'07/09/12の朝刊記事から
社会保障カード 本格検討へ
「総背番号制」も視野
年金や医療など社会保障に関する個人情報を一元管理する政府の「社会保障カード」構想について、厚生労働省が、納税情報など幅広い個人情報を盛り込む「国民総背番号制」など4案で検討を進めていることが11日、分かった。
今月下旬に発足する有識者による検討会で具体的な検討に入るが、総背番号制が選択されれば、個人情報の保護をめぐり賛否両論がおこるのは必至で、年内に出される結論が注目を集めそうだ。
厚労省が4案想定
社会保障カードは、国民一人一人に固有の番号つきのカードを配り、年金、医療、介護に関する個人情報を管理するもの。
政府は、2011年度の導入を目指している。
厚労省案は①医療、年金、雇用保険などの社会保障に関する情報に加え納税情報など、すべての個人情報を一元化する「国民総背番号制」②社会保障に関する情報と住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を連動させたもの③社会保障に関する情報に絞った「社会保障番号」④年金情報のみを管理するもの-の四つ。
安倍晋三首相は今年6月、年金記録問題に関連し、年金や介護、医療など社会保障に関する個人情報を一元管理する社会保障番号を導入する考えを示している。
厚労省案は、検討会に多様な視点で論議を進めてもらうため、さらに踏み込んだ案から、より慎重なものまで幅を広げた。
検討会ではプライバシー保護やセキュリティの確保、カード活用のためのインフラ整備、カードを維持するための負担などについて年内に基本構想を策定する。
厚労省は基本構想をもとに、総務省や内閣官房のIT担当室と連携し、具体的な制度設計に入る見通しだ。
舛添要一厚労相は「年金カードをつくるなら健康保険も年金も管理できるほうが、はるかに便利」と明言しており、少なくとも年金と医療情報は一元化する可能性が高いとみられる。
個人情報守られてこそ
<解説>厚生労働省が「社会保障カード」の素案の一つとして、安倍晋三首相の基本構想から踏み込み、国民総背番号制を示した背景には、より多くの情報を一元化することで行政サービスを効率化することのほか、職業を問わず所得の正確な把握を進めることで、社会保障制度の運営の公平性を高める狙いもあるとみられる。
ただ、納税記録や社会保障について一元管理している米国の国民総背番号制度である「ソーシャルセキュリティーナンバー制度」では、なりすまし犯罪や情報流出などの被害が横行。
情報技術(IT)化の進行で、情報管理のあり方が問題となっている。
日本の場合、社保庁職員による年金加入者の個人情報の「覗き見」が相次ぐなど、公務員のモラルに不信感を覚える国民は多い。
個人情報を守る体制の構築と同時に、公務員の信頼回復につとめなければ、総背番号制はもちろん、「社会保障カード」そのものにも反発が強まるのは必至だ。(中村公美)