私が毎朝お祈りをするモスクだ。
1年で一番美しい瞬間だと思っている。たぶんこの瞬間は5日間ぐら
いしか続かない。すぐに田植えが始まる。でも、まだ1度も近くまで
行ったことはない。
お祈りと言っても、実に利己的な内容ばかりなのだが、これが意外に
かなえられるのだ。
「神様お願いです。前の遅い車を次の信号で右左折させてください」
とか、「遅刻しそうなのです。これからの信号を全部アオにしてくだ
さい」と言うようなことを5秒間でお祈りするのだ。
だから帰りは「ありがとうございます。間に合いました。」とお礼を
言って通り過ぎる。
この美しい光景を見て、20年前のイラン人知り合いのことを思い出
した。
「栃木県産のインディカ米が手に入るけど、持ってきてあげようか」、
と彼に行ったところ、「ありがとう、でも大丈夫、インディカ米は手
に入るから」、と帰ってきた。
「でも日本産の方がずっと旨いぜ」と言ったら。
「いやいや、イラン産が最高」と嬉しそうに誇らしそうに返してきた。
「えっ、イランに水田があるの?」と言うと。
「おまえ、チグリス・ユーフラテス川を知らないのか、イランは米の
産地なんだよ」。
おどろいた。確かに学校で習った。そうだよね、世界文明の発祥地で
すよね。
それで、あえてここに建てたのかな。この水田は計算の上なんだろうね。
イランの米をもらっておけばよかったな。食べてみたくなった。