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Corrective Actionは“是正処置”で良いか

いわゆる“是正処置”は 組織が劣化しないため、明らかになった不良(不適合)を反省し改善するための仕掛けです。
継続的改善への道具立ての一つで規格にとっては大きな要素です。これはISO9001の後ろから2番目の所に 次のように規定されています。

これによると“再発防止のため、不適合の原因を除去すること。”とあります。念のためISO9000の“基本及び用語”を紐解いて見ますと

ここで、登場する言葉を 参考までに 紐解くと 次のようです。

つまるところ“是正処置”は“問題点の原因を取り除いて二度と不適合が生じなくすること” つまり、これこそ“再発防止策”のことですね。

ところで、ある審査機関の審査員に 教示していただいたことですが、日本語の“是正処置”という言葉には “再発防止”の概念は 一般的には含まれていないように思われます。例えば 役所の台詞で、問題があった場合の対応例ですが “本件に関しましてとりあえず、是正措置を取り その後に再発防止策を検討して参りたい・・・” というような国会での大臣答弁があったように思います。正確に議事録を確認したわけではないのですが、具体的には 瀋陽領事館事件での川口外相の答弁だったように、記憶します。
このように、日本語の“是正措置(処置)”という言葉には 一般的には “再発防止” は含まれていない印象です。
ですから、Corrective Actionには 直接的表現の“再発防止”が よりふさわしい訳のように思います。

ISOオリジナルの英語標記では、是正処置は Corrective Actionとなっていますが、Correctionという言葉もあります。この場合、普通でしたらCorrectionは“是正”となるハズですが JISでは“修正”となっています。
このCorrectionは 定義では“不適合を除去するための処置”となっています。つまり、“不適合”となった問題点そのものを解決すれば良いことになります。先述の大臣答弁に従えば これこそ“是正処置”ではないのか、と思われます。

“参考 3.”に注記されている“CorrectionとCorrective Actionとは異なる”というのは、まさしく “一旦Correctionした後、Corrective Actionを取る”ということを意味していると考えられます。これは 先ほどの日本語例による “是正処置の後、再発防止策を取る”ということになるのならば、Correctionに“修正”という訳を用いるより“是正”の方が適訳ではないでしょうか。

ちなみに “学研漢和辞典” では
是正:まちがいを正す。
修正:まちがいや、でこぼこをなおして正しくする。
となっています。 “修正”は 基本的な部分はそのままにして“でこぼこ(した部分)をなおす”程度の“正しくする”行為だと考えられます。これに対して“是正”は ズバリ“正しくする”という行為。“正す行為”が広く適用できる概念、と考えられます。従って、Correctionの訳としては“是正”こそ適切な感じです。

先の審査員は 「Corrective Actionは“再発防止”とし、Correctionは“是正”で良い。」とおっしゃっていました。この ご意見には 私も大いに賛成です。
つまり “是正処置” では“不適合の原因を除去する”イメージが乏しいため、“再発防止”の方がCorrective Actionの訳にはふさわしく、Correctionには “正す行為”が広く適用できる“是正”とするのが良いと思うのです。

ということで、私は 社内ISO文書での用語を“「再発防止」と 「是正」”に“修正” いや訂正Correctしました。
少々、言葉の遊びで こねくり回した印象ですが 大切な1コマと思いますので悪しからず。
でも 普通の人と違う言葉を使うのも 今後少々 辛いカモ。

コメント ( 5 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
私は (かっちゃん)
2005-11-18 09:27:24
初めまして。



是正処置ですが、一般の社員の方に研修する際は「いわゆる再発防止対策ですね。」と大体言いますね。

そうすると、皆さんの顔が「なるほど」という顔になるのが分かります。



では。
 
 
 
一言 (discus05)
2005-11-18 15:37:52
ISO9000:2000(というかJISQ9000:2000)の3.6.5でcorrective actionを「是正処置」とまた3.6.6.でcorrectionを「修正」と定義しております。両者の違いは、不適合の原因を除去するかしないかの違いになります。もちろん製品だけではなく、QMSの不適合も含まれます。ISO9001:2000、8.2.3項の「プロセスの監視・測定」にも「計画どおりの結果が達成できない場合には、製品の適合性の保証のために、適宜、修正及び是正処置をとること」と並んで両者correctionとcorrective actionが要求されています。



 また3.6.7にrework「手直し」、3.6.9にrepair「修理」が定義されています。日本語でが、余り違いなく使っていますが、「手直し」は、要求事項に合致するように修正すること、「修理」は使えるように修正することとして区別されています。



 なお日本語としての是正ですが、是は、匙(さじ)に由来するようで神事に関して用いられたスプーンのようなものを指すようです。正(直)しく見ることを表現するのに用いられてきたようです。一方、修は、攸(ゆう)+彡(さん)で、攸は人の背後に水をかけて洗う形で、みそぎをすること。彡は清められたことを示すようで、神道の祭事に先立って、神職が行う清めの儀礼を指すようであります。どちらも語源的に再発防止の意味は無いように思われます。



世間一般にQMSにおいて「不適合の原因の除去」(再発防止策)が実施されずに単に訂正で終わってしまう問題が多く指摘されている状況からして、言葉を分かり易くされるのには、基本的には、賛成ですが、ISO9001:2000規格が「3.定義」において、ISO9000:2000規格を引用していますので、JISQ9000:2000の定義を考慮すると無難には、マニュアル、規定類などへの記述には、「是正処置」(当社QMSにおいて「再発防止」と定める)、「修正」(同:是正と定める)の文言を残しておかれることをお奨めします。

以上、蛇足、釈迦に説法のようなことで恐縮です。



 
 
 
ありがとう ございます。 (磯野及泉)
2005-11-19 23:56:16
お二人様に ご支持頂戴いたしました。

私どもを審査いただいた審査員の先生と 私を含めて、世の中に4名以上は この点について同じ考え ですネ。
 
 
 
品質保証課を (せいちゃん)
2006-04-27 10:57:50
磯野様



品質保証課の英語標記はどうなりますか?
 
 
 
品質保証課の英語標記ですか (磯野及泉)
2006-04-28 01:47:53
単純に字面だけからですと

QUALITY ASSURANCE SECTION

が 一般的だと 思いますが・・・・
 
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