小児科医の私ですが、
小さい頃から通っていた子どもが思春期になり、
ニキビができてきて相談を受けることがあります。
小児科や皮膚科に縁のない人は、
「ニキビは市販薬で治療するもの」
「どうしようもなくひどくなったら皮膚科へ行こう」
というイメージを持っていると思われます。
実は小児科の当院でも保険診療で治療可能です。
通う手間はありますが、
市販薬より効果が高く、費用は安く、満足度は高いと思います。
数年前に、最近のニキビ治療について一通り調べてみました。
すると近年、ニキビ治療が大きく変化していることがわかりました。
昔のニキビ治療は抗生物質とイオウ剤しかありませんでした。
効果は弱く一過性であり、
正直言ってあまり手応えを感じませんでした。
赤ニキビが少しよくなると治療を休み、
するとまた出てきてまた治療、の繰り返しです。
2008年に変革者が登場しました。
その名は「ディフェリン®ゲル」。
それまでの赤ニキビや黄ニキビの化膿・炎症を抑える治療で終わらず、
“ニキビ肌を治す”ことができるようになったのです。
つまり、
「できたニキビを治す」から「ニキビができない肌にする」
ことが可能になりました。
これを機に、欧米から遅れること10年、
日本皮膚科学会では「尋常性痤瘡治療ガイドライン2008」を作成しました。
その後、同様の塗り薬が次々と登場しました;
2008年:ディフェリン®ゲル(成分:アダパレン)
2015年:ベピオ®ゲル(成分:過酸化ベンゾイル)
2015年:デュアック配合ゲル(成分:過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)
2016年:エピデュオ®ゲル(成分:アダパレン+過酸化ベンゾイル)
ガイドラインは更新を重ね、
最新版は「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」です。
さて、当院でも新薬を使ってのニキビ治療を始めました。
ただし、使うのは4つのうち「ディフェリン®ゲル」のみです。
他の新薬に入っている「過酸化ベンゾイル」は効果が早く優れた治療薬なのですが、
約3%にひどいかぶれ(接触皮膚炎)が発生し、
顔が真っ赤に腫れ上がることが報告されています。
そのような例に小児科医では対応しきれませんので、
手を出さないことにしました。
ディフェリン®ゲルは成分がアダパレンという薬で、
こちらは初期(使用開始後1-2週間)はヒリヒリ感が出るのですが、
保湿ローションを併用すればなんとか乗り気れるレベルです。
そして私は漢方薬を多用する珍しい小児科医であり、
例に漏れず、塗り薬と一緒に処方しています。
というか、当院に通院する価値はそこにあります。
逆に漢方治療を希望されない場合は、皮膚科の方がベターでしょう。
ただ、ニキビに使用する漢方薬は、
おしなべて“とても苦い”です。
炎症の熱を冷ます生薬は、みんな苦いのです。
「夏にビールが美味しい理由だよ」
と説明するのですが、
保護者の方は大きくうなずくものの、
子どもにはわかりませんよね。
実際にニキビ治療を始めてから数年経過しますが、
7割くらいの患者さんは手応えがあり、通院してくれます。
残りの3割は苦い漢方を飲めずに脱落した患者さんが多いですね。
ニキビに有効な漢方薬は1種類ではありません。
ニキビの状態と患者さんの体質で複数の方剤を使い分けます。
当院の漢方治療の方針とニキビ治療の具体的なことは、こちらをご覧ください。