第344話 たなごごろの記憶

2011年02月06日 19時01分00秒 | Weblog
相手を思って・・・といいますと、贈り物があります。
自分では日常使いできない憧れの名品の数々、
ロイヤルコペンハーゲン、バカラ、ウェッジウッド、マイセン・・・
「あの方に差し上げるために」という思いに勇気を得て、ブランド店への入店を果たします。
「今日は買うぞ」という心意気で入店しているので、店員さんが近づいてきても平気♪
手にとって見せていただきながら、名品の名品たる所以を教えていただきます。

今年1月、お義父様とお義母様が金婚式を迎えました。
私たち夫婦は晩婚ですから金婚式まで寿命が持つかどうか・・・
結婚して50年、この偉業を称える一品を何にしようか? 探し歩きます。
贈り物をする時は高い物の下級品より安い物の上級品を選びたい方です。
考えあぐねて、お箸の専門店へ。
お箸といってもピンからキリまで、一生手の届きそうにない10万クラスまであります。
若狭塗、輪島塗、津軽塗、さまざまな名品が目の前に・・・圧巻です。
店員さんに事情と予算を話し、紹介していただきます。
木箸をお持ちくださいました。五角、七角、八角と手に持った感触を楽しみます。
塗か木か・・・さんざん迷って、職人さんが丁寧に作り上げた七角の木箸にいたしました。
人と人との箸渡し・・・メッセージは「しあわせの箸渡し」に、
木箱に入れ、紫の風呂敷で包んでいただきました。

「これ、ください。プレゼント用で」と申し上げる時、私と名品との別れとなります。
美しくラッピングされていく様を眺めながら、喜んでいただけるかしらの幸福な時。
私の手元に名品は残りませんけれども、手にした感触が記憶に残ります。
贈るために出会った良品の記憶を辿りながら、
上質なものを日常使いにする心地よさを思わずにはいられません。
私はいいものを自分が使って人に勧めるというより、
あの人を思って買った掌の記憶が忘れられず、自分の生活の中に取り入れてしまうことの方が多いかもしれません。
相手への思いが自分に帰ってくる順が多いです。
私のような者はきっと贈り物という機会がなければ、上質なものと出会えることはなかったでしょう。
あの方のおかげで・・・です。
コメント
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