テオティワカン、マヤ、アステカの文明からの様々な出土品をもとに古代メキシコ文明を紹介する特別展。
非常に見応えあった。修復努力の賜物だとは思うが、どの遺物も状態良く保存されている。
全般的に日本の繊細で柔らかい文化との違いが印象的だ。スケール大きく、硬質な印象を受ける。対象となった時代が紀元前1500年から紀元後1600年という広範囲にわたる上に、未だ分かっていないことも多いとされる古代メキシコ文明なので、出土品から勝手に当時の様子や人々の想像を膨らませるのが楽しい。
個人的に最も印象的だったのは、目玉出品とも言えるマヤの都市国家パレンケのパカル王の妃とされる赤い辰砂に覆われて見つかった通称「赤の女王」の遺物。7世紀に埋葬された女王の棺が現代に開かれるって、時間の封印を解く緊張感がたまらない。本人に被せてあった、ややくすんだエメラルドグリーン色のマスクが、観る者に何かを語りかけているように見えた。
赤の女王のマスク・頭飾り・冠・首飾り:マヤ文明 7世紀後半(パレンケ、13号神殿出土)
展示の仕方も工夫が一杯で多くの人が楽しめるように企画されていた。例えば、個人利用目的の写真は撮り放題。鑑賞よりも撮影に熱心な方が沢山いたのは微笑ましかったが、面白い試みだと思う。以下、いくつか個人的に気に入ったブツのスナップ。
モザイク立像:テオティワカン文明 200~250年 (黒曜石)
嵐の神の壁画:テオティワカン文明 350~550年
トニナ石彫171:マヤ文明、727年ごろ
猿の神とカカオの土器蓋:マヤ文明 600~950年
鷲の戦士像:アステカ文明 1469~86年
会場内も大スクリーンによる遺跡の映像投影や壁に遺跡風景をはることで、あたかも遺跡の中に居るような雰囲気を出してくれたのも、気分が盛り上がって良い。「赤の女王」は石室の棺に納められように展示がしてあり、女王の遺体の大きさ(思いのほか小柄)がよりリアルに感じ取れるともに、納棺に居合わせているような臨場感もある。
日本ではなかなかこうした中米の歴史や遺物に触れる機会は無いので、とっても貴重な展覧会だと思う。大混雑という程では無かったが、家族連れ、外国人観光客も多数で、大変賑わっていた。東京では9月3日までなので、少しでも興味のある方にはお勧めします。
2023年8月12日 訪問
(構成)
▼第一章古代メキシコへのいざない
▼第二章テオティワカン 神々の都
▼第三章マヤ 都市国家の興亡
▼第四章アステカ テノチティトランの大神殿