人生には、どんなに望んでも叶わぬ夢があることを知った。
受験や資格試験。
今にして思えば、勉強は自分ひとりの努力でなんとかできるけれど、命だけは・・・。
私には、ひとり息子がいる。
わがままかもしれないが、息子にも私のように弟や妹がいる世界を望み、
四人家族でも、五人家族でも、望むところだった。
「ひとりでも、いるんだからいいじゃない」とは思えなかった。
どんなに祈っても、子どもを授かるという奇跡が訪れることはなく、
満たされないまま、少しずつ壁に近づいていく。
ある日、見上げると、私の前にそびえ立つ、高く、厚い壁。
「あぁ、もう私には無理なのだ。」と悟った瞬間、希望の光がなくなった。
「どんなにあがいても、私はこの壁の向こうに行くことができないのだ。」
不意に襲ってくる喪失感。
「あきらめるしかないのだ。この壁を乗り越えるだけが人生ではない。」
何度も自分に言い聞かせながら、私は壁に沿って別の道を探した。
生み出せるものは、子どもだけではないはず。
女性の価値は、子どもを産むことだけではないはず。
私が、私に似た子をこの世にのこせなかったことにも、何か意味があるはず・・・
私の中から生まれた思いで、社会や世界とつながっていくことはできないだろうか。
そうだ、絵本を創ろう。趣味でもいい。私は、初めて絵本を創った。
無から有を。
自分の中から生み出すという「出産」に挑戦していると、
目の前に立ちはだかっていた壁は、いつの間にか透明になっていた。
乗り越えられない壁は、新たな道に進む曲がり角だったのだ。
正直、今でも、もちろん欲しかったなぁと時折、思う。けれど、
そんな私だからこそわかる人の痛みや命の尊さを胸に
これからも私の中から生まれてくるものたちを、育んでいきたいと思っている。
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