’08/01/16の朝刊記事から
クローン牛肉 安全
米当局発表 日本に輸出の可能性
【ワシントン15日共同】米食品医薬品局(FDA)は15日、クローン技術で生まれた牛、豚、ヤギとその子孫から生産した肉と乳製品について、通常の家畜と同様に食べても安全だとする最終報告書を正式発表した。
FDAはクローン食品の流通自粛を業界に求めてきたが、報告書と同時に発表した企業向け指針で「通常の食品以上の規制は必要ない」との見解を示しており、販売への事実上のゴーサイン。
米国内で将来、クローン牛などの流通が始まれば、日本に輸出される可能性も出てくる。だが米メディアによると、クローン食品が実際に市場に出回るには数年はかかるとみられる。FDAはまた、クローン食品に特別な表示は必要ないとの立場で、この点は米内外で論議を呼びそうだ。
クローン技術は、成長した動物の体細胞から同じ遺伝子を持つ動物をつくる手法で、報告書は1000ページ近い膨大なもの。
米紙ワシントン・ポストによると、FDAはクローン技術が使われた牛肉や牛乳、豚肉などの脂肪、タンパク質、ビタミン類などを検査し、値は通常のものと変わらないと結論付けた。また3カ月以上にわたり実験動物にこれらのクローン食品を与えたが、異常は見られなかったとしている。
クローンヒツジについては、安全性を判断するための十分な情報が得られなかったという。
ポスト紙などによると、欧州連合(EU)当局は先週、オーストラリアやニュージーランドに続く形でクローン食品は安全との報告書案を発表。米国もそれに追随した形だ。
輸出の際は表示を
クローン動物に詳しい今井裕京都大教授(生殖生物学)
安全性評価をめぐる科学的な判断はおおむね妥当と言えるのではないか。ただ、日本ではクローン家畜の安全性評価はまだ行われていないため、もし何の表示もないままクローン牛肉が対日輸出されるような事態になると、大変な混乱を招くことになる。消費者の選択を守る観点からも表示は必要だと思う。日本としては、今回のFDA報告書も参考に、政府の食品安全委員会でクローン牛などの安全性評価を急ぐべきだ。