東禅寺から妙な気分のまま境内を西へ抜けて、お寺の背後の住宅地へ。
Photo 2006.3.5

墓地のキワにある細道は健在だった。緩やかに木立の下を上る道を歩くとホッとする。変な景色を見なくて済むのは幸せだ。
お寺の真裏に回り込むと、車がほとんど通れないような小さな住宅地になる。高台に向かって上り続けるのかと思いきや、別の小さな谷地にまた下りてしまったりもする。急坂に建つ鋭角な住宅、細い路地を挟んで建つ住宅群など、都心にエアポケット状に残された異空間を歩くのは密やかな楽しみだ。
小道は最後に桂坂際の擁壁に突き当たり、擁壁ぎわを少し上ったあと、階段を一気に上って桂坂上に出る。桂坂沿いにも2階ないしは3階から入る建物がいくつかある。入口付近は完全に空中にあり、車庫も人工地盤上にあるような建物が建ち並ぶ。そして擁壁沿いの小道の方では、かなり低いところに入り込んでしまったような印象になる。
昔は階段を見る視線の先が多少開けていて、谷地の様子がよくわかったのだが、高野山別院の裏側に足場を造って空中に建物を作ってしまったため、視界はややせせこましくなった。狭い谷あいへと下りていく印象が強い階段である。
階段の楽しみは、一歩一歩、歩みを進めるごとに変化する景色を楽しめること。台地と低地を繋ぐ階(きざはし)だが、結界的な装置でもあり、階段の存在は丘の上下を明快に切り分ける。
階段自体の姿も私にとっては鑑賞の対象である。一直線のものもあれば、カーブしたり屈曲したり。幅も長さも傾斜も段数も千差万別。ステップもコンクリート、敷石、自然石、土!と様々。踊り場があったり、手摺が付いていたり、スロープがあったり。野外の階段の場合、一つとして同じものはないと言っても良い。
階段の途中からアプローチする住宅なんていうのもある。
また、坂と違って一段一段は水平なので、途中で立ち止まって振り返って景色を見たり、車も来ないので疲れたら腰掛けたり。意外に歩行者系の装置でもある。
これだから階段歩きはやめられない。
#階段・坂 港区 #街並み 港区 #路地