★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

さらば夏の日 2

2009年07月24日 17時48分34秒 | 小説「さらば夏の日」
 高校に入って初めての夏休み。
 激動の時代といわれた60年代が終わり、マスコミが伝える世の中は、天井知らずの好景気の真っ只中だったが、僕たちの町では依然として、夏の白い日射しの中で、アイスクリームが溶けるみたいに、ゆるやかに時間が流れていた。
 
 僕は午前中は補習授業に出席し、午後は陸上部の夏期練習に明け暮れている、いわゆる普通の高校一年生だった。 
 僕たちの高校では、よほど身体が弱いか、卓越した文化会系的才能がない限り、一年生の男子はすべて体育会系のクラブに入部することが、学校の方針として義務付けられていた。あいにく身体も健康で、これといった文化会系的才能の持ち合わせもなかった僕は、部員の数が一番少なくて、すぐにでも競技会に出られそうな陸上部を選んだ。
 
 陸上部は三年生が二人に二年生が三人の、校内では地味で目立たないクラブだった。三年生のキャプテンは砲丸投げが専門で、もう一人はヤリ投げ、二年生は二人が三段跳び、一人が走り高跳びが専門だった。
 僕と一緒に入部した四人の一年生は、一人が砲丸投げ、もう一人が走り高跳びをやり、僕とあと一人の一年生、下川順次郎の二人が長距離をやることになった。
 要するに、僕と下川が入部するまで、短距離にせよ長距離にせよ、走り専門がいない何とも情けない陸上部だったのである。
コメント
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