夕暮れに新富町に行ってきた。日没後の薄暗がりの中、その建物はまだ有った。
喜久屋ビル(森田製薬回効散本舗本社ビル)
所在地:中央区新富 2-4
建設年:1928(昭和3)
構造・階数:RC5
Photo 2006.9.23
ちょこちょこ拝見しているBlog「喫茶店で瞑想して、 銭湯で元気になる」で8月初めに載せられた「会いに行ってきた」という記事を見てから気になっていた建物。
以前から何度か見て知っていた建物だったが、9月にも解体されてしまうことになったようだとあった。私的にはなんだか突然の情報で、あーっ、これもかーと、至極残念だった。
なくなる前にもう一度見ておきたいなと思いつつ2ヶ月近くが経過。もう解体されて無くなってしまったかもしれないと思いながら、ダメもとで有楽町から歩いて新富町へ向かう。
有楽町に着いたときは、まだ空が茜色だったが、新富町に辿り着いた頃には空は明るさを失って、ほとんど夜。
Photo 2006.9.23
土曜の夜の新富町は人通りも少なく静かだった。往来する車も少ない。マンションやオフィスの灯りがちらほら見える静かな下町の街角に、建物はひっそりとまだ残されていた。
周囲には白い囲いが巡らされ立ち入りができない。囲われたということは解体がいつかは始まるのだろうが、まだ建物本体には手が付けられてはいなかった。解体工事のお知らせ看板もまだ付けられていない。ひょっとすると解体するかどうか、作業がストップしたのかも知れないと淡い期待を持つ。
だが帰宅してから上記のBlogをまた見てみると、11月に解体することになったとのこと。残念ながらやはり、解体建て替えという方針は変わっていないようだ。
1階には夏前までコンビニ(ampm)が入居していたようだが、それもなくなり、その部分の外壁は大半が無くなっている。もちろん建物は無人で灯りも全く無い。まわりのお店に灯りが点っているのに、そこだけが暗く沈み込んだ感じ。
もう無くなったかと諦めていた建物は、まだ有った。しかしそれは既に無人で、今後も使われるわけではなく、およそ2ヶ月後の解体を待つのみ。ビルの外観は辛うじて有るが、その機能は全く無い。
2006年9月末、新富町喜久屋ビルは、限りなく「無い」に近い「有る」という状況に置かれていた。
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