アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

印象派(絵のほう)を支えた技術革新

2020年10月15日 | ピアノ
ふだんピアノのことばっかり考えている私のような人間にとってみれば、「印象派」といえばまず真っ先に「ドビュッシー」とかですけど…

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元は、絵のほうの言葉ですね。クロード・モネの描いた絵でそのものずばり「印象-日の出」というのがありますが

これ、出たてのころはすごい評判悪くて

「この絵はいったい何を描いたのか?」「描きかけの壁紙だってこれより完成度が高い」「さぞかしここにはたっぷり印象が入っているのだろう」(by ルロワ)
という調子です。それまでは、もっときっちり塗ってあって、塗り残しがないのはもちろん、筆跡も見えないようなのが良いとされていました。そういう書き方の違いもありますけど、あと、書かれているものが…知識を総動員して「物語」を読み解くみたいな重たい題材が主流だったので。「印象派」って悪口だったんですね。でもだんだんこの「もやっとした」絵とかも人気が出てきて、自ら「印象派」を名乗るように変わっていきます。

絵を買ってくれたのは、教会や王侯貴族ではなくて、ゆとりある市民です。

時代の変化、購買層の変化、それと作風の変化はからみあっています。音楽の世界でいえばそういうようなことはなんとなく知っていますけれども、絵のことはまったく知らなかったので
「印象派で「近代」を読む」(中野京子)
衝動買いして読みましたが、おもしろかったです。

特に、おぉなるほどと思ったのが、技術革新と絵の関係です。

屋外に、イーゼルを立てて、風景を写生している…という光景、私たちはなんとなく当たり前のものだったと思ってしまっていますが、とんでもない、「印象派」の人たちが出てくるちょっと前までは、そもそも絵具がそんなふうに気軽にお外に連れていけるものじゃなかったのです。

顔料になるものをごりごりやって、練り混ぜて、ぜんぶ手作り、保存もしづらいし、そりゃ大変なことでした。ようやく職業的に絵具を作ってくれる職人が現れても、まだ手軽な「容器」というものがなくては外へ飛び出せません。あの、押し出し式の錫製チューブがなくてはね。そしてさらに、ネジ式のキャップもなくては。と、ここまで到達したのが1842年。やった!!

そうやってついに、戸外で製作してる画家なんてほんとかっこよく見えたことでしょう。ウォークマンしてローラースケートしてる西城秀樹くらいの衝撃です。

マネが描いたモネの絵があるのですが(アトリエ上のモネ)、モネは屋根付きボートに乗り込んで写生をしています。

・外で実際の風景を見て絵が描ける
・でもそしたらささっと描かないとね。あんまり大きい絵も無理

さっと描かれた、小さめの、見てわかる絵が大量に作られます。

さらにそこへ登場したのが「写真」!! これで「絵」需要が取られて肖像画の発注などもなくなってしまうかといえばそんな単純なものではなく、写真と違う良さがちゃんとある「いい絵」ならばやっぱり売れていくわけです。また、写真という切り取り方ができるようになったことで、絵にも変化が現れました。構図とか、描写の仕方とか…なるほど。音楽も、「録音」ができるようになったことで、生演奏需要がなくなるかというとそんなことはないし、それと、録音があることによって、演奏にも変化が出てきたわけで、似ています。

絵の話を読んだら、丸ごと私の知らなかったことばかり書いてありましたが、実はそこには、今まで知ってたことと同様の「話のかたち」が展開されていた、というような気分です。

---- 今日の録音
チャイコフスキー/子供のためのアルバムより「ドイツの歌」

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