それは人それぞれ違う。そこまでは当然の話で、大した話題にはならない。
問題はヴァイオリニストが好む音色だけではピアニストは飽き足らないこと。
ヴァイオリニストが好む音色をAとしよう。
アンサンブルに関心が薄いピアニスト、経験の浅いピアニストはそれにBという音色を足そうとする。A+B、アンサンブルでなければ、ほぼ全員のピアニストが良い音色だというだろう。なぜならばA+Bが、ピアノ独奏の標準的音色だからだ。
この音色Bを、弦楽器奏者は好まない。Bが少なければ少ないほど弦楽器奏者の評価は上がる。
ざっとこんな感じだ。
この音色Bを、出したりひっこめたりできれば申し分ないのだが、それができる人は、ごくごくわずかである。なぜならば、ピアノ界ではA+Bが標準装備で、Bを取り外したり、つけたりする必要性を全く感じない人が大半を占めているから、普通にピアノ界に身を置くと、Bを取り外す事など全く考えないだろう。
以前に書いた、伴奏助手の方々を始め、アンサンブルに慣れた一部の人がBを外した音色で演奏してくれる。
その音色こそアンサンブルの音色、全てそれで演奏することをピアニストには要求したいし、学生にはそのように指導したいのだが、実際にはかなり難しい。
普段A+Bが良いとされて、ピアノの先生を筆頭にみんなそう思っているのだから、Bを外す必然性が見当たらないからである。
なかなか厄介なのだ。