけるとその不規則なリズムが現れると思います。47-50小節は、右手が2/4拍子、左手が3/4拍子です。51小節から53小節の2拍目までは、3/4拍子で書かれていますが、実質2/4拍子です。そして53小節は三拍目の「上四点ホ音」が四分音符で鳴らされ、すぐに54小節目からの新しいパッセージに移行するので、そこの部分は乱暴に2/4拍子が一拍目で中断され、無理矢理新しいパッセージが突っ込んできたように弾くと良いと思います。2/4拍子を完成させてしまうような間を取るべきではないと思います。
54-55小節は、レクチャーでもお話しましたが、リストの《ダンテを読んで》のコーダと同じように、根音が2度下がる和声進行が連続して用いられており、伝統的な調性体系が完全に破壊されています。「イ長調→ト長調→ヘ長調→変ホ長調→変ニ長調」の主和音が次々連続して用いられるので、一つの調に留まることがないからです。
56小節からは、展開が停止し、繰り返しが続きます。繰り返しが生じることは、成長の停止、終わりを意味します。60小節は最低音の「下二点い音」が鳴らされ、単純な「ラソミ」という音形の繰り返しに整理され、前半部が終結し、展開部にそのまま移行してゆきます。
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いや~「2/4拍子を完成させてしまうような間を取るべきではないと思います。」って、私もそう思います!! 間なんて取っていたっけ、と思って録音を(中略)
…あのね、これは間を取っているんじゃなくて音を探しているだけですよ先生。
54-55小節の、根音が2度下がる和声進行のところ、つっかえないで弾けるとスカッとします。確か昔はこれものすごく苦労したんですけど、今はそんなに悩まない。
最低音の「下二点い音」、これなかなか弾けなくて(五十肩)譜めくりさんにお願いしたこともありましたが、弾けるようになりました。よかった。
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そのへんにからんで(?)artomr先生コメントは、三楽章の「前置き」だけでものすごい長さになっていて、しかも前提として読んでほしい本まで指定されているもので(笑) そこ後回しにします。なにせ本はぽちったけどまだ読んでないので。
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1-39小節 (第一主題部〜第二主題部導入)
まず1-11小節においては10小節が頂点ですが、この無窮動的な作品においては9小節でのタメのルバートは不要だと思います。無窮動的な運動性は、あまり強調されることがないかもしれませんが、ラヴェル特有の「荒々しさ」や「辛辣さ」に繋がると思います。ラヴェルは例えばドビュッシーに比べて、現代音楽のクラスターのような唐突な不協和音や(現代音楽というよりも、バロックのアチャカトゥーラから影響を受けたのかもしれませんが)、いきなりの転調(ピアノ協奏曲の2楽章の嬰ト短調の和音がでるとこ)などの衝撃的な効果を好んで用います。
レクチャーの時にもお話しましたが、ラヴェルは学校の成績も良くなく、実は劣等生だったそうです。当時所属していた芸術家グループは「アパッシュ協会(La Société des Apaches)」で、かなり前衛的な芸術家グループだったようです。サティを祭り上げ、当時のアカデミズムであったパリ音楽院に反旗を翻すような、ラヴェルの攻撃的な側面は、「構築的で美しい古典主義者ラヴェル」という一般的なラヴェルのイメージからはなかなか想像しにくいですが、確実にこのソナチネの三楽章にもあります。鮮烈で激しい音楽ということですね。
本当は新しいテーマが現れる37小節から新しい構造が始まるので、この1-39小節という私の分け方自体が奇妙なのです。しかし、ラヴェル自身が36小節に”sans ralentir(ラレンタンドなしに)”、そして37小節に”même mouvt(同じテンポで)”という指示を書いています。構造が変わるのにも関わらずです。そして39小節に”rit.---“、40小節に"plus lent(遅く)”という表示がようやく出てきます。
これは構造に対応していない独創的なテンポ変化の指示です。だからこそ、この1-39の区間では、それ以外のテンポ変化を控えた方が私はいいと考えます。
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いや~「9小節でのタメのルバートは不要だと思います。」って、私も不要だと思うよ!! ルバートなんてしてたっけと思って録音(Web練習会の)を聞いてみると…あのね、これはルバートじゃなくて、もつれてるだけですよ先生。
確かにこの楽章、39小節でrit.来るまでは緩みなく突っ走る曲なんですね。37~39小節と、40~42小節は似ているんだけど、この間にそういう境目(テンポの塗り分け)が来るのがおもしろい。
この最初の二ページを、鮮やかに弾き切れるとカッコイイネ
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40-42小節 (第二主題部)
この3小節間は、「ようやく新しいセクションにいることに気づいたかのように」はっきり減速して弾きます。そして42小節が”rall.---“の表記があり、最も遅くなるので、これを十分にかけてください。
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テンポを操ることによってラヴェルさんは区域の標識を立てているようですね。
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43-63小節 (第二主題部〜コデッタ)
テンポが元に戻ります。この”a tempo”の指示は最初の”Animé”なのか、40小節の”plus lent”なのか、楽譜を見てもわからないのですが、私は最初の”Animé”になんとなく近いテンポにするのが良いと思います。このセクションは幾つかの方法で拍子が不規則になる興味深いコデッタ(小結尾部)です。まず5/4拍子と4/4拍子の交替が2回あります。おそらく最初の5/4拍子は2+3/4拍子です。そして次の4/4拍子も2+2/4拍子だと思います。この細分化した拍の頭に軽いアクセントをつけるとその不規則なリズムが現れると思います。47-50小節は、右手が2/4拍子、左手が3/4拍子です。51小節から53小節の2拍目までは、3/4拍子で書かれていますが、実質2/4拍子です。そして53小節は三拍目の「上四点ホ音」が四分音符で鳴らされ、すぐに54小節目からの新しいパッセージに移行するので、そこの部分は乱暴に2/4拍子が一拍目で中断され、無理矢理新しいパッセージが突っ込んできたように弾くと良いと思います。2/4拍子を完成させてしまうような間を取るべきではないと思います。
54-55小節は、レクチャーでもお話しましたが、リストの《ダンテを読んで》のコーダと同じように、根音が2度下がる和声進行が連続して用いられており、伝統的な調性体系が完全に破壊されています。「イ長調→ト長調→ヘ長調→変ホ長調→変ニ長調」の主和音が次々連続して用いられるので、一つの調に留まることがないからです。
56小節からは、展開が停止し、繰り返しが続きます。繰り返しが生じることは、成長の停止、終わりを意味します。60小節は最低音の「下二点い音」が鳴らされ、単純な「ラソミ」という音形の繰り返しに整理され、前半部が終結し、展開部にそのまま移行してゆきます。
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いや~「2/4拍子を完成させてしまうような間を取るべきではないと思います。」って、私もそう思います!! 間なんて取っていたっけ、と思って録音を(中略)
…あのね、これは間を取っているんじゃなくて音を探しているだけですよ先生。
54-55小節の、根音が2度下がる和声進行のところ、つっかえないで弾けるとスカッとします。確か昔はこれものすごく苦労したんですけど、今はそんなに悩まない。
最低音の「下二点い音」、これなかなか弾けなくて(五十肩)譜めくりさんにお願いしたこともありましたが、弾けるようになりました。よかった。
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