★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

さらば夏の日 3

2009年07月26日 17時57分25秒 | 小説「さらば夏の日」
 そんな訳で、僕と下川は入学当初から仲良くなった。
 彼は誰が見ても長距離をやる体型ではなかった。身長は170センチと普通だったが、体重が90キロもある肥満体で、どちらかといえば、長距離より砲丸投げとかハンマー投げ向きの身体つきだった。げんに入部当初はキャプテン自ら、砲丸投げをやるようしつこく勧めたのだが、下川は断固として長距離をやりたいと言い張った。下川が長距離を選んだのは、走ることで少しでもスリムになり、女にモテる体型に変身しようと決めたからだそうである。
 
 理由はどうであれ、若い時には、自分の身体をスポーツによって適度にいじめることが必要なのかも知れない。スポーツで性的フラストレーションは発散しろ、と体育の教師がよく言っていたものだが、当時の僕は忠実にそれを実践していたものだ。
 何も考えずにただ走る。特に目標タイムを設定することもなく、苦しくなるまで徐々にペースを上げ、苦しくなったらペースダウンする。再びペースアップし、またペースダウンする。それの繰り返しである。
 そうやって走っていると、ストイックな長距離も結構身体に馴染んで来るものである。高校に入って約4ヶ月の練習で、僕の身体からは余分な贅肉がかなり落ちたが、下川は相変わらずその肥満体を持て余していた。
コメント
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