第311話 ピンチヒッター・じぃじ

2011年03月03日 06時42分50秒 | 子育て・「おママごと」

「共働きは夫婦2人だけでやっていけるものではない」という結論に達した。
園と私をつなぐ人(園の降園時間から私が職場から帰ってくるまでの間の保護要員)、
病後から登園までをつなぐ人(たとえ見るからに元気であっても医師の治癒証明書を提示しなければ、
登園できない。人にうつさないというマナーを守るための要員)、
勤務中、予想不可能なお迎え要請に対応できる人(大事な会議がある。出張が入っているなど、ここぞという時に重なるお迎え代行要員)。
やはり、いついかなる時にも対応できる時間とそれなりに体力のある人、の助けが必要になってくる。
私は無職の父に助けを求めた。

「まだ帰れそうにないの。今日もお迎えいいかな?」
私の急な要請にいつも「よっしゃ」と快諾、父は車で1時間かけて我が町にやってくる。
育児休暇中、私にべったりだった息子は父に警戒モード。
遠路はるばる来たものの、泣くわ、嫌がられるわ。それでも、父はめげなかった。
「あぼぼぼ。あぼぼぼ」と謎の呪文を唱えながら息子にくらいついていく。
厳格だった父が・・・道化と化した。
私が帰宅すると、息子が1人。あれ?じぃじは? 見ると、隣の部屋で父は突っ伏し・・・寝てる。
「お父さん!」「あぁ、知らん間に寝てもうてたな」持久力がない父の育児は、きっと全身全霊がゆえ。
帰宅がずいぶん遅くなった。きっとお腹をすかせているに違いない。
ドアをあけると、じぃじとKの食事風景が。
「どうしたの?!」「Kがお腹すいた言うから、スーパーでさんま買うてきて焼いたってん」
お父さんが台所に立つなんて・・・台所の惨状から父がどんなに必死に焼いたのかがわかる。

最初の子で男の子だし、きっとお話できるのは遅いだろうな・・・と思っていたら、意外に早かった。
突然、息子が「でんしゃ」と言う。
びっくりして父に問うと、保育園の帰り道、線路脇に車を停めてずっと電車を見ていたという。
来る電車、電車にKは大喜び、そのたびに父は「電車」だと伝えていたらしい。
この寒空の下ずっと・・・相手にとことんつきあい、飽きることなく何度も何度も繰り返す。
私は父に「教育」を教わった気がした。
父の携帯に電話をすると、またKと2人で電車を見ているとのこと。
迎えに行くと、しゃがんで煙草を吸う父の横にヤンキー座りの息子が。
なんでもじぃじの真似をするようになって・・・全身全霊育児の末、父はKの親友になった。

娘は大きくなって父と疎遠になったけれど、母になるとまた父の元に帰っていく。
ピンチヒッター・じぃじ。悪戦苦闘の高齢男手育児。
資格はないけれど、孫への愛でなんでも乗り越える我が家のベビーシッターに心より感謝を込めて、
「お父さん、ありがとう」


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