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N響2018-2019シーズンのオープニングコンサートです。パーヴォさんとN響のコンビもいよいよ4年目に突入。月日が経つのは早いですね。就任前のマーラー交響曲第1番や就任記念の同2番の演奏会からもう3年が経つとは。あの時から、私自身も3つ年を重ねたかと思うと、ちょっと怖いものがあります。
昨年もそうでしたが、シーズン頭の9月の定期演奏会に、オーケストラの顔であるパーヴォさんが登壇してくれるのは、非常に好感が持てます。やっぱり、常任指揮者たるものそうでなきゃ。さあ今シーズンもやるぞという、気概が感じられる気がするからです。楽員さんたちにとってはどうなんでしょ。あんまり関係ないのかしら。
さて、この日は前半がシュトラウス一家の舞踏音楽もの5本と後半がマーラーの交響曲4番という「変わった」取り合わせでした。世紀末ウイーンという共通項があるとのことです。シュトラウスとマーラーがほぼ同時代というのは、私自身はほとんど意識したことがなかったので、新鮮な切り口でした。更に、小宮正安氏のプログラムノートに、各作品の時代背景が簡単に紹介されていて、「世紀末」と言っても年によりウィーンの状況は異なっていて、それが作品にも反映していることが記載されており、勉強になりました。
前半のシュトラウス一家シリーズは、華やかで楽しい時間でした。さすがに5品もワルツ、ポルカを聴くと、やや飽きがきますが、似てるとはいえ違うところはもちろん違いますし、シーズンオープニングに相応しい祝祭的な雰囲気が醸し出されます。テーマを持たせつつ、こんな演出をするのも、さすがパーヴォさんという感じ。
後半のマーラー交響曲4番はこれまた出色でした。この3年間のパーヴォ/N響コンビで、1,2,3,7,8を聴き、どれも素晴らしかったのですが、その黄金シリーズに更に4番が加わりました。第1楽章では、今回は意外とスタンダード風だなあと思ったのですが、第2楽章以降、特色満載。第2楽章のマロさんのヴァイオリ独奏は、不気味さが引き立ってましたし、第3楽章は逆にスローテンポの中で実に繊細な演奏で、牧歌的と言うよりも宗教的な気高さを感じるものでした。
そして、第4楽章に入る少し前に舞台に登場したソプラノ、アンナ・ルチア・リヒター嬢が衝撃的でした。水色のドレスに身を包んで登場したその瞬間、あの殺風景なNHKホールに、いきなり花が咲き、春が訪れたように、色彩が施され明るくなります。西洋人歌手としては珍しいほどに、細身で、顔だちや身のこなしがロイヤルファミリーのプリンセスと言ってもそのまま信じられるような気品。そして、その歌声は、天上から響くような、清らかで濁りなく、無色透明の神々しいソプラノ。天国にいるかのようです。歌姫とはこういう人を言うのだろうなと、耳と目の両方を完全に奪われ自失状態でした。
歌以外にも素晴らしい点は色々あったのですが、結局リヒター嬢にすべてを持ってかれた感じでした。以前、ロンドン響と一緒に来日歴もあるようですが、今回、彼女を連れてきてくれたパーヴォさんにも大感謝。
さて、ツイッター上でどなたかが呟いていてその通りと思ったのですが、パーヴォとN響の関係性も就任当時から着実に変わってきていると思います。マーラーの第1,2番を演奏した2015年当時はとにかくN響メンバーが必死になって、パーヴォに食らいつこうとしている様が手に取るように見て取れました。その、ぶつかりあいが聴く者にとっては興奮の源泉だったわけですが、3年たって以前のような食らいつこうとする一途な様子は見られなくなりました。逆に、より大人の関係に近づいた感じ。これが吉と出るのか、凶とでるのか、まさにその真価が問われるのが、このシーズンだと思います。
備忘ですが、オーボエのトップにあまり見ない若手の奏者が就いてらしたので、ツイッター上でお尋ねしたところ、兵庫芸術文化センター管弦楽団の吉村結実さんと言う方とのことでした。
第1891回 定期公演 Aプログラム
2018年9月16日(日)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
ヨハン・シュトラウスII世/喜歌劇「こうもり」序曲
ヨハン・シュトラウスII世/ワルツ「南国のばら」作品388
ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ヨハン・シュトラウスII世/皇帝円舞曲 作品437
ヨーゼフ・シュトラウス/ワルツ「うわごと」作品212
マーラー/交響曲 第4番 ト長調*
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ*:アンナ・ルチア・リヒター
No.1891 Subscription (Program A)
Sunday, September 16, 2018
3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall
Johann Strauss II / “Die Fledermaus”, operetta - Overture
Johann Strauss II / “Rosen aus dem Süden”, waltz op.388
Johann Strauss II / “Im Krapfenwald’l”, polka op.336
Johann Strauss II / “Kaiser-Walzer”, op.437
Josef Strauss / “Delirien”, waltz op.212
Mahler / Symphony No.4 G major*
Paavo Järvi, conductor
Anna Lucia Richter, soprano*