小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

子どものコロナ後遺症の現状と対応「小児のコロナ後遺症の疫学ほか」

2024年06月23日 15時46分41秒 | 新型コロナ
当院は「新型コロナ後遺症相談医療機関」に指定されています。
知識のアップデートとして下記講演を視聴しました;

勝田友博Dr.(聖マリアンナ医科大学)(2023.10.1)

知りたいことを教えてくれる有意義なレクチャーで、
知識の整理に役立ちました。

おや?と感じた点;
(聖マリアンナ医科大学小児科・コロナ後遺症外来のデータより)
・コロナ後遺症疑い」として紹介される患者の1/4の最終診断は別の疾患であった。
・投薬は対症療法薬のみで、解熱鎮痛剤が一番多かった。
・約1/4に精神科領域(精神科・心理師)の介入が必要だった。

・・・つまり、「小児科医にできることは“傾聴”以外にあまりない」というさみしい結論。

以下は備忘録(メモ書き)です。

■ Long COVID の定義
・COVID-19の急性期から回復した後に新たに出現する症状と、
 急性期から持続する症状がある。
・症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある。
・症状持続期間の設定が各国で異なる
(WHO:世界)3ヶ月経過して時点でも確認され、かつ少なくとも2ヶ月以上持続
(NICE:英国)12週以上持続
(CDC:米国)少なくとも4週間以上持続
(厚労省:日本)WHOの定義を引用

■ 小児 Long COVID の定義(「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き」より)
・以下のような症状(少なくとも一つは身体的な症状)を
 子どもまたは若年者(17歳以下)の小児が有する状態
① COVID-19であることが検査によって確定診断された後に継続して、
 または新たに出現した症状
② 身体的、精神的、又は社会的な健康に影響を与える症状
③ 学校、仕事、家庭、人間関係など小児の日常生活に何らかのかたちで支障をきたす症状
④ COVID-19の診断がついてから最低12週間持続する症状(・・・必ずしもすべてこれで評価されていない?)
(その間、症状の変動があってもよい)

■ Long COVID 想定される病態(諸説あり)
・急性期に生じた臓器障害(特に肺)の遷延
・体内残存微量のウイルスによる持続感染に伴う症状
・ウイルスによる血液凝固機能亢進と血管損傷
・ウイルスによるレニン・アンギオテンシン系の調節障害
・ウイルスに対して賛成された交代による宿主組織に対する交差反応(免疫調節障害)
〜以上の複数の病態が複合的に関与している可能性もある。
★ 小児はもともと機能性身体症状を呈することが多く、
 心理社会的ストレスに伴い心身症となりやすい。

■ 小児 Long COVID のリスク因子
・思春期
・女性(?)
・重症COVID-19罹患
・肥満
・アレルギー疾患合併
・長期療養歴
・身体的精神的健康不安
〜以上の複数の因子が併存している可能性あり。

■ 小児 Long COVID の有病率(メタアナリシス)
・有病率:1.6〜70%
・コントロール群(非罹患群)でも類似症状あり ・・・紛れ込みの可能性も

■ 小児 Long COVID の臨床症状(21 studiesのメタアナリシス)
・有病率:25.2%
・三大症状:気分障害、倦怠感、睡眠障害

■ 小児 Long COVID の臨床症状〜出現時期(UKの報告)
・有病率:4.4%
・三大症状
(倦怠感)急性期からずっと続く
嗅覚障害罹患2週間後くらいから出現し続く
(頭痛)急性期が一番強く漸減傾向

■ 小児における Long COVID 日本国内のデータ(ただし半数は入院患者)
・有病率:4.0%
・主な症状:
(発熱)30%
(咳嗽)30%
(嗅覚障害)17%
(倦怠感)16%
(味覚障害)14%
(腹痛)9%
(頭痛)8%
(下痢)8%
(悪心・嘔吐)5%

■  Long COVID はワクチンで予防できるか?
1.2回接種 vs 未接種(ただし成人のデータ)
・ワクチン2回接種群は、未接種群と比較し Long COVID のリスクが低下する(OR:0.64)。
2.2回接種 vs 1回接種(ただし成人のデータ)
・ワクチン2回接種群は、1回接種群と比較し Long COVID のリスクが低下する(OR:0.60)
3.1回接種 vs 未接種(ただし成人のデータ)
・ワクチン1回接種群は、未接種群と比較し Long COVID のリスクは変わらない(OR:0.90)

■  Long COVID は発症後のワクチン接種で改善できる?(2023年の報告)
〜さまざまな報告があり、一定の結論は出ていない。
(改善)20.3%
(悪化)20.5%
(不変)54.5%

■ 聖マリアンナ医科大学小児科・コロナ後遺症外来の治療内容
投薬なし(傾聴)  ・・・ 45%
アセトアミノフェン ・・・ 35%
イブプロフェン   ・・・ 7%
ロキソプロフェン  ・・・ 7%
プロプラノロール  ・・・ 7%(体位性頻脈症候群に対して)
ミドドリン     ・・・ 3%(起立性調節障害に対して)

■ コロナ後遺症を主訴に紹介された患者(42名)の最終診断
・23.8%(約1/4)は他疾患
(LC)16名
(OD+LC)8名
(POTS+LC)5名
(MIS-C+LC)1名
(OD+POTS+LC)2名
(心身症)8名
(IBS)1名
(ADHD+ASD)1名

■ 聖マリアンナ医科大学小児科・コロナ後遺症外来の通院状況
(終了)74%
(継続)17%
(自己中断)7%
(逆紹介)2%
・・・外来follow終了までの期間はさまざまで一定しないが、半年程度が一番多い。

■ 聖マリアンナ医科大学小児科・コロナ後遺症外来における精神科・臨床心理士による介入割合
(臨床心理士)19%
(精神科)10%
(なし)71%
・・・約1/4は心理系の介入が必要であった。


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